クリーネストライン


標高の高い地形をお父さんと一緒に駆け抜けるブレイズ。 Photo: Steven Gnam
標高の高い地形をお父さんと一緒に駆け抜けるブレイズ。 Photo: Steven Gnam

ホームラン

By ミーガン・ブラウン   |   2019/01/09 2019年1月9日

家族がともにするのは信仰、キャンプ、贅沢な休暇、オペラなどさまざま。そしてランニングに出かける家族もいます。

北緯40度以南の不安定な暖冬により、またしても異様に暖かい2月のある朝、ブラフォード家はランニングに出かけました。シュライン通りを走って町を抜け、地元の給水源のあるボルダー・ガルチのトレイルヘッドに着くと、地面の泥とぬかるみは雪に変わりました。長男のブレイズがブロンドの長い髪を揺らしながらひょろ長い脚で前方に駆けていき、その妹のラージャと弟のソーレンが雪玉を投げ合いながら、あとにつづきます。ラージャが着ているピンクのトップと青いタイツが雪の上に鮮やかに映えています。町を見下ろすトレイルの曲がり角へとスピードを上げながら、「チビたち、おいで!」と、父親のコーディが呼びかけます。

コーディ・ブラフォードとアイビー・ルフェーヴルはいまから8年前、長年恋い焦がれていた小さな町、コロラド州シルバートンに引っ越してきました。かつて鉱山で栄えたこの町は冬季の人口が約420にまで減り、その数は雪が解けるとほんの少しだけ増えます。コーディは「ミニストリー」というメタルバンドを追って全国各地を駆けまわっていた17歳のときにシルバートンで車が故障し、それ以来いつかこの町に戻ってこようと考えていました。ここの山々にはそう思わせる何かがあるのです。

森林限界のすぐ下で過ごす時間は家族の絆を深める。一同で小休止するあいだに綿毛で遊ぶラージャ。Photo: Steven Gnam
森林限界のすぐ下で過ごす時間は家族の絆を深める。一同で小休止するあいだに綿毛で遊ぶラージャ。Photo: Steven Gnam

コーディは建設請負業者、アイビーは地元の公立学校の用務員兼電気技師です。暖冬でない通常の冬には、2人とも町の除雪作業もしています。学校の今年の生徒数はわずか65人で、数学と科学のクラスは彼らの長男ブレイズが唯一の生徒です。ブレイズは父親と同じ、屈託のない豪快な笑い方をし、3人兄妹の真ん中のラージャは兄と弟の会話のすき間を上手に埋める役割を担います。末っ子のソーレンは一家が「エイドステーション」と呼んでいる、緑色のプレハブの自宅のリビングルームで生まれました。出産時は母子ともにかなり危険な状態でしたが、どうにか一命をとりとめました。ブラフォード家には11歳から17歳までの3人の子供のほか、猫が1匹、犬が1匹、タランチュラが少なくとも5匹、そしてシンバという名の体重73キロの豚も1頭います。

ランニングはブラフォード家が子供たちに与えたツールです。走ることは家族が週末や休暇を一緒に過ごす時間となり、お金もかかりません。ランニングはアルコール依存症やその他の悪習慣防止のための代替ともなります。彼らはランニングが、それぞれの関心にうまく対処しながら、小さな町の孤独感を親密さと独立心に発展させる方法であることも学びました。それが2人の意図であったかどうかにかかわらず、早くから子供たちの好奇心をも育みました。ブレイズはエンジニア志望で、山を走れる場所にある大学への進学を考えています。これは決して親の入れ知恵ではなく、自分自身でたどり着いた誠実な必要条件だと彼は言います。学校でヒンドゥー教について学び、ベジタリアンになることを決めたのも、ブレイズみずからの意思でした。ラージャが豚を飼うと決めたのも、彼女自身の決断です。

ランニング前のアイビーに幸運のキスをしてあげる巻き尾のシンバ。この豚も自分のStrava(ランナーやサイクリストのためのソーシャルネットワーク)のアカウントをもっている。Photo: Steven Gnam
ランニング前のアイビーに幸運のキスをしてあげる巻き尾のシンバ。この豚も自分のStrava(ランナーやサイクリストのためのソーシャルネットワーク)のアカウントをもっている。Photo: Steven Gnam

「ここでの生活は寂しいこともあります」と、眼下に広がる家々の屋根を見ながらアイビーは言います。この2年間走ることをつづけながら糖尿病と闘ってきたアイビーは、いつか町に健康食品店を開きたいと思っています。寂しさについては子供たちも同感ですが、大好きな山のためには仕方がないとでもいうように、それを一蹴します。さまざまな面でそれは本当です。ブラフォード家はランニングをあたかも歯みがきのように家族の習慣として取り入れました。決して楽な暮らしではありませんが、彼らが知っている唯一の生活です。

「マクダフ、前進せよ!」トレイルの脇の岩によじ登ろうと立ち止まった子供たちに向かって、コーディがシェイクスピアの台詞をもじって叫びます。「マクダフ、前進せよ!」と叫び返して一斉に駆け出した彼らはトレイルを猛スピードで進み、アイビーがそれを一掃するように最後につづきます。有利な位置を争って押し合いへし合いしながら、子供たちは石も雪のぬかるみも気にせず、大声を上げて颯爽と走っていきます。

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