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日本を漕いだ夏

岡崎 友子  /  2012年11月1日  /  読み終えるまで3分  /  サーフィン

八重山諸島は私の大好きな場所のひとつ。何度訪れても新しい挑戦や刺激が待ち受けている。今回は黒島から石垣までスタンドアップで渡ろうという企画だったが、残念ながら腰を痛めて応援のみ。こんなことが気軽にできる環境と仲間の層の厚さが南西諸島の素晴らしさ。〈アイランドクラブ〉 写真:岡崎 友子

旅は、偏見、独善、心の狭さにとって、致命的なものである 
– マーク・トウェイン

日本を漕いだ夏

八重山諸島の一部で生息しているサガリバナはマングローブの一種。夜に花を咲かせ、朝にはその花はぽとりと落ちてしまう。むっとするほどの甘い香りは人が花を目にしなくてもその存在を主張し、花火のような形は一瞬光り輝いてぽとりと落ちる花の命を象徴しているかのよう。落ちた花が次々とゆったり下流へと流れるなか、マングローブで覆い尽くされたジャングルを漕いですすんだ。〈西表島ウオーターマン〉写真:北島 清隆

今年の夏は約20年ぶりに日本で過ごした。南は西表島から北は北海道オホーツクまでいろいろな場所を訪れ、たくさんの素敵な出会いと忘れられない思い出ができた。情報に溢れ、どこにいても同じものが手に入り、同じものが食べられる生活は、便利で物質的には豊かではあるが、季節感やその土地ならではの文化やしきたりの素晴らしさを感じることが減りつつあるように思う。心の安らぎや充足感を与えてくれる小さな発見は、本当の意味での豊かな生活に、とても大事な要素なのではないかと各地を旅して感じた。小さな発見、どこにでもある感動を通り過ぎることのないよう、心と眼をしっかり開いて暮らしていきたいと心に留めながら、そんな旅を通して見つけたものを紹介しよう。

日本を漕いだ夏

八重山諸島は私の大好きな場所のひとつ。何度訪れても新しい挑戦や刺激が待ち受けている。今回は黒島から石垣までスタンドアップで渡ろうという企画だったが、残念ながら腰を痛めて応援のみ。こんなことが気軽にできる環境と仲間の層の厚さが南西諸島の素晴らしさ。〈アイランドクラブ〉写真:岡崎 友子

日本を漕いだ夏

琵琶湖に浮かぶ沖ノ島まで友人に連れられて漕いで渡った。陸路からは行けない神社や海苔の養殖、琵琶鱒の漁をしている船を横目にたどり着いた島は、いい意味で時代に取り残された、時間が止まっているかのような佇まい。船で何かが届くと町内にアナウンスが入り、運ぶのを手伝える人を募って、みんなが集まってくる。木造の小学校、小さな畑や港、蛍光灯や五右衛門風呂、土間や引き戸のある家、桟橋から水に飛び込んで遊ぶ子供たち、昔は当たり前にあったものがとても新鮮に見えたことがちょっと寂しく感じたりもした。〈沖の島ツアーPUKAPUKA〉写真:白井 和夫

日本を漕いだ夏

めったに立たない鎌倉の台風ウェイブ。自分の生まれ育ったところ、それも普段あまり波が立たないところで良い波に当たることは格段うれしい。混雑する前にと朝4時に家を出て15分ほどパドルアウトしたころ、やっと波が見えるくらいの明るさになって、ぼんやりとピンク色に浮かび上がる富士山の美しさ。昔からここで波に乗るレジェンドたちのサーフィンを見ながら、私もその歳になったら好きな波に乗らせてもらえるよう、それまでがんばって体力とモチベーションをキープしようと決心した。写真:岡崎 友子

日本を漕いだ夏
日本を漕いだ夏

オーストラリアから来日していたベリンダ・バグスと夫のアダム、そして息子のレイソンとともに四国へ。普段はローカル色が強く、波がいいとよそ者が入れるような雰囲気のない「キング・オブ・リバーマウス」と呼ばれる河口ポイントでは、8~10フィートほどの巨大なうねりがコーデュロイのように押し寄せていた。サーファーはひとりもおらず、ぐちゃぐちゃのクローズアウト。かなり危険な様相にも関わらず、この波に挑まずに帰ったら一生後悔するとアダムがローカルに許可をもらって5’2”のフィッシュでパドルアウト。凶暴な牙を剥くショアブレイクをすり抜けラインナップまで出たが、テイクオフすると板が短すぎて全然おりていかない。それでも何本かむりやり波に乗って、ものすごいクローズアウトに巻かれながらビーチに生還。戻ってきた彼がポケットの中から5円玉を見せて、「5円というのはご縁のお守りとして使えるよって教えてくれただろう。だからこの河口の波と今後もご縁があるようにって、これを身につけて海に入ったんだ」と話してくれた。きっと次に来たときは完璧なチューブで迎えてもらえるだろう。写真:岡崎 友子

日本を漕いだ夏

写真:中牟田シーサー知美

日本を漕いだ夏

日本のサーフィンのラストフロンティアである北海道。ニセコの滑り仲間はみんな真冬でもサーフィンに出かける。道具が変わるだけで山でも海でもつねに波に乗っている。友人たちの情報や天気図とにらめっこしていろんな場所へ移動しながらのサーフトリップは、予想以上に行く先々で良い波にあたり、仲間と夢を語り、思い出話に笑い、朝日と夕日と星空と波の音に感謝する毎日だった。ある美しい海では、過疎化が進む地元をなんとか活性化させようとしている元気な若者に出会った。世界を旅してふるさとに戻ってきた彼は、世界有数のランドスケープとこんなに美しい海があるのにそれがうまく使えてない、もっとこの美しさを知ってもらい地元でみんなが生活できるように活性化させたいということで、流木や廃材をうまく利用してすてきな海の家を造っていた。写真:岡崎 友子

いろいろな場所を旅したこの夏、何より印象に残っているのは自然に寄り添いながら情熱をもって生きている人たち。それがサーフィンであろうと、自分の子どもやふるさとを守ることであろうと、芸術作品であろうと、新しい挑戦であろうと、やはり一生懸命取り組んでいる姿は人の心に訴える。大げさな旅をする必要はなく、自分の町でも普段行かないところに出かけてみて新鮮な発見があることも多い。そんな発見がこの地球で自然とともに生きていることを感じさせてくれたり、毎日が奇跡の連続でいまの自分がいることを感じたりすることができれば、旅はそれで十分素晴らしい。

旅は日常からはなれることで普段当たり前に思っていること、気に留めていなかったことを気づかせてくれる。日本のあちこちに学ぶべき、そして受け継ぐべき自然や智慧がたくさんある。もっと地球人としての責任をもった生活、シンプルかつ内面的な豊かさを大事にしたい。この夏はそんな気持ちで日本国内を旅させてもらった。

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