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パタゴニアの登攀シーズン、再び

コリン・ヘイリー  /  2014年1月17日  /  読み終えるまで7分  /  クライミング

アグハ・デスモチャーダを前景にトーレを臨む。Photo: Colin Haley

パタゴニアの登攀シーズン、再び

アグハ・デスモチャーダを前景にトーレを臨む。Photo: Colin Haley

「じゃあ、また南で会おうぜ、くそったれども!」と書くのは、巨漢で大酒飲みでパーティーが大好きなノルウェー人のオール・リート。彼は暗い色のスカンジナビア製レザーに身をまとい、口にスヌース(北ヨーロッパで人気の袋入りの噛みタバコ)を頬ばり、ときどき怒りに荒れ狂いながら大きく険しい山を攻め、美しいトロフィー(トーレ・エガーの「Venas Azules」など)を手に帰還する。毎年11月、僕はオールやその他のノルウェーのアルピニスト、そして他のパタゴニアック全員をアルゼンチンのエル・チャルテンに招集する。地球上で最もテクニカルで最も素晴らしく、強烈かつ最高に楽しいアルパインクライミングができる、パタゴニアのチャルテン山群に向かうのだ。

編集者記:コリンはエル・チャルテンへ出発する前にこの記事を書いてくれました。彼はすでに現地で3週間を過ごし、いくつかの登攀を達成しています。コリン、マイキー・シェイファーケイト・ラザフォードなどパタゴニア・アンバサダーとその仲間たちのパタゴニアでの活動についての最新情報は、#VidaPatagonia ライブアップデートをご覧ください。彼らのInstagram、Twitter、ブログの投稿などをシーズン通してお届けします。

ワシントン州ほどの人口しかないノルウェーがなぜパタゴニアのアルピニズムにおいてこれだけの存在感を放つのだろう。パタゴニアの山は非常に困難で、天気はしばしば酷く、彼らには非活性のバイキングの血が確かに流れているというのに。けれど僕が思うに、その真実はオールや彼の同郷のクライマーの出身地にある。

ノルウェーのアルパインクライミングのコミュニティの中心地はロムスダレン。大きく険しい壁と6月末には19時間の日照時間を誇る美しい場所だ。秋分までには均整をとり、地球上の全員が同じ長さの昼夜を経験する。しかし秋分を境に状況は一転し(結局は日影曲線の導関数の絶対価の頂点、つまり9月後半の毎日は前日よりも目立って日照時間が少なくなる)、ロムスダレンでは11月の終わりには太陽は昇ってわずか7時間後に沈む。出発にはよい時期だ。ご先祖様のようにヨーロッパの町を荒し回るのではなく、ノルウェーのクライミング仲間たちはパタゴニアに向かい、氷の張り付いた花崗岩の岩峰を荒し回るのだ。

僕の故郷、サリッシュ・シー・ベースンは赤道からわずか5,400キロ地点に位置するにもかかわらず、減少してゆく秋の日照時間は辛いものがあり、それはまた一段と強い天候の変化を伴う。スコーミッシュとカスケード山脈では、北米で最もクライミングに適した天候である夏の3か月を堪能したあとにモンスーンが訪れる。太平洋岸北西部では秋は最悪の季節だ。日は短く、岩は濡れている。スキーにはまだ早い。冬期登攀にも早すぎる。だから離れるには最適な時期といえる。赤道をまたぐことは自然の母の怒りを買うことなく遊べる究極の技だ。過去8年間で僕は16回の夏至を祝った。

もちろん、日光を追いかけることだけがパタゴニア中毒になった理由ではない。世界中の山のなかでも岩の質は最高で、氷のルートも同様だ。山頂はこれ以上尖れないというほど尖っていて、容易なルートはない。壁は2,000メートルもあり、5級以下はほとんど皆無だ。それにくだらない入山料もない。リエゾンオフィサー(連絡官)も高度順応も不要。天気はといえば、そりゃかなり酷いときもあるけど、そうじゃなければ山は簡単すぎてしまう。下降も相当困難なこともある。僕は日の出から日没まで、一晩中懸垂したことも幾度とある。

パタゴニアの登攀シーズン、再び

アグハ・メルモーズの東壁を背景にアグハ・カキトを登るロランド・ガリボッティ。Photo: Colin Haley

パタゴニアの登攀シーズン、再び

トーレの日の出と虹。ポラコスのビバークから。Photo: Colin Haley

パタゴニアの登攀シーズン、再び

トーレ・エガー山頂付近のヨーグ・アッカーマン。Photo: Colin Haley

パタゴニアの登攀シーズン、再び

トーレを背景にアグハ・デスモチャーダの山頂のロランド・ガリボッティとドーテ・ピートロン。Photo: Colin Haley

パタゴニアの登攀シーズン、再び

アグハ・スタンダルトの「Tobogan」を登るジョン・ウォルシュ。Photo: Colin Haley

膨大な時間を山岳地形ですごす人間として、僕は気候と四季に強いつながりを抱く。僕にとって各シーズンはその雪のコンディションと関連し、行動やウェア、そして感情にもつながる。秋は足が地に着いたような落ち着いた感覚、徐々に冬眠してゆく感じだ。春はもっとエキサイティングで、よりオープンな気分でエネルギーに満ちている。秋は気が滅入り、春は気が晴れる。太平洋岸北西部の秋を後にし、パタゴニアの春に身を置くことはメタドンとメタンフェタミンを交換するようなものだ。

パタゴニア登攀の固定概念のひとつは、登攀時間よりも休息時間の方が長いということ。人々は何週間もの悪天候をマテ茶とおしゃべりで過ごし、数日の行動日があると想像する。しかし僕のパタゴニア体験はその逆だ。エル・チャルテンに着いた瞬間からそこを離れるときまで、僕は血眼になって走り回っている。パタゴニアでは「自由時間」なんてものはない。ハイキング、クライミング、懸垂下降、ボルダリング、スポーツクライミング、次の登攀のためのパッキング、ギアの乾燥、クランポンの研磨、カムの潤滑、燃料補給(つまり食事)、ウェアの修理、写真の研究、天気予報のチェック、食糧の買い出し、ストレッチ、睡眠のどれかをつねにやっている。僕らはどんな場所でも忙しくも暇にもしていられると思う。僕は忙しくしていることの方が好きなのだ。

パタゴニアの登攀シーズン、再び

セロ・アデラの日の出をセロ・トーレの西壁から拝む。Photo: Colin Haley

パタゴニアの登攀シーズン、再び

トーレ・エガーの「Venas Azules」に挑むジョン・ウォルシュ。Photo: Colin Haley

パタゴニアの登攀シーズン、再び

嵐の中、セロ・トーレの東壁を下降した長い夜のあと、日の出とともにニポニノのビバーク地に降りるジョン・ウォルシュ。Photo: Colin Haley

パタゴニアの登攀シーズン、再び

パタゴニアの南氷冠の雪洞でマテ茶を分け合うレオ、マックスとルチョ。Photo: Colin Haley

パタゴニアの登攀シーズン、再び

パタゴニアの南氷冠に雲が入り込む中、「スーパーカナレタ」の最終ピッチをビレイするディラン・ジョンソン。Photo: Colin Haley

今年は太平洋岸北西部の夏は長く続いたが、今日から雨期が訪れた。落ち着いてリラックスし、帽子をかぶってスキー板にワックスをかけるよう本能が教えてくれる。けれども僕はエル・カラファテまでの航空券を持っている。雨が降り、6時にはもう暗くなっているが、僕の身体はエネルギーでチクチクしている。何がやってくるのかが分かっているからだ。

過去何週間か、僕はパタゴニアに持っていくギアの山をゆっくりと蓄えてきた。ロープ、スリング、カラビナ、クランポン、ストッパー、グローブ。先延ばしにしてきたトレーニングの最後の悪あがきとして、険しく困難なクラックも探した。そしてもちろん、エル・チャルテンの天気予報のチェックもはじめた。秋はリラックスする季節だから、できるうちにそうした方がいいだろう。3か月半ぶっ通しの興奮がもうすぐやって来るのだから。

いよいよ、パタゴニアのシーズンが再びはじまろうとしている。深呼吸をして、信じがたい経験と酷使した身体を引きずって世界で最も美しい山々を登って降りる準備をしなければ。

パタゴニアからのライブ中継:パタゴニアのアンバサダーや仲間たちのInstagramやTwitter、ブログの投稿は#VidaPatagonia ライブアップデートまたは#vidapatagoniaタグでご覧いただけます。

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