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会津電力・雄国太陽光発電所で発電した電気は、「再生可能エネルギー電気特定卸供給」という形で、㈱生活クラブエナジーを通じて、生活クラブ生協の組合員の方へ提供。会津地域初のこのメガソーラー発電所のための土地は、岩月地域の地権者会の皆様からお借りしている。写真 : 会津電力株式会社
会津電力・雄国太陽光発電所で発電した電気は、「再生可能エネルギー電気特定卸供給」という形で、㈱生活クラブエナジーを通じて、生活クラブ生協の組合員の方へ提供。会津地域初のこのメガソーラー発電所のための土地は、岩月地域の地権者会の皆様からお借りしている。写真 : 会津電力株式会社

電力会社を切り替える:自然エネルギー100%に向けたパタゴニア日本支社の第一歩

By 篠 健司   |   2018/09/26 2018年9月26日

電力の小売りが完全自由化されたことで、それまで自由化されていた大・中規模工場やデパート、オフィスビルに加えて、低圧区分の家庭や小規模な店舗などでも電力会社が選べるようになったのは、もう2年以上も前の2016年4月。それまでは電気の「生い立ち」を気にしていなかった人たちも、その時は5年前の東京電力福島第一原子力発電所事故を経験し、好きな電気が自由に選べる、と期待したのではないでしょうか。

私たちパタゴニア日本支社もそんな電力ユーザーのひとりでしたが、パタゴニアは福島原発事故以前から、望ましい電力は太陽や風といった枯渇することのない資源による自然エネルギーであると考え、自然エネルギーの推進に取り組む非営利団体を環境助成金プログラムで支援するとともに、2008年からは自社で1年間に消費する電力100%に相当するグリーン電力証書を購入していました。

認定NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)の飯田哲也所長は、2009年パタゴニアのウェブサイトのために寄稿をお願いしたエッセイ、「過去の妄想か、未来の創造か」で、以下のように書いています。

「そして環境とエネルギーの危機も深刻だ。無限の成長を追い求めるために石油や石炭を浴びるように大量消費してきた結果、地球は温暖化の危機に直面している。(中略)自然エネルギーは私たち人類が直面する「3つの危機」を克服するための希望であるばかりか、グローバル社会から見れば、すでに大きな転換が始まっている「現実」でもある。その「希望の現実」に独り背を向け、過去の妄想に引きずられて、私たちの未来を破壊しようとしている国がある。それが日本だ。」

このエッセイから5年後の2014年、2011年の福島原発事故後はじめて、日本のエネルギー基本計画が改定されました。しかし、多くの国民や市民団体が原発や化石燃料に代わって自然エネルギーの普及を求めたにもかかわらず、日本政府は原発を石炭などと並び「ベースロード電源」と位置づけ、再稼動へ道を開きました。政府は依然として「希望の現実」に背を向けていました。

一方で同年、電力システム改革の第2段である電力小売自由化の法改正が成立したのを機に、パタゴニア日本支社は市民団体ネットワークが進める自然エネルギーの電力会社を応援するパワーシフトキャンペーンをサポートするとともに、2015年夏ごろからは、望ましい自然エネルギーを供給してくれる電力小売事業者を探して、続々と誕生する新電力へのコンタクトとヒアリングを繰りかえしました。しかし、パワーシフト――自然エネルギーが中心となった持続可能なエネルギー社会にむけて、電力(パワー)のあり方を、変えていく――はすぐにはかないませんでした。

私たちが求めていたのは、2つの条件をクリアする電力でした。ひとつは、それまで(旧)一般電気事業者(東京電力、関西電力など10社)と直接契約し、電力の供給を受けていた全国の店舗や事業所について、可能なかぎり一括で切り替えできること。もうひとつは、パタゴニア独自のエネルギー方針にある土地と水の利用、水と大気の質への影響、野生生物とその生息地への影響、人間の健康への影響、そして温室効果ガスの排出といった多角的なインパクトの観点から、「再生可能でないエネルギー」と評価した石炭、石油、原子力、水圧破砕法による天然ガス、そして大規模ダムによる水力発電に由来しないもの、でした。

パワーシフトがままならない間も、太陽光発電と営農を両立したソーラーシェアリングをはじめとする自然エネルギーを推進する市民団体と交流、支援するなど、切り替えの模索をつづけるなか、2017年11月の終わり、環境助成先のひとつで地域主導型の自然エネルギー事業に取り組む組織やキーパーソンのネットワーク、一般社団法人全国ご当地エネルギー協会の会合に参加した際、株式会社生活クラブエナジーの半澤彰浩社長にお会いしました。同社は、同協会が「地域資源を活用した、地域経済や社会に貢献しているエネルギーを購入したい」という消費者の要望に応えるために開始した認証制度「ご当地電力証明書」の第一号発電所の審査を受けているところでした。

同席していた全国ご当地エネルギー協会の理事でもあるISEP飯田哲也所長を交えての雑談のなかで、何気なく「生活クラブさんのエネルギーは私たちが買うことはできないですよね?」と尋ねると、「大丈夫ですよ」と一言。

生活クラブエナジーの親組織、生活クラブ生協が組合員や生産者とともに、国産や無添加にこだわり、あらゆる消費材について原材料やつくり方のわかる安心で安全な食品を長年にわたり提供してきたことは明確なため、「電気も食品と同じように、組合員がその源をたどることができて、納得して利用できるようにしている」という説明は、私たちが求める電力に近いのではという予感をさせました。

実際、生活クラブエナジーは、以下の7つのエネルギー原則を掲げ、自前の自然エネルギー発電所と契約し、自然エネルギーの豊かな地域と都市の生活者を結び付けることを目指していました。

  1. 省エネルギーを柱とします。
  2. 原発のない社会、CO2を減らせる社会をつくります。
  3. 地域への貢献と自然環境に留意した発電事業をすすめます。
  4. 電気の価格や送配電のしくみを明らかにします。
  5. 生活クラブの提携産地との連携を深め、エネルギー自給率を高めます。
  6. エシカルコンシューマーとして、再生可能エネルギーによる電気を積極的に共同購入します。
  7. 生産から廃棄までトータルに責任を持ちます。

さらに公開されている契約発電所リストを見ると、生活クラブ生協の配送センターや店舗などに太陽光発電の施設を建設するとともに、風力、小水力、バイオマス等のベース電源を開発し、電気の共同購入を通じてエネルギーの自治をすすめていました。そしてそのリストのなかには、原発や自然エネルギーに関するイベントや会議等でいつも顔を合わせていた、ある意味エネルギー運動の同志であるNPO法人市民電力連絡会の会員の皆さまが運営する発電所や、福島原発事故から地域復興を果たすために発電事業をはじめた会津電力飯舘電力が運営する発電所など、「顔が見える」発電所が数多く含まれていたのです。

そうした全国の契約発電所から調達した電力の自然エネルギー比率は、2017年度の電源構成実績をみると全体で61.0%。内訳は北海道エリアが97.3%、東北・東京エリアが51.8%、中部・関西エリアが97.0%でした。ベース電源の不足を補完する常時バックアップとして一般配送電事業者から調達した電力には化石燃料などに由来するものが含まれるものの、将来的に自然エネルギー100%を目指している生活クラブエナジーの電力は、7つの原則、電源が100%透明であること、全国の発電所の皆さまの想い、生活クラブ生協の理念と食へのこだわり、組合員の皆さまの参加など、私たちがパタゴニアの製品サプライチェーン全体で追及している、顧客、従業員、地域社会、環境に与える影響に対して責任をもつという理念にそうものでした。

結果、電力小売完全自由化から2年後の2018年6月、パタゴニア日本支社は、北海道から関西までの10の直営店(札幌北、アウトレット札幌南、仙台、サーフ千葉/アウトレット、アウトレット目白、渋谷、神田、二子玉川、白馬、神戸)と、直営店に隣接する2つのスタッフルーム(名古屋、大阪)、そして2つのオフィス(リペアサービス、神戸オフィス)の電力会社を生活クラブエナジーに切り替え、電力の供給を受けはじめました。

しかしながら、今回切り替えが実現した電力使用量の合計は、パタゴニア日本支社全体の電力使用量のおおよそ36%に過ぎません。今後は今回切り替えが実現しなかった、ビル管理会社などを通じてテナントとして供給を受けている直営店やオフィス、さらに契約している物流倉庫での電力使用量を考えると、自然エネルギー100%に向けてさまざまなオプションを検討する必要があります。そのなかでも最も優先されるべきは、省エネルギーとエネルギー効率の向上です。店舗やオフィスの新設、改装にあたっては最適な環境対策を採用し、最も資源効率の高い照明や設備を活用することなどを通じて、パタゴニア日本支社が使用するエネルギー(そして、その他の資源)をできるだけ削減しなければなりません。その上で、地域を基盤とする分散型の自然エネルギーのムーブメントの支援や投資なども視野に入れていく必要があるのです。

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