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メキシコ湾からのパタゴニア・ストーリー:環境保護団体と提携し、アメリカ史上最悪の原油流出事故を追う

ケーラ・アンダーソン  /  2010年11月8日  /  読み終えるまで8分  /  アクティビズム

古い標識とその新しい意味。メキシコ湾沿岸の原油流出事故の影響に関するNGO<Louisiana Bucket Brigade>の情報収集に協力するパタゴニア社員。Photo: Naomi Hebling

2010年4月22日、石油掘削基地ディープウォーター・ホライズンがメキシコ湾に沈み、今日アメリカ史上最悪の環境破壊となりました。国際石油会社であるBPがそのほぼ全面的な責任を問われていますが、同社の最悪の予測では、海底油田から1日1万バレルもの原油がルイジアナ州沿岸沖83キロで流出したと推定されています。

私たちパタゴニアでは、多くの社員がこの原油流出事故に精神的な打撃を受け、意気消沈しました。その衝撃はあまりにもひどく、普段は締まり屋のCFO(最高財務責任者)も含めた社員たちが集まり、その惨事を直接手助けするためのプログラムの検討に取りかかりました。7月中旬には週10人のペースで社員をルイジアナに派遣し、パタゴニアによる全費用と社員の給料負担のもと、長年の環境保護パートナーである<Louisiana Bucket Brigade(LABB)>とともに被害地域での援助活動に取り組みました。Oil Spill Crisis Map(原油流出地図)を製作中のLABBのために、私たち社員は原油が海岸に到達し、野生生物に影響をおよぼしている地域での事例や写真などの情報収集に携わりました。こうした情報がすべて地図に掲載されることで、原油流出事故による環境および健康被害の現状が一目瞭然となります。またオープンソースの情報として、援助が最も必要とされる場所をNGOをはじめ政府機関、州や地元の野生生物局、そして一般市民にも提示することができます。

パタゴニア社員はトレーラー(移動住宅)や、ラフィット、グランド・アイル、プラクマインズといった郡の教会で寝泊りし、住民の各家庭を訪問して早急のニーズ、健康への悪影響、環境害、文化的損害などについてインタビューしました。そして見捨てられたエビ漁船、空から降ってきた死んだ鳥、教会の慈悲に依存する生活、原油が浮かんだお風呂などの体験もしました。

今日はそうした体験のなかからある1つのストーリーをご紹介します。

メキシコ湾からのパタゴニア・ストーリー:環境保護団体と提携し、アメリカ史上最悪の原油流出事故を追う

古い標識とその新しい意味。メキシコ湾沿岸の原油流出事故の影響に関するNGO<Louisiana Bucket Brigade>の情報収集に協力するパタゴニア社員。Photo: Naomi Hebling

そのとき、私たちは知るかぎりのベストを尽くしたのです。

パタゴニアは<Louisiana Bucket Brigade(LABB)>と組んで、夏の終わりに10人の社員ボランティアから成る7つのグループをルイジアナ沿岸の被害地域に派遣しました。私は幸運にも参加を希望した250名の社員のなかからランダムに選ばれた70人のうちの1人でした。LABBはルイジアナ州の石油精製所や化学薬品工場の近くの地域と協力しながら、環境衛生・環境正義に携わっている非営利団体です。LABBは長年のパタゴニア環境助成金プログラムの支援先で、私が助成金審議会メンバーに在職しているあいだ2回の助成を受けています。

メキシコ湾からのパタゴニア・ストーリー:環境保護団体と提携し、アメリカ史上最悪の原油流出事故を追う

ルイジアナ州ココドリーで戸別訪問するエイドリアン・プリモシュとリサ・マイヤーズ。Photo: Christina Speed

派遣されてからの1週間、プラクマインズ郡南部の人びとに原油流出事故後の健康問題や仕事への影響について話を伺いました。その1週間で150以上の調査を実施し、収集した情報はLABBのOil Spill Crisis Map(原油流出地図)に掲載されます。原油流出地図はLABBのボランティアやテキストメッセージ、Eメール、ツイッター、ウェブなどから提出された情報をもとに事故の影響を視覚化するもので、体験談を記録しながらリアルタイムでその情報を公開します。その目的はBP原油流出事故の記録と情報シェアで、すべての情報を公開することによって、さらなる透明性、説明責任、そして事故対策と汚染除去の有効性が期待できます。

メキシコ湾からのパタゴニア・ストーリー:環境保護団体と提携し、アメリカ史上最悪の原油流出事故を追う

LABBの原油流出地図。こちらのウェブサイトからは詳細を確認するだけでなく、サイトに貢献することも可能です。www.oilspill.labucketbrigade.org

私たちはニューオリンズから南へ2時間のところにあるエンパイヤーという小さな町に滞在しました。エンパイヤーは、CNN、ABCやNBCの取材班が拠点としているヴェニス・マリーナから20分のところにあります。この地域は5年前のハリケーン・カトリーナで壊滅状態になっただけでなく、今回の原油流出事故でも破滅的な被害を受けました。この地域の収入源はおもに水産業であり、国内の3分の1の海産物を供給しています。流出事故以来、漁業、エビ漁、カニ漁、カキ養殖は収入源ではなくなってしまいました。事故を生き抜いた海洋生物は、しかしながら食用としては安全ではないからです。原油除去作業を手伝うために何人かの地元の漁師がBPに雇われましたが、漁業で稼ぐほんのわずかの報酬しかもらってないとのことでした。そのような少ない報酬ではあっても、私が話した多くの人びとは何かしらの仕事があるだけでも喜んでいました。しかし残念ながら、そのような仕事も長くはつづきませんでした。地域メンバーによれば、BPは7月から原油除去の仕事のほとんどを削減し、残った人びとに対してもその支払いは当初約束されていた額の4分の1(約$1,000/月)にすぎないとのことでした。

メキシコ湾からのパタゴニア・ストーリー:環境保護団体と提携し、アメリカ史上最悪の原油流出事故を追う

ニューオリンズのLABBオフィスで出発前に研修を受けるボランティアのパタゴニア社員。Photo: Christina Speed

私たちは戸別訪問したりスーパーや薬局にビラを貼ったりしながら数日間を過ごしました。私がペニーと出会ったのはエンパイヤーでの初日でした。43度の猛暑のなかで汗を垂らしながら玄関に立っている私たちの姿を見て、彼女は私たちが訪問の理由を説明し終える前に家のなかへ招き入れてくれました。ペニーは5歳にならない2人の子供を持ち、ご主人はエビ漁師でした。収入のほとんどは、エビ漁のシーズンである夏の3か月間に長時間働いて得ているとのことでした。

ペニーによると、普通なら次のシーズンが来るまで家族を養うのには十分な収入があるそうですが、今年は違います。原油流出事故のせいでエビ漁のシーズンはなくなってしまいました。彼女のご主人は原油除去作業のためにBPに雇われた漁師のうちの1人でした。彼は2か月分の給料(通常エビ漁で稼ぐ3分の1にも満たない額)をもらい、7月分の給料はまだもらっていないとのことでした。彼は自分の失業の原因であるBPのために働きたくはないが、家族を養うためには何でもしなくてはならないと感じているそうです。

メキシコ湾からのパタゴニア・ストーリー:環境保護団体と提携し、アメリカ史上最悪の原油流出事故を追う

LABBの調査は、BP原油流出事故の南ルイジアナ州民に与える健康的、そして経済的影響を対象としています。Photo: Christina Speed

彼女たちが体験しているのは財政難だけではありません。ここ数か月間、彼女の2人の子供はいつもよりも病気がちだといいます。子供たちが外で遊ぶたびに目のかゆみや痛みを訴えたり咳き込んだりするため、外で遊ばせることに不安を感じています。悲しいことにペニーの話は珍しくはありません。いまは何とかやっている家族もいますが、来月どうなるかはわかりません。どうやって光熱費を払い、食料品を買うかを考えあぐねている家族もいます。そしてほとんどの家族がBPの原油流出事故による何らかの健康への影響を受けています。私の体験談を紹介することで、読者の皆さんを落胆させたいわけではありません。ただBPの原油流出事故の本当の影響を知ってほしいのです。

私はルイジアナを訪れる前に事故について見たり読んだりしたことと、被害の最も大きい地域で実際に起きていることに大幅な食い違いがあることに驚いています。ボランティアに参加する前、私はこの流出事故をおもに環境災害と捉えていました。記事やニュースでは、メキシコ湾沿岸地域の人びとに対する影響についてはほとんど取り上げていませんでした。プラクマインズ郡でさまざまな地域メンバーと話したり対話集会に参加しながら1週間を過ごしたあと、BP原油流出事故の影響に対する私の理解ははるかに明確になりました。この事故は私の生涯で最悪の環境災害であるだけでなく、地域全体の生活の糧に大打撃を与えるものです。

だからこそ、私の体験を皆さんと分かち合いたいのです。皆さんもこの現実に激しい憤りを感じ、できることをしようという気持ちなっていただけたら幸いです。簡単にできることはあります。BP原油流出事故について学ぶことによって、私たち自身や家族のために賢い選択をすることもひとつです。自分が暮らしていく上で賢い選択をすることによって、私たちの原油依存を減らすこともできます。私たちが購入もしくは消費するものを意識することによって石油関連製品の需要を減らし、また公共の交通機関や自転車、あるいは歩くことによって自動車の使用を削減することもできるのです。原油除去作業についての関心を示し、BPへ説明責任を要求することもできます。ひとりひとりの声が重要なのです。

この体験を通じて、私はお気に入りのマヤ・アンジェロウの言葉を思い出しました。『そのとき、私たちは知るかぎりのベストを尽くしたのです。もっと理解を深めたいま、さらに最善の努力ができるでしょう』

ケーラ・アンダーソン

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