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壊れた川 ~いまこそ聞こう、ダムのことを~

 /  2012年9月20日 読み終えるまで13分  /  アクティビズム

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アメリカではこの20年でダム撤去はもの珍しい行事から、河川の修復事業へと発展しました。そして何よりも重要なのは、ダム撤去の概念が何百もの地域コミュニティに根づいていること。そして住民は川と歴史と自然のシステムを修復するだけでなく、その過程でコミュニティ自体を一新する可能性を再発見しているという点です。

パタゴニアの環境キャンペーン「アワ・コモン・ウォーターズ(共有の水)」ではダムや分水路によって破壊された河川に視点を向け、その現状をカタログやウェブサイトで紹介しています。『Early Fall 2012』カタログでは河川の修復に努める
5人のダム破壊者たち、「ダム・バスターズ」を取り上げ、さらに『Snow 2012』カタログでは環境エッセイ「荒瀬ダム撤去とゲートの向こうに見える未来」をお読みいただけます。

私たち人類と地球上に生息するその他すべての動植物が必要とする水の未来について学び、行動を起こしましょう。

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ダムについてよくあるご質問 (〈水源開発問題全国連絡会〉提供)

1.ダムとは何ですか?
一般的には水の流れをせき止めたり、変えたりする建造物のことです。法律的には河川の流水を貯留し、又は取水するための構造物で、基礎地盤から堤の頂上までの高さが15メートル以上のものをダムといいます。

日本のダムの定義は、河川法と河川管理施設等構造令に書かれています。河川の流水を貯留し、又は取水するため、河川管理者(国土交通大臣または都道府県知事)の許可受けて設置する構造物で、基礎地盤から堤の頂上までの高さが15メートル以上のものをダムと定義しています。高さ15メートル未満の同様な構造物については、堰(せき)としてあつかわれています。なお、一般に「ダム」と呼称される砂防ダム・治山ダム・鉱滓ダムは、水を貯留する目的を持たないため河川法上のダムとはみなされていません。

ちなみに、非政府組織・国際大ダム会議による世界的なダム基準では、堤高5メートル以上または貯水容量300万立方メートル以上のものをダムと定義し、そのうち堤高15メートル以上のものをハイダム、それ以下をローダムと定義しています。 また、土砂を貯めることが目的で高さ約7メートル以上のものを砂防ダムといい、それ以下のものを砂防堰提といいます。

2. 日本にダムはどれだけあるのですか?
約3,000か所あります。

国土交通省関東整備局利根川ダム統合管理事務所のHPでは、既設ダム2,738か所、建設中331か所の合計3,069か所としていますが、この出典は財団法人日本ダム協会 ダム便覧2003です。しかし、日本ダム協会のHPの最新記載では、既設(2011年3月31日までに完成)が2,657か所、新設(2011年4月以降完成予定のもの)が144か所、合計2,801か所としています。また、社団法人日本大ダム会議が国際大ダム会議ダム台帳・文書委員会に提出した3,045か所という数値もあり、どうもダムの台帳数は明確ではありません。

また、砂防ダムは土石流危険渓等に、多い所は1か所あたり10基前後も作られています。砂防便覧によると砂防ダムの数は全国で85,000基余りにのぼります。

3. どの都道府県にいちばん多くのダムがありますか?
北海道です。

日本ダム協会のHPのダム一覧(北海道)からカウントすると197か所。ただし、同協会の集計表(都道府県別型式別)では190か所となっています。ちなみに同集計表での2位は岡山県(168)、3位は福岡県(124)、4位は兵庫県(116)、5位は新潟県(111)で、最下位は東京都(8)です。

4.ダムの操業は誰が規制しているのですか?
日本のダムの事業者は、政府直轄事業者、地方自治体、電気事業者、一部の民間企業ですが、ダムの建設認可や国庫補助の視点から考えると総体的には国が規制しているといえます。

ダムはさまざまな事業者によって計画され、建設・管理が実施されています。日本においては、政府直轄事業者(国土交通省・農林水産省・独立行政法人水資源機構)、地方自治体(都道府県・市町村)、電気事業者(各電力会社)、一部の民間企業からなります。

政府直轄のダムは「特定多目的ダム」(別名「直轄ダム」)、建設費の国庫補助を受ける地方自治体管理のダムは「補助多目的ダム」・「補助治水ダム」(略して「補助ダム」)と呼ばれています。

日本の9電力会社(北海道電力・東北電力・東京電力・北陸電力・中部電力・関西電力・中国電力・四国電力・九州電力)および電源開発㈱、その他電力会社が管理・運営している電力会社管理ダムについては、電力会社単独管理または河川管理者(国土交通省・都道府県)との共同管理ダムの2種類があります。

5.実際に発電に使われているダムはどれくらいあるのですか?
約700か所のダムで発電しています。

日本の発電用ダムと多目的ダムで発電目的があるものを合計すると682か所となります。2007年現在の発電用ダム一覧(電力会社、民間企業および地方自治体が管理または施工を行っている水力発電目的に特化したダムで、多目的ダムについては掲載から除外したもの)からカウントすると418か所になります。内訳は、9電力会社316、電源開発㈱46、その他電気事業者・民間17、地方自治体39です。多目的ダム一覧(治水、利水など複数の機能を持つダムで、洪水調節・不特定利水・水力発電・灌漑・上水道・工業用水のいくつか、または全てを兼ね備えているもの)からカウントするとP(発電)目的のあるダムは264か所です。

6.日本でいちばん大きなダムはどれですか?
ダム本体では、岐阜県にある徳山ダムです。

ダムの大きさ順位は、ダムの種類(フィルダム、コンクリートダム)、高さ、有効貯水容量の観点で異なります。フィルダム本体では岐阜県にある徳山ダム、コンクリートダム本体では神奈川県にある宮ヶ瀬ダムが1位です。高さでは富山県にある関西電力㈱の黒部ダムが1位、有効貯水容量では福島にある電源開発㈱の奥只見ダムが1位となります。

7.ダム計画の見直しや撤去が必要なのはなぜですか? 
本来の川を取り戻すためです。不要なダムには豪雨等により水害が発生するリスクが顕在し、また、川の濁りや河床の低下などの原因となり、河川生態系への悪影響が改善されません。

ダムは、河川を分断して本来の流れを変え、上流からの土砂や有機物を堆積するものです。そのため、河川生態系を大きく変え、海岸浸食の主因ともなっています。ダムは河川や河川敷、周辺の生物生息地を変化、消失させ、魚類をはじめとする動植物を絶滅の危機に追いやっています。また、ダムの中には、計画より早いスピードで土砂で埋め尽くされて安全管理のうえでも危機的な状況となっているものや、貯まった土砂を税金使って人為的に海岸に運んで養浜している例が数多くあります。

このような問題を解決するための方法として、ダム撤去が市民団体から提案されています。アメリカでは、川から撤去されたダムの数は500を越えているといわれています。また、不要なダムの見直しはこうした問題の発生を未然に防ぐとともに、無駄な税金の投入をしなくします。

8.ダムはどのように撤去されるのですか?
ダム撤去の世論の盛り上がりと事業者のダム撤去への決断が必要です。

熊本県の荒瀬ダム(1955年竣工。堤高25メートルの重力式コンクリートダムで、水力発電を目的に建設された。発電目的としては県内で最も古いダム)に対して、周辺住民はかねてから、ダムによって洪水被害が拡大したのではないかと不信感を抱いており、旧坂本村内では撤去への要望が高まっていました。2002年に村議会はダム撤去を求める誓願を熊本県に提出し、撤去問題がクローズアップされました。これを受け熊本県では、2010年から2015年までの5年間で撤去することとしましたが、2008年、潮谷義子前知事に代わって就任した蒲島郁夫知事は、一転してダム撤去を凍結する方針を明らかにしました。これに対し、地元市民グループなどから強い反発の声が出されました。紆余曲折はあったものの2008年に、荒瀬ダム撤去方針撤回が正式に表明されて、2012年度から撤去を始めることが決まりました。

9.これまでにどれだけのダムが撤去されてきたのですか?
日本国内においては本格的なダム撤去は前例ありません。

8.で述べた荒瀬ダムについては、撤去工法、環境対策など様々な面から注目されています。また、砂防ダムについては前例があります。

10.1つのダムを撤去するのにどれくらいの費用がかかるのですか?
ダムの規模によります。荒瀬ダムの場合は、100億円程度といわれています。

11.撤去されるダムは誰が所有しているのですか?
そのダムの元々の所有者です。上記の荒瀬ダムは熊本県が発電目的に造ったダムなので、所有者は熊本県企業局です。

12.ダムの撤去費用は誰が払うのですか?
ダム事業者です。その費用元は税金です。

13.ダムが撤去されるべきかどうかは誰が決定するのですか?
ダム事業者が自主的に撤去を検討することは、まず無いと考えられます。ダム撤去の世論を受けて、事業者が真摯に検討し、最終的には議会でダム撤去を決定することになります。

14.ダムの撤去によって川は復元できるのですか?
復元できます。

河川を分断していたダムが無くなれば、自然の水循環が戻り、川の上流下流を行き来する生物が生息できるようになります。また、自然の土砂や養分が供給されることによって河口付近の海岸浸食も止まり、汽水域や海洋の生態系も回復します。つまり、健全な自然生態系を必要とする漁業などにも好影響を及ぼすことになります。また、流域全体において釣りやカヌー、サーフィンなどレクリエーションのフィールドとしての環境も復元でき、結果的に地域経済にも寄与します。

15.ダムの利点とは何ですか?
国土交通省は、ダムの利点について次のように述べています。
「 1)大雨等で川の水が急に増え、氾らんしてしまうので、その水を貯めることで被害を軽くするため。
2)飲み水や、かんがい等に使う水を必要な時に使えるようにするため。
3)水の流れから電気を起こすため。 」
しかし、これらの利点が、全てのダムに当てはまるわけではありません。

ダムによる治水効果は河川の状況によりますが、小さいものです。特に現在計画されている八ッ場ダムなど建設計画中のダムについては、ほとんど治水効果がないものばかりです。費用対効果からは、河床整備や堤防整備の方が治水対策上効果ある河川も、これらの対策を後回しにして、ダム計画が押し進められようとしています。

日本の人口減少や産業構造の変化、米の減反政策、節水機器の普及等によって水需要は減少しています。水余りの地域も多く、ダムを必要とする根拠はありません。

16.最近よく耳にする「穴あきダム」はどのようなダムですか?
穴あきダムには様々な形態がありますが、現在推進されているのは、ダム下部の河床近くに直径数㍍ほどの穴をあけておき、普段は川の水をためずにそのまま流し、洪水時は一時的に貯留するタイプのものです。国内の本格的な穴あきダムは島根県の益田川ダムが最初ですが、県の環境調査では、アユの遡上が阻害され、土砂の一部は流れずに貯まるなどの点が明らかになりました。また、治水についても、肝心の大洪水で役立たない恐れがあることが指摘されています。

17.ダム計画が見直されたり、ダムが撤去されたら、その利点はどうやって代替するのですか?
利点が明らかにないダム計画は中止し、また利点が無くなったダムから、撤去していけばよいのではないでしょうか。一度ダムを作ってしまうと、その撤去には時間とコストがかかります。事業者が建設の根拠にしている利点がどの程度のものであるか、また自然環境や地域社会に対する悪影響が適切に評価されているのかを多面的、科学的かつ長期的な視点から検証する必要があります。また、ダム建設に依存する産業は、いち早くダム撤去および河川の自然の復元に関する技術や知識の蓄積していくことで新しい事業を育てることができます。

18.ダムの撤去はコスト的に意義があるのでしょうか?
不要なダムを撤去しなければ、7.で記述したような悪影響が継続することになり、流域全体の生態系が損なわれます。こうした環境・社会コストは、現世代だけでなく、次世代以降の負担を組み入れて計算することが必要です。

19.同じ川に複数のダムがある場合、そのうちの1つのダムだけを撤去する意味はあるのですか?
少なくとも、そのダムの上下流の環境は改善されます。現在の日本では、不要なダム一つを撤去するにも大変なことです。一つ一つダム撤去を積み上げていき、その効果を次世代に伝えていく必要があります。

20.私たちは20年後にはまた、ダムを建造しはじめる必要があると決断するのでしょうか?
人口減少と少子高齢化が予測され、また税収の増加が期待できない社会に必要なことは、環境を悪化させず、健全な環境が持っている生態系サービスを最大限生かす仕組みづくりではないでしょうか。これは、ダム建設とは、相容れないものです。

21.ダムの撤去は魚にどのような影響を与えるのですか?
清流の指標魚とされるアユは、秋に川で産卵します。生まれたアユの稚魚は川を下り河口付近の海で育ち、春先に川を上り、中上流で成魚になります。ダムを撤去すれば、ダムが阻止していたアユの移動が回復します。アユだけではありません。サケやウナギなどの魚類やカニ、水生昆虫などの生き物は、川を遡上流下するものが多く、ダムの撤去で自然の生物循環が戻ります。ただし撤去の際にはダム上流部に堆積している土砂やヘドロが下流部に流出して環境破壊を誘発しないようにしなければなりません。

22.ダムの撤去において発生し得るマイナス面とは何ですか?
ダムの撤去で発生するコンクリート等の廃材、堆積土砂を、どうのように処理処分するかは大きな課題です。しかし、ダムによるつけを先送りすることは、マイナス面を拡大するだけです。

23.ダムの撤去後どれくらいの早さで川は回復するのですか?
日本ではダムの撤去の事例はまだありませんので、具体的に改善例を示すことはできません。ただ、生物の生殖周期から推定すると数年で本来の川に回復する可能性があります。

24.アメリカでの事例があれば教えてください。
パタゴニア・ウェブサイトの「アワ・コモン・ウォーターズ(共有の水)」に掲載されている「ダムについて:よくあるご質問(〈American Rivers〉提供)」をご覧ください。

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