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隠蔽策、それとも透明性?

隠蔽策、それとも透明性?

2010/11/04 2010年11月4日

私がフィクション執筆のためのクラスを取って9週間になりますが、授業の一環に、短編小説を書き、お互いの作品を批評しあうというのがあります。そして先日、ある生徒の作品を批評しました。広範囲にわたる機密保持契約からオフィス内の監視カメラ設置にいたるまで、機密保持のために過激な手段をとる企業に勤める女性の物語でした。

他の作品と同様、最終的にはこの作品の信憑性についての討論となりました。私はこの企業の機密性のレベルは、(作者の意図に反して)少し度が過ぎていると思いました。けれどもクラスメイトたちの意見はめずらしく一致しました。これはとても現実的な描写であるというのです。企業の大きさや業界の種類に関係なく、企業幹部は一般つまり社会や、さらには従業員からも情報を隠すことに出費を惜しまないからというのです。

この討論で私は広く受け入れられているこうした見識、そして私がいまパタゴニアで取り組んでいるプロジェクトの目的について考えさせられました。つまり、私たちの仕事の透明性を向上させることについてです。

Footprint

そのプロジェクトとはフットプリント・クロニクルですが、これはいままで私が取り組んできたどのプロジェクトよりも企業と透明性についての概念を深く検証するものです。このプロジェクトは、私たちのフットプリントを減らすためにはつねに自分自身について学ぶ必要があるという、ソクラテスの吟味された生活の哲学に由来しています。また、学んだことを一般の人びとと分かち合うことで、私たちはカスタマーの信頼を獲得し、そして他企業が自社の透明性を向上させるきっかけになるであろうという信念に基づいています。

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けれども企業の透明性を高めるということは、間違いなく非常に困難な課題です。まず第一に、透明性を向上することによってカスタマーの支持を得て、さらにはカスタマーの獲得も可能であるという議論があるにもかかわらず、公の場で企業やその製品の問題を指摘するということは、ブランドと製品販売促進に関する従来のビジネスのアイデアに直接反すること。第二としては、透明性とカスタマー維持/獲得の議論は、ほとんどの企業にとっては安全圏外のため実際に試されないという理由から、単なる議論に過ぎないとされていること。そして最後に、こうした事情により、透明性を高めようと努力することがひどく困難になっていることです。会社内部のみに限らず、ほとんどのフットプリントが発生する場所である外部のサプライヤーの支持を獲得する仕事が極端に複雑になってしまうのです。そしてこのプロジェクトに必須なのは、サプライヤーの協力があってこそなのです。

こうした事情とその他の実質的な理由により、フットプリント・クロニクルの最初の数回は手探り状態で進みました。当初は製品の機械的な生産工程にとどめ、それらにまつわる複雑な問題には突っ込みませんでした。そして大半を、特集した企業から提供された情報や映像に頼りました。コンセプトのデザインから製品販売にいたるまで持続的な改善を促すという目標を達成するために、どのような情報が私たちやカスタマーに必要なのか、見つけ出そうとしていたのです。

その後、私たちはあらゆる企業にまつわる社会的/環境的問題にもさらに積極的に取り組んできました。批評家やカスタマーの観点をビデオで取り上げたり、私たち自身で収集した写真や情報をスライドショーで掲載しはじめました。パタゴニアの環境/ソーシャル・レスポンシビリティ担当の新任ディレクターであるキャラ・チャコンが、フットプリント・クロニクルの最新スライドショーのために写真と情報を収集してきたときは、高い評価を受けている私たちのジーンズ・サプライヤーのうちの1社から、キャラが最初の訪問で発見した環境や社会的課題について話をしてくれるという協力を得ることができました。けれども土壇場でもうひとつのサプライヤーからの協力を得ることができなくなり、その話を取り上げることが無期限に延期されてしまったこともありました。また、チャカブコ・パックの生産過程で発生した環境への妥協点を製品アセスメントで問いただすこともありました。

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これらはどれも私たちが目的を達成したという証拠ではなく、むしろ透明性向上に向けての私たちの絶え間ない努力の進化を反映しています。この過程で私たちが望んでいるのは、企業の透明性を高めることにより、その企業の成功と維持可能性が実現されるだけでなく、それが必須であることがわかるということです。私たちはまた、透明性によって生まれる長期的な利益は、競争優位性が短期的に失われることに勝るものであることも期待しています。とくにいまの地球の状態と変化するカスタマーの期待を考えればなおさらです。

進行中の試みにはよくあることですが、最終的な結果は不確かです。けれども、この試みはビジネスの持続可能性やスポーツに関する他の試みから私たちが得た経験にも勇気づけられています。たいていの場合は良い結果を残していますし、学ぶことや予測不可能なことはいつも刺激的で楽しいことでもあります。ぜひフットプリント・クロニクルで最新の情報をご覧いただき、私たちの取り組みの進行状況をご確認ください。皆様のご意見は、フットプリント・チームが学びつづけ、適応させ、そして前進しつづけるために欠かせない過程の一部です。

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[左上 – チャカブコ・パック製造の数多い段階のひとつ。この写真は私たちの新しいパック/トラベルギア製品開発担当のケビン・コトルアーが、チャカブコ・パック製造工場をはじめて訪問したときに撮影したものです。カナーン・サイゴン社はベトナムのドクホアで工場を経営しています。 写真:Kevin Cotleur

右上 – 最初の発注をする前に入手した第三者機関による監査では、アーヴィンド社は優秀な企業でした。けれども第三者機関による監査に雇われるのは、往々にして現地スタッフです。彼らは工場の従業員が必須であるマスクを着用しているのは確認しましたが…
右下 – …ビーチサンダル(アジアの国々の作業靴としては一般的になっています)で化学薬品のまわりを歩いていることには気づかなかったりします。ことばと文化を熟知している現地スタッフによる監査はとても有益ですが、現地スタッフゆえに見過ごしてしまうこともあります。今回の訪問ではパタゴニアのスタッフによる工場見学がいかに重要であるかを、あらためて実感しました。 
工場を直接訪問する価値を示す一例。写真とキャプションはオーガニック・コットン・ジーンズのフットプリント『縫製:インド、バンガロール』から起用。 写真:Cara Chacon]

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