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海に学び、土に習う

倉石 綾子  /  2019年8月9日  /  読み終えるまで8分  /  ワークウェア, 食品

緑の稲穂が揺れる、田中宗豊さん・美子さん夫妻の田んぼ。写真:五十嵐 一晴

日本代表するビッグウェーブサーファーにして、パタゴニアのサーフィン・アンバサダーを務める田中宗豊さんのもう一つの顔は農家である。海と深い山に囲まれた徳島県海陽町で、妻の美子さんとともに米やハーブ、野菜を育てて暮らしている。中学生の時にサーフィンに出会い、以来、波乗りの世界しか知らなかったという田中さんが農業に興味を持ったきっかけは、美子さんが取り組んでいた家庭菜園だった。
「出会った頃から彼女は小さな家庭菜園で季節の野菜やハーブを作っていました。聞けば、それは彼女の子ども時代の原風景だという。両親の実家に帰省するといつも、親戚が畑からその時々の野菜をもいで出迎えてくれた。大阪の都市部で育った彼女にとって、それはとても贅沢な体験だったのです」

海に学び、土に習う

妻の美子さんが丹精込めて手入れする自家菜園。マメ類、ナス、トマト、キュウリ、ネギ……自分たちが食べたい野菜を季節に応じて育てている。写真:五十嵐 一晴

田中さんも美子さんも阪神大震災を経験していたこともあり、いざという時の食の大切さは身にしみていた。折しも、美子さんと結婚して家族が増え、地域の一員として暮らすことを選択したタイミングで、それまで「海とサーフィンのことしか考えていなかった」という田中さんの心境にも自ずと変化が生じていた。いま、この一瞬の波のことよりも、子どもや地域の未来のことを。人生や社会に思いを馳せるようになったら、サーフィンとは別の視点で物事を考える必要があると痛感した。
「食べられるものを育てるという行為は人間の根源だと思っていました。そんなことを考えながら彼女の菜園を見ていたら、僕の探している答えはここに、土にあるんじゃないかって思うようになったのです」

海に学び、土に習う

ホーリーバジルの畑で草取りを行う。抜いても抜いても生えてくる雑草、体力勝負の作業だ。写真:五十嵐 一晴

田中さんが行っている農業は、本人曰く「昔ながらの農業」。農薬や除草剤は使わない、コンポストで有機肥料を作り施肥するというスタイルは有機農業に近いが、先人の知恵に敬意を表して「昔ながらの農業」を謳っている。実は、始めた当時は「土と植物が本来持っている力だけで農業をしよう」と高い理想を掲げていた。手植え・手刈り・天日干しにこだわる、肥料はもちろんマルチなど人工的なものには一切頼らない、そんなストイックな自然栽培を志していたのだ。
「ズブの素人なのにパーマカルチャーや自然農法に傾倒して、長く農業をやっているプロのような知識も経験もないのに、とんでもなく高いハードルを自分たちに課してしまって。僕は一度突っ走るととことん突き詰めたくなる性質だから、それでえらい目に逢いました」

海に学び、土に習う

夫婦で仲良く田んぼに向かう。美子さんが持っているのは、昔ながらの手押しの除草機。この時期に欠かせない農具の一つだ。写真:五十嵐 一晴

毎日手探り状態で試行錯誤を繰り返す中で、田中さんがヒントを求めたのは地域の高齢者やこの辺りの農家に伝わる昔ながらの知恵だった。痩せ地にマメ科の植物を植えると根につく根粒菌のおかげで土が元気になる、天然の害虫忌避剤としてコンパニオンプランツを使う……。ここに長く受け継がれていた手法は田中さん夫妻が志す環境と共生する農業に合致しつつも、適度なゆるさがあり、そして何より、ここの気候や風土に合っていた。
「地域の高齢者に教わることって多いんですよ。それは何も農業に限らずで、自分たちが目指す環境再生・循環型の暮らしのヒントもその土地ならではの営みにあると、土を触る中で教えてもらったのです」

海に学び、土に習う

森林の整備作業で出た間伐材を譲り受け、薪にする。最近は師匠について山に入ることが何より楽しい、と田中さん。写真:五十嵐 一晴

農業を突き詰めれば、結局は土と水にたどり着く。田中さんの田畑を潤す宍喰川の水を上流へと辿っていけば、海陽町を取り囲む深い山々に到達する。山に降り注いだ雨は地下に染み込み、川に滲み出て、土中のミネラルを取り込んだ栄養豊富な水が海に注ぎ込んで豊かな生態系を支えている。海の水は太陽によって温められて雨雲となり、再び地上に降り注ぐ。
「人間の暮らしは海、川、山が織りなす大きな循環システムの、ごく一部に過ぎない。土仕事に導かれた気づきをきっかけに、最近では山仕事も請け負うようになりました。尊敬する“山の師匠”に、間伐作業や植林といった山仕事と、木の見方や山との付き合い方を教えてもらっています」
師匠とともに、機械を入れられないような深い谷間の現場に入る。知恵とスキルと経験値でもって、目の前にあるもので必要なものをなんでも手作りしてしまう師匠の姿に、これが未来に必要とされる人間力だと実感する毎日だ。

海に学び、土に習う

農作業、山仕事に加え、自身が立ち上げたサーフボードファクトリーでサーフボードのシェイプも行う。山仕事を行うようになってからはウッドボードへの愛着がさらに増した。写真:五十嵐 一晴

何十年もサーフィンをしながら生きてきて、自然の怖さ、楽しさ、懐の深さ、大切なものは全部海に教えてもらった。海に生かされてきたという思いがあればこそ、海の未来や地球の水の循環のことを誰かに伝えたいと願ってきた。
「ただ、当時の僕は視野が偏っていて幅広い層に向けてメッセージを発信する方法を見つけることができなかった。大地と海のつながりや自然の大きなサイクルについて別の視点で考えられるようになったばかりか、『食』という誰もが必要とするシーンで思いを伝えられるようになったのは、多くの方々に助けていただきながら、海で学んだことを軸に農業でトライ&エラーを重ねたおかげ。大失敗もするけれど、どれ一つとして無駄な経験はありません」
現在、田中さんは海陽町で、地域の方々と体験型の食育イベントを行なっている。イベントでは土と触れ合える作業体験を通して参加者に楽しさややりがいを感じてもらう。そして作業のご褒美に、自分たちが農作業に携わった季節の味覚を味わってもらう。「労働があるからご褒美をよりありがたく感じられる」、田中さんの持論である。

海に学び、土に習う

友人が訪れると手塩にかけた作物でもてなす。今晩は夏野菜満載の食卓になりそうだ。写真:五十嵐 一晴

努力を厭わず、そして自然に対して謙虚であり続ければ、自然はちゃんとご褒美を用意してくれる。例えば、朝から晩まで農作業に追われ、“豊かさ”とはほど遠い毎日を送っていた就農1年目。毎日、荒地や雑草、虫と格闘してようやく収穫できた米、「あの味は一生忘れられない」と田中さん。できはよくなかったけれど半年分の思いが凝縮した米は、これまで口にしたどんなものより「元気」な味がしたからだ。
「だからみんなにもぜひ、自然のご褒美を味わってもらいたい。海も山も川も、全てが一つの大きな輪の中にあって、その輪がもたらす食という恵みから何かを感じてもらいたい。サーファーである僕が農業をやるのは、それをみんなに伝えたいからなのかな」

海に学び、土に習う

農作業に、山仕事に。八面六臂に活躍する田中夫妻愛用のワークウェア。写真:五十嵐 一晴

ワークウェア

ワークウェアは多彩な屋外フィールドで働く人のために開発された。ワークウェアに主に使用されているのは、天然繊維の中でもっとも丈夫とされる素材の一つである産業用ヘンプ。ヘンプは乾燥に強く、少量の肥料で育つうえ、深く張った根が土壌環境を改善するなど環境負荷の少ない素材と言える。このヘンプのほか、リサイクルポリエステルやオーガニックコットンなど環境に配慮した素材で仕立てたワークウェアは、林業や農業、漁業などの過酷な労働環境に耐えうる高い強度と耐久性を備えている。

田中さんが農作業や山仕事のユニフォームとして愛用しているのが、パタゴニアのワークウェア「アイアン・フォージ・ヘンプ・キャンバス」コレクションだ。環境に配慮したというだけでなく、どんな現場でも着用できる汎用性の高さがいいと言う。「厚手のヘンプで耐久性が高いので、藪漕ぎをするような山仕事でも安心です。中でも『ダブル・ニー・パンツ』は膝の部分が二重の仕立てになっていて、膝をついての作業が多い野良仕事に最適」
高い耐久性や機能性、快適さに加え、これからの時代は「かっこよさ」も大切だ、と田中さん。「地域が抱える問題の根っこには一次産業の後継者不足があります。東日本大震災以降、農業や林業に興味を持ってくれる若者も出てきました。彼らは一次産業の大切さもやりがいもわかっている。じゃあ、何が彼らの背中を押してくれるのかというと、スタイルなんじゃないかと僕は思うんです」自分たちの価値観をしっかりと表すモノや生きかたを選択する。その姿は仲間たちをインスパイアし、子どもたちに憧れを抱かせるだろう。「そういう生き様はやがて地域を動かし、地方を動かし、社会を動かしていくんです。ユニフォームも生きかたもかっこよく。これからはそんな時代になっていくと思います」

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