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Go Renewable 2015:ウランや化石燃料では資源小国、自然エネルギーでは資源豊かな国、日本

大林 みか  /  2015年3月9日  /  読み終えるまで6分  /  アクティビズム

東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所の事故から四年経っても、日本のエネルギー政策は混迷したままだ。自然エネルギー拡大を阻止するような動きが始まり、将来に向けた目標値も決まらず、電力システム改革(発送電分離)の歩みも遅い。

大きな原因は、原発再稼働だけが日本のエネルギーの最重要課題であるかのように検討されていることにある。すべての原子力発電所が止まって一年半が経とうとしているのに、「(原発が復帰したら)系統が一杯になるので自然エネルギーを導入できない」、「(原発がまだ動き始めてないので)将来のエネルギー目標は定められない」、「(原発が動く確証がないので)電力会社の経営状態が厳しく、競争に入れない」などと、当たり前のように語られている。

いつ動くかわからない原子力発電所の運転開始を待ってエネルギー政策の改革を遅らせるのは、日本にとって大きな経済的な損失ともなっている。というのも世界では、格安の自然エネルギーの拡大が今までにも増して加速しているからだ。

2014年単年の太陽光発電の増加は約45百万kW(HISによる)で、世界全体で合計約1億8千万kW となった。風力発電は52百万kW以上増加し(世界風力エネルギー会議による)、世界全体で合計約3億7千万kWとなった。どちらも毎週約 100万kW近くの容量を伸ばしている計算だ。IAEAによれば、現在の世界全体の原子力発電所の容量は、日本の原発すべてを入れて約3億8千万kWである。2015年に入って10週間が過ぎているので、先に述べた速度だとすでに風力が原発の容量を追い越している頃だろう。

地域でみると、特に顕著なのが中国で、一年間で太陽光は約13百万kW、風力はなんと23百万kWが導入された。全体の風力導入量は1億 15百万kWに達したとされ、実に中国には、世界全体の風車の3割が回っている。一方で中国は、2020年までに今の20百万kWの原発を58百万に増やす計画があるという。しかし実は太陽光には1億kW、風力には2億kWという目標がある。すでに太陽光は約32百万kW、風力は約1億15百万kWが導入されていて、風力については前倒しで達成する可能性が高い。電力量では、現在も中国の風力発電量は原発を上回っているが、さらに上回る事になる(一方原発については、いままでの中国の原発計画の「歴史」から、また、現在建設中のkWからみても、現状計画は達成されそうにない)。

この伸びの背景にあるのは、自然エネルギーのコストがどんどん下がっているという事実だ。米国環境省の2013年の報告書によれば、風力発電の平均価格は補助金抜きで1kWhあたり約6円だったのが、2014年の報告書では1kWhあたり5円に低下した。高いといわれる太陽光も、2014年11月にブラジルで実施された入札で平均価格が9円で、火力や原子力よりも安かった(ブラジルではすでに風力は安すぎるとして入札対象から除外されている)。インドでも、10月に実施された入札で太陽光発電の価格が9円で、オーストラリアから輸入した石炭で供給されている電力の市場価格よりも安かったという。2015年1月に発表された国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の報告書によれば、2000 年から2014年の過去五年間で、太陽光結晶パネルの平均価格が75%も低下している。世界の多くの地域ですでに自然エネルギーのほとんどが、化石燃料による発電と同じか、より安いコストで発電しているのである。

2012年に導入された固定価格買取制度の効果により、日本でも自然エネルギーが急速に拡大している。発電電力量もそれまでの1%から 3~4%へと飛躍的に伸びた。最新データによれば、2014年11月末までの2年5ヶ月間で15百万kWの自然エネルギーが導入された。事業化を図って登録中の設備は約6千万kW近くにのぼる。そのほとんどが太陽光発電であり、全部がすぐに系統につなげられるわけではないが、少なくとも、全体で75百万kWの新たな太陽光の事業可能性が明らかになったのだ。

だが、昨年秋に突然発表された電力会社による自然エネルギー電力への接続回答保留と、それに続く国の「無補償・無制限の出力抑制制度」の導入は、この事業可能性を潰してしまう。無制限に出力抑制されるとしたら、そんな事業に融資する銀行はないからだ。自然エネルギー事業は必然的に小規模地域分散型になるので(原子力や火力のように、一基で100万kWという電源はない)プロジェクトごとのファイナンスが基本だが、どのくらいリスクを抱えるかわからない事業には融資できなくなる。

風力や水力や地熱もバイオエネルギーも、他国に比べて高い買取価格が設定されているのに太陽光のように伸びていない。価格を高く設定しただけでは自然エネルギーは伸びないのだ。太陽光がこれだけ伸びたのは、基本的に土地制約がない(どこにでもつけられること)という太陽光の特徴と、ひいては系統接続が他の電源に比べて容易だということが大きな要因である。つまり逆から考えれば、日本で自然エネルギーが拡大してこなかった原因がここにある。価格を高く設定しても、系統に接続されなければ導入されないのだ。

その一番大切な系統を握っているのが電力会社である。2020年には発電と送電の分離という形で、送電網のより中立的で公平な運用が実現する。 しかし前述の、世界での自然エネルギーの拡大を見ていたら、そんなことをうかうか待っていられるような状況にはない。今や自然エネルギー導入で有名な欧州の国々や、米国のカリフォルニア州やテキサス州などだけでなく、中国やブラジルやインドやあらゆるところで、自然エネルギーの爆発的普及が始まっている。これらの国や地域は、いち早く、安全で、地球温暖化に貢献しない、低価格で豊富なエネルギーを手に入れてどんどん先に進んでいる。

日本の自然エネルギー資源も技術も、他国に比べて大きな可能性に満ちている。日本はウランや化石燃料では資源小国だが、自然エネルギーでは資源豊かな国だ。日本に豊富にある自然エネルギーを利用して、豊かな日本の社会を作る時なのだ。

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