私たちがNo Nukes Go Renewableと言う理由:地域分散のネットワークが日本の経済を盛り上げる

私たちがNo Nukes Go Renewableと言う理由:地域分散のネットワークが日本の経済を盛り上げる

By 金子 勝   |   2014/03/26 2014年3月26日

原発は火力より高い

政府は、福島第一原子力発電所事故の原因も究明されず、事故収拾もままならない状態にもかかわらず、原発を「重要なベースロード電源」とする新エネルギー基本計画を出しました。「ベースロード電源」には「発電(運転)コストが低廉」という意味が含まれていますが、本当に原発は安いのでしょうか。

政府や原発推進派は現在の燃料費が3兆円ほど増加していることを原発再稼働の理由としてあげています。しかし、これはシミュレーションに基づいて作った数字で、福島原発事故後に進んだ節電分が入っていません。また東京電力の再建計画において、年間6500億円の燃料費の節約が出されているように、割高なガスを購入しています。

一方原発への新規制基準に基づく追加安全投資は、安全審査申請中の17基だけで約1.6~1.7兆円に及んでいます。さらに、賠償・除染費用が10兆円もあります。燃料費の増加とは比べものにならないくらい大きいのです。政府も原発依存を出来るだけ下げるとしていますが、原発は40年で減価償却し、廃炉の引当金を積むことになっているので、もし途中で廃炉にすると、原子力発電施設と核燃料の残存簿価、廃炉引当金の不足が生じ、特別損失として計上しなければなりません。現時点で原発50基をすべて廃炉にすると、少なくとも4.4兆円かかり、電力会社の経営が成り立たなくなります。だから、電力会社は安全軽視で原発を再稼働させたくなるのです。

しかも、再稼働する原発が少なければ少ないほど、原発の発電単価を押し上げてしまいます。原発の廃炉費用が、残る原発にコストとしてかかってくるからです。私は拙著『原発は火力より高い』(岩波ブックレット)において、政府のシミュレーション方式に基づいて個別原発毎の発電単価を試算しました。50基中28基を廃炉にして、その廃炉費用を残る22基の原発のコストに乗せ、安全投資と10兆円の賠償・除染費用を乗せて試算したところ、原発の発電単価は17~33円/kWhになり、火力のおよそ2倍になりました。もはや原発の経済性は全くありません。原発は不良債権であり、その抜本的処理が必要なのです。そのためには電力会社に原子力発電施設と核燃料の残存簿価、廃炉引当金の不足額に当たる株式を発行させ、それを政府が買い取って、発送電分離とともに原発を電力会社から切り離し、すでに事実上破綻している日本原子力発電に集める方法が有効です。

本来なら日本も、世界の流れである再生可能エネルギーと情報通信技術を使ったスマート化による省エネに一気に切り換えるべきです。そして原発事故を引き起こした日本こそが、その先頭を切るべきです。

ところが、相変わらず再生可能エネルギーはコストが高く不安定であるとのキャンペーンが繰り返されています。しかし、風力発電はすでにガス発電並みまで落ちており、さらに太陽光発電の普及につれて、再生可能エネルギーのコストは急速に低下しています。米エネルギー省は2014年2月、大規模太陽光発電システムの導入コストが当たり11.2セント╱kWh(11.2円╱kWh)まで下がったと発表しました。ドイツでも、最も条件のよい発電所で8ユーロセント╱kWh (12.7円╱kWh)です。日本のガス発電並みまで落ちてきているのです。こうした現象は不思議ではありません。液晶テレビの急速な価格低下を思い浮かべれば分かるはずです。

東京電力処理と無責任体制

原発問題は、この国の無責任体質を露わにしています。実際、1990年代はじめの銀行の不良債権問題から福島第一原発事故にいたるまで、政官財のトップがほとんど誰も責任をとっていません。ゾンビ化する東京電力は、その象徴です。

1月15日に承認された東京電力の「総合特別事業計画」(再建計画)では、まず電力料金値上げを「脅し」にして柏崎刈羽原発を再稼働することを前提にしています。事故原因の究明も十分になされず、事故収拾もできない東電に原発を運転させること自体、究極のモラルハザードです。つぎに再建計画において、東京電力は公的資金1兆円の返済義務を免れたうえに、福島第1原発事故に伴う損害賠償支払いのために、原子力損害賠償支援機構からの交付金枠を5兆円から9兆円に拡大します。現状で8兆円弱もある借入金を考慮すると、今の東電に、このような膨大な借金を返済できるでしょうか。

政府は、福島第1原発事故の収拾、賠償支払いや除染にこそ最優先にお金を投ずべきなのに、東電をゾンビ状態のまま生き残らせることを最優先しています。その結果、地下水汚染問題は収拾がつかず、さらに政府は汚染物質を野積みにする中間貯蔵施設方式をとろうとしています。また原発被災者たちに対しては、1年で補償を打ち切ろうとしています。しかも帰還後は、各人が、個人線量計を使って被曝量を1mSv以下に管理しなければいけません。これらで5兆円の除染費用を半減させます。政府も東京電力も「事故責任」を取らない一方で、被災者の福島県民に「自己責任」を取らせようとしているのです。私たちは、福島の現実から出発することを忘れてはなりません。

脱原発が地域分散ネットワーク型社会を創る

このまま原発を続けていくと、エネルギー転換が遅れて新しい産業構造の出現を妨げ、この国の経済衰退を加速してしまいます。経済をよくするためにも、原発は早く止めるのが一番なのです。

いま情報通信技術の発達によって、21世紀の産業構造は、集中メインフレーム型から地域分散ネットワーク型に変わっていきます。集中メインフレーム型とは、重化学工業のように大規模化して同じ製品を大量につくることによって、コストを下げる方式です。原発はその典型です。ところが人口が減り経済成長率が鈍化すると、こういうシステムは行き詰まってしまいます。

一方、情報通信技術が発達すると、ニーズを即座につかめるので、一つひとつは小規模で分散していても、ネットワーク化することによって効率化して、安定化していきます。スーパーマーケットは集中メインフレーム型、コンビニは分散ネットワーク型だと考えれば、分かりやすいでしょう。コンビニは一つひとつの規模は小さいにもかかわらず、POSシステムによって、どこの店で、何がどれだけ売れているかが瞬時にわかります。データを分析すれば、どういう品揃えが一番売れるかもわかります。そうすると、在庫管理が必要なくなって小さい店舗でも十分成り立つようになります。まさに時代は、原発という集中メインフレーム型から分散ネットワーク型の再生可能エネルギーへの転換を求めているのです。

それは固定価格買取制度を通じて地域に資金を環流させるだけでなく、地域に雇用を創り出します。また情報通信技術を使って、発電所から住宅、ビル、工場、そして町はスマート化します。車や家電背品などの耐久消費財を環境型に大きく変えていきます。これらのイノベーションによって日本の産業が生まれ変わっていくのです。 今こそ、若い世代のために、経済性からも未来を選択すべき時なのです。

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金子勝:著書『「脱原発」成長論』『原発は不良債権である』『新・反グローバリズム』『失われた30年』など。最新刊は『原発は火力より高い』。提言は歴史的見地からの現代経済の位置、不良債権問題、地方分権化など幅広い分野に及び、再生可能エネルギーによる地域の経済動向に注目する。

blog.livedoor.jp/kaneko_masaru/
https://twitter.com/masaru_kaneko

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パタゴニア直営店では、今回の投稿者である金子勝氏をはじめ、さまざまなスピーカーをお招きしてGo Renewable-「再生可能エネルギーを活かして」2014の関連イベントを開催。私たちの行動を鼓舞するような、これまでの3年に一歩を踏み出した地域や、私たちが再生可能エネルギーを中心電源とすることの重要性を説いていただきます。ぜひご参加ください。

4月4日(金)19:30~ 吉祥寺ストア (要予約:定員40名)
みんなでつくる・あなたもできる 市民発電所
~多摩発の市民発電所の活動報告とワークショップ~
スピーカー: 山川 勇一郎 (多摩電力合同会社多摩センター事務所長)

4月11日(金)19:30~ 仙台ストア (要予約:定員40名)
自然エネルギーのある暮らし ~3.11、これまでとこれから~
スピーカー:
武内 賢二(自然エネルギー事業協同組合レクスタ組合員、ソーラーワールド株式会社代表取締役社長)
樋口 ふみ(アトリエwasanbon代表、エネシフみやぎ会員)

4月24日(木)19:30~ 大崎ストア (要予約:定員60名)
No Nukes Go Renewable
~地域分散のネットワークが日本の経済を盛り上げる~
スピーカー:金子勝(経済学者/慶應義塾大学経済学部教授)

4月29日(火・祝) 19:30~ 神戸ストア (要予約:定員40名)
映画パワー・トゥ・ザ・ピープル上映とトーク
兵庫県宝塚市のパワー・トゥ・ザ・ピープル~地域でお金もエネルギーも循環(仮)
スピーカー:
中川智子(宝塚市長)
井上保子・西田光彦(株式会社 宝塚すみれ発電/NPO法人新エネルギーをすすめる宝塚の会)

お問い合わせ/ご予約は各ストアまで。

2014年4月16日更新

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Go Renewable -「再生可能エネルギーを活かして」2014
Patagonia says No Nukes Go Renewable

2011年の震災から3年が経った2014年、パタゴニアは「Patagonia Says No Nukes Go Renewable」のメッセージを掲げ、原発から再生可能エネルギーへの転換が必要であることを訴えます。そしてこれまでの3年を振り返り、原子力発電へのエネルギー依存や、再生可能エネルギーやコミュニティ電力の増加、また世界全体での原発依存度などを、数字で明確に認識し、これからの3年の私たちの行動に活かします。さらに今後どのようなエネルギーを私たちの基盤としていくのか、その選択権をもつ私たち自身を含めた皆様にチェックリスト(クリックしてPDFをダウンロードできます)を配布し、個人でしてきたこと/これからできることを確認していただきます。私たちの日々の選択でエネルギー消費を減らすことで、原発の再稼働および新建設の必要性をなくし、一方で再生可能エネルギー使用を推進することにより、環境や社会へのフットプリントが大きい原子力や化石燃料による発電を代替させることにつながるのです。