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世界に勝るとも劣らない北海道のフィールド 写真:佐々木 大
世界に勝るとも劣らない北海道のフィールド 写真:佐々木 大

軽量という恩恵がもたらす快適な釣り旅:ミドル・フォーク・パッカブル・ウェーダーと過ごした時間(北海道釣行編)

By 中根 淳一   |   2018/02/23 2018年2月23日

重い……遠目には分からないが、川を渡ると流れの重さによろけてしまうほど。その水圧でウェーダーは脚に張り付くが、現在のウェーダーは細身に作られているので、ひと昔前ほどの抵抗はない。それでも不意に足を上げると転倒しかねない。けれどもこの強い流れのなかでも、逞しく泳ぎつづけられる魚たちを想像すると出会いが待ち遠しい。

こんな美しい流れで大きな魚たちと出会える幸せ 写真:中根 淳一
こんな美しい流れで大きな魚たちと出会える幸せ 写真:中根 淳一

前回の東北釣行に続いて昨年8月下旬に北海道を訪れた。フライフィッシングによい季節というのは重なるもので、近年は南方への長期トリップが多くなり、頻繁には行けなくなってしまった道東。釧路空港に降り立つと、今回案内してくれる佐々木大氏が出迎えてくれた。佐々木氏は釧路市のルアー&フライショップ『ランカーズクシロ』のスタッフ。本来は前年の夏に釣りの約束をしていたのだが、度重なる台風の影響で1年間延期となってしまった。笑顔の彼を見て「やっと来れた」という実感を噛みしめつつ、挨拶もそこそこに車に乗り込み釣り場へと向かう。これから3日間の車中泊旅がはじまる期待から、車中では矢継ぎ早に質問を続けていた。

航空機を使った遠方への旅で毎回悩むのがギアのパッキング。海外であれば預け荷物の重量上限も緩いので、それほど気にしないが、国内便だと合計20kgなどの制限がある。特に北への釣行の際は必ずウェーダーが必要になるため、ホイール付ダッフルバッグの半分近くをウェーダーとブーツが占領してしまう。さらに季節によっては厚手の防寒着も必要になり、釣り具や普段着を入れる余地はほとんど無い。宿に滞在する場合は事前に送っておくこともできるが、大抵は直前まで仕事やフライタイイングに追われ、発送する余裕もないのが現状。また、最近では釣り竿など長物の宅急便に関しては制限が設けられはじめているようだ。南への釣行もウェーダーが必要な冬季を考えると、想像ほど安直ではないだろう。海釣りはターゲットが幅広いので、防寒着が少ない代わりに釣り道具が多くなる(服より重い)。僕は毎回の宿泊釣行ではパッキングリストを作っているので、過去の内容をうかがえばおおよその重量を把握できるが、それでも外出直前まで荷物の重さを量りながら、出したり入れたりと忙しない。

しかし、今回使用するウェーダーはパタゴニ製品中で最軽量の「ミドル・フォーク・パッカブル・ウェーダー」。約740gという重さは「リオ・ガジェゴス・ジップフロント・ウェーダー」(約1,300g)にくらべると600gほどの差ではあるが、「SSTジャケット」が約450g、「リバー・ソルト・ジャケット」が約640gなので、この重量差の優位性が分かるだろう。何よりも畳んだときのサイズは「ウェーダーを入れ忘れた?」と勘違いするほどコンパクト。

最軽量のミドル・フォーク・パッカブル・ウェーダーは軽快に釣りを続けられる 写真:佐々木 大
最軽量のミドル・フォーク・パッカブル・ウェーダーは軽快に釣りを続けられる 写真:佐々木 大
長距離の歩行や、ちょっとした斜面を昇り降りするときも、ウェーダーを履いている感覚が希薄 写真:佐々木 大
長距離の歩行や、ちょっとした斜面を昇り降りするときも、ウェーダーを履いている感覚が希薄 写真:佐々木 大

初日は昼過ぎに網走川水系に入る。4~5時間と短時間の釣りなので、アクセスのよい川を選んでくれたようだ。パッカブル・ウェーダーの感触を確かめながら釣りを楽しむ。相変わらず軽快でさまざまな動きにも体への負荷が少ない印象。適度に交代しながら釣り上がるが、どちらにも反応がない。佐々木氏もしきりに首を傾げているから、おそらく釣り方は間違っていないのだろう。しばらく進むと「ここからは魚がいるはずです!」とのアドバイス。本州では使わないような大きなタークスタランチュラ(フライ)を流すと、刹那フライが消えた。条件反射でアワせるとロッドに生命感が伝わってくる。お目当てのサイズには届いていないものの、野生を実感できるだけのきれいなレインボートラウトと出会えた。

やっと出会えた道東レインボー。 この魚は太っていてよいコンディション 写真:佐々木 大
やっと出会えた道東レインボー。 この魚は太っていてよいコンディション 写真:佐々木 大
タフなコンディションの中で待望の1尾 写真:中根 淳一
タフなコンディションの中で待望の1尾 写真:中根 淳一

前夜に大きく移動して車中泊。翌朝は十勝川水系で釣りをスタートする。しかし前日同様に魚の反応は少ない。どうやら渇水期で水位がかなり低いようだ。夏場の渇水は魚の警戒心も高くなる。早々に見切りをつけて少し下流へ移動。ここで佐々木氏が40cmクラスのレインボートラウトをキャッチ。このサイズはたくさん釣れるらしいが、ここも反応がよくないのでさらに下流方向へ移動。

この日最後となるだろうポイントは大水の痕跡だろうか、広い川原の左右が鋭角にえぐられ、ところどころに太い倒木が横たわっている。その景色は薄曇りの空と相まって、自然への畏怖をあらためて感じた瞬間だった。夕方までねばり、佐々木氏のアドバイスのおかげで、どうにか僕も数尾のレインボートラウトを釣ることができた。そして、夜のうちに再度大きく移動。

その美しさに見とれて、いつまでも放したくない気分 写真:佐々木 大
その美しさに見とれて、いつまでも放したくない気分 写真:佐々木 大
太陽光が強くなると、体側のレッドバンドがより鮮やかになる 写真:中根 淳一
太陽光が強くなると、体側のレッドバンドがより鮮やかになる 写真:中根 淳一

釣り最終日は十勝川水系の支流へ入渓。「写真映えするように景観のよい川を選んだ」という彼の言葉どおり、前日の曇り空とは打って変わって晴れ間がのぞく青空と、深緑の木々とのコントラストが美しい川だ。ポイントへ向かう車窓からは大きな虹のアーチが見えたので、これは吉兆かと思ったが相変わらず魚の反応は上昇しない。それでも気持ちがよく「この自然の中で釣りができるだけでも幸せ」と悦に浸っていると、上流側から佐々木氏が「あそこに大きい魚います。釣っちゃってください!」と戻ってきた。

遠慮なく特大フライを流芯に落とすと、その魚は激しい飛沫を上げて飛び出した。「食いそこねた」と思った瞬間に反転して再度ガバっとフライをくわえた! 強い流れにのって抵抗するレインボートラウト。しばしの引きを楽しんでランディング。写真を撮った後に計測すると50cmに1~2cm満たなかったが、今回のタフなコンディションで釣れてくれただけで感謝。

軽量という恩恵がもたらす快適な釣り旅:ミドル・フォーク・パッカブル・ウェーダーと過ごした時間(北海道釣行編)
激しい飛沫とともにフライに飛び出したレインボー。尾ビレの幅がその力強さを物語る 写真:佐々木 大
激しい飛沫とともにフライに飛び出したレインボー。尾ビレの幅がその力強さを物語る 写真:佐々木 大

この後は釧路市内の宿で1泊して帰京となるが、チェックイン前に車内に散乱した荷物を片付けよう。途中の駐車スペースに車を停めて荷造りをはじめる。「ウェーダーは濡れているから宿で広げて乾かそう」とパッカブル・ウェーダーを畳もうとして驚いたのが、ほとんど乾いていたこと。ソックスは合成ラバーだけのため吸水しないし(もしくはほとんど吸わない)、さらに薄手の生地は乾燥も速い。初日に広げる前と同じ大きさで付属のスタッフサックに収まり、重量もほとんど変わっていない。これまで2か月の釣行での実感として、ミドル・フォーク・パッカブル・ウェーダーはほかの5種(そのうち1種はウィメンズ)ほど、汎用性が高い製品とはいえないだろう。けれどもその特徴を活かせれば、今まで難しいと思っていたことが容易にこなせる。

3月の渓流解禁まで残りわずかの辛抱。遠方への釣り旅が多い僕にとって、どうやら今年はミドル・フォーク・パッカブル・ウェーダーの出番がもっとも多くなりそうな予感がする。

名残惜しいが必ず訪れる旅の終わり。感傷に浸っている間もなく道端で荷造り開始 写真:佐々木 大
名残惜しいが必ず訪れる旅の終わり。感傷に浸っている間もなく道端で荷造り開始 写真:佐々木 大
軽量という恩恵がもたらす快適な釣り旅:ミドル・フォーク・パッカブル・ウェーダーと過ごした時間(北海道釣行編)

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