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気候のための行動を学ぶ :この社会をつくっているのは誰か

中西 悦子  /  2021年3月6日  /  読み終えるまで12分  /  アクティビズム

アクティビズム・スクール受講後に、今後のアクションについてアイデアを出し合うパタゴニア 渋谷ストアのスタッフ

私たちの唯一の故郷である地球に住みつづけることができるかどうかは、この10年の私たち人間の行動にかかっていると、科学者たちは警告します。皆さんはどう考えますか?

「気候のための行動を学ぶ」として15歳〜24歳を対象に募集したクライメート・アクティビズム・スクールには、全国から500名の応募がありました。彼らの応募の背景には、変化のおきている社会に目を向け、いま何を彼らに渡したらいいだろうかと日頃から取り組んでいる先生、山や海や川、自然が好きで幼い頃から連れ歩いた彼らの親の世代の皆さんも関心を寄せて参加を後押ししてくれたようです。

日本政府が2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを表明した2ヶ月後の年の瀬に140名の参加者がそれぞれの場所からオンライン形式で集まり、座学と対話の場を過ごしました。この場に集まったのは、日常の生きてきた世界に何らかの、かすかな違和感を感じ、それを手がかりに望む社会を想像しながら、意識高い系と友人にカテゴライズされるのは少々不安で、これだという行動をしきれていないけれど、何より問題の一部ではなく解決の一部になりたいと考えている人たちです。

このオンラインスクールは、2つのテーマで2日間にわたって開催されました。1日目のテーマは「世界の変化と出会う~何が映り、何を感じ、何が浮かぶのか」という内容で、世界で起きている変化の潮流をつかむことに注力し、自分自身から生まれた想いや揺らぎを参加者に共有し講師の皆さんと質問を繰り返しました。2日目には「これからをつくるための構想~心と頭と手を動かす」として、より行動することにフォーカスし、自分を行動に動かすための「問い」をもちシステムに働きかけること、またクリエイティブに様々な行動する人たちやこれまで学校では教わることのないスキルやマインドセットの一端に触れ、参加している仲間同士で学びを深めていきました。

「私は環境問題だけの内容だと思っていたので、最初に感情の話をされたときは驚きました。2日間を通じて、色んな話を聞くなかで、環境問題は環境の話だけではなくて色んな話に繋がっているのだなと思いました。もっと経済や政治にも興味を持とうと思いました。来年で18歳です。選挙権をもつので、まずは選挙から行ってみようと思います」

1日目
「世界の変化と出会う~何が映り、何を感じ、何が浮かぶのか」

スクール初日、パタゴニアから参加者へ歓迎の挨拶を終えて、朝の座学ははじまりました。一般社団法人日本SEL推進協会の下向 依梨さんが画面に登場し、「普段どんなことに気づいていますか」と問いかけます。SELとは、Social Emotional Learning(社会性と感情/情動の学び)と訳され、それは内面でおきていることを深く理解することで社会全体を構造的に捉え、その構造に対して変化を促すための学びです。参加者が各々の「気づき」を共有してみるとチャット上で勢いよくコメントが溢れました。また、数字を数えるワークでは、シンプルな行為の中で、身体的、思考的、感覚的なものに感じたり、反応したり、気づいたりしていることを実感します。手垢のついた言葉だけれどと、その「気づく」を深めていく時間となりました。気づいていること(I know I know)は、意図をもたなければ1%にも満たないといいます。自分がどういう状態にあるか意識的になるのには、抱いた感情を評価しない(Nonjudgmental)ことです。良いも、悪いもない。「抱いてはいけない感情はないですよ」と伝えられます。

気候のための行動を学ぶ :この社会をつくっているのは誰か

気づきの筋肉を鍛えるボディワークとして1から10までの数字が映し出される。数字を数えること、そのことに意識をむけるよう促され、再び気づいたことを共有する。

ある状況のなかで、こういう時に、こういう感情になるのかと気づくこと、その感覚につながる力を大切にすること、抱いた違和感に対して立ち止まり深呼吸をすること、自らの内面にある感情の変化に気づくことが、他者の感情やその変化を理解することへとつながります。その理解が多様な文化や背景を有する人たちの視点、目の前や社会でおきている課題の理解へとつながります。そして、それらの課題に直面しているひとの感情にも気がつくことができるようになるといいます。ビジネス、企業を取り巻く環境の変化の中で、2020年世界経済フォーラムで発表された「ビジネスに必要とされる能力」の一つには、批判的思考や創造性とともに感情的知性の能力が入ったことも紹介されました。

ところで、本当に気候の状況は危機的なのか、地球の健康状態はどうなのか、私たちにまだできることはあるのでしょうか。科学者の声として、20年以上前から地球温暖化の予測研究に取り組む国立環境研究所の江守 正多さんからは、過去2000年の気温の変動、さらに過去80万年の大気中CO2濃度の推移が映し出されました。それは、もしもまだ地球温暖化に対して懐疑的なひとがいたとしても、人間活動が地球の気候を左右する一番の要素としてとして明らかであることが伝えられます。気候変動対策は、質を高めるものと捉えている世界に対して、日本では多くの場合が生活を脅かすものと考えられています。「脱炭素化」はイヤイヤの努力では達成できる目標ではありません。CO2を出してしまう現状の社会システム全体の「大転換」が必要となります。単なる制度や技術の導入だけでなく人々の世界観の変化をともなうプロセスであり、システムに働きかけることの重要性と可能性を繰り返し語られました。

経済思想家の斎藤 幸平さんからは、気候危機対策まったなしの現状のなかで、「持続可能な社会に向けてあなたは何をしていますか」という投げかけからはじまりました。「日常で消費者としての選択という行動にだけ満足していては意味がないです。小さな行動をおこしているという思い込み、いま本当に必要とされている大胆な行動を起こすことなく、これまでどおりの生活を続けるための免罪符となってしまいます」とつづけ、生きることができる安全な気候と未来において分岐点となる時代にいることを示唆します。もっと根本の問題に切り込むこと、社会システムとは社会の生産や分配などを決める仕組みですが、いま私たちが生きている資本主義システムそのものへ問いかけること、そして世界の若者は気がつき「SYSTEM CHANGE NOT CLIMATE CHANGE」のメッセージを掲げて、社会へ投げかけ行動している姿を伝えられます。

豊かな日本。便利にはなっているけれど働きすぎで休暇がない、誰かが困っても手が差し伸べられていない。これは貧しい生活ではないでしょうか。いま、日本ではもっと新しい別のシステムを思い描く想像力が求められています。市民が当事者としてシステムを変えていくことを、バルセロナやフランス市民会議の事例をもとにその考えが伝えられました。斉藤さんからの振り幅いっぱいに考える領域を広げる投げかけに、参加者の皆さんも存分なモヤモヤで応えます。

効果的な変化を生みだすことができるのはどこか。幸せ経済社会研究所所長の枝廣 淳子さんの時間では、再生可能エネルギー導入がもたらす問題や耕作放棄地にまつわる農家のストーリーを聞いて、つながりのループ図を描いてみるワークにとりかかりました。変化に必要な3つの要素「熱い想い、冷静な思考、動けるからだ」をあげた上で、システムとして考える思考、目の前の問題の周りにある要素だけでなく、全体を俯瞰して要素のつながりに着目します。変化を考えるときには、動きだすその前にありたい姿を思い浮かべ、つながりをたどって物事の構造を見る、望ましい好循環を描くためのアプローチを学んでいきました。

2日目
「これからをつくるための構想~心と頭と手を動かす」

自分の問いをもって行動する人たちのアプローチはさまざまです。「この社会をつくっているのは誰かと聞かれたら、私たちですと答えられるでしょうか」若者の声が響く社会、政治をタブーにせず気軽に語れることを目指して活動するNO YOUTH NO JAPAN共同代表の能條 桃子さんは、個人ではなく社会のCO2を減らすこと、システムの変化の先へ目を向けることの必要性を話します。また、社会に変化をおこす方法に正解はなく、動き出すことが大事である。と一人の学生として、同世代に向けて語りかけました。

NPO法人市民アドボカシー連盟の明智 カイトさんからは、当事者、市民として草の根で活動するロビイングという方法、政策を実現するために国や自治体に働きかけること、全ての政党に足を運び、忍耐強く時間をかけて調整していく様子が語られました。IT技術者で一般社団法人 コード・フォー・ジャパンの関 治之さんは、ただ単に便利を目指すのは僕たちの目指す次の社会ではないのではと自身の社会への問いを共有してくれました。日本が目指すべき未来社会の姿として内閣府から提言されている「Society5.0」やその実現の場とされる「スマートシティ」は、市民参加型で市民自身がどのようなテクノロジーが必要なのか、また目の前にある課題に対して何をすべきかを自ら考えること、実際に手を動かして創造していくことが大切であると語ります。その関さんの姿を通じて、自治体、住民、企業がともに行動していくシビックテックそのものにも関心と期待が生まれました。

初日には、周りの人に気候変動や環境について話すことに手ごたえを感じられていないという声が多くの参加者からありました。座学のなかで江守さんは、30年前から現代までの変化を禁煙などの事例をもとに、それらの変化は、決して大勢の皆の意識が変わったのではなく一部の人が動いて変化したことを話します。無理に興味のない人へ伝えるのではなく、興味のある人とつながれる時代だからこそ、そのつながりから何かをはじめてみることを伝えられて、少し肩の荷が下りる様子の参加者の皆さんでした。ところが、2日間を通して対話を重ね情報に溺れてしまわず自分のこともおいていかないように意識を傾けながら過ごすなかで、正解ではなく問いとともに生きるということ、自分という輪郭や自身の進む方向を示す自分なりのコンパスの存在を感じていく時間となっていたようです。終了後には、同世代の友人に、家族に、先生に、大切なひとたちに今回の経験を共有したい、伝えたい、伝えましたという言葉がアンケートを埋めていました。以前よりも一歩を踏み出す何かを掴んでくれたのかもしれません。

「2日目は1日目で学んだことを踏まえて実際に行動していく力が大切だということに気がつきました。なによりも遊び心を忘れずに多くの人を巻き込めるように工夫して、楽しみながら実践していくことが成功の秘訣だと学びました」

クライメート・アクティビズム・スクールのこれから
今年は、気候危機に向けた対策をどうとっていくのか重要な年となります。2030年のエネルギー構成比率が決まるエネルギーミックス/エネルギー基本計画の改正、昨年延期された第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)を前に温室効果ガスの削減⽬標 を含む国別⽬標(Nationally Determined Contributions : NDC)を引き上げて再提出、さらには第49回衆議院議員総選挙もあります。今月にフィールドで開催予定だったクライメート・アクティビズム・スクールは、オンライン形式に切り替えて3つのテーマ(ゼロカーボン・脱炭素社会にむけて/若者と政治(食品ロス/エネルギー/林業)/市民エネルギーと地域社会をつくる)でグループに分かれ、それぞれ学びを深めていきます。

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クライメート・アクティビズム・スクール開催概要

2020年12月6日 特別基調ウェビナー
「2020年からの未来を駆け抜ける君たちへ」
夫馬 賢治(株式会社ニューラル代表取締役CEO)
「未来は地域にしかない!~地元経済を創りなおす」
枝廣 淳子(大学院大学至善館教授/幸せ経済社会研究所所長/環境ジャーナリスト)

2020年12月26日(土)「世界の変化と出会う~何が映り、何を感じ、何が浮かぶのか」
「自分を動かすものは何 ~アウェアネスと共感がチェンジメーカーを育てる」
下向 依梨 (一般社団法人 日本SEL 推進協会 代表理事)
三森 朋宏 (一般社団法人 日本SEL 推進協会 理事)
「科学者の声を聞く ~気候危機のリスクと社会の大転換」
江守 正多 (国立環境研究所 地球環境研究センター 副センター長)
「想像力を解放しよう ~気候危機時代の資本と社会と自然」
斎藤 幸平 (大阪市立大学 経済学部 准教授/経済思想家、哲学者)
「つながりをたどって、物事の全体像や構造を見てみよう~効果的な変化のつくりかた」
枝廣 淳子 (大学院大学至善館教授/幸せ経済社会研究所所長/環境ジャーナリスト)

2020年12月27日(日)「これからをつくるための構想~心と頭と手を動かす」
「#私たちが生きたい社会をつくるために」
能條 桃子 (大学4年生/NO YOUTH NO JAPAN 共同代表)
「市民にある力 ~草の根ロビイングでより良い社会をめざす」
明智 カイト(NPO法人市民アドボカシー連盟 代表理事)
「新しい公共を描く ~ともに考え、ともにつくる」
関 治之 (一般社団法人 コード・フォー・ジャパン 代表理事)

ワークショップ
① メディアリテラシー「ニュースを読んでみよう~正解のない問いを共に生きている」
② テーマを決めて、プラン、問いをたてる「動いてみよう~私たちはどこに向かうのか」
広石 拓司(エンパブリック代表取締役)
有福 英幸(株式会社フューチャーセッションズ 代表取締役社長)
会沢 裕貴(NPO法人コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン地域実践伴走担当)

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