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私たちがNo Nukes Go Renewableと言う理由:豊かで創造的な地域生活を生む

私たちがNo Nukes Go Renewableと言う理由:豊かで創造的な地域生活を生む

By 飯田 哲也   |   2014/04/01 2014年4月1日

いま「ご当地電力」が熱い

福島の会津電力、小田原のほうとくエネルギーをはじめ、北海道から沖縄まで、地名を冠したご当地電力が、とりわけ311後に続々と立ち上がっている。まず「ご当地電力」とは何か、ここで定義しておくと、国際的にほぼ共通な「コミュニティパワー」と同じ定義をベースに、私が拡張した定義によれば、以下の3つの原則から成っている。

・ 第一原則:地域コミュニティによるオーナーシップ

・ 第二原則:地域コミュニティの参加と意思決定

・ 第三原則:地域コミュニティが便益を享受すること

第一原則の「オーナーシップ」とは、狭義には資本金の過半数以上をもつことによる「当該地域エネルギー事業の所有」となる。けれども、、広義には当該地域エネルギー事業に関して地域コミュニティが当事者意識(「我がこと」と感じる意識)をもつことも含まれている。第三原則の「便益」とは、経済的な便益のみならず、社会的な便益(たとえば誇り、共通の良い思い出など)にも拡張して捉えるべきものである。

ご当地電力の起源

市民が寄付を集めて自然エネルギーをつくろうという動きは、1990年代から宮崎や滋賀ではじまり、全国に少しずつ広がっていった。そうしたなかで、初期の「ご当地電力」というべきエポックを画した取り組みは、北海道ではじまった市民風車「はまかぜちゃん」(2001年)と、長野県飯田市ではじまったおひさまファンド(2004年)である。日本初の市民風車「はまかぜちゃん」は、生活クラブ北海道を母体に誕生したNPO北海道グリーンファンドが事業主体となり、市民出資の仕組みづくりをISEPが担うことで誕生した協働プロジェクトであった。

この二つの取り組みは、それまではせいぜい数百万円程度の「運動」や「寄付」の取り組みだった市民参加型の地域エネルギーへの取り組みを、いずれも数億円規模にスケールアップすることで、地域の人たちが「本業」として取り組める事業へと移行することに成功している。ただし、その後は、北海道グリーンファンドが青森や秋田などでの市民風車の展開を担い、ISEPが岡山、岐阜、富山での太陽光やバイオマス、小水力を対象とする地域主導型の「ご当地電力」の展開を担ったが、自然エネルギー普及を下支えする国の制度が貧しいなかでは、ほぼ年に1件程度の広がりに留まっていた。

3.11以後「百花繚乱」する各地のご当地電力

ところが3.11後のご当地電力は、日本全国で文字どおり「百花繚乱」である。3.11東日本大震災と福島第一原発事故を経て、国民全体で原発やエネルギーへの問題意識が一気に高まったことに加えて、奇しくも3.11当日に閣議決定されて成立した自然エネルギー電力に対する固定価格買取制度が大きく後押しをしたこともある。ISEPがかかわったなかでの地域の動きをいくつかを紹介しよう。

自然エネルギー信州ネット
じつは3.11の半年前に知事に就任した阿部長野県知事から、私が「おひさまファンドと同じ仕組みを長野全県に拡げたい」との要請を受けて、3.11直前に立ち上げ準備をしていたところに、東日本大震災が起き、むしろ動きが加速した。信州上田の主婦が立ち上げた「あいのりくん」など、すでにいくつもの地域エネルギーが立ち上がり、いまは「自然エネルギー信州パートナーズ」という支援組織でそれらの取り組みを下支えしている。

会津電力
3.11直後の7月に、会津喜多方に後の「ふくしま会議」の主要メンバーが集まり、原発にも化石燃料にも頼らない福島を自然エネルギーで創ることを「現代の自由民権運動」と呼んで会津電力の下地が生まれた。翌2012年には非営利組織の「会津自然エネルギー機構」が生まれ、それを足場に2013年7月に会津電力株式会社が誕生、2014年3月には「会津ソーラー市民ファンド2014」の公募も始まている。

小田原・ほうとくエネルギー
3.11で計画停電や放射能汚染を経験した加藤小田原市長が危機感をもち、公開アドバイザリー会議、公開ワークショップなどを重ねて、地域の事業者を核とする「ほうとくエネルギー株式会社」が2012年末に発足。2014年1月からは「ほうとくソーラー市民ファンド」の公募もはじまった。

市民エネルギーやまぐち
山口の各地の自然エネルギー事業者を下支えするプラットホームとして、利益を地域貢献に用いる非営利型株式会社として、地権者・事業者と利益三等分の「三方良し」を掲げる」「22世紀の株式会社」を標榜するユニークな会社で、企画・支援して2013年10月に発足。2014年1月からは、山口島根豪雨災害被災地への寄付を盛り込んだ「みんなで応援やまぐちソーラーファンド2014」の公募もはじまった。

ご当地電力が地域に生む良い効果

さて、こうしたご当地電力はどのような良い効果を生んでいるのだろうか。まず、定量的な効果として、地域への経済的なプラス効果がある。たとえば太陽光発電や風力発電をご当地電力=地域資本で実施した場合、総事業費のうちおよそ三分の一が、収入または地方税というかたちで地域の収入となる。これは、地域外の資本によるメガソーラー開発(植民地型事業)の場合に比べると、ほぼ倍になる。 こうした地域の収入は、たんに「倍」に留まらず、そのお金は地域内を平均で2〜4回循環すると言われていることから、じつは植民地型事業の3〜5倍の地域経済効果を生みだしていく。

さらに、雇用の量と質もまったく異なる。植民地型事業の場合、地域に生じる雇用は期間限定の下請け仕事に留まる。受注も偶然なので、知見も経験も蓄積できないから、人材が育たない。それに対して、地域のご当地電力がみずから企画・開発をする事業は、長期的な持続性をみずから生み出すことから長期的な雇用が生まれ、知見も経験を重ねることで人材も育つ。また、地域内でご当地電力を取り巻いて継続的な取引関係がさまざまに生じることで、地域エネルギー事業に関するさまざまな仕事の創造、すなわち「エコシステム」が地域に育っていく。

ご当地電力の定性的な効果も重要である。地域の人たちがこうしたご当地電力にみずから主体的に取り組んでいくことが、「内発的発展」と呼ばれる本来あるべき地域開発の姿である。「お任せ民主主義」と揶揄されてきた「おとなしい一般市民」が、少しずつ自信を取り戻し、社会的にも政治的にも意思の力がますます高まっていく(エンパワーメント)、本来の「市民」となる。その先に、地域の自治と自立性・自律性の高い、豊かで創造的な地域社会がある。

すでに世界は歴史的な大転換へ

もう少しズームアウトして、ご当地電力の意味を考えてみたい。一つは、社会運動のあり方の大転換を生み出すことが期待される。欧州の社会運動もたどった道のりだが、1970年代に欧州や米国で大きく盛り上がった原発反対運動は典型的な「抵抗型運動」で、今日の日本の姿と二重写しとなる。  欧州ではこうした1970年代の「抵抗型運動」は1980年代以降に「創造型活動」へと昇華していった。これは「エコロジー的近代化」とも呼ばれる。原発で二極化している日本も、遅かれ早かれ、こうした転換を必要としている。ご当地電力は間違いなく、「抵抗」から「創造」への大転換の先駆けである。

こうしたご当地電力はいま世界全体で起きている歴史的大転換と繋がっている。ドイツやデンマークを筆頭に、大規模集中独占型から小規模分散地域ネットワーク型への大転換がエネルギー部門ではじまっている。こうした転換はすでにITの世界では先行しており、間違いなくエネルギーも遅かれ早かれそうした歴史的かつ社会構造の大転換を引き起こす。こうしてご当地電力は小規模分散地域ネットワーク型への大転換の先駆けにも繋がっている。

ご当地電力を立ち上げる

こうしてみると、ちょっと手が届かないと思えるかもしれないが、すでに全国に何十もの「仲間」がいる。どこのご当地電力も、最初は誰か一人の小さな思い、ささやかなきっかけからはじまっている。市長や企業家でなくても、主婦が立ち上げたご当地電力もある。自分の地域でも「ご当地電力」を立ち上げたいと思ったら、それこそがスタートだ。近くのご当地電力の仲間を訪ねてみたり、再生可能エネルギーの普及を呼びかけている市民グループの活動に参加してみたり、環境エネルギー政策研究所に相談してみてほしい。ご当地電力の第一歩はそこからはじまり、そしてそれは豊かで創造的な地域生活のはじまりでもある。

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飯田哲也:認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP) 所長

ISEPが全面協力して、北海道、福島会津、小田原、山口の4か所の「日本全国ご当地エネルギーファンド」の公募がはじまっています。詳細はこちらから。

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パタゴニア直営店では、さまざまなスピーカーをお招きしてGo Renewable-「再生可能エネルギーを活かして」2014の関連イベントを開催。私たちの行動を鼓舞するような、これまでの3年に一歩を踏み出した 地域や、私たちが再生可能エネルギーを中心電源とすることの重要性を説いていただきます。ぜひご参加ください。

4月4日(金)19:30~ 吉祥寺ストア (要予約:定員40名)
みんなでつくる・あなたもできる 市民発電所
~多摩発の市民発電所の活動報告とワークショップ~
スピーカー: 山川 勇一郎 (多摩電力合同会社多摩センター事務所長)

4月11日(金)19:30~ 仙台ストア (要予約:定員40名)
自然エネルギーのある暮らし ~3.11、これまでとこれから~
スピーカー:
武内 賢二(自然エネルギー事業協同組合レクスタ組合員、ソーラーワールド株式会社代表取締役社長)
樋口 ふみ(アトリエwasanbon代表、エネシフみやぎ会員)

4月24日(木)19:30~ 大崎ストア (要予約:定員60名)
No Nukes Go Renewable
~地域分散のネットワークが日本の経済を盛り上げる~
スピーカー:金子勝(経済学者/慶應義塾大学経済学部教授)

4月29日(火・祝) 19:30~ 神戸ストア (要予約:定員40名)
映画パワー・トゥ・ザ・ピープル上映とトーク
兵庫県宝塚市のパワー・トゥ・ザ・ピープル~地域でお金もエネルギーも循環(仮)
スピーカー:
中川智子(宝塚市長)
井上保子・西田光彦(株式会社 宝塚すみれ発電/NPO法人新エネルギーをすすめる宝塚の会)

お問い合わせ/ご予約は各ストアまで。

2014年4月16日更新

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行動を起こそう

「脱原発を目指す首長会議」の会員になることを求める請願を

お住まいの自治体の首長に「脱原発をめざす首長会議」の会員になることを求める請願をしましょう。ハガキは全国のパタゴニア直営店でもご用意しています。また、こちらからダウンロードもしていただけます。「脱原発をめざす首長会議」の詳細および現会員については mayors.npfree.jp をご覧ください。

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