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瀬上沢西の森。里山が削られ、谷戸が埋められて、商業施設や宅地となる。写真:角田 東一
瀬上沢西の森。里山が削られ、谷戸が埋められて、商業施設や宅地となる。写真:角田 東一

横浜・瀬上沢の森を守ろう!寄付者1万人アクション ~100円寄付で横浜に残る貴重な緑地を未来へ~

By 角田 東一(認定NPO法人 ホタルのふるさと瀬上沢基金代表理事)   |   2012/03/08 2012年3月8日
瀬上沢西の森。里山が削られ、谷戸が埋められて、商業施設や宅地となる。写真:角田 東一
瀬上沢西の森。里山が削られ、谷戸が埋められて、商業施設や宅地となる。写真:角田 東一

横浜南部に残された瀬上沢の貴重な自然が、開発で失われようとしています。神奈川県内でも極めて良好な生物相が残されている森を全面保全しようと、行政や議員、事業者など各方面に、強力な働きかけをしています。その後ろ盾となるのは市民の強い意志表示です。トラスト基金への寄付で意志を示すため、「瀬上沢の森を守ろう!寄付者1万人アクション」を展開しています。

2012年1月、事業者は都市計画提案制度による開発相談書を横浜市に提出しました。正式計画の提出は6月に予定されており、開発可否が2012年度中にも横浜市によって決定される段階にきています。開発が実施されれば、約11ヘクタールの緑地が切土/盛土で破壊され、生態系とそこに生息する生命や文化遺産が失われます。4年前にこのことを予測した私たちは、「ナショナルトラストで土地の取得や保全を行い、瀬上沢の大切な自然環境を子供達の世代へ残していく」ことを目的にNPOを設立しました。開発計画が具体化していなくても、会員と寄付者数は約1,500名に達していましたが、いま、さらに多くの声を必要としています。

瀬上沢は、横浜南部の円海山のふもとの栄区上郷町にあり、里山・谷戸の原風景を思わせる緑の多いところです。三浦半島南端からつづく三浦丘陵緑地帯の、いまでは北端の位置になっています。隣接する瀬上市民の森、上郷市民の森、氷取沢市民の森などとともに、都市化/住宅化開発の進みきった横浜に残された、最も貴重な緑地といえます。

猿田谷戸。良好な生物相が残されている湿地。写真:角田 東一
猿田谷戸。良好な生物相が残されている湿地。写真:角田 東一

この地域には谷戸(三方が閉じた谷間の地形)の湧水を集め、豊かな緑に囲まれた、瀬上池から流れ出る小さなせせらぎがあります。谷間や現在は耕作されなくなってしまった田畑の跡の湿地にも、四季折々に美しい花々や珍しい植物が数多く咲き、秋には美しい紅葉も楽しめます。この地は横浜最大のホタルの生息地であり、オオタカ、コサギ、カワセミなどの野鳥たちや、蝶やトンボなどの昆虫類など多様な生き物が暮らす、人にとっても大切な自然環境です。そして瀬上沢は、いたち川本流に注いで柏尾川に合流したあと、境川となって江ノ島にいたる小さな源流のひとつでもあります。

深田谷戸の湧水。真夏でも水のとぎれる時はない。写真:角田 東一
深田谷戸の湧水。真夏でも水のとぎれる時はない。写真:角田 東一

地域の環境団体「円海山域自然調査会」の資料によれば、円海山周辺で得られた昆虫は4,500種におよびます。開発予定区域内の瀬上沢で発見され、日本初記録として発表されたOxycera tangi(ミズアブ科)は、いまだに日本全土における採集例のすべてです。神奈川県でここでしか記録されていない昆虫も5種採集されています①ノムラクロヒメハナノミ、②アカシマルガタゴミムシ、③ナガクロツヤヒラタゴミムシ、④チャバネクビアカツヤゴモク、⑤ルリバネナガハムシです。2006年に行われた環境アセスメント評価書からも、「開発予定区域内の里山や谷戸の湿地は良好な生物相が残され、神奈川県内でも極めて貴重で注目すべき好環境である」ことが浮き彫りになりました。緑地帯のなかでも最良の湿地を伴う部分を開発で失えば、直接には開発の入らない隣接地にまで影響を及ぼし、取り返しのつかないことになります。

多様な生物が生息する瀬上沢。子供たちの情操教育にも大切な場所。写真:ホタルのふるさと瀬上沢基金
多様な生物が生息する瀬上沢。子供たちの情操教育にも大切な場所。写真:ホタルのふるさと瀬上沢基金

また、この地区には太古の時代から昭和までの人びとの暮らしが伺われる遺跡や施設跡など、文化的学術的にも貴重な遺跡が見つかっています。それらは縄文遺跡、古代製鉄遺跡、古代の横穴墓群、江戸期の横堰、昭和の銃眼遺構、160万年前の化学合成貝化石露頭など、恒久的な保全をすべき遺産です。歴史/環境教育の場としても、未来の子どもたちへの大切な贈り物となります。

7~9世紀にかけて製鉄精錬が行われていた跡の眠る上郷深田遺跡。写真:公益財団法人 横浜ふるさと歴史財団 埋蔵文化センター
7~9世紀にかけて製鉄精錬が行われていた跡の眠る上郷深田遺跡。写真:公益財団法人 横浜ふるさと歴史財団 埋蔵文化センター

かろうじて残されてきた大切な緑と里山の景観。それを削ってまで新たな街づくりをする必要はもうありません。瀬上沢周辺では、人口が急増した1960年代から1982年にかけて洋光台、港南台、本郷台等の大規模な市街化開発が行われ、多くの緑が失われてきました。それから現在までの30年間、大規模開発は行われていません。「横浜にまだこんなところがあったのか!」と訪れた人が一様に驚き、感激する懐かしい里山の風景。大都市横浜の片隅に奇跡的に残された緑地帯、希少生物が生息している湿地や樹林地、地域の歴史的遺産など、神奈川県でも唯一最良と思われる自然環境は、市民全体の大切な未来遺産です。

私たちは瀬上沢を生物多様性行動実践都市を目指す横浜市の財産として保全し、「環境保護や教育活動の場」にするという新しい方向を提案しています。開発協議がはじまったとはいえ、まだ決定したわけではありません。市民1万人が瀬上沢保全のためのトラスト基金への寄付という形で強い意志を示せば、きっと瀬上沢の森を守ることができると信じています。

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「瀬上沢の森を守ろう!寄付者1万人アクション」の詳細はホタルのふるさと瀬上沢基金のウェブサイトをご覧ください。現在、ベイサイド・アウトレット横浜ストア鎌倉ストアでも署名/寄付を受け付けています。

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