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フィッシング中に直立でいつづけることについて

ディラン・トミネ  /  2015年2月9日  /  読み終えるまで7分  /  デザイン, アクティビズム

Photo: Jeff Johnson

フィッシング中に直立でいつづけることについて

Photo: Jeff Johnson

それは突然起きる。ある瞬間、腰まである水のなかを不安定なバスケットボール大の岩を大胆にまたぎ、2つの目は流れのすぐ先にあるスチールヘッドの緑色をした水に集中しているかと思うと、次の瞬間、より大きな傾いた岩を踏んで転げはじめる。時間はせん妄状態のスローモーションの意識へと移動し、僕のスタッドは岩の表面で黒板で爪を引っ掻くような金切り声をあげ、忘却へと向かって滑る。

もう片方の僕の足は、つま先を固定できる場所を求めて、岩のあいだを激しく揺れ動く。いまや僕の腕は狂ったように旋回し、スペイロッドは空中に投げだされる。そして僕は転げる。僕はすでにそれを知っているが、僕の潜在意識はこの事実を受け入れていない。そしてあと数秒、もがき苦しむ。それから、必然的に浸水する。重力がふたたび勝利するのだ。

もちろん、カーバイド製のスタッドが唯一の選択肢ではない。スティッキーラバー、フェルト、それどころかトラクションを必死に求めてスチールウールたわしを靴用接着剤と混ぜて靴底に塗った男も知っている。そう、じつのところその男とは僕。そしてそれはまた効果的だった。たわしが腐食し、ギア全部に錆を塗りつけて分解してしまうまでは。

極度なウェーディングの状況では、たとえばトンプソン・リバーのスペンシズ・ブリッジなどが頭に浮かぶが、スティッキーラバーはそれほどスティッキーじゃない。フェルトはすぐにすり減るし、雪があるような場所ではピラミッドを反対にしたような、くるぶしを折ってしまいかねない泥の塊に悩まされる。そしてもっと酷いことに、侵略種を運んでしまう。スタッドは上で述べたようにあまり効果的ではなく、ボートのデッキやキャビンの床など、歩く表面すべてを壊す。スタッド使用にこだわる人へ:友だちのボートでの釣りやキャビンへの招待が減っているわけが知りたいのなら、自分の足元を見ればいい。

結果的に、氷のように冷たい水がウェーダーに入ってくることが発明の母となる。聞くところによれば、スキーナで思いがけず浸水してしまったイヴォン・シュイナードはより優れた製品、つまりウェーディング・トラクション・システムを作ることを決意して帰宅した。ブリキ小屋へと入っていった彼は、鍛冶屋のエプロンをつけて仕事に取りかかった。彼が小屋から出てきたとき、手にはリバー・クランポンの試作品を持っていた。

それはシンプルなデザインだ。シュイナードの登山の経験をヒントにした、ブーツに紐で結ぶ取り外し可能なトラクション用具。だが氷と雪に食い込むことを目的とした鋼鉄製の長い牙のような伝統的なクランポンの代わりに、リバー・クランポンで使用したのは平たい固形のアルミ製のバーだ。秘訣はアルミ自体にある。それは藻や川のぬめりを切り裂くのに十分な硬さをもちながら、岩の表面に順応する十分な柔らかさも兼ねている。

雪や泥を蓄積せず、侵略種をかくまうこともボートのデッキを荒らすこともない。さらにはアルミのバーは100%リサイクル可能で交換もしやすい。ここで、正直に認めよう。(錆びたスチールウールたわし野郎の)僕は懐疑心を抱いていた。僕の最初のクランポンは箱に入れられたまま、ほぼ1か月もドアの脇に置かれていたままだった。だが並外れたツルツルの岩で月面歩行をして過ごし、1メートルの水面に見事な後宙返りをして終わったある朝のあと、だめもとで使ってみようと僕は思った。

翌日、誰も見ていないときにこいつらをブーツに縛り、川岸をカチャカチャと歩いた。とりあえずはいける。ぬかるんだトレイルに食い込み、水際の岩から岩へ飛んでみるといい感じだった。それから前日に釣ったセクションに入ってみた。すると暗雲が切り裂け、天使の歌声が風のなかで舞った、と言いたい。真実は雨が降りつづけていたのだが。でも僕の足は吸盤のように岩に固定していた。信じられなかった。あまりにもグリップ力があったので釣りを止め、セクションの端へと向かって岩から岩へと飛び跳ねてみた。長いことそこに立つことを夢見たスポットへ到達すると、ラインをストリップし、キャストした。そして水流が早過ぎることを発見した。それは別の問題なのだが。

重要なのはシュイナードのアルミ製のバーは凄いということだ。僕の意見では透湿性のあるウェーダー、いやもしかしたらダブルハンド・ロッド以来のフライフィッシングの技術革命ではないかと思う。「根本的な革命をもたらす」と聞いて使ってみる製品にはいつもがっかりさせられているだろう?でもリバー・クランポンはまさに大変革をもたらす。とくに泳ぐより釣りがしたい人には。

だが僕の友人によれば1つだけ不満があるそうだ。彼らが言うには、リバー・クランポンは水にザブンと浸かりまくる僕を見る楽しみを人類から剥奪してしまったと。

ディラン・トミネはパタゴニアのフライフィッシング・アンバサダーで「Closer to the Ground」(日本語版未発売)の著者。

アルミニウムについて

イヴォン・シュイナードがリバー・クランポンの開発に着手したとき、彼が選んだのはその素材として地球上最も普及しているアルミニウムでした。「環境に少しでも良い製品を作ろうとした結果、すべてにおいてより良い製品が出来た」と彼は語ります。

フェルト底のブーツの不満足かつ潜在的に危険なパフォーマンスに喚起されて改良を重ねた末、イヴォンはフライフィッシングのアクセサリーであるクランポンを開発しました。それには2つのおもな特長がありました。水分を含んで滑りやすくなるフェルトとは異なり、靴底のソフトなアルミ製のバーは水中でのグリップ力を向上させます。そしてアルミニウムは侵略種に対する防御策ともなり、河川や湖の健康を向上させる一助となる可能性もあります。

アジアンカープやラッフやクワッガガイといった非自生種は、たいてい餌バケツ、船底、フェルト底のブーツなどによって川の上流/下流へ、そしてまったく新しい水域へと密かに運ばれてしまいます。これらの侵略種が新しい地域に出現することは、自生の食物連鎖や種にとって大きなトラブルの兆しです。フェルトではなくアルミニウムを使うことで、水辺で仕事をする人びとが効果的にギアを乾かし、ウェーディングや移動の合間にきれいにすることができます。

もちろん、アルミニウムは限りある資源で、その発端は環境に悪影響を与えます。ボーキサイト採掘は周辺地域に打撃をもたらす可能性があり、アルミニウムが無責任に採掘されれば、生息地の破壊、水の汚染と土壌の崩壊が蔓延します。その一方、アルミニウムは100%リサイクルが可能で、この用途においては業界の現行水準をはるかに上回ります。私たちは侵略種の蔓延を遅らせるという利点を考慮した上で環境においてはわずかながらの利点があると判断し、より良い解決策が見つかるまでこれでいくことを決断しました。

「シュイナード・イクイップメントで「バッシー」というものを作ったのがきっかけでアルミニウムを使いはじめた。グリップ力の良いとてもソフトなアルミニウムを採用した。最初のフライフィッシング用ブーツの試作品はフェルト底にアルミのバーを数本ねじ込んだものだった。ブリティッシュ・コロンビアのスチールヘッド釣りに1年ほど使って消耗したので、いくつかの改良を施した。それから着脱可能なクランポンに取り組んだ。これを履いているととても安定感があるよ」

イヴォン・シュイナード
パタゴニア創業者/製品デザイナー

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