ヨーロッパからの見解:包括的貿易投資協定(TTIP:Transatlantic Trade and Investment Partnership)に反対します
先週〈グリーンピース〉が、提案されている包括的貿易投資協定(TTIP)の交渉中の文書と内部見解を示す文書248ページを漏洩しました。これにより、関与しているヨーロッパの28政府、EUおよび米国間の深い亀裂が明らかになりました。
〈グリーンピース〉のレポートにより、ここヨーロッパでは混乱が引き起こされました。フランス政府は目下のところこの協定に反対しているという声明を出したほどです。すでに3年以上にわたる交渉はいま、危機に面しているようです。
この協定に賛成する者も反対する者も、貿易障壁は長期にわたってすでに取り除かれており、TTIPはそのためにはほとんど役に立たないことを認めています。その代わりその焦点は、米国よりもヨーロッパで一般的に強靭な環境、健康、動物福祉水準を調和させることです。
その最適な例が遺伝子組み換え生物(GMO)です。欧州連合は「予防原則」を採用しており、未知あるいは未評価のリスクをもたらす新しい工程および技術を閉め出すものです。予防原則に導かれて、欧州連合はわずか5か国および欧州の耕作地の1.5%のみで栽培されている特定種の(欧州では「マイーズ」と呼ばれる)コーン、わずか1種の遺伝子組み換え植物を許可しています。
それとは対照的に、アメリカは別の道をたどっています。アメリカは新しい未検査のものの採用に、より寛大で、その結果として生まれる環境リスクを管理しようとします。アメリカは予防原則を諦め、170以上の遺伝子組み換え植物の栽培を許可しています。アメリカ中西部の大部分が遺伝子組み換えコーンと大豆の単一栽培に晒されているのです。
私たちは長らく欧州連合のGMOやその他の環境および社会的水準についての信念あるアプローチを称賛してきました。TTIPはそれらすべてを危機に晒します。この場合の「調和」がつながるのは、底辺への競争です。
パタゴニアはTTPと同じように、貿易水準の調和が潜在的に自社の経営に有利だとしても、労働および環境慣行を劣化させ、その強化を妨げるTTIPに反対します。大西洋の反対側で、人間と環境の健康および動物福祉のより低い水準を目撃したくはありません。私たちは地元地域と国々には、企業主体の環境と社会水準の窮乏化からみずからを保護する権利があると信じています。
調印されたもののまだ執行されていないTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)と同様、漏洩されたTTIPの草稿には憂慮すべき投資者と州の紛争解決機構が含まれます。
それは参加諸国が協定で定められたレベルを超えて環境保護法を強化した場合に失われる利益の返還を求めて、外国の多国籍企業が訴訟を起こすことができるというものです。ヨーロッパ政府がフラッキングを禁止することを妨げる規定のために、シェブロン社はロビー活動をしたと報告されています。
パタゴニアは1990年代初期にNAFTA(北米自由貿易協定)とGATT(関税と貿易に関する一般協定)に反対しました。これらの協定が私たちのビジネスに悪影響を及すことを懸念したからです。そしてそれは実現しました。それらの協定が執行される以前、パタゴニアの衣類の半分以上がアメリカの繊維工場や縫製工場で作られていました。NAFTAとGATTは、とくに専門としていた高価値の製造業者を含む、アメリカのアパレル産業を全滅させました。
自由貿易の時代において、新たな協定について問うべき重要な質問は、「誰が恩恵を受けるのか」です。我々の地球の公害、水不足、気候変動という壊滅的なプレッシャーは軽減されるのでしょうか。TTIPは大西洋両側の多くの人にとって有益なのでしょうか。それともごく少数の人、つまり不透明で一般の監視なしに自分の利益を法律にしてしまえる経済的/政治的権力をもつ人にとって有益なのでしょうか。 TTIPの裏に存在する利害が明るみに出るにつれて、いまのところ、理解可能なこの協定に反対するのはしごく容易です。
stop-ttip.orgに署名し、TTPIおよびCETAに反対する欧州イニシアチブを支持しましょう。