クリーネストライン


1984年のカタログでは、ジュリー・ガルトンとその仲間たちがカラフルなバギーズをはいて、コロラド・リバーのそばで泥まみれになっている姿を披露した。 Photo: Chris Brown
1984年のカタログでは、ジュリー・ガルトンとその仲間たちがカラフルなバギーズをはいて、コロラド・リバーのそばで泥まみれになっている姿を披露した。 Photo: Chris Brown

泥にまみれた物語

By レイチェル・G・ホーン   |   2019/06/06 2019年6月6日

もう何年もパタゴニアの店舗に足を運んでいなかったジュリー・ガルトンだが、夏の旅行で息子と一緒にコロラド・リバーへ行くため、新しいバギーズ・ショーツを買おうとウェブサイトを訪れた。すると、思いがけずよく知る顔に遭遇する。ジュリー本人だ。1984年のカタログに掲載された写真で、顔以外泥だらけの姿だった。以来35年間、彼女は一度もこの写真を目にすることがなかった。

まずジュリーは子どもたちに、それからパタゴニアのカスタマーサービスに電話をかけた。彼女は自分がウェブサイトの写真に出ている女性であることを告げると、スタッフは興奮を抑えられず、質問をたたみかけてきた。あの写真はどういう経緯で撮ったのか、なぜ泥まみれになっているのか、なぜバギーズだけあんなにきれいなのか。その電話で、ジュリーは、自分たちの顔をくり抜いた実物大のフォトブースまで設置され、世界中の店舗にこの写真が飾られていることを知る。写真だけがひとり歩きしてしまっているが、川のそばで泥まみれになった背景には物語があった。そしてそれはラブストーリーからはじまる。

1981年、ジュリーは初めてグランドキャニオンを訪れた。大学を卒業したばかりの彼女は、アウトドアや自然を愛し、それを人に伝えるパークナチュラリストとして夏を過ごしていた。「写真の右端にいる青い水夫帽を被った男性と出会い、私たちは恋に落ちたの。21歳の時だったわ」 1983年に撮影された当時も含め数年間、ジュリーはグランドキャニオンを訪れてはこの男性とラフティングを楽しんでいた。

グランドキャニオンのディアクリークはコロラド・リバーののどかな支流。細くて曲がりくねった遊び場がたくさんある。 Photo: Dany Gale
グランドキャニオンのディアクリークはコロラド・リバーののどかな支流。細くて曲がりくねった遊び場がたくさんある。 Photo: Dany Gale

ジュリーが、米国国立公園局と米国地質調査所の依頼でグレンキャニオンダムの埋め立てによる影響を調査するために、半年間、コロラド・リバーのそばですごしていたときの夏、〈アリゾナ・ラフト・アドベンチャーズ〉でリバーガイドを務めるクリス・ブラウンが、この写真を撮影した。その前年にあたる1982年、ひどい降雪と急速な雪解けで、川はダムが決壊したかのようだった。いままで誰も見たことのない川の流れに、皆とても興奮しながらデータ収集を行っていた。ゴムボートで川を下り、作業場で10日間仕事をしたら、またゴムボートに乗って次の作業場へと移動する。55日かけてすべてを巡ったら5日間の休暇を取り、再び同じ作業を行う。「まだ20代だったから、そんな生活ができたのよ」と明るく語るジュリーは、数か月前にグランドキャニオンから帰ってきたばかりだった。

そんな生活とはいえ、仕事ばかりしていたわけではなく遊びも楽しんだ。だから、美しく広がる泥地へやってきた彼らが、頭からつま先までべちゃべちゃの泥を塗りたくったのもごく自然のなりゆきといえるだろう。全員がバギーズをはいているとわかり、そこだけ泥を洗い流しパドルを手にして撮ったのが、このベストショットだ。「まるでユニフォームのように、みんなバギーズをはいていたの。川で着るのに一番使いやすいウェアだったから」

人生は、コロラド・リバーのように曲がりくねっているもの。ジュリーと水夫帽の男性も長続きはしなかった。しかし、グランドキャニオンに何度も呼び寄せられ、ジュリーはいまも可能な限りラフティングをしに訪れている。その時は必ずバギーズ・ショーツを携えて。現在、バージニア州オークトンで心理士として開業している彼女は、コロラド・リバーを思い出しては、できる限り訪れるようにしている。「グランドキャニオンは、私が一番自分らしくいられる世界で唯一の場所なの。毎朝、目が覚めたらすぐに川下りできるなんて、最高に幸せだわ」と彼女は語る。

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