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ウインタ・トラバースでの13時間目、走ることのできる地形への感謝の気持ちを経験するルーク・ネルソン。ユタ州。写真:Jared Campbell
ウインタ・トラバースでの13時間目、走ることのできる地形への感謝の気持ちを経験するルーク・ネルソン。ユタ州。写真:Jared Campbell

感謝についてのレッスン

By ルーク・ネルソン   |   2017/10/16 2017年10月16日

それがはじまったのは5月のある暑い午後、ベアーズ・イヤーズ国定記念物の奥深くでだった。2日間ハードに走った僕ら4人組は、困難な行程からの疲労がたまっていた。仲間の1人は苦心していた。トレーニングの欠如か、あるいはユタ州南部の野生地で、2日連続で12時間走るためのエネルギー補給が足りなかったのかもしれない。それとも僕らがこの旅の計画をしたとき、走行距離は単なる見積もりでしかないことをはっきりと伝えていなかったのかもしれない。その見積もりは少し外れていた。理由はともあれ、マットはあまり楽しいときを過ごしてはいなかった。

砂で埋もれた渓谷の谷間を行動していたとき、ジャレッドは身を乗り出し、僕にこっそりとこう告げた。「ちょっと走りはじめたら、マットは歩くことに感謝するかもしれない」 僕らはクスクス笑って小走りしはじめた。友だちが感謝の気持ちを見つけるのを手助けしようと決めて。

それから2か月が過ぎたあと、ジャレッドと僕はまたもうひとつの大きな冒険に乗り出した。今回はユタ州北部のハイ・ウインタ・ウィルダネスだった。僕らの目標はユタ州の4,000メートル級の山すべてを、記録を破る時間で登ることだった。トレイルヘッドを去った6〜7時間後、僕らは自分自身の感謝に関するレッスンについて冗談を言い合った。それまでのほとんどの時間、僕らは触れた途端にぐらつく危なっかしい崖錐を行動していた。極小の小石から最大のボルダーまでどの岩も、安定している保証はなかった。希なシングルトラックに出くわすたびに、僕らは感謝の念を増していた。

レッド・キャッスル湖を見下ろすむずかしさと美しさが並置する尾根を行動するジャレッド・キャンベル。ユタ州ウインタ・トラバース。写真:Luke Nelson

困難なセクションでルーク・ネルソンの気分を反映する空模様。写真:Jared Campbell

午前2時ごろ、冒険はかなり厳しくなっていた。僕らは意外にして骨の折れるイースト・ガンサイト・ピークを重い足取りで登っていた。そのうえ、ジャレッドのお腹は非協力的で僕らのエネルギーは底をついていた。僕の精神状態は悪く、思考はかなり否定的なそれへと走っていた。山頂のすぐ近くで立ち止まり、呼吸を整えた。手を膝についていると、ジャレッドが寄って来て、こう聞いた。「僕がいま何を感じているか分かるかい?」

僕は時間をかけて彼の答えを想像した。苦悩? 不快感? 拷問? 僕が返答する前に彼はみずから答えた。「感謝さ」

僕は完全に不意打ちをくらった。22時間経ったいま、僕らは予定より遅れ、前進をつづけるために苦戦していた。しかしジャレッドはそこに笑顔で立ち、山にいること、ほとんどの人が不可能だとみなすほど自分の肉体をプッシュできることに、感謝していると説明した。そのシンプルなコメントが僕らの経験すべての考え方自体を変えた。

いつも混雑する人気のキングス・ピークの山頂を午前2時に独り占めするルークとジャレッド。写真:Luke Nelson

僕らは不安定な崖錐だらけの、永久につづくかに思える尾根の退屈で困難な高山地形を、さらに10時間進みつづけることになった。痛みという洞窟に入り込んで、おなじみの慰め会をすることはいとも簡単だったが、僕らはそうしなかった。その代わりに僕らは感謝についてのレッスンを楽しんだ。

2017年7月7日、ルーク・ネルソンとジャレッド・キャンベルはウインタ・トラバースを32時間50分で完走した。この96キロ、標高6,900メートルを稼ぐトラバースにおける既知の最短時間である。

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