クリーネストライン


 ネパールとチベットの国境から2時間ドライブしたところにあるニャラムの町は最初の高度順応登山に最適な拠点だった。悲しいことに、昔は手つかずの小さなチベットの村だったこの地は、いまや兵士と富を求める商人であふれたコンクリートの町と化していた。Photo: Marko Prezelj
ネパールとチベットの国境から2時間ドライブしたところにあるニャラムの町は最初の高度順応登山に最適な拠点だった。悲しいことに、昔は手つかずの小さなチベットの村だったこの地は、いまや兵士と富を求める商人であふれたコンクリートの町と化していた。Photo: Marko Prezelj

チベットの雪津波:スロベニアの若手アルピニスト育成のための遠征

By ルカ・クラインツ   |   2014/01/20 2014年1月20日
 ネパールとチベットの国境から2時間ドライブしたところにあるニャラムの町は最初の高度順応登山に最適な拠点だった。悲しいことに、昔は手つかずの小さなチベットの村だったこの地は、いまや兵士と富を求める商人であふれたコンクリートの町と化していた。Photo: Marko Prezelj
ネパールとチベットの国境から2時間ドライブしたところにあるニャラムの町は最初の高度順応登山に最適な拠点だった。悲しいことに、昔は手つかずの小さなチベットの村だったこの地は、いまや兵士と富を求める商人であふれたコンクリートの町と化していた。Photo: Marko Prezelj

長年にわたる議論の末、〈アルパイン・アソシエーション・オブ・スロベニア〉(旧称:スロベニア・アルパイン・クラブ)は、夢を抱き意欲に燃える若手アルピニストの目標達成に必要な経験を積むための支援プログラムを設置した。異なる性格と目標と志(そして肥大しつつあるエゴ)を持つ7人を指導するのは容易ではない。僕たちはリーダーを必要としていた。

マルコ・プレゼリは彼自身が強い性格で十分な経験を持ち、この仕事に適任であることを証明した。ヨーロッパでのいくつかの旅を通じて、彼は僕たちのグループを活発にし、強い絆をつくる手助けをしてくれた。そして9月、僕たちは記憶に残る瞬間と色鮮やかな経験を求めてチベットへと向かった。いま振り返ると、それは成功したと思う。

地元のチベット民族はいまも遠征チームやトレッキング・グループの食糧や装備をベースキャンプまで運ぶ援助をして生計を立てている。荷の重さに辟易した1頭のヤクが荷物を蹴り落としながら急な坂を駆け下りた。その結果、肉を入れた保冷箱が飛び散り、中身が坂道に散乱した。Photo: Marko Prezelj
地元のチベット民族はいまも遠征チームやトレッキング・グループの食糧や装備をベースキャンプまで運ぶ援助をして生計を立てている。荷の重さに辟易した1頭のヤクが荷物を蹴り落としながら急な坂を駆け下りた。その結果、肉を入れた保冷箱が飛び散り、中身が坂道に散乱した。Photo: Marko Prezelj
冗談半分にマルコが「凍った肉を急な坂で拾うことになるとは想像していたか?」と聞いた。僕は「ノー」と答えたが、チキンまで飛ぶことになろうとは想像していなかっただろう。Photo: Marko Prezelj
冗談半分にマルコが「凍った肉を急な坂で拾うことになるとは想像していたか?」と聞いた。僕は「ノー」と答えたが、チキンまで飛ぶことになろうとは想像していなかっただろう。Photo: Marko Prezelj
最初の夜は寒かった。地元の動物たちは僕らより寒冷な環境に順応していることは明らかだった。Photo: Marko Prezelj
最初の夜は寒かった。地元の動物たちは僕らより寒冷な環境に順応していることは明らかだった。Photo: Marko Prezelj
僕らの目標がはじめて姿を現す。Phola Gangchenと隣接する山々は僕らを驚かせた。グループのエネルギーは一変し、しばらく冗談もでなかった。皆の頭が何百万もの思考にうずまいている雰囲気が感じられた。Photo: Marko Prezelj
僕らの目標がはじめて姿を現す。Phola Gangchenと隣接する山々は僕らを驚かせた。グループのエネルギーは一変し、しばらく冗談もでなかった。皆の頭が何百万もの思考にうずまいている雰囲気が感じられた。Photo: Marko Prezelj
平らな草原にベースキャンプを設営。ここは登攀の開始点として最適な場所で、周囲の景色も素晴らしかった。Photo: Marko Prezelj
平らな草原にベースキャンプを設営。ここは登攀の開始点として最適な場所で、周囲の景色も素晴らしかった。Photo: Marko Prezelj
探究心が未知の地形へと僕らを導いた。Photo: Marko Prezelj
探究心が未知の地形へと僕らを導いた。Photo: Marko Prezelj
マルコ、2人のルカ、ネイツ、マーティンが尾根とスラブを辿る変化する岩の美しいラインを見つけた。Photo: Marko Prezelj
マルコ、2人のルカ、ネイツ、マーティンが尾根とスラブを辿る変化する岩の美しいラインを見つけた。Photo: Marko Prezelj
切り立ったセラックのバンドの下での快適なビバークのあと、雪の斜面を登るとアイス・ツースの頂点に出た。Photo: Marko Prezelj
切り立ったセラックのバンドの下での快適なビバークのあと、雪の斜面を登るとアイス・ツースの頂点に出た。Photo: Marko Prezelj
Phola Gangchen東壁へのアプローチの下見の前には、険しいモレーンのクリーニングの一日が待っていた。Photo: Marko Prezelj
Phola Gangchen東壁へのアプローチの下見の前には、険しいモレーンのクリーニングの一日が待っていた。Photo: Marko Prezelj
アプローチも創意工夫を要した。Photo: Marko Prezelj
アプローチも創意工夫を要した。Photo: Marko Prezelj
その先には崩壊した氷河があった。翌日、ルカ・リンディッチとマルコは永遠とも思える崩壊した氷の迷路に通過ルートを見つける偵察任務に再び出かけた。Photo: Marko Prezelj
その先には崩壊した氷河があった。翌日、ルカ・リンディッチとマルコは永遠とも思える崩壊した氷の迷路に通過ルートを見つける偵察任務に再び出かけた。Photo: Marko Prezelj
新たな降雪は任務をさらに困難にした。さらに1日の偵察ののち、彼らは台地への危険な出口を見つけてキャンプに戻ってきた。Photo: Marko Prezelj
新たな降雪は任務をさらに困難にした。さらに1日の偵察ののち、彼らは台地への危険な出口を見つけてキャンプに戻ってきた。Photo: Marko Prezelj
新たな降雪は任務をさらに困難にした。さらに1日の偵察ののち、彼らは台地への危険な出口を見つけてキャンプに戻ってきた。Photo: Marko Prezelj
新たな降雪は任務をさらに困難にした。さらに1日の偵察ののち、彼らは台地への危険な出口を見つけてキャンプに戻ってきた。Photo: Marko Prezelj
多種多様のアクティビティで身心ともに忙しかった。好天が訪れると、僕らは再び2つの目標を持つ3チームに分かれた。Photo: Marko Prezelj
多種多様のアクティビティで身心ともに忙しかった。好天が訪れると、僕らは再び2つの目標を持つ3チームに分かれた。Photo: Marko Prezelj
タデ・クリシェリと僕はアイガー・ピークの北壁に惹かれていた。早朝にスタートし前進しつづけたあと、天気が崩れ、大雪になった。僕らは下山を決定。雪の中、緊張しながら何時間も懸垂下降した。最後の懸垂で雪崩がタデを首まで埋め、ヤバい瞬間と強烈な経験が満載の1日に、さらにスパイスを加えた。Photo: Tadej Kriselj
タデ・クリシェリと僕はアイガー・ピークの北壁に惹かれていた。早朝にスタートし前進しつづけたあと、天気が崩れ、大雪になった。僕らは下山を決定。雪の中、緊張しながら何時間も懸垂下降した。最後の懸垂で雪崩がタデを首まで埋め、ヤバい瞬間と強烈な経験が満載の1日に、さらにスパイスを加えた。Photo: Tadej Kriselj
友人を掘りだし、次の雪崩があと数分待ってくれるよう願うことは、僕にさらなる力を与えた。じつのところは体が緊張に反応してアドレナリンを放出していたのだろう。そういった瞬間、僕らの生存本能はより強烈に感じられる。Photo: Luka Krajnc
友人を掘りだし、次の雪崩があと数分待ってくれるよう願うことは、僕にさらなる力を与えた。じつのところは体が緊張に反応してアドレナリンを放出していたのだろう。そういった瞬間、僕らの生存本能はより強烈に感じられる。Photo: Luka Krajnc
壁の下のテントで1日沈殿すると、外には1.5メートルの新雪が積もっていた。天気が回復する兆しはなく、濃い霧と安定感のない深い雪を1日中見つめていた僕は雪盲になり、僕らは氷河のど真ん中でさらにもう1日くぎ付けになった。Photo: Tadej Kriselj
壁の下のテントで1日沈殿すると、外には1.5メートルの新雪が積もっていた。天気が回復する兆しはなく、濃い霧と安定感のない深い雪を1日中見つめていた僕は雪盲になり、僕らは氷河のど真ん中でさらにもう1日くぎ付けになった。Photo: Tadej Kriselj
アドリブが肝心だ。7日目、僕らはベースキャンプに戻った。ぐったり疲れてはいたが、生きていることに感謝した。Photo: Luka Krajnc
アドリブが肝心だ。7日目、僕らはベースキャンプに戻った。ぐったり疲れてはいたが、生きていることに感謝した。Photo: Luka Krajnc
これと同じとき、マルコはルカ・リンディッチ、ネイツ・マルチッチ、マーティン・ジューマー、ルカ・ストラジャーとともにPhola Gangchenの北東稜へアプローチしていた。Photo: Marko Prezelj
これと同じとき、マルコはルカ・リンディッチ、ネイツ・マルチッチ、マーティン・ジューマー、ルカ・ストラジャーとともにPhola Gangchenの北東稜へアプローチしていた。Photo: Marko Prezelj
未踏の険しい地形に通過できそうなルートを探したが、氷と雪のコンディションがそれを困難にした。Photo: Marko Prezelj
未踏の険しい地形に通過できそうなルートを探したが、氷と雪のコンディションがそれを困難にした。Photo: Marko Prezelj
雪のクーロアールに達すると、流れと進行速度が向上。Photo: Marko Prezelj
雪のクーロアールに達すると、流れと進行速度が向上。Photo: Marko Prezelj
登攀初日は夜遅く険しい地形にビバークを設営して終わり、翌朝、壮大な景色に迎えられた。Photo: Marko Prezelj
登攀初日は夜遅く険しい地形にビバークを設営して終わり、翌朝、壮大な景色に迎えられた。Photo: Marko Prezelj
雲は視覚的には魅力的だが、それが運ぶ知らせは正反対だ。Photo: Marko Prezelj
雲は視覚的には魅力的だが、それが運ぶ知らせは正反対だ。Photo: Marko Prezelj
吹雪が収まる目処はまったくつかず、状況の深刻さは明らかだった。Photo: Marko Prezelj
吹雪が収まる目処はまったくつかず、状況の深刻さは明らかだった。Photo: Marko Prezelj
冬眠しながら好天を願う。Photo: Marko Prezelj
冬眠しながら好天を願う。Photo: Marko Prezelj
願いはむなしく、敗退の決断で終わる。雪崩のカオスは終わりのない懸垂下降に独特の雰囲気を与えた。Photo: Marko Prezelj
願いはむなしく、敗退の決断で終わる。雪崩のカオスは終わりのない懸垂下降に独特の雰囲気を与えた。Photo: Marko Prezelj
実際どれだけの降雪があったかという僕らの知識は、氷河に着くと裏付けされた。Photo: Marko Prezelj
実際どれだけの降雪があったかという僕らの知識は、氷河に着くと裏付けされた。Photo: Marko Prezelj
以前は2時間だったアプローチが肉体的にも精神的にも消耗する丸2日の下山に変身。Photo: Marko Prezelj
以前は2時間だったアプローチが肉体的にも精神的にも消耗する丸2日の下山に変身。Photo: Marko Prezelj
「彼らは大丈夫かもしれないし、そうでないかもしれない。でも僕らは下山しよう」 キッチン係の3人がベースキャンプから撤退を決めたときの言葉だ。しかし、あまりの大雪がそれすら不可能にした。ニャラムに向けたラッセルはたった200メートルで終わった。ついに全員がベースキャンプに戻ったとき、僕らは喜びと友情に溢れ、前向きのエネルギーと純粋な瞬間に満ちた夜となった。僕らの目は興奮と安堵で輝いた。 Photo: Marko Prezelj
「彼らは大丈夫かもしれないし、そうでないかもしれない。でも僕らは下山しよう」 キッチン係の3人がベースキャンプから撤退を決めたときの言葉だ。しかし、あまりの大雪がそれすら不可能にした。ニャラムに向けたラッセルはたった200メートルで終わった。ついに全員がベースキャンプに戻ったとき、僕らは喜びと友情に溢れ、前向きのエネルギーと純粋な瞬間に満ちた夜となった。僕らの目は興奮と安堵で輝いた。 Photo: Marko Prezelj
インド洋の台風が予期せぬ「雪の津波」の原因で、たった3日間でほぼ1.5 メートルの雪を降らせた。僕らは埋もれたベースキャンプを掘り出さねばならなかった。Photo: Marko Prezelj
インド洋の台風が予期せぬ「雪の津波」の原因で、たった3日間でほぼ1.5 メートルの雪を降らせた。僕らは埋もれたベースキャンプを掘り出さねばならなかった。Photo: Marko Prezelj
現代社会の快適さにあふれた文明に戻った幸せな顔。僕らはビバークのギアと小物だけを持参し、装備はベースキャンプに残した。装備すべてを置き去りにしながらまったく後悔なし、というのは興味深い感覚だ。Photo: Marko Prezelj
現代社会の快適さにあふれた文明に戻った幸せな顔。僕らはビバークのギアと小物だけを持参し、装備はベースキャンプに残した。装備すべてを置き去りにしながらまったく後悔なし、というのは興味深い感覚だ。Photo: Marko Prezelj
僕らのチーム。最後列(左から右):ラザ(料理アシスタント)、タデ・クリシェリ、ルカ・クラインツ、マルコ・プレゼリ。中央列:ツェリング・ドージェ(料理アシスタント)、ミハ・ガシュペリン(医師)、マーティン・ジューマー、ルカ・リンディッチ、ネイツ・マルチッチ。最前列:カルマ・シェルパ(料理人)、ルカ・ストラジャー。Photo: Marko Prezelj
僕らのチーム。最後列(左から右):ラザ(料理アシスタント)、タデ・クリシェリ、ルカ・クラインツ、マルコ・プレゼリ。中央列:ツェリング・ドージェ(料理アシスタント)、ミハ・ガシュペリン(医師)、マーティン・ジューマー、ルカ・リンディッチ、ネイツ・マルチッチ。最前列:カルマ・シェルパ(料理人)、ルカ・ストラジャー。Photo: Marko Prezelj

スロベニアのクライミング仲間のマルコ・プレゼリは毎日の結果がミステリーだと感じさせてくれる登山に惹かれる。リュブリャナ大学で化学工業学の学位を取得した彼には妻と2人の子がいる。マルコと長年のクライミング・パートナーであるスティーブ・ハウスは本社ブログで彼らのK7 ウエストカイエッシュ、そしてマカルーからのストーリを投稿している。

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