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浸水したカドゥウェラ市の家屋の外に立ち尽くすスリランカ人。2017年5月にスリランカを襲った大嵐は、島の南部と西部にこの14年間で最悪の洪水と地滑りをもたらした。こうした異常気象は、人類がひき起こした気候変動により、件数と強さが増大している。Photo:Ishara S. Kodikara/AFP/Getty Images
浸水したカドゥウェラ市の家屋の外に立ち尽くすスリランカ人。2017年5月にスリランカを襲った大嵐は、島の南部と西部にこの14年間で最悪の洪水と地滑りをもたらした。こうした異常気象は、人類がひき起こした気候変動により、件数と強さが増大している。Photo:Ishara S. Kodikara/AFP/Getty Images

私たちが私たちの労働者を準備すべきとき

2020/05/13 2020年5月13日

「気候危機」という言葉を聞くと、海氷の断片に取り残された痩せたシロクマや、白化したサンゴ礁や、燃える森林や、あるいはミツバチのいない世界を想像するかもしれない。それは間違ってはいない。そのようなこと(およびそれ以上のこと)は悲しいことにすでに発生しているか、あるいは今後数十年後に現実となる可能性がある。しかしながら、さらに厄介なことは、想像したイメージが不完全であるということだ。そこには、家屋や人びとの仕事に影響を与えるモンスーン、干ばつ、その他異常気象に直面している、何百万もの人たちが欠けている。

最近の国連の報告によると、サハラ砂漠以南のアフリカは最も被害に遭いやすい状態にあり、食料生産の減少から、さらに多くの水系感染症にいたるまで、多大な影響を受ける。アジアでは気候変動に関する政府間パネル(IPCC)がモンスーンのような降雨の増加を予測している。また世界銀行グループによると、南アジアの8億人以上の居住地域が中程度から重度の「ホットスポット」、つまり気候変動によって生活環境が劇的に悪化する可能性がある。そしてこれらの地域はすでに生活水準が低いことで知られている。

要するに、私たちの衣服を製造する場所を含む開発途上国は、すでに大きな被害を受け、今後もそれがつづく。

パタゴニアのパートナーであるスリランカのアガラワッタにあるヒルダラマニ・グループのミヒラ工場は、カーボン・ニュートラル施設を運営しており、そこはLEEDグリーン・ビルディングのゴールド認証を受けている。世界銀行グループによると、地球規模で二酸化炭素排出抑制措置を取らなければ、スリランカの1,900万人以上の住民(人口の90%以上)が、2050年までに中程度から重度の「ホットスポット」地域に住むことになるという。Photo:Tim Davis
パタゴニアのパートナーであるスリランカのアガラワッタにあるヒルダラマニ・グループのミヒラ工場は、カーボン・ニュートラル施設を運営しており、そこはLEEDグリーン・ビルディングのゴールド認証を受けている。世界銀行グループによると、地球規模で二酸化炭素排出抑制措置を取らなければ、スリランカの1,900万人以上の住民(人口の90%以上)が、2050年までに中程度から重度の「ホットスポット」地域に住むことになるという。Photo:Tim Davis

「気候変動が起こる原因は人による営みや活動によるものである、ことは知られています」とパタゴニアのソーシャル/エンバイロメンタル・レスポンシビリティ担当副社長、キャラ・チャコンは語る。「しかしそのような問題を解決するのもまた人です。ですから、環境の観点だけでなく、人間と開発の両方の観点からこれを考えることが非常に大切です」

このことを考慮して、チャコンとそのチーム、そしてパタゴニアは、生産の多くが集中し、気候の影響が深刻になると予想される地域で、現地のチームメンバーを準備させるための新しいイニシアチブを開始している。パタゴニアは現在主要サプライヤーとともに初の試験プログラムの開発と展開に取り組み、気候変動に対する工場労働者の回復力を高め、危機が起こす肉体的、精神的、財政的ストレスに効率的かつ安全に対処する支援をしています。

スリランカのパンティヤから30分のところにある自宅の前に立つサンドゥニ・マドゥーシャ。サンドゥニはフェアトレード・サーティファイド縫製の製品を製造するスリランカの提携施設で働く。アジアのパタゴニア現場マネージャーによると、2017年のスリランカのモンスーンは生命に関わるような洪水を起こし、多くの労働者が出勤できなかった。Photo:Tim Davis
スリランカのパンティヤから30分のところにある自宅の前に立つサンドゥニ・マドゥーシャ。サンドゥニはフェアトレード・サーティファイド縫製の製品を製造するスリランカの提携施設で働く。アジアのパタゴニア現場マネージャーによると、2017年のスリランカのモンスーンは生命に関わるような洪水を起こし、多くの労働者が出勤できなかった。Photo:Tim Davis

フィードバック・ループの始動
パタゴニアが15年以上取引している縫製工場のあるフィリピンでは、2018年の最大級の台風となった22号(台風マンクット)が地域全体に地滑りを起こし、80人以上が命を失った。またアウターウェアのベースレイヤーを製造するニット工場がある香港では、同台風により建物が崩壊し、道路が浸水した。

アジアのパタゴニアの現場マネージャーによると、その影響は職場にも波及している。2017年、スリランカのモンスーンは豪雨を引き起こし、パタゴニア縫製工場を閉鎖に追いやった、とパタゴニアのサプライチェーン社会的責任マネージャーであるアレックス・キャッツは語る。工場が再開したときも、交通手段を失った社員は出勤できず、工場は人員不足のままだった。

インド、カイラッシュ・パティダールのオーガニックコットン農場の労働者。パタゴニアのパートナーであるインドの農家の多くは、激しい豪雨とそれにつづく長い乾季という異常気象の変化に気づいている。収穫量が影響を受けると農家の収入も減る。Photo:Tim Davis
インド、カイラッシュ・パティダールのオーガニックコットン農場の労働者。パタゴニアのパートナーであるインドの農家の多くは、激しい豪雨とそれにつづく長い乾季という異常気象の変化に気づいている。収穫量が影響を受けると農家の収入も減る。Photo:Tim Davis

ベトナムにあるパタゴニアの提携工場では、37度を超える日が何日もつづく長い夏季に直面している。その工場ではうだる暑さに対応するため、絶え間ない携帯用水の供給、換気扇と水噴霧による工場の屋根の冷却、各作業員用の扇風機の提供、背の高い樹木の植え付け、社内災害委員会の設定などを行った。収穫量の低下や、暑すぎて子供が学校に行けずに家に留まることを余儀なくされる状態など、家庭における精神的ストレスは就労日にも浸透してくる。

これはイニシアチブを方向付けるフィードバック・ループのようなものだ。現場マネージャー、工場所有者、そしてここアメリカの持続可能チームと連携して、パタゴニアは今後直面する被害から労働者の収入源である工場を保護するために「実際」に必要なもの、に焦点を当てている。

「私たちは労働者に、自身の暮らしについて、そして仕事場への交通を閉ざされている期間に何をしているのかについて、もっと伝えてほしいです」とキャッツは語る。「私たちは労働者の声を聞いて、私たちのプログラムをもっと彼らに近づいたものにしたいと思っています」

朝のチャイを飲んだあとのカイラッシュ・パティダール。彼の家族が所有するオーガニックコットン農場は、インドのマディヤ・プラデーシュ州インドールの郊外にある。異常気象がますます多くの農家に影響を与えるなか、パタゴニアは土壌タイプや気候に対してどういった農業方式が最適であるかを理解することに目を向けている。Photo:Tim Davis
朝のチャイを飲んだあとのカイラッシュ・パティダール。彼の家族が所有するオーガニックコットン農場は、インドのマディヤ・プラデーシュ州インドールの郊外にある。異常気象がますます多くの農家に影響を与えるなか、パタゴニアは土壌タイプや気候に対してどういった農業方式が最適であるかを理解することに目を向けている。Photo:Tim Davis

草案の作成
私たちは社外の専門家やサプライヤー提携会社との調査からこの試験プログラムに着手し、気候変動がすでにどのように労働者の生活に影響を与えているかについて学んでいる。次に、この情報を利用して、時間と投資をどこに充てるべきかを示すデータを構築する。地元地域の推薦にしたがってまず数社のサプライヤーから解決策を開始し、ゆっくり時間をかけてプログラムを拡大していく。最終的な目標は、学んだ知識を分かち合い、この区域の他社がそのサプライチェーン全体において同様の変革を起こさせるよう援助することにある。

「(このような影響が)起こっていることは分かっています」とチャコンは言う。「私たちに必要なのは、ただその重大さと必要性を理解することです」

昨年10月にインド中部を訪れ、パタゴニアの衣類に使用されるコットンの多くを栽培する農家と会ったとき、彼女は似たようなパターンを確認した。天候は変化しており、農家は危惧している。豪雨とそれにつづく長い乾期は、作物の生産高に打撃を与え、コットン作物の健康に影響する害虫問題を引き起こしている。当然のことながら、それは農家の収入も損なわれることを意味する。

そのため、パタゴニアは2018年に初めて導入されたリジェネレイティブ・オーガニック・サーティフィケーション基準の形成を支援するため、世界規模のパイロットプログラムに参加している。これらのプログラムのうち2つは、パタゴニアのためにコットンを栽培するインドの農家160人以上を対象としている。その目標は被覆作物や不耕起といったどのような慣行が、異なる土壌タイプと気候に対して最適かをよりよく理解することにある。

パタゴニア社員の居住、勤務、行楽など、その生活すべてに影響を与えるベンチュラ市とサンタバーバラ郡における2017年のトーマス山火事の光景。パタゴニアの社員5人が火災で家を失い、ベンチュラの社員の約半数が何週間も避難勧告を受けた。Photo:Donnie Hedden
パタゴニア社員の居住、勤務、行楽など、その生活すべてに影響を与えるベンチュラ市とサンタバーバラ郡における2017年のトーマス山火事の光景。パタゴニアの社員5人が火災で家を失い、ベンチュラの社員の約半数が何週間も避難勧告を受けた。Photo:Donnie Hedden

アメリカでは状況は少し異なる。ここでも異常気象がより頻繁に発生しているが、政府の緊急資金、大規模なインフラストラクチャー、住宅保険への加入などがあるため、私たちの一部は速やかに復帰が可能だ。しかし気候変動に関しては100%完全に影響を受けない人はいない。米国航空宇宙局は1950年以来、アメリカでは暑い日の日数が増加しつづけていると報告している。カリフォルニア大学マーセド校の調査によると、1,000エーカー(約4平方キロメートル)以上の地域を覆う山火事は1970年代の5倍近くの頻度で発生している。2017年のトーマス山火事では、パタゴニア本社でその痛みを感じた。この火災はわずか2日間で10万エーカーを焼き焦がし、そこにはパタゴニア社員の家屋5軒も含まれる。またベンチュラの社員の約半数が何週間も避難勧告を受けた。

「ここアメリカでこれを経験しているのであれば、発展途上国が何を経験をしているのかは見当がつくでしょう」とチャコンは言う。「ここには資源、最新のインフラ、住宅保険があります。それがない彼らの生活は想像もできません」

気候変動に対するパタゴニアの取り組み、また2025年までにカーボン・ニュートラルになるという私たちの目標についての詳細はこちらをご覧ください。

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