ピューマ・コンカラー、別名ヤマネコまたはピューマは、地球上最も捕らえがたい生き物だ。アルゼンチン。photo:Darío Podestá
ピューマ・コンカラー、別名ヤマネコまたはピューマは、地球上最も捕らえがたい生き物だ。アルゼンチン。photo:Darío Podestá

ピューマの道

By 獣医クリスティアン・サウセド   |   2019/02/06 2019年2月6日

アーシリオ・セプーヴェダは、以前はピューマ狩りで生計を立てていた。いまは〈トンプキンス・コンサベーション〉の野生動物復元プログラムの鍵となるメンバーで、チリのパタゴニア国立公園で拡大するヤマネコの個体数の保護を手助けしている。過去に巨大な牧場に住み、羊と牛を飼っていた「レオネロ」、つまりヤマネコ・キラーだったアーシリオは、その土地が保護のために購入されたのち、公園の監視人兼ピューマのトラッカーとしての仕事を得た。

「自然のなかでピューマからこれほど深く学ぶ機会を得るなどとは、人生のある時点では予想もしていなかった」とアーシリオは言う。「羊を守るために彼らを殺すことが僕の仕事だったが、ふたたびそれをすることはいまでは想像もできない」

僕らは、過去のピューマキラー/現在のピューマ保護者、というアーシリオの経験に、大型肉食獣に対する社会の姿勢の幅広さを見ることができる。太古の昔から、僕らは捕食動物に魅力と憧憬、敵意と恐怖を感じてきた。パタゴニア国立公園を設立する過程でも、僕らは同様の見識を目撃した。放牧が歴史的におもな生業だった、人口の低い地方であるここアイセンでは、ピューマは家畜保護者と野生動物保護者のあいだで継続する、衝突の焦点なのだ。

ピューマの道

この対立には数々の面白い疑問を投げかけられる。チリ領パタゴニアはその経済を鉱業や放牧業などの伝統的な抽出産業の先にあるエコツーリズムへと押し進めながら、その文化的な伝統を維持できるのか? 新しい国立公園はその経済移行を推進し、その過程において野生動物と地元の地域社会に恩恵をもたらせるのか? 公園は歴史的に貴重とされる地元の生活の糧を支えながら、人間と大型肉食獣の共存のモデルとなる、よい隣人となれるのか?

捕食動物と家畜の利益のあいだに存在する衝突は、ひとつの地域、公園、あるいは国に限られたものではない。それは保護地域と大型捕食獣が存在する場所どこにでも起こる、世界的な挑戦である。あまりも多くの場合、これらの論争により参加者の態度は対局化してしまう。非常に感情的な議論は、客観的なデータを埋もらせてしまう傾向にある。

草原における羊の過放牧が砂漠化を進める結果となった。家畜である羊はピューマの食生活の通常の一部となった。チリ、ヴァレ・チャカブコ。photo:Tim Davis
草原における羊の過放牧が砂漠化を進める結果となった。家畜である羊はピューマの食生活の通常の一部となった。チリ、ヴァレ・チャカブコ。photo:Tim Davis

パタゴニア公園のピューマ保護プログラムを開発しながら、僕はこの複雑な分野における実世界の経験を有する専門家の意見を求めた。8年前、パタゴニア社のリック・リッジウェイの紹介で、僕はモンタナ州の野生生物学者であるジム・ウィリアムスと知り合った。何か月かの会話のあと、僕らはジムをチリ領パタゴニアに招くことにした。チリの野生生物権威(SAG)と共同で彼の北米における捕食動物と人間の衝突についての経験を分かち合うため、僕らはワークショップを企画した。数々のNGOの代表者や公共役員、野生生物のプロなどがそれに参加した。

ジムは野生生物学者としての彼の人生について、アメリカでの保護地区内、あるいはその付近の両方におけるクマとピューマの人間との衝突管理の成功と失敗の物語をシェアした。彼のプレゼンテーションは生態学的、そして社会的な交差の複雑さについての僕らの理解を深めた。パタゴニア公園におけるピューマについての科学的な情報(個体数の状況、絶滅危惧種であるゲマルジカの捕食率)を生成することが必須であることに気付きながらも、僕らはすべての利害関係者の共存をも達成しなければならなかった。政府機関、NGO、牧場、そして一般などの利害者間の寛容と信頼を築くことが必要だったのだ。

モンタナ州のボブ・マーシャル・ウィルダネスの奥深くで、ダート銃で麻酔をかけられたヤマネコを抱えるジム・ウィリアムス。photo:Jim Williams Collection
モンタナ州のボブ・マーシャル・ウィルダネスの奥深くで、ダート銃で麻酔をかけられたヤマネコを抱えるジム・ウィリアムス。photo:Jim Williams Collection

参加した僕ら全員にとって、ジムが掲げた最初の課題は啓示的であり、より包括的かつ革新的なプログラムを構築する希望へとつながった。共存と容認を確実にするこれらの努力には、僕らの「ライブストック・ガーディアン・ドッグ・プログラム(家畜保護犬プログラム)」も含まれ、それを通して育てた家畜保護犬を家畜の捕食を阻止するためにその地方の農業生産者に配布した。僕らは10年以上もその効果をパタゴニア公園のみずからの羊の群れで証明してきた。また僕らは前進的な牧場のため、「ワイルドライフ・フレンドリー」認証プログラムを発足した。そして旧牧場が保護地区へと移行するのにともない、僕らは前牧場労働者と、ガウチョとアーシリオのような「レオネロス」を公園地のレンジャーと保護チームに招いた。これらの例により、僕らはこの美しく世界的に重要な地域において、野生動物とパタゴニアの遠隔地域の生活の糧が共存できるという希望で満たされた。

ピューマの道

パタゴニア公園が正式に国立公園になるのにともない、〈トンプキンス・コンサベーション〉はアーシリオ・セプーヴェダの専門知識を活用し、この地域で持続する保護という仕事の不可欠な一部として、ピューマの監視と保護プログラムをつづけていく。僕らのプロジェクトはジムがこの恐るべき生物への情熱を分かち合う著書『Path of Puma』で巧みに語る保護のストーリーのひとつでしかない。本書の主人公は、北はアラスカから南はチリまで、アメリカ大陸において最も広く繁殖する哺乳動物であるヤマネコのある神秘的な1匹だ。

ジムは読者を楽しませながらモンタナ州からパタゴニアまで導き、〈トンプキンス・コンサベーション〉が25年以上も南アメリカの先端で運用してきたような、今日の世界における大規模な保護努力の複雑さと重要性を掘り下げる。

野生を取り戻すための巨大なネコの戦いについての専門家の視野である『Path of Puma』はジム・ウィリアムス著。ダグラス・チャドウィック序文。
パタゴニアのオンラインショップにて販売中。