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『ダムネーション』の撮影現場での共同ディレクター、トラビス・ラメル。Photo: DamNation
『ダムネーション』の撮影現場での共同ディレクター、トラビス・ラメル。Photo: DamNation

ダムネーション:80,000のダム、51のインタビュー、1つの映画

By ケイティー・クリングスポーン   |   2013/11/11 2013年11月11日
『ダムネーション』の撮影現場での共同ディレクター、トラビス・ラメル。Photo: DamNation
『ダムネーション』の撮影現場での共同ディレクター、トラビス・ラメル。Photo: DamNation

2011年7月、映画制作チーム〈Felt Soul Media〉のベン・ナイトとトラビス・ラメルはSportsmobile社のバンを借り、カメラ機材とコンピュータと着替えを詰め込んで、長時間互いに顔を突き合わせることを覚悟して、長旅に出発しました。

それからナイトとラメルは、1年半以上に渡ってメイン州からカリフォルニア州までを旅し、アメリカ国内に存在する8万基のダムにまつわる問題を収録しました。この旅には河川環境の保護を唱える生物学者兼カメラマンのマット・シュテッカーもひんぱんに同行しました。彼らはグラインズ・キャニオン・ダムに対して50年間も抗議しつづけてきた気丈な90歳代のフォークシンガーにインタビューしたり、ほぼ1世紀ぶりに解放されたワシントン州の川でボートに乗る人たちに交じって歴史的な川下りを体験したり、さらにはワシントン州オリンピック半島に建設されて100年経つエルワ・ダムとグラインズ・キャニオン・ダムの撤去を目撃しました。それはアメリカ史上最大のダム撤去の瞬間でした。インタビューは生物学者、著作家、自然保護活動家、政治家、考古学者、漁師にまでおよび、絶滅の危機にさらされているスチールヘッドを見守りつづける男性や、ダムの操業停止によって長年就いていた職を失った人からも話を聞いています。またダムのあるスネーク・リバー下流をカヤックで下るというミッションに失敗したり、冷たい川の水中風景を撮影したり、森のなかに何度か隠れてはアメリカのダムの多くは撮影が禁止されていることも学びました。そしてダムが建設される以前のようにたくさんのサーモンが川に戻ってくることを願うエルワ川下流の先住民クララム族と、その思いをともにしました。

この旅をはじめるまでダムについてはあまり知識のなかった2人ですが、ナイトはそれを「究極の短期集中コース」と表現しています。

ワシントン州のコンディット・ダムの爆破による撤去の前日にカメラを設置する共同プロデューサーのマット・シュテッカー。Photo: DamNation
ワシントン州のコンディット・ダムの爆破による撤去の前日にカメラを設置する共同プロデューサーのマット・シュテッカー。Photo: DamNation

2人がシュテッカーとともに収録した51のインタビューと10テラバイトにおよぶ映像は、長編ドキュメンタリー『ダムネーション』へと変身しています。コロラド州テリュライドに小さな編集オフィスを構えるナイトは、1年の大半をそこで過ごし、アメリカのダムが見直されていく経過を伝える美しく感動的なストーリーの編集作業に勤しんでいます。

パタゴニアと〈Stoecker Ecological〉の共同制作によるこのドキュメンタリーは、〈Stoecker Ecological〉が2010年後半に〈Felt Soul Media〉に制作を売り込みました。フライフィッシングと川の流域に関するいくつかのフィルムが成功し、それを踏み台に草の根映画会社を設立した〈Felt Soul Media〉のナイトとラメルは、当初は乗り気ではありませんでした。ダム問題は非常に複雑で、しかも退屈になりかねないと思ったからです。しかしこの問題について調べはじめると、アメリカを築いたダムの多くはさらにサーモンを絶滅させ、町を破壊し、川を変貌させ、そしてその多くが不要になっていることを知ったのです。

「ダムがどれほど環境に影響を与えたかを理解するにつれて、映画制作者としての価値観が変わりました」とラメルは言います。

ダム問題の大きさと複雑さが、これをいままでにない最大級の挑戦にしていると口を揃えて言う2人。ダム撤去について耳を傾けてもらうため、彼らはダム建設によって変わってしまった生活や歴史的出来事、川の環境についてのストーリーを綴ります。

「無理矢理に情報を詰め込まれたとか、もっと最悪なことは、ただの意見にすぎないとか、そういう風には思ってほしくない。だからこの仕事はきちんとやりたいのです」とナイトは話します。

「私たちはすべてのダム撤去を提唱しているわけではありません」とラメルは言います。「ダムについて違った視点から考えることを提唱しているのです」

『ダムネーション』の編集者ベン・ナイト。コロラド州テリュライドにある彼のオフィスにて。Photo: DamNation
『ダムネーション』の編集者ベン・ナイト。コロラド州テリュライドにある彼のオフィスにて。Photo: DamNation

ナイトは幾晩もコンピュータにかじりつき、レッドブルと近所のパン屋で買ったクッキーを片手に、明け方まで編集作業に勤しんでいます。「新しいオフィスチェアには便器が内蔵されているし、パタゴニアが雇ってくれた看護師さんには、僕の点滴と栄養補給チューブをときどきチェックしてもらっています」とジョークを飛ばすナイトですが、「事実を正確に伝えたいのです。それが何よりも大切ですから」と真剣に語ってくれました。

「心から尊敬する人びとや会社のために途方もなく大切な映画を作っている。これほど名誉なことはありません」と言うナイト。「『ダムネーション』を見た人たちが影響を受け、それぞれの地元でダムの影響について問いかけるようになったら、僕らは任務を遂行したことになります」

映画は完成間近です。

それまではナイトは編集デスクで寝泊まりですが、とりあえずバンでの生活が終わったことをナイトとラメルは喜んでいます。

ダムネーション:80,000のダム、51のインタビュー、1つの映画

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