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絶賛したい2つの新製品:M10ジャケット&ナイフブレード・パンツ

コリン・ヘイリー  /  2013年4月30日  /  読み終えるまで11分  /  クライミング

今回のブログはかっこいいクライミングストーリーや写真はナシ。僕のようなギアオタクにだけ興味のある内容だ。改良されたM10ジャケットと新しいナイフブレード・パンツの2つの新製品を紹介しようと思う。パタゴニアから投稿を依頼されたわけではない。実際書きながらも、パタゴニアのブログサイトにアップしてくれるのかさえ分からないぐらいだ。[編集後記:ナイフブレード・パンツは2013年秋冬シーズンに発売予定です。]

今回投稿しようと思った動機は単純かつ利己的なものだ。パタゴニアのアルパイン製品はまったく最高の製品なのに、売上が伸びないがため、市場に出てたった1年後には生産中止になることがよくある。いまでは大切な定番商品となったR1フーディが、かつて生産中止となったのがいい例だ。今シーズン、僕はこの新しいM10ジャケットとナイフブレード・パンツをパタゴニアでのほぼすべての登攀で使用し、それらがいままで僕が手にしたなかで最高のアルパインジャケットとパンツであることを確信した。そして心配になった。これらの製品の売上が伸びず、また生産中止になってしまうのではないかと。皮肉なことではないか。だから、ただ単になぜ僕がこの2つの製品を絶賛するのかを説明したいんだ。そしてこれから長年にわたってオーダーできることを期待して。

製品広告には疑いの目が向けられることがよくあることは僕も知っている。その理由はもちろん正当だ。だが僕のこれらの新製品に対する推薦は100%正直なものであり、もし依頼されたとしても、実際に気に入らない製品の宣伝には関わらないと断言する。そしてたとえ本当に気に入った製品でも、エンカプシル・ダウン・パーカのように100%自信をもって書けるほど十分に使用していない製品に関しては、証言広告はしない。

さて、肝心の新製品についてだ。

 

新しいM10ジャケット

M10ジャケットは、もともとは数年前にデビューした超軽量のハードシェル・ジャケット。最初のバージョンは理想に近い製品だった。最小限の重量、防風性、防水性、シンプル、そしてクライミングに適したカット。しかしそのバージョンの機能には、少々の欠点もあった。ハイエンドのアルパインシェルにはあるべきでないピットジッパーがあり、ポケットは使いにくかった。

なぜピットジッパーが不要なのか? それは利点がないうえ、かさばりと重量を加えるだけだからだ。ピットジッパーが役立つ唯一のシナリオとして思いつくのは、無風のなか、冷たい雨が降る森をゆっくりとハイキングしているとき。だがクライミング用のジャケットには必要ない。まず、換気を目的とするのであれば、脇の下のピットジッパーよりフロントジッパーを開ける方が、よっぽど効率よく熱を逃がすことができる。次に、アルパインクライミングでは風が吹いていることが多く、雪煙もよく発生し、しかも腕は頭より高い位置にあるため、雨が降っているときにピットジッパーを開けることは不可能だからだ。最後に、ハイキングと違って、雨のなかでやり易いクライミングはない(雪なら話は別だが)。雨が降っていれば懸垂下降しているか、ハイクアウトをしている。その場合、ジャケットのジッパーが閉まっていて多少汗をかいているからといって、誰がそんなことを気にするだろう? ほとんどのデザイナーはアルパイン用のシェルジャケットにピットジッパーは役に立たないことを知っている。それでもピットジッパーが採用されるのは、そうしないと売れないことを販売統計が表しているからだ。

だから、ピットジッパーのおかげでオリジナルのM10には不要な重量とかさばりがあった。しかも軽量化のため、そのピットジッパーがポケットと合体していた。その結果、ポケットは使いにくい位置に付けられ、アクセスが悪く、開け閉めするのに両方の手が必要だった。

新M10ジャケットは、当初の夢を叶えたものになった。超軽量の悪天候完全対応のハードシェルに、この欠点が改良されているのだ。ピットジッパーを取り除くことによりオリジナルよりさらに軽量になった。新M10のポケットは左胸のネオプレン式のみだが、必要なのは結局それだけだ。胸の高い位置にあるポケットは、ハンドウォーマーポケットよりもはるかに優れている。その理由の1つは、ハンドウォーマーポケットはハーネスの邪魔になる。2つ目は、ハンドウォーマーポケットの重みは行動中にジャケットを揺さぶってしまうが、同じ重さが胸の位置にあればずっと安定感がある。

新M10の軽量さを考えると、その耐久性には驚かされる。パタゴニアでの今シーズンは天候に恵まれた。その4か月半のあいだ、フーディニ・ジャケットを唯一のシェルとして持参した3度の登攀以外、すべてに新M10を使用した。超粗い花崗岩では、それはかなりの摩耗だ。しかし、新M10が耐久性のあるジャケットといっているわけではない。平均的なハードシェル・ジャケットと比べれば、M10の耐久性は劣っていることは間違いない。しかしそれがいいんだ。それほどの耐久性があったら、僕は気に入ってはいないだろう。

軽量さと耐久性は単純なトレードオフだ。僕はいつも軽量で、そして高い機能性を選ぶ。アルパインクライミングに最適なウェアはつねに軽量なそれで、より耐久性のあるものでは、決してない。無料でもらえるジャケットであればそれは簡単な選択だと笑う人もいるだろう。しかしこれは無料でクライミング用のウェアやギアをもらうずっと前からの選択なのだ。アルパインクライミングへの情熱は僕の人生で最も大切なものであり、僕はかなりのギアオタクだ。だから最も高性能のギアを使うことは僕にとって意味あることなのだ。

陳腐な言いまわしかもしれないが、新しいM10ジャケットは完璧である。僕の意見では、いままで使ったハードシェルのなかで最も優れたジャケットだ。

 

ナイフブレード・パンツ

アルパインクライミングのキャリアのほとんどでハードシェル・パンツを使ってきたが、僕がはじめたころはそれが標準だった。その後数年間、いくつかの利点があるソフトシェルパンツに切り替えた。そしてタゴニアの2011–12年シーズンにふたたびハードシェルに戻った。どちらのシステムにもいくつかの欠点はあった。ソフトシェルは重いし、防水性もなく、強風は突き抜けてしまう。ハードシェルは通気性に劣り、カットが完璧でないかぎり動作が妨げられ、クランポンで簡単に切ってしまう。

2010年の秋、パタゴニアのデザイン会議に参加したとき、ナイフブレード・プルオーバーのサンプルを目にした。いいジャケットだったが、本当に興奮したのは、僕がデザイナーにした提案だった。「これでパンツをつくるべきじゃないかな?」 ちなみに、素材はポーラテック・パワー・シールド・プロ。2年後、ナイフブレード・パンツは形となった。僕はサンプルをもらい、今シーズン、パタゴニアで行ったすべての登攀に使用した。同じブログに2度も陳腐な言いまわしを使って申し訳ないが、これはアルパインクライミングで僕が使用したパンツのなかで最高の製品である。

ナイフブレード・パンツは要するに、ハードシェルとソフトシェルのすべての利点を兼ね備えている。ソフトシェルとは違って完璧に風を防ぎ、防水性についてはおそらく「宣伝」こそできないとしても、雪解けのスロープを尻セードしても実際に水分が浸透してくることはなかった。そしてハードシェルとは違って柔軟で動きもよく、クランポンをぞんざいに使ってもかなり丈夫。超軽量のM10パンツ(1年で生産中止になってしまった…)ほど軽量ではないが、ナイフブレード・パンツはソフトシェルのガイド・パンツよりかなり軽量だ。

幸運にも、ナイフブレード・パンツはフルレングスのサイドジッパーのかわりに、両サイドに短いジッパーがあるため、ハーネスをつけたままでトイレができる。ピットジッパー同様、サイドジッパーは利点がないのに重量とかさばりを加えるだけ。サイドにジッパーがあっても、クライミングではハーネスのおかげでパンツの脱ぎ着ができない。サスペンダーは少々うっとおしかったりするので、サスペンダーなしのバージョンを試してみたいとも思う。しかし総合的に考えて、デザイナーはいい判断をしたと思う。サスペンダーのついたローカットのビブにすることで、ハーネスのウエストベルトの下のかさばりを抑え、強風のコンディションでは防風性を発揮することができるのだから。

不思議に思う人もいるかもしれない。「ナイフブレード・パンツがソフトシェルとハードシェルの利点を兼ね備えているのなら、なぜナイフブレード・プルオーバーと一緒に使わないのか?」と。その主たる理由は、M10ジャケットはナイフブレード・プルオーバーと比べてずっと軽量だからである。ボトムに関していえば、パンツはジャケットよりも摩擦を受けるため、ナイフブレード・パンツの方が重宝する(たとえばM10パンツはすぐに使い古してしまった)。またクライミング用のハーネスを着用するため、パンツは1日中履いていることになる。そのため、ポーラテック・パワー・シールド・プロに備わっている通気性が重要になるのだ。逆にジャケットは気候によって脱ぎ着ができるので、通気性よりも軽量性を重視したM10ジャケットの方がより道理にかなう。

酷使の度合いと、僕のウェアのシステム

絶賛したい2つの新製品:M10ジャケット&ナイフブレード・パンツ
絶賛したい2つの新製品:M10ジャケット&ナイフブレード・パンツ

これらは今シーズン、パタゴニアで使用したM10ジャケットとナイフブレード・パンツの写真だ。エル・チャルテンの僕のアパートを出発する前に撮った。もちろん多少の修理の跡はあるが、まだ十分使える状態。参考までにどのくらい使用したか、その登攀リストをつけよう。

セロ・ソロ、Insomniaルート
セロ・トーレ、Ragniルート
アグハ・ギジョーメ、Comesaña-Fonrougeルート
アグハ・ギジョーメ、Guillot-Conqueugniotルート
コル・デ・ソンニ、Toboganルート
セロ・トーレ、Ragniルート
トーレ・エガー、Venas Azulesルート(山頂から2ピッチのところで撤退)
セロ・スタンダルト、Festervilleルート
フィッツ・ロイ、ノースピラー
セロ・トーレ、Corkscrewルート
フィッツ・ロイ、Californiaルート
アグハ・メルモーズ、レッド・ピラー
セロ・モホン・ロホ西壁
エル・モチョ東壁
アグハ・ビフィダ北東壁(2/3のところで撤退)
セロ・アデラ南稜
セロ・エル・ナト北稜
セロ・エル・ドブラード北稜
セロ・グランデ北稜

最後に、皆、トータルのウェアシステムに興味をもつだろうと思うので、僕の意見をシェアする。今シーズンの僕のシステムは完璧だと思ったから。

 

ボトム
–キャプリーン2・ボクサー・ブリーフ
キャプリーン4・ボトム
–ナイフブレード・パンツ[2013年秋冬製品]

トップ
キャプリーン2・ライトウェイト・クルー
–キャプリーン4・バラクラバ(いままで使ったなかで最高だった)[2013年秋冬製品]
ピトン・ハイブリッド・フーディ(R1フーディよりも軽く、防風性も高い)
ナノ・パフ・ベスト(ほとんど重さを感じない軽さに加えて、素晴らしい保温性があり、クライミング中に腕の動きを妨げない)
M10ジャケット
–目的、気温、天候によって、以下の製品:ナノ・パフ・プルオーバーダウン・セーター・フルジップ・フーディ/フィッツ・ロイ・ダウン・パーカ/エンカプシル・ダウン・ビレイ・パーカ

 

パタゴニア・アンバサダーのコリン・ヘイリーは、険しいカスケード山脈でハイキングやスキー、クライミングをして育ち、山での冒険に対する情熱と悪天候にくじけない精神を培った。彼は最も切り立った岩壁に魅了され、アラスカとパタゴニアの山々でのクライミングに熱中している。コリンの近況は彼の素晴らしいブログ、Skagit Alpinismをご覧ください。

M10ジャケット:パタゴニア from Patagonia Japan on Vimeo.

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