日本を漕いだ夏
旅は、偏見、独善、心の狭さにとって、致命的なものである
– マーク・トウェイン
今年の夏は約20年ぶりに日本で過ごした。南は西表島から北は北海道オホーツクまでいろいろな場所を訪れ、たくさんの素敵な出会いと忘れられない思い出ができた。情報に溢れ、どこにいても同じものが手に入り、同じものが食べられる生活は、便利で物質的には豊かではあるが、季節感やその土地ならではの文化やしきたりの素晴らしさを感じることが減りつつあるように思う。心の安らぎや充足感を与えてくれる小さな発見は、本当の意味での豊かな生活に、とても大事な要素なのではないかと各地を旅して感じた。小さな発見、どこにでもある感動を通り過ぎることのないよう、心と眼をしっかり開いて暮らしていきたいと心に留めながら、そんな旅を通して見つけたものを紹介しよう。
いろいろな場所を旅したこの夏、何より印象に残っているのは自然に寄り添いながら情熱をもって生きている人たち。それがサーフィンであろうと、自分の子どもやふるさとを守ることであろうと、芸術作品であろうと、新しい挑戦であろうと、やはり一生懸命取り組んでいる姿は人の心に訴える。大げさな旅をする必要はなく、自分の町でも普段行かないところに出かけてみて新鮮な発見があることも多い。そんな発見がこの地球で自然とともに生きていることを感じさせてくれたり、毎日が奇跡の連続でいまの自分がいることを感じたりすることができれば、旅はそれで十分素晴らしい。
旅は日常からはなれることで普段当たり前に思っていること、気に留めていなかったことを気づかせてくれる。日本のあちこちに学ぶべき、そして受け継ぐべき自然や智慧がたくさんある。もっと地球人としての責任をもった生活、シンプルかつ内面的な豊かさを大事にしたい。この夏はそんな気持ちで日本国内を旅させてもらった。