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ツリーライン:不法侵入

ギャレット・グローブ  /  2019年2月23日  /  読み終えるまで5分  /  スノー, アクティビズム

グローブ、マンリー、オリバーの3 人が「オールド・ フレンド」と呼んで崇拝したこの2 〜3 メートルのブリストル コーンは、周囲に他の木々もなく吹きさらしであることから傷だらけで、その根のほとんどは地表に露出している。 Photo: Garrett Grove

木々は私たちの最長寿の仲間です。彼らは時間の流れを記録し、根を通してメッセージを発信し、日陰や避難所や積雪を支えるなどの手段を通じて、地域社会を形成しながらある種の安全と、自由を与えてくれます。『Treeline(ツリーライン)』はそんな木々についての新しい映画で、日本、ブリティッシュ・コロンビア、ネバダの3つの素晴らしい森で過ごす、山を愛する人びとを紹介します。

4つからなるストーリーの最後のエッセイをお楽しみください。

ロサンゼルスからラスベガスを通り抜け、アメリカで最も孤独なハイウェイをネバダ州イーリーへと向かっていた。ネバダの高地に位置するグレート・ベイスン国立公園に広がるブリストルコーン・パインの森でのスキーと撮影の旅のためだった。その8日目が終わるころには体調を崩して疲れ果て、収穫はなく、やや動揺しながら退散することになるのだが。

初日、海抜ゼロの土地からやって来た映像作家のジョーダン・マンリーと僕は、高山病になったと信じ込んでいた。イーリーの町の標高は2,000メートル近くあり、3,553メートルのマウント・ワシントンの山頂までハイクアップしてブリストルコーンを見つけたときの僕らの体調は最悪だった。だがこの不調は、これらの木々が育つ厳しい気候に体の調子を整えて慣れさせるための、一時的なものだと考えていた。僕らはその後スキーで下山し、惨めな状態で床に就いた。2日目は吹雪いてしまった。3日目にはインドから帰国したばかりのカーストン・オリバーが合流したが、その日の1,500メートルの登りの途中でひどく体調を崩し、ノンストップで嘔吐と下痢を繰り返した(インドの旅仲間がすでにコレラの診断を受けていたので、彼もそうではないかと思われる)。ジョーダンと僕はブリストルコーンを目指して登りつづけ、数時間何もせずに木々を眺めて立っていた。寒く、風も強く、すべてが霜で覆われていた。

ツリーライン:不法侵入

ブリストルコーンの呪いか、それともコレラか?旅の最終日にも謎の病魔と闘いつづけたオリバーは脱水症状になり、40 分おきに休憩するか、嘔吐や下痢を繰りかえさねばならなかった。
Photo: Garrett Grove

この地域のブリストルコーン・パインは樹齢1000年から3000年にもなり、彼らの生涯で起きたはずの出来事について考えると目からウロコが落ちる気分だ。彼らは数千年にわたって佇んできたその山で、たかだか過去150年のあいだにその下に広がる谷に移住してきた人間と、そしてその人間たちが鉱物の採掘をはじめた様子を辛抱強く見てきたのだ。数十年でそうした坑道は廃れ、いまでは風力原動機が、忘れ去られていたその平らな地形に広がっている。

ツリーライン:不法侵入

マウント・ワシントンの山頂に立ち、眼下に広がる牧場や風力発電所、乾燥した砂漠を見渡すカーストン・オリバー。ネバダ州  Photo: Garrett Grove

あの森にいると、時間の流れが変わった気がした。早くなったのか遅くなったのかはわからない。わかっていたのは、僕らは彼らの領域にいたということ。僕らが腰を下ろしていた場所から眼下に何キロも広がる谷には、セージやセイヨウネズがまばらに散らばっていた。一面茶色の、乾いた風景。ブリストルコーンと一緒に山上にいると、人間の社会や「知識」から切り離された不変の世界から、悟りを開いた目で見ているような感覚だった。

そうしてただ座って眺めていた数時間、僕は冬にこの木々の隣に立ったことがある人間はどれくらいいるのだろうかと考えた。3月はもちろん、実際はどの時期であっても容易に来ることのできる場所ではない。この森は荒野の真っただ中にある。木々はどうやって生き延びるのだろう。ここに土はなく、岩だらけだ。何に根を下ろしているのだろう。どこから栄養を取っているのだろう。ここには穏やかな季節などない。残酷なまでに暑くて乾燥しているか、雪や風をともなって極度に寒いかのどちらかだ。

ツリーライン:不法侵入

この2日前は完全に茶色だった森の地面に、急速に移動する嵐がもたらした適度な雪により、冬期にはめったに探検されないグレート・ベイスン国立公園へと撮影隊がスキーで潜入することができた。ネバダ州ホワイト・パイン郡 Photo: Photo: Garrett Grove

僕がスピリチュアルな人間でないのは明らかだ。けれども1本のブリストルコーン・パインの写真を撮った瞬間、ひどく動揺したのを覚えている。その夜眠れずにいた僕は、あの木が僕らに去れと言っていたような気がした。そして同じメッセージが、夢のなかでも繰りかえされた。いまその写真を見ても、その夢の記憶は鮮明によみがえる。そこはいつでもものすごく静かで、まるで現実の世界のことのようで、ブリストルコーン以外何も存在しない。薮も他の木々も、野生動物も、スキーヤーも。

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