クリーネストライン


檜原村の森林を中心に、森林の管理や整備から森林にまつわるイベントの企画・運営まで、幅広いジャンルで活動する「東京チェンソーズ」のスタッフたち。写真:五十嵐 一晴
檜原村の森林を中心に、森林の管理や整備から森林にまつわるイベントの企画・運営まで、幅広いジャンルで活動する「東京チェンソーズ」のスタッフたち。写真:五十嵐 一晴

東京に100年の森を作ろう!若い世代が担う、未来の林業

By 倉石 綾子   |   2019/08/16 2019年8月16日

「東京チェンソーズ」は東京都檜原村を拠点に活動する林業会社だ。高齢化と就業人口の減少が叫ばれる林業にあって、「東京チェンソーズ」の社員数は18人、平均年齢は34歳。「美しい森を育み、生かし、届ける」を企業理念に掲げる彼らの事業内容は、造林・育林の管理作業の請負から森林の整備や調査、さらには森林にまつわるイベントの企画・制作、木材を使ったオリジナルアイテムの企画・販売と幅広い。「東京チェンソーズ」の取り組みから、若い世代が担う未来の林業のありようを考えてみよう。

作業道づくりで支障となる木はチェンソーを使って伐採する。伐採した木は、山から搬出しておもちゃや小物に加工する。作業道の補強に使うこともある。写真:五十嵐 一晴
作業道づくりで支障となる木はチェンソーを使って伐採する。伐採した木は、山から搬出しておもちゃや小物に加工する。作業道の補強に使うこともある。写真:五十嵐 一晴

「東京チェンソーズ」代表の青木亮輔さんは東京農業大学農学部林学科出身。生来、アウトドアで遊ぶことが好きで、在学中は探検部に所属していたほどだ。卒業後、一度は事務仕事に従事するも、自然のなかで過ごす仕事にやりがいを見出したいと林業を志した。

「東京都の総面積の36パーセントが森林で、伐採したら苗木を植えるという作業を繰り返す林業は持続可能な循環型産業です。そういう点に魅力を感じて檜原村の森林組合に就職しました。現場では不安定な労働環境と、国の補助金がなければ産業として成り立たないという現在の林業が抱える問題に直面しましたが、自分なりの理想の林業のスタイルが徐々に明確になってきたので、独立して『東京チェンソーズ』を立ち上げたのです」

理想の林業を掲げて活動する、「東京チェンソーズ」代表の青木さん。写真:五十嵐 一晴
理想の林業を掲げて活動する、「東京チェンソーズ」代表の青木さん。写真:五十嵐 一晴

青木さんが掲げる理想の林業とは、社員が安心して働ける環境が整っており、国の補助金だけに頼らなくとも成立する、そんなポジティブな未来を伴う「明るい林業」だ。とはいえ木材輸入の自由化以降、木材価格は下がる一方で、例えば直径30cm×長さ4mの、樹齢およそ60年のスギ材の価格相場はわずか3,500円。これでは間伐や伐採後の再造林など、森林整備にまつわる費用を捻出できない。林業がかつての勢いを失っていることは明らかだ。「こうした状況が森林を荒廃させ、林業への意欲を失わせているのだと思います」と青木さん。そこで青木さんたちは、林業に自分たちなりの“付加価値”を与えることに取り組んだ。例えば、「顔の見える林業」を目指して下請けから元請けへと方向転換する。森林の管理や整備を行うだけでなく、自分たちで切り出しと加工を行い、自ら企画した商品を消費者に直接、届けるのだ。ホームページやSNSでの積極的な発信も付加価値の一つである。これにより「東京美林倶楽部」「森デリバリー」といったユニークな事業や、東京の森の魅力を幅広い層に伝えることができる。

チェンソーのメンテナンスを行う青木さん。丸ヤスリを使い、ソーチェーンを丁寧に研いでいく。写真:五十嵐 一晴
チェンソーのメンテナンスを行う青木さん。丸ヤスリを使い、ソーチェーンを丁寧に研いでいく。写真:五十嵐 一晴

そのような「東京チェンソーズ」らしい価値の一つに、「美しい森林を育む」という企業理念がある。自然に寄り添う林業として、例えば作業道を作るにしても効率優先で山を切り崩すのではなく、まるでハイキング道のような、なるべく環境に負荷をかけない道を作る。伐採後も、禿山ではなく見た目に美しい森を維持する。「木材を一本まるごと使い切ろう」という取り組みも、美しい森林づくりを見据えた中から生まれたものだ。これまで建築用材として流通させられないパーツは山に捨てていたのだが、端材を使ったおもちゃ、焚き付け用の樹皮と薪をセットにした焚き火セットなど、様々な企業とコラボレーションを行うことで未利用材を有効に活用した新商品を開発するように。こうしたケースは今後増えると考えられる。そのとき、その加工を村内で担うことができれば、新たな雇用が創出されるなど、自然環境ばかりか地域社会にも貢献できることになる。

秋以降に行われる伐採・搬出作業に備え、重機が山に入れるよう作業道を造る。「東京チェンソーズ」では、自然になるべく負荷をかけない、ハイキングトレイルのような作業道づくりを行なっている。写真:五十嵐 一晴
秋以降に行われる伐採・搬出作業に備え、重機が山に入れるよう作業道を造る。「東京チェンソーズ」では、自然になるべく負荷をかけない、ハイキングトレイルのような作業道づくりを行なっている。写真:五十嵐 一晴

「東京チェンソーズ」の社会や環境に対する取り組みとして、自社で所有する森林について、森林の環境保全と地域社会の利益に配慮し、継続可能な形で生産された木材に与えられる国際的な森林認証制度、「FSC® 認証」がある。「FSC® 認証」にはFM(Forest Management)認証とCOC(Chain of Custody)認証の2種があるが、「東京チェンソーズ」はいずれも取得している。「美しい森を育み、生かし、届ける」ためには、労働環境、地域社会、そして自然環境にも思いを馳せなくてはならない。国際認証の厳しい枠組みの中で現場の労働条件や自然環境を評価されることは、自分たちの林業や森林管理のあり方について多角的な視点をもたらしてくれたとか。

伐採した木材を運ぶ。数十キロの丸太も軽々と肩に担ぐ。写真:五十嵐 一晴
伐採した木材を運ぶ。数十キロの丸太も軽々と肩に担ぐ。写真:五十嵐 一晴

戦後に植林された東京西部の森は、樹齢50〜60年の木がほとんど。ということは、40年後には樹齢100年の森に育つことになる。青木さんたちのモチベーションは、樹齢100年の樹木が織りなす深く美しい東京の森だ。現在、檜原村では未来の森を見据えたプロジェクトが進行している。豊かな森林資源をさらに活用するために、木のおもちゃの工房を作り、地元の木材の魅力を伝えるとともに木のある暮らしを提案していこうという、「檜原村トイビレッジ構想」がそれだ。2021年には「ひのはら森のおもちゃ美術館」をオープン予定で、こちらは檜原村の森と林業にフォーカスした、木育の一大拠点となるという。

FM認証を受けた社有林で切り出された材は地元の製材場で加工し、FSCマーク付きの木材として販売される。写真:五十嵐 一晴
FM認証を受けた社有林で切り出された材は地元の製材場で加工し、FSCマーク付きの木材として販売される。写真:五十嵐 一晴

「美術館では木のおもちゃ作りを体験してもらえますし、建物の外に広がる森では自然の中での遊びを満喫できます。木や木のおもちゃを使った遊びを通して、小さな子どもたちに林業や東京の森を身近に感じてもらう。子どもたちの意識を変えることで彼らが大人になった時、東京の森から生まれた木材が当たり前のように使われる社会になっている。そんな未来になっているといいですね」

林業は今日、明日で変わるものではない、と青木さんは言う。森を育てるように人を育て、社会を育てる。「東京チェンソーズ」が見つめるのは数十年先の東京なのである。

「自然と調和する林業にチャレンジしたい」というスタッフ。渓流釣りや山歩きを趣味とする人も多く、オンオフを問わずアウトドアを満喫している。写真:五十嵐 一晴
「自然と調和する林業にチャレンジしたい」というスタッフ。渓流釣りや山歩きを趣味とする人も多く、オンオフを問わずアウトドアを満喫している。写真:五十嵐 一晴

ワークウェア

ワークウェアは多彩な屋外フィールドで働く人のために開発された。ワークウェアに主に使用されているのは、天然繊維の中でもっとも丈夫とされる素材の一つである産業用ヘンプ。ヘンプは乾燥に強く、少量の肥料で育つうえ、深く張った根が土壌環境を改善するなど環境負荷の少ない素材と言える。このヘンプのほか、リサイクルポリエステルやオーガニックコットンなど環境に配慮した素材で仕立てたワークウェアは、林業や農業、漁業などの過酷な労働環境に耐えうる高い強度と耐久性を備えている

「東京チェンソーズ」が着用しているのは、薄手のヘンプ素材で仕上げた『ファリアーズ・シャツ』や「オール・シーズン・ヘンプ・キャンバス」コレクションの『ダブル・ニー・パンツ』。通気性が高く、ヘンプ素材ならではの高い耐摩耗性も備えており、汗ばむ季節の戸外での作業に適している。特に、へたりやすい膝周りを二重に仕立ててある『ダブル・ニー・パンツ』は、膝をつく作業の多いワーカーにぴったり。「薄手の素材は破れやほつれが気になるものですが、これは薄手で通気性が高いのに、ハードな作業にも全くへこたれない。湿潤で暑い日本の夏の屋外作業にはもってこいだから、クタクタになるまで着倒せそう」(伏見さん)。「汗をかいてもベタつかず、さらっとした着心地が好み。改めてヘンプは作業着に向いているんだと実感しました」(吉田さん)。

コメント 0

関連した投稿

« »