パタゴニア・ブックス最新刊『Climbing Fitz Roy, 1968』:失われた第3登の写真についての覚書 イヴォン・シュイナード他著
時代の転換期にあったこの年、歴史的な大ロードトリップに出た3人のロッククライマーと1人のスキーヤー、そして1人の映像製作者。カリフォルニア州ベンチュラのビーチ沿いの掘っ立て小屋から出発し、パタゴニアのセロ・トーレの麓を目指して、道がなくなるまで約1万3千キロの距離を旅したこの6か月の冒険は、カルト的クラシックとなる2つの映画(『Mountain of Storms』と『180°South』)を生み出すとともに、同地を名祖とする企業と、歴史的な登攀を築くことになりました。取り憑かれるほどパワフルな登攀時の写真は火災で消失されたと思われ、長い間忘れ去られていたコレクションです。ストーリーは5人の参加者の回想によって綴られました。
以下はダグ・トンプキンスによる『責任のない大冒険』からの抜粋です。
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45 年近くも前のことを正確に思い出すのは容易ではない。いまでは「伝説的」と呼ばれる1968 年の「飽くなき冒険者たち」のパタゴニア紀行のことだ。多くの伝説が物語に織り込まれ、記憶の端々は曖昧になり、逸話が語られて飾りつけられて、もとのストーリーはいつの間にかある種の壮大な冒険ドラマになっていた。だから本当に起こったことだけを語ろうとすると、読者をがっかりさせるかもしれない。
もちろん、幻滅させるだろう。まるでピクニックの最中に降り出す雨のように。だが私たちは間違いなく、自分たちが思っていたような向う見ずな冒険家ではなかった。私たちは南極探検で知られるシャクルトンやナイル川源流を探ったバートンではなかった。私たちは5 人のダートバッグ・クライマーだった。きちんとした真面目な仕事につくことを避け、妻やガールフレンドを置き去りにし、おんぼろのバンにサーフボードやスキーや登山用具を積み込んで、神のみぞ知るような何かを求めて中南米の陸路を延々と旅をする。その旅は、簡潔にいえば、産業社会の戦力になるという現実を避けるため、そして私たちの全員が中毒になっていた絶え間ないアドレナリンの分泌と登頂時の達成感をいつまでも持続するための手段だった。
私たちはケルアックの『路上』に描かれているような、山あり海ありの放浪の長旅にふけるたんなる小さなグループにすぎなかった。そしてあらゆる見せかけの言い訳をしながら、これは人生の真の意義とは何かを追求するための旅なのだと主張していた。何か重要なことをしているのだという、独善的な弁明に酔いしれていただけだと認めざるを得ない。なぜなら実際には、社会や環境の価値に関わるような言動はできるだけ避けるように生きていたのだから。だがそんな私たちにも賛同できる正当な信念がひとつあった。全員がベトナム戦争に反対していた。
それで1968 年の半ば、私は妻のスージーと幼い娘たちに別れのキスをして、仲間たちとの旅に出発した。旅のはじめは、私がかつてメキシコへサーフィン旅行をしたときと同じルートをたどった。見覚えのあるビーチでサーフィンしながら南下をつづけ、やがてメキシコ国境を越えると、まったく新しい領域に突入した。
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続きをぜひ本書でお読みください。
パタゴニア・ブックス刊『Climbing Fitz Roy, 1968』:失われた第3登の写真についての覚書は、全国のパタゴニア直営店(サーフ東京除く)およびオンラインショップでお求めいただけます。初版の限定500冊には、この冒険から生まれた映画『Mountain of Storms』のDVD付きです。またこの旅に触発されたクリス・マロイとジェフ・ジョンソンの旅の物語を記録した『180°South』もぜひ合わせてどうぞ。DVDも発売中です。
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