クリーネストライン


ケイト・ラザフォードは氷河を越えてすぐクライミングを始め、岩の隙間に指を入れ込んだ。フランス、シャモニ、ポワント・アドルフ・レ
Photo: Bernd Zeugswetter
ケイト・ラザフォードは氷河を越えてすぐクライミングを始め、岩の隙間に指を入れ込んだ。フランス、シャモニ、ポワント・アドルフ・レ Photo: Bernd Zeugswetter

ゲームよりも重要なこと

By ケリー・コーデス   |   2018/04/11 2018年4月11日

僕がクライミングのことを考えるとき、思い浮かぶのは頂上のことではない。思い描くのは、のこぎりの歯のように大地と空のあいだを上下する岩稜、岩塔の間から射し込んでくる太陽の光、はるか下の荒れた氷河に、巨人のような山の影が落ち、それが時間とともに方向を変え、動き、曲がっていく様子だ。ロープでつながった僕と仲間たちが、フィックスロープやサポートを排し、手持ちのギアと経験を通して培ったスキルだけで、壁の中で最適解を探したときのことを思い出す。想像を絶するほどの広大な空間にあっても、ほんの小さなことがときに重要になる。はるか遠くの、ミリ単位の岩の形状がラインをつなげてくれるかもしれない。大局と細部のつながりこそが大切なのだ。目を見開き、視野を広くとって行動することが必要だ。目にしたものが行動を呼び起こし、行動が結果を生む。

現代のクライミングにおいては、手段を選ばなければ頂上に行くこと自体はそうむずかしくない。重要なのは、どうやってそこに到達するか。万人に分かりやすい価値を示さないゲームにおいては、スタイルこそがすべてだ。人生がそうであるように、真剣にクライミングに向き合うことにおいても、良いスタイルとは真に誠実であることを要求し、また必要とする。それこそが人を形成し、変えていく。

パタゴニアのルーツがロッククライミングとアルピニズムと密接に結びついていることに疑いの余地はない。イヴォン・シュイナードは、ヨセミテのビックウォール黄金時代に研鑽を積み、社のロゴとしても描かれているパタゴニアのフィッツロイのような冒険的な登山に挑んできた。イヴォンや多くの人びとにとって、そして当時もいまも、登るという行為そのものとその美学こそが、山頂に達することよりもはるかに重要なのだ。70年代前半、イヴォンと仲間たちはピトンが岩を傷つけていることに気付き、クリーンクライミングを提唱した。当時、会社にとってもっとも重要な製品であったピトンではなく、岩にダメージを与えないプロテクションを使うことを呼びかけたのだ。彼らは「正しい行動」と真剣に向き合い、自然や彼ら自身、そして後世のクライマーたちに対する敬意を示した。

「詩における単語ひとつの選択と同じように、(1本のピトンが)岩全体に影響を与える場合がある」と、ロイヤル・ロビンスは書いている。その精神は、パタゴニアの製品デザインを支えるとともに、すばらしい生き方を示している。なるべく手を加えず、破壊しない。ゲームより重要なことである。

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