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災難訓練計画

モーガン・ショーグレン  /  2017年9月19日  /  読み終えるまで8分  /  トレイルランニング

フレンチ・アルプスの未知の美に突入するモーガン・ショーグレンとジェン・シェルトン。 Photo: Andrew Burr

「1日20か30か50マイル、山を超えて走るだけよ。たいしたことじゃないわ」

ジェン・シェルトンからツール・ド・モンブランを走る旅程を受け取ったとき、中距離の陸上ランナー(5Kを専門)の自分の経歴が、(フランス、イタリア、スイスの)3か国をつなぐアルプスのテクニカルな地形で9,144メートルの標高を稼ぐ105マイル(168キロ)のツール・ド・モンブランには役立たずなことを知り、みるみる乾いていく口でゴクンと息を飲んだ。私はこの規模のスルー・トレイルランニングが必要とする典型的な準備に欠けてはいたが(4日どころか1週間でも合計105マイルを走ることはない)、人生最大の走りをするためにみずからを準備する意欲は熱く、新しい山系を探求する熱意とわずか5日の予告でシャモニ行きの飛行機に飛び乗った。

もちろん、この特定の方法は私、そしてランニング仲間のジェンと写真家のアンドリュー・バーが実際にツール・ド・モンブラン(以下TMB)を完走する援助にはならなかったが、土砂降りの雨とルート間違い、そして雪の積もった峠とちょっとした怪我のなか、わずか3日間で想像をはるかに超えた距離を走るのには有効だった。この災難訓練計画は決して科学的な公式でもルール本でもないが、自分のフィットネス、そして能力や経験のレベルをはるかに超えた何かに挑戦する乾きを感じるとき、最大の冒険と「お楽しみ」の(おもに精神的な)準備をする助けとなるだろう。雄大なマルチデーのトレイルランニングを完走するのにプロのアスリートやウルトラマラソンランナーである必要はない。「イエス」と答える狂気の沙汰と、その過程で必ずやってくる制裁を受け入れることができさえすれば。

災難訓練計画

モーガン・ショーグレンとジェン・シェルトンがクスクス笑いしながら次の嵐の方角へと直行するのに見とれるローカルたち。 Photo: Andrew Burr

下準備

レースまで1週間を切った時点で唯一できることは体を休め、炭水化物を摂取し、水分を補給することだけだということは、ランナーなら誰でも知っている。私はTMBにチャレンジする前にこれを真剣に捉えた。
「ただコーヒーを買うためだけに」シャモニのバーチカルKの「簡単なランニング」をやったり、草の上に横たわってモンブランを眺めながらガイド本を研究したりと、体の休め方はそれぞれ違うだろう。その望ましい結果とは、初日に最高の状態でいること。そうすればどれだけ自分を叩きのめすことができるかを判断する真の基準がわかる。

装備は身軽に

災難訓練計画を利用する人はただでさえ処罰を好む傾向にあるので、不要なものをパックに詰めてそれ以上自分を苦しめるのをやめよう。私は信頼できるM10ジャケットフーディニ・パンツナノエア・ジャケット、予備のソックス、水と、たくさんのスナックを持参。次の1,500メートルの登りのことを素早く忘れさせてくれるロゼワインは重要なのでお忘れなく。

いよいよハイキング

イベントの初日、私たちはあまり厳しくない午前9時のスタートを設定し、歩きのペースで出発した。これにはかなり混乱した。陸上トラックでは速く走る私にとって、歩くことは「前進」の語彙に含まれてすらいない。けれどもこの戦略は後日やってくる長い山岳地域のために足を保護してくれるということを学び、3日後には「ツール・オブ・サイドウォーキング」の第一段階を褒め称えることになった。塹壕足になりながら、1,500メートルのイタリアの山岳地帯の峠を、凍てつく土砂降りの雨/みぞれ/吹雪のなか、疲労困憊して這いずりながら……。私は歩くという考えを二度とばかにしないだろう。

災難訓練計画

災難が起きたときはただ眉根を寄せてそれを直視し、その瞬間を真に生きる者の狂気の沙汰で笑い飛ばすこと。Photo: Andrew Burr

燃料補給

1日が長い日にはミートボール・スパゲティやビール(もちろん食品類に入る!)、お菓子、甘いパン、ゆで卵などのきちんとした食べ物を摂取すること。この考えは科学で証明されているわけではないが、災難計画には2つの選択肢がある:美味しいと思うものを食べるか、あるものを食べるかだ。イタリアでその先の山の峠を越える何時間ものランニングが残されているのに道に迷ってしまったときには、濡れたツナサンドは素早くその両方となる。

シェイク

マルチデーの冒険の一部を終えたら、即座に座ってワインを飲みはじめないように。ボトルを開けたら、ストレッチをしよう。ヨガ、軽い歩行や中世のちゃんばら、ひいてはダンスなどといった、ちょっとした能動的な回復法は血行を促し、筋肉がつるのを防ぐ。まだ終わりじゃないのだから、そんな風にしないこと。

地図とガイド本と標識を読む

すでにあり得ない距離を行動しているのだから、道を間違ってその日の日程をさらに長くしないように。もちろんこれは災難計画。だから、はじめる前に天気の状態なんて気にも留めないでしょう。地図を使い物にならなくする大雨と、標識を見つけるのを不可能にするマッシュポテトのように分厚い霧だけですべてはおじゃん。こんな目にあったら笑って地図をティッシュかトイレットペーパー、または帽子代わりにしよう。

災難訓練計画

次の避難小屋を見つけようと、雨でびしょ濡れになってしまった無用の地図に頼るジェンとモーガン。スイス  Photo: Andrew Burr

予期せぬ出来事を予期する

災難訓練計画に適切にしたがう人は、くまなくトレーニングをした仲間よりはるかに利点がある。それは先入観がないこと。最も優れた技術をもち、才能と準備に長けた冒険者ですら困難と大がかりな障害に出会う。でも大胆な魂をもつ方はこれを予期し、逆境にも立ち直りが早い。それが目的なのだ。災難が起きたときはただ眉根を寄せてそれを直視し、その瞬間を真に生きる者の狂気の沙汰で笑い飛ばすこと。

トレーニングよりもファイト

大きな山での使命を完成させるのに必要な精神トレーニングを見過ごすことはできない。クライマーであり、彼いわくTMB以前には(一度も)6マイル以上走ったことのなかったアンドリューは、宇宙人か魔法の力があるに違いないが、(重いカメラ機材を担ぎながらも)プロのランナーについて行けたのは精神鍛錬のおかげだと、彼は保証する。「冒険を愛するのなら、脳をオフにしてその過程である苦しみを楽しむこと」だそうだ。そう、どのみち辛いのだから、真っ向から受け入れて対処しよう。

失敗を受け入れ、過程を楽しむ

ある過激な男(イヴォン・シュイナード)がかつてこう言った。「それは冒険とはいえない。何かまずいことが起こるまでは」と。災難訓練計画の信奉者が求めているのはまさにそれ。メダルをもらったり、StravaといったSNSの記録を作るためにこのトレイルに挑戦したのではない。これは人生観を変える経験なのだ。下着いっちょうで(衣類はすべて永久に濡れたままだから)イタリアの避難小屋でトタンの屋根を打つ雨の音を聞きながら、またパスタを食べる。どうやって次の一歩を進むことができるのかと思いながら、他に選択肢がないからとにかくそうする。いちばん近い電車の駅は隣の国、そして山の峠をもうひとつ越えたところにある。でも災難訓練計画は降参する計画を次の目標とすることを止めたりしない。雨と牛糞にまみれた衣類を着てヒッチハイクと電車とバスを複数乗り換えるマラソン旅行日は、それ自体が通過儀礼なのだから。

災難訓練計画

装備びしょ濡れ?大丈夫!下着のまま食事をしながら災難訓練計画の利点、つまりつねにパブ用の素晴らしい物語を作れることを示すモーガン。

回復する意欲を出す

この行動計画を無傷で乗り切ることを期待しないように。イベント後にはウイスキーを飲み、イブプロフェンを取り、腫れを冷やすために安い冷凍豆を買うだろう。カウチの上でお尻を休め、膨れた関節を上げておくだろう。でもすべてを受けれ、消化するだろう。否定論者たち(たいがいは自分の身体各部だが)の間違いを証明する満足感に歪んだ笑顔で。

災難訓練計画はこれから着手しようとしている残酷な強行軍のための完全な準備とはならないかもしれないが、最初から挑戦すらしないという、最悪の種の苦悩から救ってくれる。そしてどんなに最低でもつねにパブ用のいかした話と戦いの傷をいくつか作り、十中八九深い野生地で自力に頼って未知の道を旅するときにだけ可能な新たな自分の発見があるに違いない。

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