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七転び八起き:信越五岳トレイルランニングレース2012のあとで

ジャスティン・アングル  /  2012年10月29日  /  読み終えるまで9分  /  トレイルランニング

Photo: Justin Angle

七転び八起き:信越五岳トレイルランニングレース2012のあとで

Photo: Justin Angle

注記: この投稿は、成田空港で書き始め、今日モンタナ州ミズーラで書き終えたものである

旅がつづくなか、そのちょっとした合間を楽しんでいる。仕事の遅れを取り戻したり、執筆に時間を費やしたりすることもできるが、浮き沈みが激しかったここ数日で、僕の頭は混乱している。少しそれについて書いてみようと思う。

本来ならこの原稿は2つに分けるべきだろう。ひとつは僕の日本での経験、もうひとつは信越五岳レースについて、別々にレポートしよう。

国外にはほとんど知られていない素晴らしいレース

信越五岳レースは世界レベルのレースである。その組織は最高で、細かいところまで行き届いたケアは申し分ない。パタゴニア日本支社とアートスポーツからの協賛を得て、パタゴニアのアンバサダーの石川弘樹と彼の仲間が、僕がアメリカで経験したどのレースをも超えるようなレースを提供している。しかもこのレースを耳にしたことのある人間は、海外にはほとんどいない。パタゴニアはこの現状を変えるため、2010年クリッシー・モールを、そして2011年にはジェン・シェルトンを送り込んだ。それ以外では、このレースの存在を知る西洋人はほとんどいない。

しかし、日本の白熱したトレイルランニング界では重要なレースであることは間違いない。素晴らしいのは、わずか18,000円の参加費を払うだけで、ランナーは特別に用意された食事を3回も提供され、コースマーキングは完璧。すべての曲がり角ではかならず1名以上のボランティアが案内をしてくれ、8つの効率的なエイドステーション、ドロップバッグサービス、スタート地点/フィニッシュ地点と表彰会場への移動、そしてかなりの記念品までついてくる。アメリカのレース参加費とその内容を比べてみると、少し疑問に思ってしまう。すべてのエイドステーションには、なんと観客用の椅子とテントまで用意されているのだから。

美しいコースだった。少なくとも見る余裕がある部分では、の話だが。長野県とその付近の山々は険しくも青々とし、そして驚くほど遠隔地だ。長野のさまざまな峠を乗り越えていくそのコースは、ほとんどがスキー場であり、かなり難易度の高いものである。木の根や岩の上を行くテクニカルな上りと下り、そして平地、日陰や露出、道路や辺ぴなコースなどが、いい具合に交わる全長110キロ、累計標高差4000メートルのコース。トレイルシステムのレイアウトが、周辺地域の農業や産業開発を反映する様子はいつ考えても興味深い。そしてこのコースは、それを考える材料を十分に与えてくれた。田んぼや段々畑、ひっそりと建つ神社、線路やダム、古い灌漑システム、小道……と、とにかく何でもこいだ。これらを見て、そしてそれらについて考えるのは楽しい。

このイベントが特別なのは、それに関わる人間の存在が大きい。選手、レースのスタッフ、ボランティアたちが、皆アウトドアやランニング、そしてこのレースへの情熱を分かち合っている。出会ったすべての人びとが信じられないほどの寛大さで僕を迎え入れてくれ、そして熱意にあふれていた。どんなランナーにもこのイベントを100%お勧めする。精鋭集団にはサポートや素晴らしいPRの機会と賞金が、またその他の選手にとっても一流の経験と価値が得られるだろう。活動的そして冒険的に素晴らしい文化を味わえる良い方法だ。とにかく行ってみてほしい。僕自身も次の機会が待ちきれない。

七転び八起き:信越五岳トレイルランニングレース2012のあとで

Photo: Justin Angle

ロスト・イン・トランスレーション

ありがちなタイトルかもしれないが、僕の体験はまさしくそうだった。7月初旬、ジョシュとフジから弘樹のレースである信越五岳への誘いをもらったとき、僕はそのチャンスに飛びついた。パタゴニアの代表として、そして外国で新しい文化を味わいながらのレースは考えるまでもない。しかし、それは他の物事から隔離して考えたときにだけ簡単な判断だった。今年僕が学んだことがあるなら、それは何事も他の物事と隔離して判断すべきではないということ。人生とは、決断、行動、結果、そしてさまざまな機会が相互に繋がりあった複雑なシステムである。若いころは簡単にこのシステムを管理できたが、人生の方程式にはたくさんの変数が加えられ、解読もむずかしくなってきた。そしてこの現実を悪化させるべく障害を耐え抜く能力も、歳を重ねるごとに低下してきているようだ。これはただたんに「歳をとった」という文句をまわりくどく表現しているわけではない。どちらかというと、自分の限界を感じはじめているという自白、あるいは告白に近い。

随分前からこのことには気づいているべきだった。2011年以降、僕の人生においてのストレスレベルは上昇しつづけ、冬には頂点に達していた。半年のあいだにモンタナ州への転居を決め、シャーロットが産まれ、妻のマギーの父とマクマホンを亡くし、2つの不動産の取引、そして論文発表。おそらくストレスによって勢いを得て完走したチャカナットによって、僕はあたかも自分が体力を増進していると勘違いしてしまった。そしてその神話は、スクワック・マウンテン・50Kのトレイルランニングで、コース記録更新で優勝したことで確証されてしまった。耳を傾けるべきだったのは、サン・マウンテン・50Kでの最後の16キロを走っているときの自分の心だった。自己記録で2位でフィニッシュしたのだが、エネルギーは枯渇し、無気力だった。それは僕にとっては珍しい、ひどい感覚だった。あのときの感覚から何かを学ぶべきだった。

その時点で、エンジェルス・クレスト(AC)はやめるべきだった。なのに、僕は何としてでも参加しただけでなく、スコットとジェニーの結婚式に出席するおざなりの試みまで犯してしまった。家族と友人を犠牲にしたACは散々な結果だった。

ACの後の週末、モンタナ州ミズーラへ引っ越した。さまざまな意味においてシステムをリセットしたような気がした。雰囲気のいい街のなかに素晴らしい家をもち、気に入っているモンタナ州立大学での教授職。すべがうまくいっていた。しかしモンタナへ移ってから、僕には元気がなかった。セスと一緒に長距離を走ることで何とかごまかそうとしたが、苦戦していた。32キロのトレーニングが80キロレースのように感じられるべきではない。

そして山火事に見舞われ、それとともに煙に悩まされた。9月1日以来、ミズーラの空気の質は健康を害するレベルにまで低下していた。走ったあとは皆が喉の痛みや目の不快感、吐き気に襲われた。それでも、僕はバカみたいに煙のなかを走りつづけた。

日本への旅が近づくと、僕たちはマギーと娘たち(2歳半のエインズリー、9か月のシャーロット)を煙から脱出させることにした。シアトルまで飛行機で移動する代わりに、成田へ旅立つ前日、家族を乗せてシアトルまで車を走らせた。きれいな空気のなかで眠れることを考えて8時間の移動時間を正当化した……ACのレースのときに標高の高いコロラド州ボルダーでの数日が役立つのと同じように。まぁ、結局は中毒者的な考えなのだが。

日本へのフライトについてはどうしようもない。最大の誤りはレースの前日に到着したこと。しかし他にスケジュールの余裕はなかった。人生の方程式はレジャーや適応、ましてや休憩の時間を、変数として考慮してはくれない。レースに熱意を抱くために何とか自分をごまかした。それはこのイベントに関わる素晴らしい団体とファンファーレのおかげで簡単だった。しかし、森のなかで1人になると、真実が顔を表した。体の真まで疲れ切っていた。16キロが80キロに感じ、32キロを過ぎると、まるで130キロを走ったかのようにふらついていた。いつもの調子ではない。何とか頑張ろうとしたが、エネルギーは空になっていた。48キロを過ぎると、すべてのシステムが機能しなくなってきた。足は痙攣し、腰は固まり、内蔵は爆発していた。結局、僕は足を止めた。ACでそうしたように。腹を立てる気力すらなかった。そこに居るべきではなかった…。

そしてまた帰途までの長い道のりがはじまった。鎌倉まで車で7時間、成田まで電車をいくつか乗り換え、シアトルまで眠れない長いフライト。それからマギーと娘たちと軽い昼食をし、次の日の授業に間に合うよう、ミズーラへまで車を走らせた。(結局、家族とは食事をしただけだ。ミズーラでは空気の質の悪さがつづいていたため、シアトルに残していくことにした。)それから1週間が経ち、僕はやっと穴蔵から這い出てきた。

さぁ、リセットして平静さを取り戻すときだ。それには少し時間がかかるかもしれないが…。

信越五岳レースにチャレンジできたことを心から光栄に思う。パタゴニアとパタゴニア日本支社に感謝。そして僕のこのクレイジーな旅をサポートしてくれたホシ、ジロー、タカ、セイジ、ケンジ、フジ、僕の家族、そして新しい大学に心からお礼を言いたい。

七転び八起きーー何度失敗しても、諦めずに立ち上がろう

七転び八起き:信越五岳トレイルランニングレース2012のあとで

Photo: Justin Angle

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この記事はジャスティン・アングルのブログの9月26日の投稿記事を翻訳/転載したものです。

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