コモンスレッズ × PASS THE BATON
1999年からスープの専門店「Soup Stock Tokyo」を経営してきた私たちが、東京・丸の内に物販店の出店を持ちかけられたのが2008年。これまでとは異なる業態についていろいろと模索しましたが、どれもしっくりこない。新しく何かを作って手に余らせることにどこか違和感を覚えたのです。そしてすでに世の中には魅力的なものはたくさんあって、ひとりひとり個人にはその歴史や経験や文化、そしてセンスがある。だからそれらを交換するだけで十分に素敵な世界が成り立つと考えた私たちは、都内の一等地でリサイクルショップ「PASS THE BATON」(以下PTB)をはじめることにしました。ちょっと抽象的なイメージですが、「モノが集まるところが赤く光る地球儀があれば、東京は世界で最も赤く光っている場所。その赤い光を地球上に薄くピンクに延ばしていきたい」 PTBの薄いピンクのブランドカラーはそんなところからきています。
PTBのテーマである「NEW RECYCLE」には3つの切り口があります。本来の在り方に一考を加え、古着やデッドストック品やB品などに新しい価値を吹き込み「REMAKE」するもの、一度舞台から降りたけれど本来の魅力を失っていない品物に光をあてる「RELIGHT」。そして、好きだけれどもう使わなくなってしまったものに歴史とストーリーを添えて販売する「RECYCLE」は、個人のセンスで見出された品物の魅力とそれを使っていた人物の人となりを知ることができるよう、出品者がメンバー登録をするのが特徴です。オンラインショップではこれらの情報をじっくりと閲覧、購入でき、店舗では実際に商品を手に取って購入することができます。出品する際に名前とプロフィールと写真、そしてそのモノのストーリーを添えてもらい、購入されたお客さまには「こんな風に使ってます」などフィードバックをいただく仕組みです。古くて価値が逓減していると言われかねないモノを、そのストーリーなどによって、たったひとつだけの魅力的な存在に価値を昇華させるキラメク瞬間を私たちは大事にしています。
そして2012年12月、PTBはパタゴニアのコモンスレッズ・イニシアティブのパートナーとなり、パタゴニアがお客様から回収した製品を再度原料としてリサイクルする前に、私たちが衣料品のまま再販する取り組みをはじめることになりました。
じつはパタゴニアとの出会いは21年前の1992年。新婚旅行でカナダを訪れた私ははじめてトレッキングにチャレンジしました。眼下に小さくなったレイクルイーズを眺めたとき、山登りというものにはまりました。そしてそこで買ったフリースのパンツがパタゴニア製だったのです。パンツはいまでも第一線で活躍しており、愛用のデイパックは修理をして出張にも同行しています。
話を元に戻しますが、パタゴニアの倉庫を訪れたとき、お客様からお店に届いた製品がダンボールのなかにきれいに畳まれているのを見つけて、とても感動しました。スノーボードが流行っていたころのオーバーサイズのプルオーバーやネイティブ柄のフリースやカラフルなキッズ製品、妻も持っていた黒のオーバーオールなどなど、どれも魅力を備えたパタゴニアたち。30年の歴史や流れ、変わらないものと変わったものなど、アーカイブともいえるものたち。いまやお金を出しても手に入らない、まさに昔のスクラップブックを見ているようでした。
さらにパタゴニア製品をリメイクするプロジェクトも進んでいます。私たちがリメイクの開発をするときに社内で話しているのは「現行品を越える」こと。「リサイクルやリメイクだからこの程度でいいや」ということではなく「現行品よりもさらに魅力的になるように」と心がけています。具体的な内容についてはもう少ししたらお伝えできると思います。
2012年12月15日PASS THE BATON表参道に最初のパタゴニア製品が並んでからまだ2か月弱。パタゴニア社との取り組みははじまったばかりですが、これからも無駄のない、そして面白くて魅力的なものを提案していきたいと思います。