「スウェル号」に戻る途中のリズ・クラークと猫のアメリア(船には水嫌いのアメリアが誤って海に落ちたとき登れるよう、猫用はしごを装備)Photo: Jody MacDonald
「スウェル号」に戻る途中のリズ・クラークと猫のアメリア(船には水嫌いのアメリアが誤って海に落ちたとき登れるよう、猫用はしごを装備)Photo: Jody MacDonald

素晴らしき友:トロピキャットの「アメリア」

By リズ・クラーク   |   2015/03/30 2015年3月30日
「スウェル号」に戻る途中のリズ・クラークと猫のアメリア(船には水嫌いのアメリアが誤って海に落ちたとき登れるよう、猫用はしごを装備)Photo: Jody MacDonald
「スウェル号」に戻る途中のリズ・クラークと猫のアメリア(船には水嫌いのアメリアが誤って海に落ちたとき登れるよう、猫用はしごを装備)Photo: Jody MacDonald

これまでの9年のあいだ「スウェル号」に乗船したペットは何匹かいた。そのほとんどは勝手に乗り込んできた連中だった。蓄えのバナナによく現れるヤモリなどは気にしない。ヤモリはいつも隠れているので、滅多に見ることはないし無害のうえ、夜になると可愛く咳をしたりする。数々のアリをもてなしたこともあった。微毛で覆われた小さな黒アリから巨大で艶やかな赤アリまでいろいろ。ときどき飛びまわるスズメバチの集団がスピンネーカー・ポールに棲むことがあるが、互いに干渉しないようにしている。かつて、どこからとなくコオロギが現れたこともあった。その姿を見たわけではないが、夕刻に奏でるセレナーデに酔いしれた。いつかその音色は聞こえなくなったけれど。カリフォルニアへ旅に出ていたあいだには、スウェル号を停めていたボートヤードからネズミの新婚カップルが乗り込み、麗しい4匹の赤ちゃんネズミを出産して育てあげた。ネズミたちは船首から船尾にいたるまでスウェル号船内を探索し、嚙みつぶし、糞を散らかした。ただこのネズミたちの物語はかなり残酷な結末で終わることになった……私と一緒にキリバスまで航海した多産なゴキブリ家族も同じだ。

でもアメリアは違った。2013年11月の宿命的な午後、私が彼女を見つけたのか、彼女が私を見つけたのかは知らないが、私たちが一緒になる運命にあることは明らかだと感じた。そのとき彼女は痩せこけた若年者だった。生後6か月くらいで、食べ物と愛情に飢えていた。その威厳ある雌ライオンのたたずまいと気ままな空いばりに、食べ物と愛情の両方を与えてやりたいという気にさせる何かがあった。何年にもわたる旅のなかで、引き取りたいと夢にまで見た哀れな犬や猫は数限りないが、何の決まりもない私の放浪生活に引きずり込むのは正しくないように思えた。船長の義務はあるし、ペットの世話をきちんとできるかどうかも自信がなかった。あの日、いったい何を思ったのかよく分からない。ただ、彼女を置いたまま離れていくのは耐えられなかったことだけを憶えている。私は彼女にアメリアと名づけた。敬愛される伝説の女性飛行士アメリア・イアハートにちなんで。どちらも冒険欲があることをすぐに感じたからだった。

12×3メートルの滑りやすいグラスファイバーの塊に乗り、まわりをつねに海に囲まれている暮らしは、私たちが出会ったときアメリアが馴染んでいた、人気のない山荘での一人ぼっちのジャングル暮らしとは極めて対照的だった。そんな新しい状況でも彼女がたじろいだのはわずかな期間だった。彼女はスウェル号のあらゆる片隅やロッカーを毎日のように徹底的に捜査し、生きているものを見つけては苦しめた。ぶんぶん音を立てるハエの振る舞いは嫌がったものの、ついには待ち伏せて襲った。餌のボウルに鼻を押し付けて食べ、ドジャーの上から夕日を眺め、船首で薄明かりの夜明けを過ごしながら近辺の魚を凝視した。水面上に張り出した綱を渡るという曲芸をしたため船外への転落事故を何回か起すことにもなり、すぐに海を怖がるようになった。泳ぐことは嫌ったが、驚くほど泳ぐのが得意だった。ゴムボートにはい上がり、帆船に戻ってきた。私がいないときに落ちるのではないかと心配だったので、細長い古タオルで猫用のはしごを作り、ボートの横から海の中へとぶら下げた。ある朝、サーフィンから帰ってくると、濡れた毛を激しく身づくろいしていた。あのはしごを十分役立てたのは明らかだった。

写真:リズ・クラーク
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アメリアは出来るかぎり主役でいたかったので、勝手にやらせることにした。まるで世界中が彼女を懲らしめようとしているかのように、いつも狡猾で決然たる表情を呈していたが、先制攻撃をかけるのは彼女の方だった。彼女はミステリー映画のスターであり、いつも何らかの任務を背負ったセクシーで冷酷な秘密諜報員だった。私がキャビンから出てくると、決まってサンシェードの上から忍び寄って私の頭に激しく飛び掛ったり、キャビンの端から突然襲ってきたりした。船に沿って泳ぐ魚や船の上を飛ぶ鳥にもしつこく接近した。私はマストにヨガマットを巻き付けてキャットツリーにしたり、あちこちに紐をくくり付けたり、釣り台を作ったり、ヤシの葉を見つけたらいつも持って帰ってきて、それを振りまわし、追いかけて遊ばせたりした。彼女は休憩のときには少し贅沢して、ドジャーの下にある柔らかなベッドに気ままに脚を伸ばして寝転がった。あちこちの他の帆船を訪れたときには、何か殺すものがいないか徹底的に探しまわったあと、迷うことなく必ずイベントのど真ん中に座り込んだ。でも結局のところ、トロピキャット(熱帯猫)のアメリアは短絡的思考で、狩猟以外のことは考えられなかった。

写真:リズ・クラーク
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追伸:その後、この記事がクリーネストラインUS版に投稿された後、日本版に投稿される前、彼女が帰ってきました!リズがインスタグラムに投稿したビデオをご覧ください。