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丈夫で長持ちするプラスチックも粉々に。写真:一般社団法人JEAN
丈夫で長持ちするプラスチックも粉々に。写真:一般社団法人JEAN

足元の小さなプラスチック

2011/03/10 2011年3月10日
まだ拾うことのできるプラスチックの山。写真:一般社団法人JEAN
まだ拾うことのできるプラスチックの山。写真:一般社団法人JEAN

アメリカの環境NGOからの呼び掛けに呼応して、『拾うだけではなく集めたごみの個数を数えてデータを集めるクリーンアップ』を日本ではじめてから21年、時間の過ぎる速さに比べて、問題解決には時間がかかる。日本中、あるいは世界中から参加する仲間が増えて調査が進めば、海ごみ問題解決への道のりはぐっと近くなると思っていたが、事はそう簡単ではなく、あらたな課題と次々と向き合いつづける毎日だ。

編集注記:『美しい海をこどもたちへ』 JEAN(Japan Environmental Action Network)は海洋ごみ問題を解決して、ごみのない健やかできれいな海を未来に残すために活動しています。同団体の小島あずさ氏より、最近のクリーンアップを通じた海ごみの現状を報告していただきました。

丈夫で長持ちするプラスチックも粉々に。写真:一般社団法人JEAN
丈夫で長持ちするプラスチックも粉々に。写真:一般社団法人JEAN

ごみを細かく調べてみるとじつにいろいろなことが分かり、新しい問題点に気づくことができる。海辺のごみの多くが、じつは街で発生する生活ごみが川を経由して到着したものであることや、プラスチック製品とその破片がほとんどを占めていることなど・・・。なかでもここ数年、とても気になっていることがある。それは、私たち人間が排出して海のごみになり、回収しきれずに残ったものが、どんどん細かくなっているという事実である。プラスチックは軽くて加工しやすく、安くて丈夫で長持ちすることから、いたるところに浸透して便利に使われている。けれども丈夫で長持ちするはずのプラスチックでできたバケツや洗濯バサミ、あるいは園芸用のプランターといったおもに屋外で使う製品が、使用中に劣化してぼろぼろになっていくのに気づいたことはないだろうか。それと同様のことが、海に流出したプラスチック製品でも起きているのだ。プラスチックが安価な日用品として出まわり、使い捨てされるようになったのはここ3、40年ほどのこと。回収されずに海を漂い、海岸に打ちあがるまでに移動するあいだに、ごみは紫外線を浴びつづける。波浪や海流によって傷みもするし、高気温にもさらされつづける。その結果、ごみとなったときは1個の丈夫だったはずのプラスチックは、劣化して脆くなり、時間の経過とともに小さな破片になっていくのである。

どんなに小さな破片になっても、石油から作られたプラスチックには生分解性がないので土に還ることはなく、環境中に存在しつづける。細かくなってしまうと、人の目にとまりにくくなる。よってクリーンアップのときも取り残されるし、たとえ実際に拾おうとしても、広大な海岸全体のごく小さなプラスチック破片をくまなく回収することは、不可能だ。また小さくなればなるほど、魚や鳥などによる誤食の可能性が高くなる。大型のごみを誤食するのは、身体も大きく大きなエサを食べる生き物になるが、小さな生き物は小さいごみを食べてしまう。2001年にアメリカのNGOがカリフォルニアの沖合で、プランクトンネットを使って海中の微細ごみの調査を行なったが、そのときは同じネットに入った動物性プランクトンの6倍の重量のプラスチックごみが採取されている。プランクトン450グラムに対して、ごみ2,700グラムである。また同調査の際には、海水中の栄養分をろ過して取り込む原索生物の体内に、繊維状のプラスチックが入り込んでいるのも見つかっている。

どんなに小さくなっても土に還ることのない微細ごみ。写真:一般社団法人JEAN
どんなに小さくなっても土に還ることのない微細ごみ。写真:一般社団法人JEAN

さまざまな環境問題の現実を自分にも関係のあることとして受け止め、そして解決に向けて行動を変化させるのは重要なことではあるが、その問題が目に見えにくいと認識に時間がかかり、それだけ対応が遅くなる。海のごみ問題も同じ状況で、気象や地形、海流などの要素によって一部の海域や特定の海岸にごみが偏在するため、社会全体での認識はまだ低く、「それらはごみがたくさん漂着する地域固有の問題で、そうしたごみを拾えさえすればなんとかなる」と思われているのである。

北海道大学名誉教授の小城春雄先生の調査によれば、海を漂流しているプラスチックの微細破片の数量は、1980年代、1990年代、2000年代と、10年毎に0がひとつ増える結果となっており、古いごみの劣化と破片化が加速していることが懸念される。さらに、大量の使い捨てのもののためにごみの発生と海への流入がつづいていることを思うと、私たちをめぐる海は、すでにプラスチックごみのスープのような状態であるのかもしれない。こうした現実に対して誰にでもできるのは、使い捨てをしない、そしてごみを発生させない。そして拾えるものは拾う、ということだ。海洋ごみ問題はとても深刻ではあるが、足元のごみが外洋に出てしまう前に、劣化して破片になってしまう前に回収することは、ささやかではあるものの大切なことであり、拾う人を増やすこともまた海洋ごみ問題解決に向けての急務なのである。

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