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シンプルなフライから学んだこと

シンプルなフライから学んだこと

By イヴォン・シュイナード   |   2016/10/31 2016年10月31日

イヴォン・シュイナード 

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私がこれまでにやってきた――登山やホワイトウォーター・カヤックから、スピアフィッシングや道具作りまで――さまざまなアウトドアへの探求や、手作業で何かを作ることにおいては、初心者からベテランへの進歩とはいつも、複雑さからシンプルさへの旅だった。イラストレーターがアーティストになるのは、より少ない筆さばきでメッセージを伝えることができるようになったときだ。

フライフィッシングはまったく逆方向に進んできたように思う。必要以上に複雑で金のかかる娯楽となり、何百種ものフライラインやハイテクロッド、あるいはトラックを止められるほどのドラグを備えたリールを選べる。アングラーならトラウトやサーモンの走りを止めるにはシンプルなドラグで十分だとわかっているにもかかわらず、釣り産業に不安感を煽られて、最新のギアと最新のフライを装備しないと釣りが楽しめないような気になる(正直、私も複数のロッドとリールを所有しているし、ある種のメイフライの特定の成長段階を正確に疑似するフライが見当たらないと悪態をついている自分に気付いたこともある)。

今から30年以上前になるが、私は紀元2世紀にクラウディウス・アエリアヌスが描写した、フライを使うフライフィッシングの元来の方法を習った。これは現代的な釣り具を買う余裕がない地域の釣り人のほか、いまもスペイン、イタリア、日本で実践されている方法だ。このシンプルなテンカラ釣りを北米の大きな川で試してみるとじつによく釣れ、私はテンカラ・ロッドとソフトハックルのウェットフライ(スパイダー)という組み合わせが、フライでのトラウト釣りに最も有効だと確信した。

以前はソフトハックルを別のフライと使っていたのだが、やがて魚がフェザントテール&パートリッジのフライに食いつくことが多いのに気付いた。それなら、ほかのフライを使う必要はないのではないかと考えて、シーズンを通して1種類のフライでどれだけ釣れるか試してみることにした。

 

 

 

 

釣りの大半の「新しい」考えと同じように、1種類のフライだけを使う試みは、私が最初ではなかった。サーモンのグリースドライン・フィッシングを支持するアーサー・ウッドは、あるシーズンはマーチブラウンだけ、別のシーズンはブルーチャームだけを使い、どちらのフライでも大差なくたくさんのサーモンを釣った。『Streamside Guide to Naturals and Their Imitations』の著者でキャッツキルのアングラー兼フライタイヤーであるアート・フリックも、おもにグレイ・フォックス・ヴァリアントだけを使うようになった。ジム・ティーニィにいたっては1971年以来ティーニィ・ニンフしか使っていない。マドラーミノーだけを使うカナダ屈指のサーモン・フィッシャーマンがいて、スカンクだけを使うスティールヘッダーもいる。私の計画はトラウト、サーモン、海水魚釣りにフェザントテール&パートリッジだけを使うというものだった。

何年も前に、アメリカ人アングラーのジョージ・ラブランチがトラウト釣りのドライフライの使用をあらゆる側面で考察し、それぞれの重要性をランク付けした。その結果、1位は水面でのフライの位置、2位はフライのアクション、3位はフライのサイズ、4位はフライの形、5位はフライの色だった。私はウェットフライを使って釣るときはフライのアクションが最も重要で、フライのサイズとプレゼンテーションがそれにつづくと考えている。フライフィッシャーの多くは形と色にこだわりすぎているのではないだろうか。

フェザントテール&パートリッジ(P.T.)は、メイフライとカディスをかなりうまく模倣するニュートラルなフライだ。そのルーツはデイム・ジュリアナ・バーナーズが当時英国で使われていたウェットフライのパターンを1496年の論文に描写したころに遡る。エイボン川の管理人だったフランク・ソイヤーは近代のフェザントテールニンフの開発者であると考えられ、さらにそれ以前、ジョージ・スキューズはすでにフェザントテール・ソフトハックルフライを巻いていた。

Chris典型的なイタリア料理は完璧な材料を5種類使うだけ。フェザントテール&パートリッジもそれと同じようにシンプルだ。写真:Chris Gaggia

1種類のフライだけを使う私の試みは、2015年の冬と春にバハマとキューバの浅瀬でP.T.を使ったときにはじまった。さんざん釣られたボーンフィッシュは非常におびえるようになる。もしストリッピングしてフライを泳がせたときにボーンフィッシュが「爆発」したら、それはおそらく魚があまりに多くのピカピカのフックや光る目やフラッシャボウを見てきたからだ。
私はソルトウォーター用のP.T.を#6と#8のブロンズフックに巻いた。雷鳥の首の後部からとった長いハックルを使い、2つ一緒に巻いて、よりふさふさに見えるようにした。小さくストリッピングすると、ハックルはまるでクラゲやエビのように振動する。この地味な茶色のフライは慎重になっているボーンフィッシュを怯えさせることもなく、また普段は明るい色のフライを使う砂底の上でさえよく機能した。それ以来、数多くの海水魚にP.T.を使ってきた。

ワイオミング、モンタナ、アイダホでの春と夏のトラウト釣りでは#10のP.T.をアトラクターとして使い、ハッチに遭遇すると適切な大きさのものに変えた。生き餌の色や種類(メイフライ、カディス、ストーンフライなど)にかかわらず、適切なサイズのP.T.はもっと本物に近いイミテーションフライよりもよく釣れた。

「フライにアクションを与えることの重要性はいくら強調しても足りない」

私の基本的なウェットフライの手法はいたってシンプルだ。下流に向かって45度の角度でキャスティングし、ラインをメンディングしてスイングの速度を落とす。ラインがまっすぐになりはじめたらロッドをゆっくりと上げてラインをさらにまっすぐにし、ロッドティップを使ってフライに小刻みなアクションを加えてトゥイッチングする。羽化中のカディスや古殻をもがきとろうとするメイフライに似せるのだ。十中八九、トゥイッチングのすぐあとにアタリがある。

テンカラ・ロッドの柔軟なティップはこの繊細なアクションを伝えるのにもってこいだ。ウェットフライのスイングを極めるうえでいちばん難しいのは適切なトゥイッチングだと言える。往々にして誰もがやり過ぎる。トゥイッチングが大きいとラインが緩み、魚にフライを吐き出す時間を与えてしまうのだ。

魚を怖がらせるのではなく、誘い出すのが狙いであることを忘れてはいけない。アタリがあってもフッキングが少ない場合は、魚が小さすぎるかラインに緩みがあるかのどちらかだ。

最新のファストアクションやミディアムアクションのロッドは、フライに動きを伝える設計になっていない。むしろ重いフライを魚の位置よりも向こうへキャスティングするように作られている。これらのロッドで通常の#5や#6のラインを使うと、ロッドの端でラインが緩み、トゥイッチングがフライに伝わらなくなる。最善策は水面までロッドティップを下げ、ほんの少しだけストリッピングをすること。ロッドとリールを使うときはケーンロッドか10フットの#2のロッドに#1のラインを付けて、ラインの緩みを避けている。またリーダーにノットを結び、水抵抗を大きくしてラインがまっすぐになるようにもする。

2つのフライを使うときは、約75センチ離れるように、大きいフライをポイントに、小さいフライをドロッパーに巻く。このシステムは水抵抗を高め、それぞれのフライに異なるアクションを与える。フライにアクションを与えることの重要性はいくら強調しても足りない。魚は捕食者である。家で飼っている猫を想像するといい。床の上でおもちゃのネズミをゆっくりと引っ張ると、猫は捕食者の構えになる。引っ張るのを止めて少しアクションを加えると、猫は急襲する。グリズリーベアやトラも走る獲物には目がない。

ウェットフライを使うテンカラ釣りはいたってシンプルだ。だが材料を5種類以上使わない典型的なイタリア料理のように、卓越の域に達するにはそれぞれの要素が完璧でなければならない。もちろん、魚を捕らえるのに達人である必要はない。私は8〜12歳の子供にテンカラ釣りを教えているが、10分のおさらいのあと子供たちは生涯初の魚をフッキングしている。私は魚をおびき寄せる微妙な動きも学んだが、これはなんとも説明しがたい。それは金庫破りの方法を教えるようなもの。

Fujiトラウトにとっては、スイング時の微妙なトゥイッチングがさまざまな虫の羽化に見える。写真:Katsumi Fujikura

7月上旬、私はラブラドールのホーク川のサーモンにP.T.だけを使う方法を試してみた。#10と#12の浅瀬のサーモン用フックにP.T.を巻き、おもにポートランドヒッチで釣った。すると1週間以内に成魚20匹と数匹のグリルス(若いサケ)が釣れた。

その後、アイスランドのHaffjardaraでも同様の幸運に恵まれた。ほとんどはグリルスだったので、フライに与えるアクションをより繊細にできる10フット#5のロッドを使った。

ヒッチフライでときどきトゥイッチングするのは、流れの遅い川でアタリを誘発するのにとくに有効だった。この方法がここでのサーモンに最も効果的な方法であることはもはや証明するまでもなかった。それ以来トラウト釣りにはP.T.のヒッチフライを使っているが、これは爆発的なアタリにつながることが多い。

9月には、ブリティッシュ・コロンビアのバビーン川で5日間のスチールヘッド釣りをした。初日は視程が15センチしかなく全滅だった。2日目は30センチまで見えるようになったが、魚に私の小さなフライが見えるとは思えなかった。色の濃い大型イントルーダーを巻いたシンクティップ・ラインを投げると小さなスチールヘッドが1匹釣れた。

3日目もまだ水中の自分のブーツは見えなかったが、水はだいぶ澄み、早瀬でパー(サケの幼魚)が盛んにカディスとグリーンドレイクを食べていた。パーにこれほど小さな生き餌が見えるのなら、成魚には私の#10のP.T.が見えるに違いないと確信した。案の定、大きなスチールヘッドが掛かりはじめ、ベニザケも2匹釣れた。シーズン終盤で、しかも海からかなり離れた場所としては非常に珍しい。

状況はますます良くなり、私はフローティングラインとポートランドヒッチのP.T.に変えた。従来の派手なスチールヘッド用フライをキャスティングしていた他のアングラーの後ろにいたにもかかわらず、P.T.は最大94センチの魚を捕らえた。

「アクションとサイズは種類と色よりも重要だ」

スチールヘッド用の大きなウェイキング・フライを使うと往々にして、ボイルはあってもアタリがない。これはフライが大きすぎるからに違いない。小さなフライではボイルだけということはめったにない。というわけで、この日私が使ったフライと手法は最も効果的だったと確信している。

疎河性魚はパーのときに虫を食べた記憶をもとにフライに食いつくのだという見方がある。そうであれば小さなフライが非常に役立つ理由がわかる。ハッチの場合はなおさらだ。人は自分を永遠のティーンエイジャーであるかのように考えるが、もしかするとサケやスチールヘッドもそうなのかもしれない。

晩秋と冬、ハッチがミッジやブルーウイングド・オリーブ(カゲロウの一種)だけというとき、ほとんどのアングラーはストリーマーやラバーレッグフライなど、いわゆるトム・マグウェインが「バービー人形の服」と呼ぶフライを前かがみになって投げる。だがミッジもブルーウイングド・オリーブも活発に動くので、緩く巻いた#20か#22のP.T.を水面でわずかにトゥイッチングさせるだけでも他のフライ同様に効果がある。

Mauroフライを使ってできることは、限られている。そしてある特定の種類のフライだけを使うのは、ギアマニアではなくより優れたフライフィッシャーを目指すのに有効だ。写真:Mauro Mazzo

私は生涯1種類のフライだけを使いつづけるのだろうか。タイイング・テーブルは茶色のフライばかりでパッとしないし、この方法に関して学べることはすべて学んだ気もする。アクションとサイズは種類と色よりも重要だ。いまでは小さなフライを使いこなす自信がある。何かを模すわけでもなく、たんに糸くずにしか見えないたった5本のクマの毛だけで作った#16のマデリンに、大きなサケがいったい何匹だまされたことか。魚は目に映るメイフライがスリーテールだろうがツーテールだろうが、まったく気にしないのだ。

この原稿を書いてから、マドラーミノーに関する知識をさらにどう深めるかを考えてきた。ごく小さなものを巻いてカディスに見せかけるか、ドライフライのフックに大きなものを巻いてホッパーのシーズンに使うか、または重みを加えてカジカやミノーやゴビーをまねるか……。浅瀬のサーモン用フックに巻いてサケやスチールヘッドを釣るのもいいし、あるいは巨大なものを巻いてターポンを狙ってもいいだろう。

選択肢が制限されると、創造力を使わざるを得なくなる。1年間フェザントテール&パートリッジだけで釣りをしてきた私は、その簡素な茶色のフライの使い方に関する知識を深め、魚そのものに対する理解もさらに深めた。この体験も、シンプルな生活を選ぶことは貧しい生活を選ぶことではないと教えてくれた。むしろ、シンプルさとはより豊かで満足感のある釣り、さらには暮らしに通じるということだ。

Lastイヴォン・シュイナードが巻いたフェザントテール&パートリッジ。写真:Chris Gaggia

 

フェザントテール&パートリッジ

フック:Dai-Riki #075 または Tiemco 3769(1X ショート、 2X ヘビー)
スレッド:ダークブラウン
リブ:コパーワイヤー
テール:フェザントテール・ファイバー
アブドメン:フェザントテール・ファイバー
ハックル:ハンガリアン・パートリッジ
ソラックス:ピーコック・ヘアライン・アイスダブ

タイイング・メモ:

・#075 Dai-RikiとTiemco 3769は最初に少し沈む類似のフックで、虫の羽化を模倣する。また短かめで、#12は#14に近い。
・コパーワイヤーを逆方向に巻いてアブドメンの耐久性を強化する。
・ハックルを1.5〜2回巻き込む。シーズン終盤の鳥の首のこわばった丈夫な羽を探す。
・ソラックスは最後に巻く。ボディにフラットにならないようハックルに当てて押し上げる。
・ソラックスは濡れると羽化中の虫の気泡に見える。これは一般的なソフトハッケル・フライの重要な改良点である。
・P.T.ドライフライを巻くときはドライフライフックだけを使う。ニンフを巻くときはブラック・タングステン・ビーズをハックルの前に加える。

 

これは『Fly Fisherman』と『Trout & Salmon』誌に掲載された記事の転載です。

 

イヴォン・シュイナードはサーファー、カヤッカー、鷹匠、登山家、フライフィッシャー、そして鍛冶屋。パタゴニア社のオーナーであり、『社員をサーフィンに行かせよう:パタゴニア創業者の経営論』、 『シンプル・フライフィッシング:テンカラが教えるテクニック』、『レスポンシブル・カンパニー:パタゴニアが40年かけて学んだ企業の責任とは』の著者。妻のマリンダとカリフォルニア州ベンチュラ在住。

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