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山歩きを邪魔しない道具立て。写真:稲葉 豊
山歩きを邪魔しない道具立て。写真:稲葉 豊

山歩きとシンプル・フライフィッシング

By 稲葉 豊   |   2014/06/09 2014年6月9日
山歩きを邪魔しない道具立て。写真:稲葉 豊
山歩きを邪魔しない道具立て。写真:稲葉 豊

フライロッドを振るようになって30年が経ったが、最近、確実に自分のフライフィッシングが変わった。それには5年前から始めたトレッキングが多分に影響している。

日帰りの低山から始めたトレッキングも、いまでは北アルプスに代表される大山塊のテント泊縦走までを楽しむようになっている。衣食住のすべてを背負い、みずからの判断でピークを繋いでいく山行は素晴らしい。それには、アウトドアスポーツのエッセンスが詰まっている。そして、トレッキングは地理に疎い自分に「いい山にはいい川が流れている」という当たり前のことを気づかせてくれた。

フライロッドを持って、北海道から九州、沖縄までを旅した。その熱は国内ではおさまりきらず、アラスカ州イリアムナ湖周辺、ワイオミング州ジャクソンホール、ロシア・オホーツクの川、コーラ半島の川、果てはアイスランドの川までトラウトやサーモンを求めて出かけて行った。それらの釣行では、力任せの前のめりなキャスティングで右手の指紋がなくなるまで釣りをしたこともあった。

すべて楽しい釣りだった。しかし、僕は、そのとき山の存在を感じていなかった。目の前の川の流ればかりに集中し、その川の始まりの一滴がそこにあるはずの山に目もくれなかったのだ。いまだから思う。そのとき、少しでも川の上流の山に思いを馳せることができれば、より濃厚にかつ科学的にそのシーンを心に刻めたはずだと。

トレッキングを始めたことにより、たとえば、かつて3月に通った岐阜県の蒲田川が北アルプスの穂高岳から流れ出していることを、夏にキャンプ支度でイワナを釣りに行った山形県の大井沢が朝日連峰に端を発していることを、ネイティブのヤマトイワナを求めて出かけた山梨県の野呂川の最初の一滴が南アルプスの名峰北岳と間ノ岳にあることを知った。いい山にいい川ありなのである。

イワナがいそうなポイントだ。写真:稲葉 豊
イワナがいそうなポイントだ。写真:稲葉 豊

ここのところの僕のフライフィッシングは、おおらかなものになった。これはただ年を取って、釣りが丸くなっただけではないだろう。新たなフライフィッシングの楽しみも見つけた。縦走プランを練るとき、地図を見ながらフライフィッシングのできる川を探すのである。北、中央、南からなる日本アルプスでは、フライフィッシングをからめた魅力的な縦走プランが成立する。尾瀬周辺や朝日連峰もイワナが手招きしているようだ。

これまで山旅のお供には、4番、6ピースのマルチピース・ロッドを主力としていたが、テンカラ竿を手に入れてからは、それがメインタックルになりつつある。とくに縦走時はそれ以外の選択肢はない。理由は簡単。シンプルで軽いからだ。使いやすいラインシステムの確立やウエットフライを使う技術をマスターする必要があるなど自分のテンカラ技術は発展途上だが、テンカラ竿を片手にポイントぎりぎりまでストーキングし、打ち込んだドライフライに一発でイワナが出たときは、まさにBeatitudeだ!

グリズリー・パラシュートに騙されたイワナ。写真:稲葉 豊
グリズリー・パラシュートに騙されたイワナ。写真:稲葉 豊

山歩きは、僕のフライフィッシングをより深いものにしてくれた。テンカラ竿は、山と釣りをより近づけてくれた。十分に中高年の領域に入ったが、体力が続く限り、谷を渡る風の音と水の煌めきに包まれながら、フライフィッシングを楽しんでいくつもりである。

山歩きとシンプル・フライフィッシング

パタゴニアはテンカラのテクニックに焦点を置き、シンプルなフライフィッシングを提案します。テンカラの秀でたシンプルさにより、このスポーツのシンプルな真理に近づくことができるのです。パタゴニアの「シンプル・フライフィッシング・キット」には、イヴォン・シュイナード、クレイグ・マシューズ、マウロ・マッツォの共著である『シンプル・フライフィッシング』からの深い見識と詳しい説明や、テンカラの完全なセットアップ(あとはティペットを加えるだけ)といった、フライフィッシングをまったく新しいレベルへと押し上げるために必要なすべてが集約されています。

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