クリーネストライン


ヘンプは容易に栽培できる。繊維質の多い植物で、殺虫剤や灌漑が不要で、肥料も高品質である必要はない。しかし、ヘンプを生地にするのは専門的技術が求められる複雑な作業であり、米国の農家たちはその技術を習得し直す必要があるだろう。Photo: Lloyd Belcher
ヘンプは容易に栽培できる。繊維質の多い植物で、殺虫剤や灌漑が不要で、肥料も高品質である必要はない。しかし、ヘンプを生地にするのは専門的技術が求められる複雑な作業であり、米国の農家たちはその技術を習得し直す必要があるだろう。Photo: Lloyd Belcher

再び合法化されたヘンプ

By ダイアン・フレンチ   |   2019/05/17 2019年5月17日

今日、気づかないでいるのが難しいくらいに、ヘンプが大々的に宣伝されている。どのライフスタイル誌でも取り上げられ、薬局に行けば目に入り、健康食品ストアの店員やヨガクラスで隣り合わせた人との話題に上ったり、皆何らかのきっかけでヘンプの驚くべきパワーを知ることになる。特に、ヘンプから抽出されるオイルであるカンナビジオール(CBD)の効能は、にわかに信じがたいほどすばらしい。カンナビジオールは抗炎症作用があり、ガンの治療に有益で、関節炎、うつ病、不安神経症、多発性硬化症、不眠症に効果があり、糖尿病を防いでくれる。

研究者たちが先を争ってヘンプによる治療を行おうとしていることが弱点となって、実際にはこうした効能はすべて科学的な厳密性についてまだ不十分な点が多い。けれども注目すべきは、約80年にわたり有罪とされていたヘンプの栽培が、昨今アメリカで復活したことであり、これは大いなる進展である。そして衣類を作るための繊維としてヘンプがもたらす利点も、単なる誇大広告では終わらない。

1937年以降、ヘンプは近視眼的にカンナビノイドを含む大麻の仲間であるマリファナと一緒くたにされていた。その後1970年に禁止薬物1類に指定され、使用用途を問わずヘンプを栽培、販売することは重い罪となった。しかし、2018年農業法により、ついに産業用ヘンプをアメリカ国内で栽培、販売、移送することが再び合法となったのである。

パタゴニアはこのニュースを喜んだ。1997年以降、当社のアパレルラインには、合法的に生産されているヘンプ繊維が使われており、それを輸入して、再生ポリエステルやオーガニックコットンやポリウレタンなど他の繊維と混紡して製品を作っている。すでに私たちは数多くの農家と対話を重ね、〈ポスト・ファーム・ビル〉をヘンプの米国内供給先として視野に入れている。ヘンプには新たな産業を生み出すポテンシャルがある。

現在、パタゴニアでは中国産ヘンプを使用している。中国政府は何世代にもわたり、ヘンプの生産を多額の助成金で援助している。ヘンプは栽培しやすく、他の作物に比べて多くの水を必要としない。また、その巨大な主根の構造が地中深くから栄養分やミネラルを吸い上げることから、強壮薬ともされている。

ヘンプは加工されると、丈夫で、難燃性と抗菌性が高く、リネンのように美しい繊維になる。私たちは耐久性があり、通気性に優れ、身につけた途端に肌になじむ服を作れることを知り、さらにヘンプについて研究していきたいと考えている。

「アメリカでは何年もヘンプを栽培しておらず、かつて培った専門技術も歴史的知識もすべて失ってしまった。私たちはそれを取り戻しているところだ」とパタゴニアのヘンププロジェクトを率いる素材開発担当、アレクサンドラ・ラ・ピエールは語る。

2018年農業法は、ヘンプの専門技術を取り戻す機会だけでなく、アメリカの遺産を復活させるチャンスをもたらした。大西洋の向こうから初期の移民を運んできた帆船や船の索具にはじまり、国民的ヒロインであるベッツィー・ロスが作ったと言われる初代星条旗、そして西部開拓へと容赦なく向かう荷馬車に使われた幌にいたるまで、ヘンプは我が国の発展に欠かせない役割を果たしてきたのだ。

ヘンプの栽培は非常に容易だが、収穫から生地にするまでに複雑な工程を踏む。収穫、浸漬、梱包、剥皮、精錬、梳綿……すべての工程に理論と技術を要する。私たちはこの工程を記録すべく、中国に写真家ロイド・ベルチャーを送り込んだ。彼が撮影した写真はじつに感心させるものだった。ぜひご覧いただきたい。

一度に1列ずつ、専用トラクターでヘンプの頑丈で繊維質な茎を刈る。トラクターの刃で地面から12センチのところでヘンプを刈り払う。そうすることで、刈ったヘンプの下側に空気の層が作られて、ヘンプが自然乾燥される。これがヘンプを使用可能な繊維にするために行う、数あるプロセスの第1工程となる。 Photo: Lloyd Belcher
一度に1列ずつ、専用トラクターでヘンプの頑丈で繊維質な茎を刈る。トラクターの刃で地面から12センチのところでヘンプを刈り払う。そうすることで、刈ったヘンプの下側に空気の層が作られて、ヘンプが自然乾燥される。これがヘンプを使用可能な繊維にするために行う、数あるプロセスの第1工程となる。 Photo: Lloyd Belcher
刈り取られた茎を乾燥して束ね、表皮を剥く「剥皮」と呼ばれる工程。 Photo: Lloyd Belcher
刈り取られた茎を乾燥して束ね、表皮を剥く「剥皮」と呼ばれる工程。 Photo: Lloyd Belcher
ヘンプの茎には木質部分があり、ほぐしにくい。作業員がその茎を剥いて髪の毛のような繊維にしていく。1850年代とは異なり、大きなくしや槍を使って繊維をすく。 Photo: Lloyd Belcher
ヘンプの茎には木質部分があり、ほぐしにくい。作業員がその茎を剥いて髪の毛のような繊維にしていく。1850年代とは異なり、大きなくしや槍を使って繊維をすく。 Photo: Lloyd Belcher
	外側の繊維を剥がしていくと、髪の毛のような繊維になる。農家の人たちが繊維を辺りに放り投げて、中央で束ねてウィッグのような束を作る。そして、各束の結び目を掴んで持ち上げ、投げながら積み重ねていく。この時点で、繊維は剛毛な馬の毛のような感触になる。 Photo: Lloyd Belcher
外側の繊維を剥がしていくと、髪の毛のような繊維になる。農家の人たちが繊維を辺りに放り投げて、中央で束ねてウィッグのような束を作る。そして、各束の結び目を掴んで持ち上げ、投げながら積み重ねていく。この時点で、繊維は剛毛な馬の毛のような感触になる。 Photo: Lloyd Belcher
次に別の施設にて、浸漬、打綿、洗浄された繊維は、新たな柔らかい繊維となり、作業員が混入物をすべて取り除きながら、ベルトコンベアの上で乾かされる。 Photo: Lloyd Belcher
次に別の施設にて、浸漬、打綿、洗浄された繊維は、新たな柔らかい繊維となり、作業員が混入物をすべて取り除きながら、ベルトコンベアの上で乾かされる。 Photo: Lloyd Belcher
繊維の房が乾燥したら、作業員はそれを束ねて次の洗浄に備える。 Photo: Lloyd Belcher
繊維の房が乾燥したら、作業員はそれを束ねて次の洗浄に備える。 Photo: Lloyd Belcher
繊維は柔らかくなるまで何度も洗う必要がある。濡れた繊維の房をばらばらに引き離し、さらに房をほどく機械に通していく。 Photo: Lloyd Belcher
繊維は柔らかくなるまで何度も洗う必要がある。濡れた繊維の房をばらばらに引き離し、さらに房をほどく機械に通していく。 Photo: Lloyd Belcher
最後の洗浄が終わると、乾燥させた繊維は、糸を作るために紡績機にかけられる。 Photo: Lloyd Belcher
最後の洗浄が終わると、乾燥させた繊維は、糸を作るために紡績機にかけられる。 Photo: Lloyd Belcher
次々とバケツがヘンプ糸の束で満たされる。この時点で、糸は巻けるくらい柔らかくなめらかになっている。 Photo: Lloyd Belcher
次々とバケツがヘンプ糸の束で満たされる。この時点で、糸は巻けるくらい柔らかくなめらかになっている。 Photo: Lloyd Belcher
大きな織機を使って巨大な糸ボルトに繊維を巻き付けていく。巻き付けた繊維は、他の織機にかけられて生地が織られる。 Photo: Lloyd Belcher
大きな織機を使って巨大な糸ボルトに繊維を巻き付けていく。巻き付けた繊維は、他の織機にかけられて生地が織られる。 Photo: Lloyd Belcher
生地を織る前の糸を巻いた糸巻き。 Photo: Lloyd Belcher
生地を織る前の糸を巻いた糸巻き。 Photo: Lloyd Belcher
小さな糸巻きに巻かれた加工済みのヘンプ繊維が、巨大な織機に給糸され、織る前の糸ボルトを作る。写真:ロイド・ベルチャー
小さな糸巻きに巻かれた加工済みのヘンプ繊維が、巨大な織機に給糸され、織る前の糸ボルトを作る。写真:ロイド・ベルチャー

パタゴニアのウェブサイトでヘンプ・コレクションをご覧ください。

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