クリーネストライン


北ノルウェーで、オームは顔を上げ、大きくターンする。それは景色を見るためだ。Photo : ANDREW MILLER
北ノルウェーで、オームは顔を上げ、大きくターンする。それは景色を見るためだ。Photo : ANDREW MILLER

最高の緩斜パウダー

By Rip Zinger   |   2020/10/24 2020年10月24日

世界で最も進化したライダーだけが、取るに足らない平凡な地形を魅力的に見せることができるのはなぜだろう。それは熟達者のマッスルメモリーと神聖な直感が必要とされる至難の技だ。急斜面に身を投じて、最善を尽くすほうがはるかに容易である。

玉井 太朗は、スノーサーフィンの「師」と呼ばれている。そのライディング・スタイルは神業で、おそらく他の誰も習得できない。けれど、彼の友人のひとり、北海道を拠点とする日本人スノーボーダー、「オーム」こと岡田 修は別だ。彼はスノーサーフィンに対する玉井 太朗のスピリチュアルなアプローチを自分流に翻訳し、それを現実世界のものにした。毎冬、オームはライダーと山の関係を知ってもらおうと、東京をはじめとする主要都市圏から訪れる何百人もの日本人スノーボーダーに教えている。こうしたガイドも彼が山で過ごすプライベートな時間の一部だ。

平面を征する
オームの仕事は、彼の「絶対的支持層」、つまり毎年訪れる常連客に支えられている。これらの人々には、ケガをせず、最高の時間を過ごしてもらわなければならない。そんな仕事の中で、彼は玉井氏の哲学である安全に深い遊びをすることを参考にしている。常連客は毎シーズンここに来てくれる。だから、オームは自身の安全にも配慮してボードに乗らなければならないし、常にモチベーションと体力を維持していなければならない。山での彼の役割は、人々の安全を守りながら遊び方を教えることだ。そのために客を最も穏やかな遊び場、つまり山の平坦地に連れて行く。緩斜面でターンをマスターできなければ、急斜面は危険でデタラメになる。ごくわずかな傾斜を美しく滑るために、オームはゲストにたずねる。「どれくらいかがめる?」平面を征するには、とにかく地面に対し身を低くし、大きく、深く、軽快にターンすることだ。凍結した道路でトラックを運転するようなもので、急いで小回りに曲がると悲惨なことになる。オームは、視点の定め方を教え、大きくターンして見せる。
まっすぐ滑って、加速して、減速してを繰り返してバリバリ滑るのではなく、穏やかなターンをきれいにつないで、ニュートラルでなるべく一定の速度を保って滑る。ターンしている足元の下で刻々と変わり続ける雪面の状況に機敏に対応しながら、ラインの調節と加重のあんばいでターンが完成する。そしてそれら質の高いターンをつなげてボトムまで滑る。
こうして彼は、雄大な山の急斜面しか眼中になかった過激好きな人を、大きくて平らで広々とした自分の技量に合った地形を滑る楽しさを伝える。力を抜いて、山の中で最も身近な地形を楽しむことをゲストに教えるのだ。「急な深い斜面を滑り抜けるのは怖いけど簡単だよ。でも、それでは山との関係が苦行みたいじゃないか。」

サーフィンに必要なスキルの半分以上は、よい波を見つけることだが、その点においてオームは達人である。ブリティッシュ・コロンビア州アルパイン・ゴールデン・ホリデー Photo : Rip Zinger
サーフィンに必要なスキルの半分以上は、よい波を見つけることだが、その点においてオームは達人である。ブリティッシュ・コロンビア州アルパイン・ゴールデン・ホリデー Photo : Rip Zinger

ラインに委ねる

フラットキャンバー(底面が平らな形状)のスノーボードは、3Dライディング向けに作られている。いわば山の波乗りで、アップダウンしながら雪を横切るのだ。海のサーフィンの場合、波にはエネルギーがあり、それは止めようがない。玉井 太朗のGentemstickのようなスノーボードは、1本の流れるラインをターンでつなぎながら、静止した山で波のエネルギーをシミュレーションすることを意図している。この現象を起こすには、ライダーはラインに降参し、オームが言うように「危険をやり過ごす」必要がある。つまり、力で山をねじ伏せようとしたり、アドレナリンを追求したりせず、むしろ山を観察し、足元の雪に自分を合わせるのだ。「スノーサーフィンは心理戦だよ。観察力を駆使できるように脳をかなり鍛えなきゃね。」彼は自分をスノーボーダーとは思っていない。スノーボードを抱えた自然観察者だと言う。

長いアプローチと数々のターン。ブリティッシュ・コロンビア州ロジャーズ峠でオームは神業を見せる。Photo:Rip Zinger
長いアプローチと数々のターン。ブリティッシュ・コロンビア州ロジャーズ峠でオームは神業を見せる。Photo:Rip Zinger

アップダウン、そして観察して

遠い山奥ではなく、オームはより安全で身近なバックカントリーを提唱する。そこには下り坂を投影する上り坂の哲学がある。「歩いてどう登るかは、ボードでどう降りるかの参考になるよ」とオームは言い、歩きながら顔を上げ、常に観察を心掛けることをゲストに勧める。ボードに乗るときと同じように、無駄なエネルギーを使わずに、ゆっくりでも(持続的に)しっかり動く方がよい。力で乗り切って征服するのではなく、観察して滑り抜ける。征服せず、ただ観察する。彼のこの哲学で、人々は冬に魅せられ、雪から離れられなくなる。

北ノルウェーにて:ゆっくりしっかり、オームは常に顔を上げ、至福の中にいる。Photo : ANDREW MILLER
北ノルウェーにて:ゆっくりしっかり、オームは常に顔を上げ、至福の中にいる。Photo : ANDREW MILLER

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