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モロカイ島からオアフ島へ – アウトリガーカヌーレース「Na Wahine O kekai」に参戦

モロカイ島からオアフ島へ – アウトリガーカヌーレース「Na Wahine O kekai」に参戦

2011/10/24 2011年10月24日

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パタゴニア日本支社・人事担当の藤井真裕子は1年弱の産休/育休を経て、今年の春、職場に復帰。また、近年自身が最も情熱を注いでいるアウトリガーカヌーも徐々にトレーニングを再開し、今年の春に本格復帰を果たしました。子育てと家事と仕事に奔走する日々のなか練習を積み重ね、9月25日ハワイで行われたアウトリガーカヌーのレースに参戦。レース前からレース後にいたる彼女のレポートをお読みください。

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世界各国からトップチームが集まる6人乗りアウトリガーカヌーの外洋レース「Na Wahine O kekai」は、モロカイ島ハレオロノ・ハーバーから、オアフ島ワイキキのデューク・カハナモク・ビーチまでの42マイルを女子クルー10名1チームでウォーターチェンジしながら漕ぐ競技。海峡のうねりが大きいときは20フィートを超え、6人乗りアウトリガーカヌーのレースでは最も荒れた海峡を渡る、技術を要するレースである。今回、日本からは各クラブチームの垣根を越えてメンバーが集まり、練習を重ねて、チームジャパンとして出場した。

[ ウォーターチェンジ待ち。海に浮かび、カヌーに乗り込む瞬間を伺う ]

レースまであと18日
午前4時。外はまだ薄暗く、肌寒い。丸くなって寝ている息子と夫を横目にそっと家を出て、江ノ島へ。カヌーを準備し、沖へ漕ぎ出す。パドルを合わせて黙々と漕ぐ。台風のうねりが消え、太陽の光が水面に帯状に輝く。「今日はカヌーがすべっていて気持ちがいいね」 チームメイトとの無言の会話がカヌー上に広がる。12~3キロ漕いでから、急いで自宅に戻る。1歳になったばかりの息子を保育園に送り出し、自転車を走らせて会社へ向かう。

レースまであと2週間
週末の練習は今日が最後。南風が吹く午後は、江ノ島からOC-6(6人乗りアウトリガーカヌー)を出し、沖に向かって漕ぎあがる。うねりに合わせてピッチを上げる。「もっとピッチ上げて、パワー入れて!」 チームメイトから声が飛ぶ。ふっとカヌーがやさしく波に押されて進む。練習後メンバーの顔を見わたす。日焼けした顔は引き締まり、笑顔のなかにも厳しい表情が混じって、ずいぶん凛々しくなってきた。

2[ レース中盤。漕いで、漕いで、漕ぎつづける ]

レースまであと2日
モロカイ島に到着。レースの受付を待つあいだ、モロカイ島民と話をする。会話の最後、「津波や地震を乗り越えて、チームジャパンはよくこのモロカイのレースにやって来てくれたわね」と、大柄な彼女がぎゅっと強くハグしてくれた。そして「幸運を祈るわ」と首に白い花を紡いだいい香りのレイをそっとかけてくれた。アウトリガーカヌーはこうした温かい場所で生まれたのだ。

レース前日
明日のレースをひかえ、スタート地点には80艇ほどの色とりどりのカヌーが並んでいる。モロカイ島に来て2度目の練習。どこまでも海の色が青い。気持ちが高まる。島の未舗装路をトラックの荷台に揺られながら宿に戻る途中、左手にくっきりとオアフ島の姿が見えた。ランドマークとなるココヘッドもダイヤモンドヘッドも見える。明日はどんなうねりが入り、どんな風が吹くのだろう。

レース当日
スタートラインには80艇のカヌー、その後方にそれぞれのカヌーの伴走船、そして取材船やヘリコプターも入り混じって、圧巻な風景だ。私は伴走船に乗ってスタート。交代ポイントで海に飛び込み、そこに漕ぎ向かってくるカヌーによじ登る。1番シートに座り、無我夢中で漕ぎはじめてふと我に返ると、眼前には真っ青な海が広がっていた。憧れの海を漕げる喜びといよいよ始まったんだ、という興奮でゾクゾクした。「私がついているから大丈夫!」と2番シートのチームメイトが叫ぶ。あっと言う間に自分の時間を漕ぎ終え、次のクルーと交代。海に飛び込み、伴走船に乗り込む。20分間のレストと補給。その後また海に飛び込み、カヌーによじ登り、漕ぐ…そしてまた海に飛び込む。モロカイ島の島陰を抜け、外洋の海峡に入ったあとも風波は穏やかで、純粋にパドル勝負となりそうなコンディション。メンタルが試されるレースになりそうだ。周囲にはハワイアンのカヌーが数艇。数十キロにわたって抜きつ抜かれつを繰りかえす。皆で刻むピッチと波長がしっかり合ってくる。後ろからの気持ちよい風とうねりに乗ってカヌーがすべる、すべる、すべりつづける。透明度の高い海は自分が挿すパドルの先までくっきりと見える。最高の時間。

気がつくと、オアフ島が眼前に迫り、監督から声がかかる。「残り10キロ!」 海の色が深いブルーから、薄いブルーグリーンに変わる。ダイヤモンドヘッドを横目に、ワイキキの町が見えてくる。ゴールが近づく喜びに、終わってしまう寂しさが入り混じり、色々なことが頭をよぎる。チームジャパンのタイムは6時間14分。フィニッシュすることができた72艇のうち28位の結果だった。

3[ ハワイアンのチームと30キロにおよぶデットヒート ]

レースから20日が経って
仕事、育児、家事、そしてその合間にパドルやトレーニングという、穏やかな日常にまた戻った。ハワイでの日々が遠く感じる。思い返せば、今回のクライマックスはやはり水や波や自分の体力/精神力と向き合う日々のパドルのなかにあった。水にパドルを挿して漕ぐ。何千回、何万回とパドルを水に挿しながら試行錯誤を繰りかえすと、ふと波や流れに乗りながらカヌーがグッとすべる瞬間がやってくる。その瞬間が無性に楽しい。その瞬間をチームメイトと共有し、「やったね」と笑いながらハグしあえるのはかけがえのない経験。そして、パドルする手を止めてあたりを見わたすと、雲間に上る朝日、視界を横切る飛び魚、雪化粧した富士山、穏やかな波のつるっとした表面…心が満たされる。そんな日々を積み重ねて臨んだレースは、憧れの舞台で漕がせてもらうことのできる、ただただ本当に幸せな時間だった。レースで心身を追い込んで心が大きく揺れるなかだからこそ見えてきた自分の強さと弱さ。これからの大きな課題もしっかりと見えた。

レーススタート直前、ピンクのチームウェアに身を包み、日焼けして引き締まった顔に素敵な年輪が刻まれたOver50の女性チームと、その横の木陰でスタート直前に赤ちゃんを抱いておっぱいをあげているママパドラーがいた。その光景を見て、これからも漕ぎつづけたいと思った。漕ぎつづけて、もっともっと船を進められるようになりたい。そして、パドルを通じて素敵な仲間たちと出会えたらうれしい。

4[ 漕ぎ終えて満面の笑顔のチームジャパンとスタッフ。藤井含めて3名のパタゴニアスタッフがチームメンバーとして出場 写真:Kenji Kinoshita ]

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