クリーネストライン


所有するということについて、エスプレッソ・メーカーが僕に教えてくれたこと

所有するということについて、エスプレッソ・メーカーが僕に教えてくれたこと

By カイル・ウィンス   |   2018/09/18 2018年9月18日

数年前、僕は予期せぬものから面白い教訓を学んだ。アメリカではスターバックスが「バリスタ」というエスプレッソ・メーカーを売っている。それはスターバックスの人間のバリスタと同じ機能を果たすようにデザインされているが、食事休憩や給与、健康保険などを必要としない。ある日、友人ドンがこの機械のバリスタについて相談しにやってきた。彼はこの小さな機器が大好きで、朝の日課の必須の一部となっていた。しかし、ある悲しくどうしようもない日、幸せなシュッという音を立ててエスプレッソを抽出する代わりに、バリスタはヒーッという悲しい小音のあと、カチッと音を立てて動かなくなった。

機械のバリスタに健康保険は要らない、という理論は正しくなかった。ドンのバリスタには緊急の医療介入が必要だった。iFixitという組織を運営していることが理由なのか、友人たちは僕には機械の訓練士の才能があると思っている。それはこのストーリーで明らかになるが、必ずしも真実ではない。しかしダンは僕の機械の修理への実際の才能を顧みず、緊急診察をしてほしいと、バリスタを持ってやって来た。

僕はエスプレッソ・メーカーの修理については、まったくもって何も知らない。だが僕は非常に熱意のある人間だ。だから、自己尊厳を抱くデジタル社会の一員なら誰でもそうするように、「バリスタの修理方法」をグーグル検索した。だが驚いたことに、地元の人間のバリスタに対してしたいこと、といういくつかの不謙遜なジョーク以外には、ほとんど情報がない。スターバックスの修理マニュアル(それがもしあったとしても)はどこにもない。僕は屈することなく前進した。どこかの狂信者が考えられないような時間と努力を費やして、彼らの不可解な知識をインターネットの驚くべき片隅で文書化し、共有しているのに遭遇することを期待して。

不幸なことに、その知識を分かち合う時間を割いてくれる隠れたコーヒー・メーカー医師はいなかった。残念ながら。スターバックスの機械修理が存在するのは、僕が「インターネット砂漠」と呼ぶ場所だった。つまりそれを修理するノウハウは世界のどこかに存在しながらも、その情報はインターネットには掲載されていないのだ。

それでもなお、僕は屈しなかった。コーヒー・メーカー修理の適切で繊細な方法にはまったく無知のまま、無鉄砲にも飛び込んでいった。何が最悪の事態だっていうんだ。バリスタはすでに壊れているんだから。僕はすぐにケースの底のネジ数個を緩めた。いざ中へ突進だ。

その中で、発見したのはワイヤーとチューブとポンプのジャングルだった。これは思ったより手強い。あとでこの装置をふたたび組み立てられるようにと、僕は念入りに写真を撮りながら分解をつづけた。

「バリスタ」の内側はワイヤーとチューブとポンプのジャングル。Photo:Kyle Wiens
「バリスタ」の内側はワイヤーとチューブとポンプのジャングル。Photo:Kyle Wiens

ドンがどうやってこの小道具を動かしつづけられるかを思案しているあいだ、スターバックスは次に進んでいた。取り替えのパーツはもう作られていない。それは正当なのかもしれない。ある時点で、製造者の義務は終わる。ひとつの製品を永久にサポートすることは経済的に不可能だから(だがパタゴニアは勇敢にもそれを試みつづけているぞ)。

僕らのモノはただ、僕らの所有物なのだ。所有するということは、力強いことで、力を与えてくれることだ。僕はアイボの所有者がそれに抱く感情的つながりを理解できる。もし祖母が作ってくれたキルトの刺繍がほどけてしまったら、僕はそれを修理するためにはどんな努力も厭わないだろう。もちろんアイボの所有者は彼女のペットを確実に修理できる方法を得ている。

ということで、バリスタは僕のキッチンテーブルの上で分解されたが、どんなに頑張っても問題を診断する方法はわからない。諦めて、写真を見ながら機械を組み立てなおすときが来た。しかしすべてが無駄だったわけではない。その途上で、僕はこのバリスタ独特の機械の組み立てについてかなり学んだ。

「バリスタ」を分解すると、1杯のコーヒーに必要なものがすべて現れた。コーヒーを除いて。Photo:Kyle Wiens
「バリスタ」を分解すると、1杯のコーヒーに必要なものがすべて現れた。コーヒーを除いて。Photo:Kyle Wiens

この敗北のなかで、僕は次の旅人のために道標を残しておくことに決めた。ボーイスカウトでは、子供たちは「日々良い結果をもたらすこと」を教わる。それは来たときよりも美しくして帰ろうという考えだ。僕にとっては、苦心して勝ち得たノウハウを分かち合うことがそのひとつの方法だ。だから僕はこの小さなエスプレッソ・メーカーの内への旅の写真を、その分解のヒントのいくつかとともにインターネットに掲載した。

「クリーネストライン」の大志はあとを濁さないことだ。僕らが原生地にいるとき、その環境をできるだけ手付かずのまま残すためにことさらの努力をする。しかしそれよりもさらに良いことができる。ゴミを見つけたら、持って帰る。焚き火のあとをならしたり、トレイルをもとの状態に戻す。どんな旅においても、僕らは次の旅人のために、世界を少しだけより良くする機会があるのだから。

僕は情報の分野も同じように扱うことを提案したい。壊れたモノそれぞれについて、それを修理する方法を知っている人が世界のどこかにいる。しかしその情報はむらなく行きわたっているわけではない。もっている知識を誰かに教えるために時間を割くことは、それを手渡す手段となる。

それが、パタゴニアとiFixitがパートナーシップを組んで、ギアを最高の状態に保つための修理情報を提供することにした理由である。僕らはDWR(耐久性撥水)加工のメンテナンスフィッシング用ウェーダーの修理、そしてキャンプ用道具を縫いパッチ当てをするための便利な指導書にいたるまで、その資料をオンラインに掲載した。

所有するということについて、エスプレッソ・メーカーが僕に教えてくれたこと

「パタゴニアのジャケットのジッパー・プルタブの交換方法」日本語ページはこちらから

しかしそれはただのはじまりにすぎない。僕らはすべてのものについて修理する方法は知らないのだから。だからそれを皆さんに教えてもらえたらと思う。

登攀に最高の場所やラインについてのヒントを分かち合うのと同じように、僕らが所有するモノを最高の状態で持ちつづけるための、手入れ方法や修理方法を分かち合おうではないか。

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