クリーネストライン


ターカインへの入り口近くを走る、オリエンテーリングのプロであり原生地擁護者であるハニー・オールストン。
Photo:Mikey Schaefer
ターカインへの入り口近くを走る、オリエンテーリングのプロであり原生地擁護者であるハニー・オールストン。 Photo:Mikey Schaefer

そこへの道:私たちが道を作り出し、 探し求める理由

By ミーガン・ブラウン   |   2018/06/27 2018年6月27日

ヘッドライトのビームとともにスタート。日の出までにまだ1時間以上あり、土砂降りの雨が降っている。ジャケットの袖に手をたくし込み、葉先の尖ったタスマニアのボタングラスのあいだを、体が冷えないように速いペースで進む。脅威にさらされた場所、行く末のわからないこのターカインを、できるだけ深く知りたいという切迫感がある。もしここが消えてしまったら、それがないことをどのように感じることになるのか、知っておくために。

オーストラリアは長距離移動を余儀なくさせる場所だ。そしてここに生息する種は、それをうまくやってのけるよう進化してきた。カンガルーは約320キロメートルを10時間以内に移動するという記録があり、食料源が乏しいときは尾に蓄えた脂肪をエネルギーにする。タスマニアデビルは餌を探して、一夜に約30キロメートルもの範囲で行動する。

この絶え間ない種の移動により、縦横に編まれた道の網が作り出され、それらは物理的にも歴史的にも地球の風景に記録される。ニューファンドランドの科学者たちは5億6,500万年前の獣道の化石記録を研究している。それは動物の移動の最も初期の形の裏付けとされている。

そして人間もまた、その移動パターンを風景に刻む。

オーストラリアの先住民アボリジニは、世界は歌に導かれて生まれ、それゆえ大地のいたるところに道の網があると考える。ソングラインと呼ばれるこの道は、言葉の反復を通して伝えられる。歌を正しい順序で繰り返すことにより、道を知らなくとも、大陸のとてつもなく長い距離を横断することが可能となる。『On Trails』の著者ロバート・ムーアは、その著作のなかで、「大地は資源だけでなく、ストーリーを取り込んで大きくなる」と書いている。

ターカインにも複数のソングラインがあり、古代の歴史はその風景に響きわたっている。この道で、一足ごとに、それを感じ、理解する。

ターカインはオーストラリアに残された最大のひと区域の温帯多雨林を擁する。 Photo:Mikey Schaefer
ターカインはオーストラリアに残された最大のひと区域の温帯多雨林を擁する。 Photo:Mikey Schaefer

長い道のりを進みたくなるこの衝動は、いったい何なのだろう?

動くという個々の意思決定は、順序はどうあれ、おもに食料、逃避、交配、学習といった差し迫った必要性に基づくと、生物学者は言うだろう。カリブーからキョクアジサシまで、種によってはつがいを求めたり、あるいはたんに山の向こうに何があるのかを見るために、彼らははるか遠くを目指す。

ある種はなぜいつも同じパターンで移動するのだろう?

パターンに馴染みが深ければ深いほど、必要性の追求に費やすエネルギーは少なくて済む。そして移動の能力により、目標達成の可能性が高まる。作家のブルース・チャトウィンは、サケは先祖代々の川の味を認知し、また夜間に飛ぶ鳥は鳴き声を地面に跳ね返らせて、その反響をとらえることで地形を判断すると書いている。この習熟により、つながりが世代を超えて伝達される。

風景と移動の入り組んだ関係について精通しているのはオーストラリアのアボリジニだけではない。チェロキー族はかつて部族の中から案内役を選び、風景から最善の道を見つける役割を負わせた。ブラックフット族はカナダからメキシコまでの神聖な旅を「世界の背骨」、つまり現代の「大陸分水界」沿いにした。天台宗の僧侶は悟りを開くため、現在も比叡山で千日回峰行をしている。これらは基本的な必要性を超越した旅、つまり移動、そして土地との霊的かつ隠喩的なつながりへの旅である。

ターカインの原生地を巧みに 縫い進むミーガン・ブラウン。タスマニア  Photo:Mikey Schaefer
ターカインの原生地を巧みに 縫い進むミーガン・ブラウン。タスマニア Photo:Mikey Schaefer

走り始めてから数時間が経った。雨は止み、早春の太陽が素肌を温める。数匹のヤマビルが付いている。道のどこかで拾ったのだろう。ターカインに広がる道は危機にさらされたままだ。でもここにいるという浮遊しているような現実は、この先いつまでもつづく。 休憩のあとも、そして帰宅のあとも。

風景を移動するのは、その場所を学ぶための最善の方法だ。それは風景を理解し、風景に惚れ込み、風景を守ろうとする願望をますます強くする。

このストーリーの初出はパタゴニアの2018年Summerカタログです。

takayna(タカイナ)』フィルム上映会

活動家、地元民、アボリジニのコミュニティ……これらの相反するストーリーを紡ぎながら、トレイルを走る医師とひたむきな環境保護活動家の体験を通して、現代の環境保護運動の複雑さを明るみにし、最後に残された真の野生地を守る挑戦を人類に投げかけるパタゴニア・フィルム制作のドキュメンタリー映画です。

2018年7月11日(水)より、パタゴニア直営店にて『takayna(タカイナ)』フィルム上映会を開催します。お問い合わせ/ご予約はストアまでお問い合わせください。

7月11日(水) パタゴニア 仙台ストア 開場19:00 開演19:10
7月13日(金) パタゴニア 横浜ストア 開場19:00 開演19:10
7月18日(水) パタゴニア 福岡ストア 開場19:00 開演19:10
7月24日(火) パタゴニア 渋谷ストア 開場19:00 開演19:10
7月26日(木)パタゴニア 大崎ストア 開場19:00 開演19:10
8月2日(木) パタゴニア 京都ストア 開場19:00 開演19:10

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