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故郷に再びヘンプを:コロラド州

ジェフ・マッケルロイ  /  2021年4月13日  /  読み終えるまで7分  /  ワークウェア

世界最大の高地平野、コロラド州サンルイス・バレーに育つ新たなヘンプ。Photo:Andrew Burr

6年前、コロラド州のサンルイス・バレーでジャガイモと麦の農家を経営するシャナン・ライトと義理の息子ディオン・オークスは、産業用ヘンプの栽培をあきらめかけていました。コロラド州農務省の規則では、THC含有率は乾燥重量にして0.3%以下でなければ合法とみなされません。「僕らの数値は0.31%だった」とオークスは思い出します。「情状酌量の余地はなく、僕らはその場で180エーカーを焼き、ビデオにとって提出しなければならなかった。それでおしまいだった」

「失ったお金も大きかったが、農家として朝晩一所懸命育てた何かが焼かれるのに何もできなかったことは辛かった。受け入れがたいことだった」

ライトとオークスはその日、産業用ヘンプの栽培は経済的なリスクが高すぎると判断しました。しかし、どんな農業でもアメリカ西部を悩ます干ばつでリスクは高まり、世界最大の高地平野のサンルイス・バレーですらその危険から免れることはできません。さらに高騰しつづける地価と設備費を考えると、ライトとオークスがヘンプに賭けた理由は明らかです。水の使用量が少なく劣化した表土を健康な状態に戻すことができるヘンプは、「この土地に留まり、子供や孫に繁栄する農場を残す」という、彼らが共有する夢への道筋を示しているように思えたのです。

「僕は家族のために後世に引き継げる農家を作りたい。子供たちがそれを見ながら成長し、彼らが本当に誇れるものにしたいんだ」とオークスは言います。

故郷に再びヘンプを:コロラド州

写真(左から右):シャナン・ライトの最大の望みは子供と孫に繁栄する農場を残すこと。Photo:Andrew Burr。産業用ヘンプは工業型農業慣行により劣化した土壌の回復に役立つ。Photo:Cory Richards。農業ができる未来を望む3つの理由。Photo:Andrew Burr

CBD用に栽培していたヘンプの焼却を強いられた日からまもなく、仲間の農家がもう一度ヘンプ栽培をやらないかと誘いました。それは、CBD用ではなく繊維や建材用のヘンプの栽培でした。農業法案通過直後に起きたCBDブームにより、ヘンプの価格はすでに下落していたと彼は指摘します。つまり持続可能な市場価値を作り、コットン、トウモロコシや大豆のような供給の多い作物から移行することを可能にするヘンプの真の未来は、繊維にあるのです。

そこで彼らは再び試みることを決意しました。2020年初頭、パタゴニア・ワークウェアは、ライトとオークスを、コロラド州立大学(CSU)の土壌科学者とコロラド州知事、そしてパタゴニアのヘンプのサプライヤーであるヘンプ・フォーテックス社の社長ホングリアング・ディングに紹介しました。この計画は、これらの人々の協力の下でライト・オークス農場に319エーカーの産業用ヘンプ(60%がオーガニック)を植え、研究を実施し、その専門知識を共有することでした。ところがその時、COVID−19のパンデミックが発生しました。

世界中の人々が身を潜めはじめる中、ライトとオークスはこのプロジェクトを実行しました。ポリス州知事とCSUの土壌科学者もソーシャルディスタンスを保ちながら参加し、ディングは中国からテレビ電話で助言を与え、彼の会社が基盤とする数百年にわたる中国のヘンプ栽培の知識を提供しました。種の植え付けの間隔や深さから天気のパターンまで、すべて記録され、テストされ、分析されました。これは概して80年以上もアメリカの土壌では行われていなかった種類のヘンプの研究です。

故郷に再びヘンプを:コロラド州

写真(左から右):「ジンマ」品種はすべてのヘンプ種と同様、中央アジアを起源とする。この品種はケンタッキー州やアメリカのその他の場所にて成功したもの。Photo:Andrew Burr。サンルイス・バレーの農家は、産業用ヘンプの長い主根を利用して地中深くから栄養素を引き上げ、表土を回復を図ります。Photo:Andrew Burr。彼の農場で濃度テスターを使うディオン・オークス。Photo:Andrew Burr

2020年5月14日から27日にかけて、ライトとオークスは「ジンマ」と呼ばれる中国を起源とする品種を植えました。3つの試験区画に、発芽率と種の純度を調整して、1エーカーにつき50ポンド、75ポンド、100ポンドとそれぞれの量の種を撒きました。7月中旬までには区画平均1エーカーにつき617,000本の作物が育ちました。これは繊維生産に推奨される1エーカー平均130万〜150万からははるかに低い数字です。8月下旬にヘンプは収穫され、レッティング(湿気とバクテリアによって繊維を束にする「接着剤」を自然に分解させる工程)のために畑に数週間放置されます。サンルイス・バレーを本社を置くフォーメーション・アグ社は、ヘンプに特化した農業改革を立案する新興企業であり、収穫と剥皮のための機材を提供しました。現在、この収穫からのほぼ1,000ベールのヘンプがライト・オークス農場に保管され、繊維あるいは建築資材として利用可能かどうかの試験結果を待っています。

この実験は回答よりも多くの疑問を提示しているようでした。CSUの名誉研究員で農学者でアブデル・ベラダ博士は、コロラド州ではジンマがケンタッキー州ほど繁栄しなかったいくつかの可能性を言及しました。彼は「ジンマがサンルイス・バレーにうまく適合しなかった、あるいは播種期や種の割合、水の管理、刈り取りの高さとその方法、そしてレッティングにより、生産が最適化されなかったのかも知れません」と述べます。ベラダ博士はまた7月末の霰を伴った大雨が1区画の大部分にて水溜まりを作ったことも指摘しました。この浸水により、「窒素の一部が根圏の下に染み出した可能性があり、ヘンプの成長不良と黄化はそれで[説明がつく]かも知れない」と言います。

現在、ライトとオークスはディング氏からの試験結果と、CSUの土壌科学者からの農業技術の指導を待つ「急がば回れ」状態にあります。彼らは楽観的でいなながらも注意深く、まだ山場を超えていないことを認識しています。「いまヘンプについてすべてを知っているという人がやってきたら懸念すべきです」とフォーメーション・アグ社の研究開発副社長コーベット・ヘフナーは言います。「なぜならこのビジネスには日々学びがあるからです。私たちは難関を識別しつづけ、それらを技術、労働力や機械で解決します。私たちは農家にビジネスを成立して欲しいからです」

故郷に再びヘンプを:コロラド州

写真(左から右):サンルイス・バレーのヘンプはこの品種にしては低めの180センチに成長。Photo:Cory Richards フォーメーション・アグ社のファイバートラック剥皮機は木質の芯と繊維を分け、分別されていないそのままの茎を通すことができる。Photo:Cory Richards。植物の成長を妨げ黄化した原因は、畑の一部に水溜まりを作り、窒素の流出を招いた可能性のあるサンルイス・バレーの夏の嵐かもしれない。Photo:Cory Richards

コロラド州知事のヘンプに関する特別顧問であるイアン・シーブは、ヘフナーの楽観主義に同調します。「これは否定的な含みのまったくない今世紀のコットンとなるでしょう」と彼は語ります。「この新しい作物はコロラド州の農家に経済的繁栄をもたらすでしょう。パンデミックの真っ只中のこのクレイジーな状況で。今日のような世界にとってそんなプラスがあることは素晴らしいことです」

私たちはこの収穫物が2023年までにワークウェア製品に採用可能な繊維基準を満たしているかどうか、ディング氏のアドバイスを心待ちにしています。学ぶべきことはまだまだ多々ありますが、私たちはこのパートナーシップに長期的に取り組むつもりです。ヘンプを故郷に復活させる善良かつハードな仕事に関わる全員の皆さんに感謝します。

故郷に再びヘンプを:コロラド州

産業用ヘンプを成功させるためには、それが農家をはじめとするすべての人にとって恩恵をもたらすものとなる必要がある。Photo:Cory Richards

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