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マラマ・ホヌア:ホクレアの希望の航海 パート6 タヒチ

ジェニファー・アレン&ジョン・ビルダーバック  /  2018年3月22日  /  読み終えるまで7分  /  コミュニティ

30ノット弱の風に最小限の帆を揚げ、タプタプアテアへの聖なる航路「テ・アバ・モア」に向かうホクレア号とヒキアナリア号。 Photo: John Bilderback

パタゴニア・ブックスが栄誉と興奮とともに、このたび公式にお届けするマラマ・ホヌア:ホクレア─希望の航海』(文:ジェニファー・アレン/写真:ジョン・ビルダーバック)は、古代のウェイファインディング航法のみを使って帆走する双胴型航海カヌー「ホクレア号」の世界航海を記録した美しいハードカバー本です。第10章からの抜粋はここで、またこれまでに掲載した他の抜粋はこちらのリンクからお楽しみいただけます。そしてこの驚くべき船と慈悲に満ちた乗組員の全ストーリーは、パタゴニアのオンラインショップにて本書(英語版)をお求めください。

空が晴れて帆がぱっと開いた瞬間、「あなた」と「私」の区別はなくなり、「私たち」になる。「私でもあなたでもない、皆のこと」スネークはそう説明する。「私たちは助け合い、見守り合うためにここにいるんだ」

つまりゴードンがポマイに「おまえの父親はここにいる、おまえと一緒にいるのだ」と話すとき、ポマイの父親は私たち皆と一緒にいるということになる。誰もが誰かに守られている。ナクア・コノヒア=リンドは、1976年にビリーとジョンと一緒に航海した曾祖父サム・カララウ・シニアに守られ、ゴードンはかつて熟練船長だった父親アブラハムに守られている。アブラハムは1992年にタプタプアテアへ向かう途中、モオレアでの儀式で焼け石の上を素足で歩いた男だ。カイノアは亡き妻パトリシアに守られ、彼女がほんの1年前に編んでくれた赤いニット帽をかぶっている。そしてゼーン。ゼーンは伯父エディに守られ、また同時にエディはゼーンに守られている。皆それぞれ互いを支え合っている。

マラマ・ホヌア:ホクレアの希望の航海 パート6 タヒチ

タプタプアテアでポハク(石)を担ぐジョン・クルース。彼はカウアイ島で72フィート(約22メートル)の双胴型航海カヌー「ナマホエ号」の建設に貢献した人物。Photo: John Bilderback

船尾の木板に刻まれたナ・アウマクア(先祖の守護霊)の名前は、かつてこのデッキに立ち、そして去った者を偲ばせる。彼らはときにサメやイルカや鳥、あるいは虹や雲の形で私たちを見守りつづける。最近そこに加えられた名前はメル・パオア。メルは先代の偉大なハワイの航法師パオアと姓を分かち合い、またアオテアロアでは雨のなかで、自分のスープを皆に分け与えてくれた。メルは2015年8月にモロカイ島の自宅で突然亡くなった。一緒に航海した乗組員は皆メルの死を悼み、とくに同じモロカイ島出身で現在監視船長を務める友人のカウィカ・クリベロは深く悲しんだ。カウィカはメルが亡くなったほんの数か月後にカヌーで大西洋を横断したときの様子を語る。カヌーにはメルの息子ロヒアオが乗船していたのだが、航海中に迎えたメルの誕生日、1羽のノイオ(ヒメクロアジサシ)がカヌーの周りを飛んでいた。ロヒアオが手を差し伸べると、鳥は彼の指に留まってしばらく動かなかった。この鳥が息子に会いにきたメルのアウマクアであるということは、皆にわかっていた。

こうしたストーリーは、寄せては返す波のように、私たちが共有する思い出の夢の中へゆらゆらと誘う。

私たちは伯父たちに水を汲み注ぎ、伯父たちは私たちに「マラマ・ポノ(互いをいたわること)」を教える。気分がすぐれない者には濡れタオルを手渡し、疲れていれば眠らせる。迷ったり考えたりしている者はそっとしておき、誰かを恋しがっていれば思い出の歌を一緒に歌う。歌は海水のように癒してくれる。これらはどれもいたわり合うことのレッスンであり、「マカアラ(完全に覚醒した状態)」を保つことのレッスンもある。それを教えるのはおもにスネークだ。

マラマ・ホヌア:ホクレアの希望の航海 パート6 タヒチ

ライアテアへの出発前に波止場でひと休みする熟練乗組員「スネーク」ことアー・ヒー。Photo: John Bilderback

「海を愛せば、海は助けてくれる」とスネークは説明する。生涯のサーファー、パドラー、セーラーであるスネークは、海のことばに堪能だ。「海と波はすべてをまとめる手助けをしてくれる。波を理解しなければ方向を失うだろう」

「絶えず目を見張るんだ。前を見て、後ろを見て。サーフィンをしているようなものさ。波と一緒に追い風に乗るんだ」

カヌーは波に乗る。ときにスムーズに、またときに荒々しく。ポマイが言うように、「カヌーは泳ぐサメのようなもの。船首は鼻、船尾は尾、そしてマストはヒレ」

太陽がゆっくりと天空から沈むにつれ、風向きが変わる。帆が下げられ、揚げられ、変えられ、そしてしばらく静かになる。どこか遠くでは、もちろん、スコールが降っている。でもいまはオノヒがギターをかき鳴らし、ポマイが歌い、ナクアが水樽のドラムをやさしく叩く。すると突然、嵐がやってくる。揺れを感じる直前にその音が聞こえる地震のように。後ろから叩きつける帆とブームの音がそれを知らせ、全員が飛び出してきてブームを押さえたり、スウィープを押さえたりする。そして嵐はやって来る、全力で。

雨。まっすぐに落ちる雨。横殴りの雨。低い太陽を背景に、雨は周囲の水の上で銀色の輝きとなって目をくらませる。ゴードンに呼び集められた乗組員が彼の横でブームを押さえ、もう片方を別の乗組員が押さえる。雨は波を静めるようだ。ときに自然はみずからに語りかけ、そしていま私たちはそれを目の当たりにする。

マラマ・ホヌア:ホクレアの希望の航海 パート6 タヒチ

タプタプアテアに向かうホクレア号。Photo: John Bilderback

帆に守られ、その下にゴードンと一緒に立っているときは、ストーリーの時間。ゴードンは延々と今日までにたどり着いた長い航海の道のりを語る。デイヴ・ライマンとともにカヌーの維持費を工面するために、デイヴのフォルクスワーゲンで本やTシャツを売っていたときの話。デッキが竹製だったころの話。ハーブ・カネが夜中に電話で「タヒチからカヌーを持ってきてくれないか?」と頼んだときの話。カヌーを帆走させて帰り、翌朝起きてはまた仕事に戻っていたそのころからの長い道のり。特別なことなどではない。たんに自分のやるべきことをしているだけ。

誰かが聞く。あの当時ゴードンと乗組員仲間がカヌーを帆走させ、自分たちの言語と文化を復活させようとしたのは、地面に杭を打ち込んで、かつて盗まれたものを取り戻す試みだったのか。「これは俺たちのものだ!」と言いながら。

ゴードンは黙ったまま、長いあいだ海を見つめる。「ホクレアは地面に立てた杭ではない」とゴードンは言う。「ホクレアは我々の心から杭を引き抜いてくれたのだ」

マラマ・ホヌア:ホクレアの希望の航海 パート6 タヒチ

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マラマ・ホヌア:ホクレア——希望の航海(英語版)

持続可能性に対する国際的な認識を高めるというホクレア号の壮大なミッションを記録した美書。寄港地でのホクレアの体験記である本書は、航跡のない航路を導く航法の達人と乗組員の声、そして現代生活における環境的挑戦の数々を乗り越えるために努力を重ねながらホクレア号に心を動かされた科学者、教師、子供を含む地元の先駆者たちの声を織り交ぜている。ハードカバー。320ページ。カラーPhoto: 満載。

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