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パイプラインはもう要らない

リセット・ファン  /  2019年12月6日  /  読み終えるまで9分  /  アクティビズム

カナダのアルバータ州フォート・マクマリー付近にあるアサバスカ・オイルサンド。タールサンドとも呼ばれるこのオイルサンドは、砂、粘土、水の混ざった重質油層で、そのような汚染物は大がかりな処理方法で除去する必要がある。この原油採掘は土地を破壊し、カーボン・フットプリントが大きく、有毒な副産物を放出する。 Photo: Ben Nelms/Getty Images

13名の若い気候変動活動家が、ミシシッピ川とそれに頼って生活している人びとを守るために、法廷で闘っています。

ブレント・ムルシアはミシシッピ川に架かる橋を毎日徒歩で元気に渡って、ミネアポリスにあるミネソタ大学まで通っています。この灰色に濁った水はときに、夕日にくすんだピンク色に染められ、上空の雲とそこを飛び交う鳥たちを映しだし、ラッキーな日にはハクトウワシが近くをかすめる様子を目にすることもできます。24歳の彼にとって、この川には重要な意味があります。その理由はじつに正当なもの。彼はその川を飲料水源として頼っているからです。そしてそれは彼以外の約1,800万人の人間にとっても同じです。

この川に頼っているという感謝の念により、大学生である彼は現在、訴訟に関与しています。「ライン3」というパイプライン計画の合法性に異議を申し立てている13名の若い訴訟参加人のひとりであり、このパイプライン計画はカナダのアルバータ州の原野から76万バレルのオイルサンドを汲みだし、アメリカ合衆国最長の川の下を通って、スペリオル湖近くのターミナルまではるばるつながるというもの。このパイプライン計画をめぐる訴訟に第三者として介入する、はじめての青少年グループである彼らは、若者の力を結集させることに力を入れる全国的な環境団体連合〈パワー・シフト・ネットワーク〉の絶大な支援を受けています。〈パワー・シフト・ネットワーク〉はこうした若者を集め、連合に参加する団体と協働して、個人指導によって彼らがリーダーシップのスキルを効果的に身につける手助けをしています。

これらの若い訴訟参加人たちの要求はいたってシンプルです。つまり、彼らが求めているのは未来なのです。

訴訟参加人たちは全員が25歳以下で、気候変動を阻止するためにできることをしています。気候変動は、「タールサンド」として悪名高いオイルサンド(油砂)といった化石燃料の採取と生産と消費の必然的な結果です。化石燃料は二酸化炭素やメタンのような温室効果ガスを排出し、それが気候危機問題の犯人なのです。

パイプラインはもう要らない

ブレント・ムルシア(24歳)は、ライン3の合法性に異議を申し立てている13名の若い訴訟参加人のひとり。ライン3とは、カナダのアルバータ州の原野から76万バレルのオイルサンドを汲みだし、アメリカ合衆国最長の川の下を通って、スペリオル湖近くのターミナルまではるばるつながるという、パイプライン建設計画である。 Photo: Nate Ptacek

この危機によって皆が一様に影響を受けるわけではありません。気候変動を食い止めるために〈パワー・シフト・ネットワーク〉が若者、とくに気候危機の影響を最初に、そして最悪に受けやすい有色人種や低所得地域からの若者を巻き込んで、こうした化石燃料開発計画の阻止に直接関わっているのはそのためです。

結局のところ、この運動には代弁者が必要です。ある第三者報告書によれば、2014年に調査された293の環境保護団体において、84パーセント以上のスタッフや委員が白人で構成されているそうです。そして、白人以外の人たちが白人以上に懸念しているという事実が、調査結果によって次々と示されているにもかかわらず。2003年にまで遡って、ミシガン大学が実施した全国調査を見ると、黒人が肉を食べる量や車を運転する機会は比較的少ない傾向にあり、環境に優しい行動様式ということになります。最近では2017年に、気候変動コミュニケーションに関するイェール大学のプログラムがこう報告しています。ラテン系の人たちの方がラテン系以外の人たちよりも気候変動を現実視し、それについてより心配していると。

その理由は、たいてい彼らの方が環境の悪影響を身近に知っているからです。今年のはじめに『米国科学アカデミー紀要』に出版された研究によると、黒人とヒスパニック系は白人コミュニティから発する大気汚染を不均衡に押しつけられており、また有色人種は車やトラック、そして周知のとおり、発電所からの汚染にさらされている確率も高いそうです。石油やガスのパイプラインを通ってくる不純物を精製することの多いこれらの発電所は、吸い込むと肺や心臓にとどまる危険な有害物質を吐き出しています。

そして、全長約1,660キロメートルにもおよぶこのパイプラインは、世界で最も汚い類の燃料を運ぶことになります。カナダ政府によると、アルバータの黙示録的な油田からこの燃料を採取するには、他の軽めの油よりも、より多くのエネルギーを要するそうです。このエネルギー源は採掘地でエアロゾルを空気中に撒き散らすため、大気質も悪化させます。オイルサンドは深刻な問題です。〈パワー・シフト・ネットワーク〉が原油パイプラインに焦点をおく理由はそこにあります。キーストーンXLパイプラインやカナダのトランス・マウンテン・パイプライン、そしてもちろんライン3も、大いに議論の余地があります。

“石油が混ざっていたら、水は飲めません”

「カナダのアルバータからタールサンドを採取する流れを止めることは、気候危機に立ち向かうために私たちがとくに必要としている規模の、最も直接的で具体的な方法のひとつだと思います」と言うのはアキラー・サンダース・リード。彼女は気候に関与する若い訴訟参加人のひとりであり、〈パワー・シフト・ネットワーク〉でオイルフリー・オーガナイザー(脱石油運動責任者)も務めています。

キーストーンやトランス・マウンテンは最新のパイプラインの建設計画ですが、ライン3の案には修理を要する築60年近いパイプラインの交換も含まれています。これが問題です。なぜならその計画とは、老朽化とともに土や水を汚染する可能性のある古いパイプラインを地中にそのまま放置するだけなのですから。さらにルートも変更されつづけ、現時点ではミシシッピ川の下を原油が2本も通ることが予定されています。

つまりこの計画とは、温室効果ガスを排出する化石燃料に世界を依存させつづける、ということです。また現在の気候危機を激化させるだけなく、ミネソタの先住民族の故郷でもある重要な運河に危害を及ぼす可能性もあります。

パイプラインはもう要らない

20世紀初頭から中期に、ミネソタ州の湖沼でワイルドライスを探す2人の男性。パイプライン建設に声高に反対する多くのアメリカ先住民族は、彼らにとって神聖な、そしてミネソタはその産地としてとくに有名な、ワイルドライスの水田のことを心配している。 Photo: Visual Studies Workshop/Getty Images

このパイプラインはすでに存在するラインとは異なり、先住民族の居留地を通過しないというものの、プロジェクトの環境影響評価書によれば、新しいラインも、フォンデュラク居留地から8キロメートル以内、ホワイトアース居留地からはわずか4.8キロメートルのところを通ります。それはあまりにも近すぎます。

パイプラインに声高に反対する多くのアメリカ先住民族は、彼らにとって神聖なワイルドライス(とくにミネソタはその産地として有名)の水田のことも心配しています。しかしその水田は徒歩で渡ることはできず、ボートが必要です。湖から高く伸びるワイルドライスは、ミネソタ州北部中央の湿地帯に潜む、お腹を空かせたエメラルドグリーン頭のマガモやカナダガンを呼び寄せます。五大湖周辺のアニシナアベ族と総称される人びとは、この米の一種を伝統的に食してきました。ワイルドライスは彼らのアイデンティティーと文化の一部です。

気候に関与するもうひとりの若い訴訟参加人、ニーナ・ベルグルンドなら知っているでしょう。19歳の彼女はノーザン・シャイアン族とオグララ・ラコタ族の血を引き、ミネソタでワイルドライスを食べながら育ちました。

「彼らは私たちを終わらせようとしているのです。きれいな飲み水がなくては生きていけませんから」と彼女は言いました。「石油が混ざっていたら、水は飲めません。石油が混ざっていたら、ワイルドライスは食べることはできません。この土地や水が石油で汚染されれば、狩りや釣りをすることもできません」

パイプラインはもう要らない

P北シャイアンおよびオグララ・ラコタ族のニーナ・バーグランド(19歳)はミネソタ州で野生の米を食べて育った。「彼らは私たちを破壊しようとしています。なぜなら、きれいな飲料水がなければ生き残れないからです」と彼女は語る。 Photo: Nate Ptacek

ニーナは14歳で活動家となり、2016年にノースダコタ州でスタンディングロック・スー族によって先導された、ダコタ・アクセス・パイプラインに対するアメリカ先住民族の抗議運動で環境活動家たちに囲まれたとき、すぐに自分のいるべき場所を見つけました。

それからさらに成長した彼女は、現在ミネソタ州公益事業委員会がエンブリッジ社(カナダのエネルギー輸送企業)にこのパイプラインの鍵となる認定証を交付したことについて、申し立てを起こしています。この法的手続きの長い旅は2017年7月にはじまりましたが、今秋以降も長引く可能性も十分にあります。

若者たちはみずから法的文書を準備し、証人の指定から反対尋問まで、自分たちで行いました。法廷での若者たちの姿は、ただの子どもではありませんでした。彼らは専門家になっていました。

「僕たちはこの法廷記録について、知り尽くしています」と言ったのはブレントです。「高校生や大学生、そして新卒が集まって、化石燃料産業の法律専門家と向かい合って、2年を費やしました。とても力強い経験です」

法廷を通して裁判が進むにつれて、彼らは弁護団を雇いました。環境エネルギー法を専門とするミネソタ大学の法科大学院生のチームが、彼らの代理人となってくれたのです。さらに注目すべきは、その弁護士たちも、皆26歳以下であるということです。

法廷がもうひとつの原油パイプライン計画、キーストーンXLパイプラインの延期に効果的であることも証明されています。ある連邦地方裁判所の判事は、昨年国務省が気候変動の影響の可能性を計測しそこねたことを理由に、その計画の一時停止を命じました。これは連邦法によって義務づけられているもので、環境法の法廷戦略ではありません。しかしながらドナルド・トランプは3月に大統領として特別な許可を発行し、この判決を無効にすることを試みました。その合法性については、またしても法廷に持ち込まれることが予測されています。

若者たちにはものごとを悪化させている余裕はありません。それが〈パワー・シフト・ネットワーク〉の存在理由です。こうした若者たちには支援者、そして指導者が必要です。最終的には、この闘いは個人が直接行うものです。若者たちは自分たち自身でリードしなければなりません。

だから彼らは法廷にいるのです。仲間たちの模範となり、皆に未来を約束するために。それはきれいな空気と安全な飲み水のある、人間が住むことのできる惑星。彼らは「NO」という回答は、決して受け入れないでしょう。

2019年9月27日金曜日、ミネソタ公害防止局は、エンブリッジ社が提案したライン3パイプライン建設の鍵となる給水許可を却下しました。

このエッセイはSeptember Journal 2019に掲載されたものです。

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