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ダートバッグのドン:イヴォン・シュイナードのインタビュー

ダートバッグのドン:イヴォン・シュイナードのインタビュー

2014/08/21 2014年8月21日

The Usualより

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イヴォン・シュイナードは20年も同じフランネルのシャツを着ています。74歳の環境保護家で型にとらわれない思想家、そしてアスリート兼職人のシュイナード氏は、反消費者主義でもあり、世界の環境危機への解決策を見いだすべく、みずから創業したパタゴニアをつねに前進させています。以下のシュイナード氏のインタビューで彼のレガシーについて尋ねたところ、答えは「どうでもいい」でした。しかし思うに、彼のレガシーとは、私たちに奨励する行動(自然のなかで過ごし、個人的責任を負い、シンプルにすること)ではなく、私たちがより減らすこと(購買、消費、汚染)への彼の希望で評価されるのではないでしょうか。つまり、シュイナード氏は私たちに消費者であることを辞め、より思いやりのある世界市民であることを願っているのです。

【ティエラ・デル・フエゴでラインを投げる。アルゼンチン。写真:Doug Tompkins】

個人的に何が会社を良いものにするとお考えですか?

責任だよ。前回の景気後退のとき、パタゴニアは過去最大の成長を経験した。景気後退では人は愚かなものや1~2年で流行が廃れるものを買うのを止めるからだと思う。長持するものだと思えば、より良い品質の、必要なものを買うだろう。ただ欲しいからという理由ではなくね。パタゴニアはそういったものを作っている。だから我々のビジネスはとても強力だ。新世紀世代は私たちが製品を作る際に悪影響を最小限に抑えようとしていることをとても評価してくれている。新世紀世代は環境教育を受けてきていて、何が問題なのかを、何がこの地球を破壊しているのかを知っている。そして、それを何とかしたいと欲して、そのために行動する会社をサポートしたいと思っているんだ。

実際、私たちは顧客にこう伝えている:「パタゴニアからモノを買う前によく考えてください」と。本当に必要なのか、それともただ退屈していて何かを買いたいだけなのではないか。そしてパタゴニアは作る製品に対して永久的に責任をもつ。壊れれば修理を約束する。自分でパタゴニア製品を直せるよう、小冊子とビデオを作る予定だ。そしてついに飽きたりサイズが小さくなってしまったりしたら、他の人に譲る手助けもしている。それを売れるようにeBayと提携しているし、直営店ではユーズド製品の販売もはじめる予定だ。そしてついに寿命が来たら、パタゴニアで引き取り、さらにリサイクルして新しい製品を作る。これは私たちに着古すことができない製品を作ることだけでなく、リサイクル可能なものをデザインするよう強いることにもなる。

創業以来、長年にわたってパタゴニアのミッション・ステートメントがどのように進化していったと感じますか?

私たちは最初「最高の製品を作ること」、つまりミッション・ステートメントの冒頭部分に興味を抱いていた。それから地球の状態を懸念するようになり、「環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える」を付け加えた。さらに世界について落ち込みや懸念がより増すにつれて、3つめの「ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」を加えた。私が本当に考えているのはそのこと、つまり何をやっているのかを語るだけでなく、行動で示すことだよ。

いまも楽観的でいられますか、それともそれはむずかしいですか?

私はまったく楽観的じゃない。完全な悲観主義者だ。十分長生きして、旅して、多くの賢い人たちに囲まれてきたから、私は私たちが負けていることを知っている。どのカテゴリーをとっても私たちは負けている。大統領の就任演説を聞いたかもしれないが、彼は環境についておそらく2分も話さなかったのではないだろうか。彼が憂慮しているのはすべて症状であり、原因ではない。アメリカでは地球を救うことは人びとの優先度では19位くらいだったが、また4位になったと聞く。1位は個人の安全だ。アメリカは恐い人びとが住む国だよ。国中を武装させたがっている保守派について考えてみてほしい。彼らは拳銃をもってレストランに行きたがる。それは彼らが臆病者だからだ。

問題は環境保護家のデービッド・ブラウワーが言ったように、死んだ地球ではビジネスができないことだ。死んだ地球では何もできない。そしていまそれが起きている。だから私は完全な悲観主義者だ。でも幸せ者だ。私はすべてには始まりと終わりがあることを受け入れるようになった。すべての種は生まれ、進化し、絶滅する。いま第6の絶滅期にあり、まず絶滅するのは大型哺乳類。そして人間は大型哺乳類だよ。

すべての帝国は崩壊する。アメリカ帝国はおそらく現在、崩壊途上にある。自然は帝国を好まない。自然は1つの場所に蓄積すること、単一文化を好まない。自然はつねに多様な種を作ろうとし、すべてを拡張することを好む。ところが私たちはつねにすべてを囲い込もうとしている。

その間にも私たちが個人としてできることはありますか?

私たちが環境問題に直面しないでいる理由は私たち自身が問題だからだ。問題はそこら辺の企業でも政府でもなく、私たちなんだ。企業により多くのモノを、より安く、より使い捨てにできるように作るよう促しているのは私たちだ。私たちは市民ではなく、消費者だ。それが私たちに付けられた名前。それはちょうどアルコール中毒なのにその事実を否定しているようなものだ。私たち一人一人が問題の種であるという現実から目をそらしている。それに立ち向かうまでは何も起こらないよ。

だから人生をシンプルにという運動が存在する。買い物をより減らして、高品質のもの、長持ちするもの、そして多用途に使えるものを少しだけ所有する運動だ。

食べものについて何か個人的な習慣や、食べないものがありますか?

間違いなくあるよ。おそらく4年くらい、店では牛肉を買っていない。誰かの家で出て来たら食べる。イヤな奴にはなりたくないからね(笑)。私の家族は野生の獲物の肉、持続可能な魚――それがあるとすればだが――を食べる。遺伝子組換えのものは一切取らない。野菜はすべて有機栽培のものを食べるように心がけている。

若いころ、夏を低予算で乗り切るために缶入りのキャットフードを食べたという有名な話がありますよね?

ああ、たくさん食べたよ。あまり美味いものじゃなかった。でもドッグフードよりはマシだった。

所有する最古のパタゴニア製品は何ですか?

こう答えよう。新しいものは何も持っていない。自分のものについても私は消費者じゃない。フランネルのシャツはどれも20年ものだよ(笑)。お客様にお気に入りのパタゴニア製品について聞いて、そのストーリーを書いてもらうという、ちょっとしたウェブサイトをはじめた。近々掲載されるものだが、サメに噛まれた男の話がある。サメはサーフボードを通して噛み付いた。何針縫ったか知らないが、それでウェットスーツが台無しになった。それを聞いて私たちは新しいウェットスーツを提供した。それから地元のビール会社がその話を聞きつけて、生涯ビールを提供することになった。彼は新しいウェットスーツと一生分のビールを手に入れたわけだ(笑)。

どういういきさつでパタゴニア南部のフィッツロイが会社のロゴになったのですか?

長期旅行は忘れがたいものだ。旅といえば最近はヨーロッパへ1週間で行く。そんな旅行はあまり記憶に残らない。インドシナへ1週間のサーフィン旅行に行く。でも大陸を旅してボートに乗らなければならなかったら、旅はかなり違ったものになる。フィッツロイへの旅は6か月を要し、その間、途上では多くの冒険があった。グアテマラで野宿したときには拳銃を頭に叩き起こされたりしたりもしたが、私の人生で本当に重要な旅になった。当時、この衣類会社を興すことを考えていて、南で遭遇した条件に合うものがよかった。つまりハリケーン級の風とオレンジ色のレンズ雲のある日暮れなんかが。「これを用途とした衣類を、ケープ・ホーンとパタゴニアのためのウェアを作りたい」と思ったんだ。そこでこのロゴが思い浮かんだ。当時、パタゴニアは世界の果てで神秘的な場所だった。誰もがどこにあるかを何となく知っていた程度で、本当には知らなかった。パタゴニアを有名にしたのは私たちで、いまは誰でもどこにあるか知っているし、誰もが訪れている。パタゴニアという名前はとてもいいものだった。どの言語でも発音できる。日本人に「ルルレモン」を発音させたらどうなるか分かるだろう(笑)?

これまでやった登攀で、人生で最高に誇れるようなものはありますか?

友人のT. M. ハーバートと9〜10日をかけてエル・キャピタンをやった。2人のチームで固定ロープや何やらを使わずにやった初の登攀だった。ちょっとした偉業だったよ。そして困難だった。おそらくそれが最高の登攀だろう。

ある時点で怖いと思いましたか?

ああ、食糧も水も尽き果て、装備もほとんどない状態でトップアウトしたとき。かなりギリギリだった。

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【ロゴのインスピレーションの源:パタゴニアのフィッツロイ。写真:Barbara Rowell】

敗退した登攀はありましたか?

かなりの数の登攀で敗退したよ。でも挑戦しておけばよかったと悔やまれる登攀もある。とくにアルプス。昔、よくアルプスで登ったが、アイガー北壁などは登っていたらよかった。クライミングが好きな理由をすべて象徴する登攀だからね。それについては後悔している。敗退については、私はあまり振り返らない。そして将来についてもあまり考えない。足が地に着いているからね。実際、敗退についてはあまり思い出せないね。さっさとオサラバした感じだ。

東海岸/ニューヨークではかなり登りましたか?

世界最高のロッククライミングのいくつかはニューパルツ近くのシャワンガンクスにあると思う。それからアディロンダック山脈の周辺やニューハンプシャーでも登った。

それはニューヨークに直営店を開いた動機の一部でしたか?

必ずしもそうではない。クライミングの店とサーフィンの店を開いているが、普通の衣料品店ではなく、製品の用途である個々のスポーツにより焦点を当ててようというのが私たちの一般的な傾向だ。焦点をより絞り合わせようとしている。

こういった登攀やアウトドアでのアクティビティをする多くの人は一般的に自然とのつながりについて、自分よりも大きな何かへの超越について語ります。最初のころ、そう感じましたか?そしていまも、そう感じますか?

ああ、そうだね。とくに若い人にとってはそれが理由だろう。彼らは自分の限界を押し広げ、自分を試してみたいと思う。多くの人が巨大な波へとパドリングして行くのはそれが理由だ。彼らは外に出て、自分がどんな人間かを試す。かなりクールなことだね。私が真に信じていることのひとつはシンプリシティだ。人生はつねに複雑な方向ではなく、よりシンプルな方向へと向かうべきだということ。だから誰かがフィンのないサーフボードで99%のサーファーよりも上手に波に乗っているのを見たりすると、「素晴らしい。まさにこれだ」と思う。トウインサーフィンからはじまり、いまは同じ波へパドリングするようになった。それこそ私たちが向かうべき方向だ。テクノロジーにではなく。1970年代は「いちばん多くのおもちゃをもって死ぬ人が勝者だ」という考えがあったが、それは間違っている。その逆だ。すべてのギアを知識と経験で置き換える。だからスポーツにおいては、みずからのそれをシンプルにしている人たちを見るのが好きだ。エル・キャピタンとヨセミテでは6本くらいのルートをやったが、そのうちいくつかは10日もかけてやった。いまはジム・ショーツを履いた男がフリーソロで登り、昼飯前に下山したりする。最高に素晴らしいことだと思う。私の子供でなくてよかったけどね。それこそが私たちが向かうべき方向だ。

そのプロセスはいまよりも簡単ですか? 私たちはいかにしてこの時点に到達したのですか?

私たちは皆、ズルをしたい。クライミングでズルをする方法はたくさんある。50回も登られたルートをやるのだったら、チョークマークをたどり、手足をどこに置けばいいかが分かる。私はそんなルートは耐えられない。人に指図されるのが我慢できないから。自分で判断して行きたい。エベレストを登る人を見るとき、オーストラリアから毎日天気を報告して、ゴーかどうかを指図し、何百もの梯子と何千フィートもの固定ロープを使って、シェルパが前でロープを引き、背後ではもう1人のシェルパが押してくれる。サーフィンではズルをする方法は少ない。トウインはそのひとつだが、いまは時代遅れになっている。だからそれは最も純粋なスポーツだと思う。サーフィンよりもむずかしいスポーツを私は知らない。

サーフィンはクライミングよりもむずかしいと思うのですか?

ああ、ずっとむずかしいよ。信じられないようなアスリートで世界級のクライマーを多く知っているが、彼らがサーフィンに真剣にトライしても、20歳を過ぎたらすごく上手になるのはほぼ不可能だ。すごく若いうちからはじめないといけない。

サーフィンをはじめたとき、他には誰もいなかったから、水に入る人は誰でも歓迎したとおっしゃいましたが、いまはそうじゃないですよね。

クライミングも同じだった。私はかなり幸運なんだ。私はアメリカでのカヤックから、自分のギアをすべて作らなければならなかった1950年代のスピア・フィッシング、そしてテレマークスキー、クライミング、サーフィンまで、多くのスポーツの黄金時代に生きてきた。サーフィンをはじめたのは1954年だっただろうか。その当時は出て行くたびに技術や装備など、何らかの新しい発見があって楽しかった。

パタゴニアのアンバサダーと、その選択に関わっていますか?

いや、まったく関わってない。アンバサダーについては個人的な関わりはもちたくない。クライミングやビッグウェーブ・サーフィンなど、私たちがギアを作るスポーツの一部は危険なものだ。「ビッグウェーブに乗っている表紙写真が多ければ多いほど報酬が上がる」とビッグウェーバーに言って、より危険なことを彼らに奨励したくない。クライミングも同じ。私はクライミングやサーフィンでプロになることの正当性を信じていない。それらは情熱的で個人的なスポーツだ。雑誌の表紙に載るためにではなく、個人的な理由でビッグウェーブに載るべきだ。それからこうした人たちの多くと、とてもいい友達になる。私はマロイ兄弟といつも一緒にサーフィンをしている。皆ホリスター・ランチに家をもっていて、一緒に旅し、サーフィンをする。でも私のように年をとると、「いやすまない、ツアーに出ているもっと若いサーファーを後任にしたいんだ。ごめんな」とか、女性のサーファーには「この新しいアンバサダーは君よりもビキニが似合うから、ごめんよ」などと言わなければならなくなるだろう。そんな立場はごめんだ。

アンバサダーを採用したのはあなたのアイデアだったのですか?

ああ、そうだ。理由は私たちの製品のデザインに彼らの専門知識がほしかったから。ブランドや他の何かの宣伝ではなく、ただデザインを支援してほしかっただけ。だから知名度ではなく、どれだけ多くのフィードバックをくれるかでアンバサダーを選んだ。

あなたの環境保護活動で最大の功績は何だとお考えですか?

アパレルとフットウェア分野で持続可能なインデックス作りをやっている。食品のオーガニック水準みたいなものだ。J. C. ペニーやコールズ、ナイキ、ギャップ、リーバイス、ウォルマートのような60の大企業から成る連合と共同で取り組んでいる。いまは、ある会社から衣料品を購入するとき、その製品がどう製造されたのかはまったく分からない。数年以内にデパートに行くと、5つのブランドのジーンズに数字が付いていて、それぞれがどの程度の責任のある/ない方法で製造されたかが分かるようになる。繊維はオーガニックか、コットンは従来の方法で栽培されたものかなど、生物多様性や工場での労働環境まで、すべてが含まれる。そしてそれにはグレードが付いてくるので、顧客にとって悪影響を最小限に抑えることが大切であれば、それを実行に移すための情報が手に入る。これは世界を変える潜在力がある。いま開発しているインデックスは芝刈り機をはじめ、どのような製品にも適用できる。

現在進行中の環境の仕事でいまとくに情熱を抱いているのはどんなものですか?

パタゴニアのカタログとウェブサイトで展開する次の大規模キャンペーンは地球を破壊しない経済を想像することだ。著作などでいまそれに取り組んでいる。これまでに私たちが語ろうとしてきた最も困難なものだ。語ろうとするとすべてが行き止まりに突き当たる。私たちは及び腰ではいたくない。ただこの社会で悪いものの症状について語るだけ。もし原因を見つめれば、それを解決するためにまったく何もやっていないことに気づき、落ち込んでしまいかねない。とくに私には初孫ができたからね。この子は今世紀の終わりにまだ生きているだろう。現在の予測によれば、それまでには海面が1.5メートル上昇している。毎月のように、以前よりもっと酷い気候変動の研究結果が出てきている。私たちが予想していたよりはるかに早いペースで起こっているんだ。

お孫さんがこの状況に楽観できるようにどうサポートされますか?

現実から目をそらして楽観的でいることは何のためにもならないと思う。大切なのは自然と暮らす人生を歩むように孫を育てることだと思う。私たちは愛するものを保護する。だから自然を愛せばそれを保護したいと思うだろう。それがいまある問題のひとつ。つまり自然欠陥障害だ。ニューヨークの非行少年たちはリスがいるからセントラルパークに行くのを怖がる(笑)。彼らは自然からとても切りはなされている。だから私にできる最善のことは、この子がなるべくたくさんアウトドアで過ごす人生を生きるようにすることだ。

あなたの家系はフランス系カナダ人ですが、それが人生において何らかの役割をもちましたか?

多くの役割をもったと思う。私は7歳になるまでメイン州に住んでフランス語だけを喋っていた。それから突然、全米をまたぐ「怒りの葡萄」的な旅行をした。6人家族と所有物すべてを1台の車に積んでカリフォルニアへ引っ越したんだ。すぐに皆が英語を喋っている公立学校に入れられた。私は背がいちばん低く、英語ができず、挑戦的な態度で、いつも喧嘩をしては学校から逃げていた。それは他の子供と違う道に私を進ませる結果となった。学校がひけるとフットボールや野球をする代わりに、ロサンゼルスの川床で食用のザリガニやカエルを獲って家に持ち帰った。そういった種の初期の経験は人を台無しにするか、より強靭にする。ありがたいことに私はそれで強くなったし、ビジネスではルールを破って、それを上手くいかせることを楽しめるようにもなった。それ以外のことはどうでもいいが、ルールを破るのは大好きだね(笑)。

ではいまだにご自分をダートバッグだとお考えなのですか?

ああ、私のライフスタイルを見てもらったらうなずけると思う。古い車を運転しているし、私のパタゴニアの衣類はすべてとても古い。新しいものを持つことはめったにないね。とてもシンプルな人生を送ろうとしているんだ。私は何かの消費者ではなく、ホテルの部屋よりも誰かの家の床の上に寝ることの方をずっと好む。だからその型にははまっているね。

どんなレガシーを残したいですか?

レガシーなんかはどうでもいいよ。

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