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ウーリエステルの導入にまつわるストーリー

クリスティーナ・ジョンソン・エイブリー  /  2018年11月6日  /  読み終えるまで6分  /  デザイン

リサイクル・ウールとマイクロポリエステルを混紡した、軽量ですばやく乾くソフトな肌触りのテクニカル素材。 Photo: Tim Davis

いまから3年前、私たちは環境への影響が少ない天然繊維を用いた、新たなフリース素材の開発に乗り出しました。インスピレーションの源は、パタゴニアの初期に創業者イヴォン・シュイナードが着ていた古いメリノウールのセーターでした。風雨に耐えたこのセーターは、何世紀もにわたり寒い天候下での必需品として重宝されてきたウールの特性をすべて備え、通気性に優れ、汗を吸湿発散し、濡れても保温性を維持しました。

これらの特性に、パタゴニアの定番である化繊のフリース(温かく快適なスナップTなどのような)の耐久性とロフトを加え、両者の長所を活かして作ったのが、ウーリエステル・フリースです。軽量でコンパクトに収納でき、すばやく乾くソフトな肌触りのこの素材の最大の革新は、リサイクル・ウールを採用したこと。多くの名案と同じように、このアイデアも必要性から生まれました。

2015年、パタゴニアは動物福祉と土地管理の懸念から、ウールの調達を一旦停止するという決断をくだしました。この停止により、パタゴニアのウール規格(PWS)を開発し、動物を人道的に取り扱い、責任ある草原管理を行い、サプライチェーン内のあらゆる段階で透明性を提示してくれる牧羊場経営者のみと取引ができるよう責任あるウール水準(Responsible Wool Standard(RWS))を、パタゴニアの必要条件として取り込む時間ができました。

バージン・ウールが使用できないなかで、天然繊維フリースの開発計画はすでに進行中であったため、パタゴニアの素材チームは回避方法として、再生ウールに目を向けました。

ウーリエステルの導入にまつわるストーリー

イタリア、プラトのカラマイ社は1878年以来ウールをリサイクルしてきた。Photo: Jeff Johnson

まずはイタリアのプラトに向かいました。ここではパタゴニアのパートナーであるカラマイ社が、150年近くウールをリサイクルしてきました。現代の環境保護運動がはじまるずっと前の1878年、手頃な価格の織物に対する需要を満たすことを目標に、2人の若い兄弟がカラマイ工場をはじめました。現在、一家の4代目は経済よりも、むしろ生態環境の保護に動機を見出しています。同社のリサイクル工程のおかげで、ウーリエステル・フリースの製造は、化繊のフリースにくらべて水の使用量を23%抑え、二酸化炭素排出量を37%削減します。

ウールのリサイクルは衣類が埋め立て地行きとなるのも防ぎます。カラマイ社は不要になったセーターや毛布、端切れを世界中から回収してプラトに送り、分別して細かく切り刻んだあと、束ねて大きな単色の梱にします。

ウーリエステルの導入にまつわるストーリー

1シーズンだけでウーリエステルは27,000キロの衣類が埋め立て地で廃棄されるのを防ぐ。Photo: Jeff Johnson

「捨てられた衣類が巨大な倉庫に山積みになっているのを見ると愕然とします」とパタゴニアのシニア原料/リサーチ・イノベーション・マネージャーのサラ・ヘイズは言います。捨てられた衣類のうち驚異的な数なのは、新品同様の状態で捨てられたもので、その大半は米国から来ています。ウーリエステルは2018年秋シーズンの製品だけでも約27,000キロの衣類が埋め立て地行きとなるのを防ぎます。

リサイクル・ウールが良いもうひとつの大きな理由は、染色工程を省くことができる点です。染料や有害な化学薬品の使用をなくし、それにともなう排水量も削減します(この問題はクリーン・カラー・コレクションでも取り組んでいます)。カラマイ社の色彩技術者は顔料を一切使用することなく、ほとんどの色相を作ることができます。一連の繊維梱からさまざまな色を選び出し、綿密な機械処理で混合させ、まったく新たな色調を生み出すのです。3種類の真紅を混合するとします。すると明るく鮮やかであると同時に地球への影響を抑えた、パタゴニアの「オキサイド・レッド」ができあがります。

ウーリエステルの導入にまつわるストーリー

リサイクル・ウールは染色工程を省くことが可能なため、染料や化学薬品の使用をなくし、排水量も削減する。Photo: Tim Davis

しかし環境に配慮したジャケットであっても、誰も着たがらなければ作る意味はありません。私たちが目指す快適さのレベルに到達するためには、素材の混紡を完璧にしなければならないことも分かっていました。それには数回の試みを要しました。リサイクル・ウールに標準的なポリエステルを混紡した際は、重くかさばるフリースになってしまいました。私たちは振り出しに戻り、今度は羽のような軽さのマイクロポリエステルを編み込みました。これは予想以上に良い出来となりました。

「新しい素材が倉庫に届くと、その巻きを広げた瞬間に成功かどうかがわかります」とヘイズは言います。「この生地に触ってみると、ふんわりとやわらかく軽量で、私たちは興奮しました」

しかし新素材はパタゴニアの社内ラボでの一連のテストを通過しなければなりません。洗濯し、引き伸ばし、酷使して毛玉や摩耗や破裂強度をチェックしたあと、パタゴニアのデザインチームはウーリエステルをフィールドテスターに送りました。テスターは試作品を何週間も着つづけ、ゴーサインを出しました。

ウーリエステルは保温性を提供しながらも汗を閉じ込めず、臭いも吸着させず、洗濯も容易で、バックパックにコンパクトに収納できました。そして通常の化繊のフリースよりも重量に対する保温性に優れ、ウールのセーターよりもずっと軽量ですばやく乾きました。

さらに見た目も上々でした。ウーリエステルを採用した新製品(リサイクル・ウール/コットン混紡の姉妹品ウーリーも同時発売)となるプルオーバーとフルジップ・ジャケットのデザインに取り掛かるにあたり、シニア・スポーツウェア・デザイナーのコートニー・モーガンは、パタゴニアがこれまでに製造したほぼすべてのTシャツやジャケット、クライミング道具の見本のある倉庫で、何週間も製品を選別して過ごしました。

モーガンはパタゴニアを有名にした1970年代のパイル・フリースから気に入ったディテールを引き出しました。かつて縁取りを別色にするための生地の最小オーダーを満たせなかった時代に使った幅の広いネイビーの袖口を採用し、ハーフドーム型ポケットの縫い目を施してYジョイントの袖をスリムなフィットにアップデートしました。

結果は、パタゴニアの伝統的なデザインのみならず、その精神を受け継ぐミニマリストでモダンな製品が完成しました。これはフリースの革命です。

ウーリエステル・コレクションpatagonia.jpでご覧ください。

ウーリエステルの導入にまつわるストーリー

ウーリエステルはウールよりも軽くて短時間で乾き、化繊のフリースよりも通気性と保温性に優れています。

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