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バーティカル・セーリング・グリーンランド2014:パート3「文明社会への帰還と登攀概要」

ニコ・ファブレス  /  2015年10月26日  /  読み終えるまで10分  /  クライミング

ギブス・フィヨルドのプランク・ウォールで雪に埋もれていない「Walking the Plank」のオフィズスを楽しむニコ。写真提供:ワイルドな一団

2か月ぶりのシャワーはどう表現したらいいのだろう……うーむ。

グリーンランドの文明社会にたったいま戻ったところ。この3週間はいろんな意味でとにかくエキサイティングだった。冒険的なクライミング、ホッキョクグマとの近接遭遇(しかも丸腰)、そして吹雪のなかで巨大なうねりに揉まれながらのグリーンランドまでの超怖い横断。永遠につづくかのように見えるこの種の旅は、熱いシャワーを浴びてはじめて冒険の終わりを実感する。その分シャワーの気持ちいいこと。

(編集者記:シェプトン船長とワイルドな一団の旅のパート1パート2もお読みください。)

3週間前、僕らはサム・フォード・フィヨルドを出てギブス・フィヨルドの探索へと向かった。サム・フォード・フィヨルドの強烈な天候はついにやわらぎ、青空が顔を出した。デッキで気持ちよく日光浴をしながら山々やビッグウォール、フィヨルドに浮く氷河や氷山の神秘的な景色を満喫した。しかし9月初旬だったので日に日に気温が下がり、日焼け止めを塗る部分はどんどん小さくなっていった。

これほど長いあいだ帆走しているのに人の気配がまったくないのが驚異的だ。終盤は、燃料切れの心配があったので風がほとんどないときも帆だけを頼りにゆっくりと、水を切りながらあたりを偵察した。

そしてついに、目玉となる課題を見つけた。ギブス・フィヨルドは前人未到の見事な壁が無数にあるのだ。すかさず切り立った長く美しい北壁のカンテに目が行った。南向きの壁がいくつもあったが、どういうわけかいちばん興味をそそられたのは北壁だった。この時期に北壁をフリー登攀するのが寒いことはわかっていたのだが。

バーティカル・セーリング・グリーンランド2014:パート3「文明社会への帰還と登攀概要」

クライミングに向かうショーンとニコを下ろしたあと、安全な投錨地に戻っていくドドズ・デライト号。バフィン島、ギブス・フィヨルド 写真提供:ワイルドな一団

翌日、ショーンと僕はその北壁に向かい、ベンとオリは危険をともなうクライミングに全力投球するのは止めて、山の頂上までハイクすることに決めた。青空はふたたび灰色に変わって雪をちらつかせ、霧の帯が登攀に趣を添えた。2時間ほどすると壁はベタつく雪にうっすらと覆われた。ありがたいことにルートは急峻だったため、壁の下部にはたいして雪が積もらず、今回の旅でも有数の岩質を堪能できた。

しかし壁の上方に行くとさらに手応えのあるコンディションになった。なんと岩に雪がこびりついていたのだ。スコットランドの有名なクライミングのメッカ、ベン・ネビスを思わせたが、僕たちがやっているのはフリークライミングで、雪が詰まったクラックに指を押し込み、寒さでしびれた足は絶えず滑った。こんな状況でフリークライミングが可能だとはまったく思ってもみなかった。休める場所があるたびに止まり、かじかんだ指を温めなければならず、簡単なムーブでさえ滑り落ちないよう細心の注意が必要だった。過酷な登攀だったが、魅惑的な雰囲気にまかせて僕たちは登りつづけた。ありがたいことに雲が切れ、最後の300メートルは霧の帯の上だった。ついに、まともな天候下で、ルートを終えられることにほっとした。日暮れとともに美しい未登の頂に到達した僕らは満足感とギブス・フィヨルドの独特な景色を楽しんだ。こんなコンディションでまたフリークライミングをしたくはないが、この登攀は一生忘れることのない特別な体験となった。

バーティカル・セーリング・グリーンランド2014:パート3「文明社会への帰還と登攀概要」

「Walking the Plank」を登るショーン。写真提供:ワイルドな一団

ベン・ネビス級のコンディションでフリークライミングすることが可能だとは考えたこともなかった。指先と足にふたたび血が戻ってきてはじめて満足感という報酬を味わった。

ショーンと僕が寒さと雪のなかで苦闘するあいだ、ベンとオリは太陽の下で安全なはずの山道の散策を楽しんだ。1か月ほどホッキョクグマの姿を目にしていなかったので僕たちはピストルを持たずに陸地に上がるようになっていて、この日もベンとオリは岩と氷河でできた山にホッキョクグマなどいるはずがないと判断した。2人は頂上でしばらく景色を楽しんだあと下山しはじめた。そしてなんと30分後、突然ホッキョクグマがほんの15メートル先のボルダーの後ろから現れた。巨大な猛獣だったが、2人が大声でしゃべっていたのが幸いし、クマは驚いて逃げ去った。

ボートに戻ってから2人は考えた。なぜこのホッキョクグマは餌がまったくない人里はなれた山の中にいたのだろうか。そうだ、クマは山頂までの3時間、2人のあとをついてきたのだ。「餌」のいい匂いがしたからこそクマはそこにいたのに違いない。ベンとオリは本当にラッキーだった。自分に向かって真っ直ぐ歩いてくる2人にクマの方がたまげたのだから。それ以来、僕たちはもう少し用心深くなった。

バーティカル・セーリング・グリーンランド2014:パート3「文明社会への帰還と登攀概要」

バフィン島沿岸から160キロメートルの沖合で氷から氷へと渡り歩くホッキョクグマの家族。写真提供:ワイルドな一団

バフィン島での終盤は日に日に冬の到来を感じた。沿岸の海水が凍りはじめ、雪線は海水位まで下がった。まだまだやりたいことはたくさんあったが、そろそろグリーンランドに戻る時期だった。荒海の予報だったので、冒険がまだ終わっていないことは察していた。厳しい雪と寒さのいかにも手強い横断だったが、とくにグリーンランドが視界に入ってからが最悪だった。目的地からわずか10キロメートルの、横断上いちばん厄介な場所で大嵐に見舞われたのだ。いきなり大きな波が襲ってくるなかで、数々の岩や浅い箇所を縫うように通り抜けなければならなかった。ボートは波に衝突し、僕たちはびしょ濡れで寒さに震えた。幸い小さな島の後ろにシェルターを見つけ、ついにはシシミウトの入り江に無事到着した。それが冒険の終わりだった。

またしても、帆走とクライミングが完璧な組み合わせであることが立証された。

ベルギーにて、

ニコ

バーティカル・セーリング・グリーンランド2014:パート3「文明社会への帰還と登攀概要」

2度の試みに失敗したあとの勝利は格別! サム・フォード・フィヨルドのウォーカー・シタデルの上に立つニコとオリ。写真提供:ワイルドな一団

登攀概要

今回の旅ではボルトもピトンもいっさい使わないアルパインスタイルで400メートルから1,000メートルの新ルート10本を開拓した。ボートをベースキャンプおよび岩場への移動手段に使用。

グリーンランドのウマナック地方に5本のルートを開拓。4本はバフィン島のサン・フォード・フィヨルド、1本はバフィン島のギブス・フィヨルド。GPSの座標はルート起点の反対側の海から計測。

ウマナック地方

イケラサック・ピーク

Married Mens’ Way, E3, 5.10, 400メートル

この山の左稜を辿る。初登(フリー):オリ・ファブレス、ベン・ディト、2014年7月13日

Crocodiles Have Teeth, E5, 5.11b/c, 400メートル

メイン・フェースの右エッジ。頂上で右に移動しオーバーハングのクラックで終了。初登(フリー):ニコ・ファブレス、ショーン・ヴィラヌエバ、2014年7月13日

下降:山の後ろ側を徒歩で下山

カクッドラスィット

ゴリアテ・バットレス初登(700 41N 510 13W)

Standard Deviation, E4, 5.11, 500メートル

バットレス左側のラインを登攀。玄武岩の帯に脆い岩あり。初登(フリー):ニコ・ファブレス、ベン・ディト、2014年7月17日

Slingshot, E3, 5.10, 500メートル

バットレス右側のラインを登攀。初登(フリー):オリ・ファブレス、ショーン・ヴィラヌエバ、2014年7月17日

下降:後ろ側を徒歩で下山

ドライゴルスキ・ヘル

ファンキー・タワー初登(700 35N 510 16W)

No Place for People, a.k.a. Sunshine and Roses, E6, 5.12a, 500メートル

壁の左側にある傾斜のある変化の多いテクニカルなライン。脆い岩多数、とくに頂上尾根へのテラスの斜面。初登(フリー):ショーン・ヴィラヌエバ、ベン・ディト

下降:後ろ側を徒歩で下山

バーティカル・セーリング・グリーンランド2014:パート3「文明社会への帰還と登攀概要」

ファンキー・タワーを登るショーン。写真提供:ワイルドな一団

バーティカル・セーリング・グリーンランド2014:パート3「文明社会への帰還と登攀概要」

「No Place for People, a.k.a. Sunshine and Roses」の2ピッチ目を登るベンとショーン。写真提供:ワイルドな一団

サム・フォード・フィヨルド

ラーキング・タワー(マイク・リベッキが命名。700 35N 710 17W)

Up the Creek without a Paddle, E5 6a, 5.11+, 500メートル

右側の凹角ではじまり、クラック、ルーフを経て頂上。7ピッチ後はリベッキのエイドルートをエイドもボルトも使用することなく辿る。フリー初登:ショーン・ヴィラヌエバ、ベン・ディト、12時間、2014年8月15/16日

下降:後ろ側を徒歩で下山

バーティカル・セーリング・グリーンランド2014:パート3「文明社会への帰還と登攀概要」

叢氷が溶けるのを待ちながらグリーンランドで1か月過ごしたあと、約束の地であるサム・フォード・フィヨルドに到着。写真提供:ワイルドな一団

バーティカル・セーリング・グリーンランド2014:パート3「文明社会への帰還と登攀概要」

ようやくサム・フォード・フィヨルドにたどり着くと、3週間の悪天候との根比べがはじまった。それでもなんとか面白いボルダリングのセッションを割り込ませることができた。写真提供:ワイルドな一団

スーパー・アンノウン・タワー

Imaginary Line, E3 5c, 5.10+, 1000メートル

タワー右側の赤色の岩溝とクラックをほぼ頂上まで辿る。核心ピッチはとくに湿気と雪に見舞われた岩溝の上から頂上まで。これはスーパー・アンノウン・タワーの第2登だった。フリー初登:ショーン・ヴィラヌエバ、ベン・ディト、2014年8月21/22日

下降:切り立ったオリジナルのエイドルートを懸垂下降

バーティカル・セーリング・グリーンランド2014:パート3「文明社会への帰還と登攀概要」

「Imaginary Line」を懸垂下降中。写真提供:ワイルドな一団

ウォーカー・シタデル

南東ピラー(ドランケン・ピラー)初登(700 50N 710 43W)

Shepton’s Shove, E6 6b, 5.12a, 1000メートル

取り付きからピラーの頂上とへつづく顕著なカンテ。核心は頂上部分。初登(フリー):ニコ・ファブレス、オリ・ファブレス、2014年8月23/24日

下降:別の頂上まで南へ歩き、湖につづくガリーを徒歩で下山

バーティカル・セーリング・グリーンランド2014:パート3「文明社会への帰還と登攀概要」

「Shepton’s Shove」の威圧的なトラバースに挑むニコ。写真提供:ワイルドな一団

バーティカル・セーリング・グリーンランド2014:パート3「文明社会への帰還と登攀概要」

23ピッチ目。午前1時。ウォーカー・シタデルの東ピラーの3度目の挑戦でまたしても吹雪に見舞われる。氷と雪の凹角を楽しむオリ。写真提供:ワイルドな一団

タレット

タレット東壁初登

Life on the Kedge, E6 6b, 継続した5.11/5.12のグレード、900メートル

タレットの下から上まで伸びる象徴的なチムニークラックのすぐ右側のバットレスからスタートし、オレンジ色のピラーを登る。途中、ラインが左側に向かい、次から次へとクラックが出現! 初登(フリー):ニコ・ファブレス、オリ・ファブレス、2014年8月28/29日

下降:頂上から10本の懸垂でスイス・ルートを下降

バーティカル・セーリング・グリーンランド2014:パート3「文明社会への帰還と登攀概要」

開拓したすべてのルートはアルパインスタイルで登攀。フレンズとナッツのラック、食料、水だけを持ち、ノンストップで頂上までプッシュ。バフィン島のタレットの驚くほど完璧な一連のクラックのあと、ついに理想的なホールドをつかむオリ。写真提供:ワイルドな一団

バーティカル・セーリング・グリーンランド2014:パート3「文明社会への帰還と登攀概要」

タレットの完璧なスプリッター・クラック。これより素晴らしいクラックはあるのだろうか。頂上まであと数ピッチのニコ。サム・フォード・フィヨルド。写真提供:ワイルドな一団

ギブス・フィヨルド

プランク・ウォール初登(700 50N 710 43W)

Walking the Plank, E4 6a, 5.11+, 900メートル

カンテのやや左側を登攀。急峻なクラックと素晴らしい岩での質の高いクライミングだ!しかし、北向きの壁でほとんど日が当たらない。雪に覆われた箇所あり。初登:ニコ・ファブレス、ショーン・ヴィラヌエバ、2014年9月4/5日

下降:同ルートを懸垂下降

バーティカル・セーリング・グリーンランド2014:パート3「文明社会への帰還と登攀概要」

「Walking the Plank」の雪のないオフィズスを堪能するニコ。写真提供:ワイルドな一団

バーティカル・セーリング・グリーンランド2014:パート3「文明社会への帰還と登攀概要」

「Walking the Plank」を登るショーン。写真提供:ワイルドな一団

バーティカル・セーリング・グリーンランド2014:パート3「文明社会への帰還と登攀概要」

航空会社の追加手荷物料金を逃れるためには、特別なスキルと耐熱性が必要だ。グリーンランドから戻る際の空港で、僕らの手腕は見事に成功。写真提供:ワイルドな一団

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