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鹿児島県薩摩川内市久見崎町にある川内原子力発電所。写真:原子力市民委員会
鹿児島県薩摩川内市久見崎町にある川内原子力発電所。写真:原子力市民委員会

川内原発再稼働は無用だ:原発ゼロ状態の今日、電力は不足しているか

By 吉岡 斉(九州大学大学院教授)   |   2014/09/19 2014年9月19日
鹿児島県薩摩川内市久見崎町にある川内原子力発電所。写真:原子力市民委員会
鹿児島県薩摩川内市久見崎町にある川内原子力発電所。写真:原子力市民委員会

いまから1年前の2013年9月15日夜、ただ1基だけ営業運転していた関西電力大飯4号機が発電を停止し、日本はふたたび原発ゼロ状態となった。2011年3月11日の福島原発事故のあと、13か月の法定期限を迎えた原発が次々と停止し、原発ゼロ状態に至ったのは2012年5月5日だった。その2か月後の同年7月5日より関西電力大飯3、4号機のみが首相官邸の強いサポートにより営業運転を果たしたが、この2基も13か月の法定期限により停止し、今日に至る。

だがこの1年間、日本で深刻な電力供給の危機は生じていない。稼働中の原発が全国で0~2基だった2012年2月21日から2年半以上の期間をみても同様である。原発ゼロでも経済社会の運営に電力不足による重大な支障が及ばないことが実証された。

そうしたなか、今日までの3年半に言われてきた電力供給の余力不足の背景には、電力会社が大型新鋭ガス火力発電設備などの新増設を極力控えてきたという事情がある。全国で大型新鋭ガス火力発電設備を十数基作れば、電力不足解消はもとより、40年も50年も昔に作られた熱効率の悪い老朽火力発電所の多くを廃止することもできる。だがもし大型新鋭火力を作ってしまうと、本当に原発が不要になってしまうため、電力会社は原発が再稼働するまでやせ我慢しているのだ。

そして21世紀になって大幅に高騰し、いまや1バレル(159リットル)当たり100ドル前後の贅沢品となりつつある石油やそれと連動して高価になった天然ガスを、熱効率の悪い多くの老朽火力発電所を復活させてまで焚増しした結果、電力会社の燃料費負担は重くなっている。だが仮に日本の原発の半分が再稼働を果たしても、節約できる焚増しコストは1兆円程度、つまり消費電力1キロワットアワー当たり1円程度である。これは日本経済全体に大きく影響するような数字ではない。為替レート変動による影響などの方がはるかに重要である。

もちろん先の見えない長期にわたる原発停止により、原発比率の高い電力会社の経営は圧迫され、また立地市町村の財政・経済にも打撃が及んでいる。多数動いていた原発がゼロになったのだから、既得権益の構造に大きな影響が及ぶことは当然だ。私たち市民はそれを直視することが必要だ。そしてその影響を可能なかぎり抑えるとともに、原発ゼロの電力経営や地域運営への転換を力強くサポートする政策の立案・実施に、進んで協力していくことが必要だ。それが結果的に抵抗勢力を弱め、日本を原発ゼロ社会に転換するスピードを早めることにもなる。原発ゼロへの抵抗勢力といわれる人びとも、原発を心から愛しているわけではない。気まぐれで、ときに暴発する厄介者として原発を不安視している。大切な稼ぎ手がいなくなってしまうのも困るため、縁を切れないだけなのではないだろうか。原発とのお別れを決断できるよう、政府がしっかり後押しすればよい。

原発が日本の一次エネルギー消費に占める比率は、福島原発事故前には10%程度だった。そのうち電力に占める比率は25~30%程度あったが、エネルギー全体に占める比率は3種類の化石燃料(石油、石炭、天然ガス)に大差をつけられ、原発は4番手だった。そして現在の原発ゼロにより生じたエネルギーの需要と供給のギャップは、省エネ(自然減を含むエネルギー消費削減)と石油・ガスの焚増しでカバーしているのが現状だ。

日本のエネルギー消費は1990年代半ばまで右肩上がりだった。しかしリーマンショックで大幅にエネルギー供給が低下し、2005年から2009年までのわずか4年間に1割近くの減少を記録した。2010年に景気回復にともない5%あまり盛りかえしたが、2011年に東日本大震災の影響を受けて2009年水準に戻った。そして2012年、2013年も着実に前年比で減少をつづけている。つまり現在のエネルギー消費の相場は、2000年代半ばのピーク時と比べて1割減というものである。ベースラインが1割後退したことになり、それは原発を54基から0基に減らした分に相当する。

今後の中長期的な趨勢として、人口(とくに労働力人口)の減少、人口の都市密集化、産業構造の脱工業化の進行、エネルギー高価格時代に対応した省エネルギーの進展、無駄や浪費の少ない生活様式の定着などにより、さらに大幅なエネルギー消費の減少も見込まれる。たとえ原発ゼロによる化石燃料消費の一時的な増加が生じたとしても、それはエネルギー消費の自然減を含む省エネだけで十分精算できる。再生可能エネルギーの爆発的普及に頼るまでもない。再生可能エネルギーの役割とは、石油・石炭など化石燃料の消費量を大幅に引き下げることである。電力を、そうした化石燃料ではなく、基本的に再生可能エネルギーで賄う社会を一日も早く実現したい。だがその前にまず実現すべきは、原発ゼロ社会だ。

原発が過酷事故を起こせば取りかえしのつかない甚大な被害が生じ、しかもその修復は不可能だ。そのことは福島原発事故により実証されている。福井地裁は5月21日、関西電力に対して大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転差し止めを命じる判決を言い渡し、そのなかで「深刻な原発事故の具体的危険性が万が一にも存在する場合には差し止めるべきだ」との判断を示したが、これはきわめて健全な考え方だ。原子力規制委員会の新規制基準は、日本のすべての既設原発が合格できるように注意深く仕組まれたもので、膨大なチェックリストを埋めるよう電力会社に命じているが、原発の本質的な安全性を保証するものではない。川内原発再稼働は無用だ。

川内原発再稼働は無用だ:原発ゼロ状態の今日、電力は不足しているか

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