パタゴニアの環境的および社会的責任の歴史
アパレル産業
「スウェットショップ(労働搾取工場)」という言葉は、19世紀にはじめて使われました。高温で換気の悪い環境に労働者が詰め込まれている縫製工場のことで、1日16時間働いてもわずかな賃金しか支払われていませんでした。スウェットショップに対する社会の認識は、以前から存在していました。1911年にニューヨークのトライアングル・シャツウエスト工場で発生した火災では146人の労働者が亡くなり、ほとんどは若い女性で、半数以上がユダヤ系の移民でした。これは、改革を求める運動のきっかけとなりました。それからちょうど100年後、バングラデシュのラナ・プラザの崩壊事故が発生し1,100人を超える労働者が犠牲となり、変革を求める新たな声が高まりました。
しかし世界中の工場には、いまだに劣悪な環境のもと、低賃金で長時間の労働を強いられている人びとがいます。世界的なアパレル産業で働く労働者の多くは女性で、若く、貧困状態にあり、教育を受ける機会は限られ、権利を十分に行使できないケースがしばしば見られます。そのような労働者は、弱い立場につけ込まれたり、差別的な待遇を受けたり、あるいは労働組合を結成する権利を認められなかったり、さらには嫌がらせや脅迫を受けたり、不利益を被ることもあります。労働法やその執行が不十分な場合もあり、労働環境が安全ではなく、健康を損なうおそれがあります。
だからといって、縫製の仕事が一律に過酷であり、すべての工場がスウェットショップであるというわけではありません。200年にわたり、衣料品の縫製は工業化が進む国において初心者向けの職業で、しばしば地元の女性にとって、はじめて自らの収入を得る機会となってきました。多くの工場が、安全かつ健康的で人道的な労働環境のもとで衣類を生産しており、低賃金ではあるものの法的に適正な賃金を支払っています。しかし、そのような工場はむしろ例外的です。
アパレル産業におけるパタゴニア
パタゴニアの従業員――パタゴニアが直接雇用し、オフィスや直営店、配送センターで働く約2,000人――は、公正な賃金と手厚い医療保障、託児施設利用に対する補助金(ベンチュラとリノ)、柔軟な勤務体系、環境インターンシップのプログラムに参加するための有給休暇など、充実した福利厚生を受けています。多くの従業員がパタゴニアの価値観を共有し、クオリティを重視し、環境問題や地域社会での活動に積極的に取り組んでいます。
大多数のアパレル企業と同様に、パタゴニアは自社の製品を自分たちで製造してはおらず、またパタゴニア製品を製造する工場も所有していません。私たちが行っているのは、製品のデザイン、テスト、マーケティングおよび販売です。こうした領域が私たちの強みとする分野であり、生地の製造や実際の裁断および縫製は、技術的な専門知識と設備を有する他社に委託しています。こうした体制には特有な課題があります。あらゆる仕事について、私たちには責任があると考えているからです。
パタゴニアのサプライチェーン
新たな工場を検討するとき、または既存の工場を評価するとき、私たちは、品質の基準や、財務の健全性、適切な生産能力、公正な価格などのビジネス要件と同等に、社会的および環境的取り組みを考慮する「4つの評価軸」による審査アプローチを採用します。
パタゴニアの社会的/環境的責任(SER)チームは、新たな工場との取引に対する拒否権を行使できます(品質チームにもこれまでどおり同様の権限があります)。こうした慣行はアパレル産業ではめずらしく、パタゴニアと同様の社会的および環境的価値観をもたない工場との取引を避けています。また、私たちのビジネスの意思決定により、工場の労働者やその環境におよぼす可能性のある悪影響を最小限に抑えるため、調達と供給プランニングチームに対して、責任ある購買慣行についての研修を実施しています。調達と品質チームのスタッフはSERチームと緊密に連携し、サプライチェーンにおける意思決定のための合同ミーティングを毎週開催しています。
年表
1973年から1990年:
パタゴニアは「劣悪な工場で良い製品を作ることはできない」と考えており、品質と誠実さに関する価値観を共有する工場と協力するよう努めていました。清潔で管理が行き届き、技術と経験のある労働者を有し、離職率の低い工場と取引しました。
1990年:
ビジネスの成長にともない、私たちは、このような前提を検証する必要性を認識し、契約工場の評価プロセスの整備に着手しました。1990年、契約担当のマネージャーと品質チームに対して、工場を訪問し、製品の品質と労働条件の両面から評価を行うよう依頼。訪問できない工場とは取引しないことを決定しました。
1991年:
サプライチェーンのすべての契約工場を招いて開催した最初のサプライヤー会議にて、「契約工場との関係評価」を導入。この評価制度は、各工場についてスコアカードを作成し、さまざまな項目における実績を評価するもので、工場管理者側にも同様の評価を行うよう依頼しました。パタゴニアが低く評価した分野において工場側が高い評価をした場合、その差について話し合い、重点的に取り組む課題とします。私たちのアプローチはまだ体系化されたものではありませんでしたが、高い品質を求めることが、社会的コンプライアンスの面で責任ある対応を維持する大きな要因となっていました。
1990年代半ば:
第三者監査機関に委託し、新たな取引先候補となる工場を訪問して評価する取り組みをはじめました。監査はその時点の状況を切り取ったものにすぎませんが、工場の労働環境や管理体制を把握するうえで手がかりになります。また、改善に向けた対話をはじめる良いきっかけにもなりました。
1996年:
ウォルマートが販売していたキャシー・リー・ギフォードによるブランドの衣料品が、13〜14歳の少女たちを時給31セントで1日20時間働かせていたホンジュラスのスウェットショップでライセンス製造されていたことが、ある人権保護団体により明らかになりました。これは当初、定評のあるアメリカの製造業者に委託されたものでしたが、販売の需要が増すにつれ、同社の工場は別の会社と下請け契約を結び、さらにその下請け会社がホンジュラスの工場に外注したというものでした。
世論の強い反発を受け、キャシー・リー・ギフォードは反スウェットショップ運動に参加。ギフォードとパタゴニアは、クリントン大統領による「ノー・スウェット・イニシアチブ」に招待されました。私たちはそこで学んだことをもとに、より体系化されたプロセスを立ち上げ、契約工場を監査する、独立したマルチステークホルダーの検証と研修の機関である公正労働協会(FLA)の創設メンバーとなりました。
2000年代初期:
こうしていくつかの前進を遂げたあと、パタゴニアは、一歩後退しました。より低コストで製品を製造できる新たな工場から調達をはじめたときのことです。取引する工場の数は膨れ上がり、その一部は、私たちがまったく知らない別の工場と業務の下請け契約をしていました。私たちは、どこと取引をしているのか、多くの工場の労働環境がどのようなものであるのかを把握できなくなり、パタゴニアはしばらくの間、FLAから脱退しました。
2002年:
パタゴニアのサプライチェーン全体における社会的コンプライアンスを監視するために、ソーシャル・レスポンシビリティ・マネージャーを採用し、FLAとの取り組みを再開。工場の労働環境問題についてパタゴニアの従業員を教育し、彼らの行動が、意図せず工場労働者の勤務時間を長引かせたり、プレッシャーをかけて急がせたり、より大きなストレスを引き起こしたりする可能性があるということへの理解を促しました。
2000年代後期:
パタゴニアは、監査や、工場内の特定の問題の解決を手助けするために現地の第三者専門家と連携する特別な関与や、情報共有において、ブランド間の協力の取り組みを拡大しました。裁断/縫製サプライヤーの3社(合計8工場)がFLAに加盟しており、そのため、パタゴニアが満たさなければならないのと同じ、高い加盟基準を遵守することが求められました。パタゴニアは、より緊密に工場と協力し、彼らのサプライチェーンについて理解を深めました。個々の関係を強化し、サプライチェーンの透明性を高めるために、私たちは取引する主要工場の数を50%削減しました。
2007年:
パタゴニア製品の社会的および環境的影響を追跡する、フットプリント・クロニクルを立ち上げました。
私たちは社会的監査、研修、能力開発を支援する国際的な非営利組織であるヴェリテ(Verité)に依頼し、サプライヤーの工場を訪問する従業員75名に、パタゴニアの職場行動規範を十分に理解してもらうための研修を実施しました。私たちは毎年、新しく入った従業員とベテラン従業員の双方を対象に、再確認のための社内研修を行っています。
2010年:
パタゴニアのソーシャル・レスポンシビリティ・マネージャーを、社会的/環境的責任部門のディレクターとして昇格させました。これにより、工場レベルにおける社会的責任と環境的責任に関する取り組みが一体化されました。
私たちはすべての下請け契約先を識別し、現在ではその下請け先を含む裁断/縫製工場のほぼ100%を監査しています。
パタゴニアは、アパレル産業における社会的および環境的な実績を測定する指標の作成に、共同で取り組むことが可能かどうかを見極めるため、アパレル業界の主要なリーダー、NGO、学術界、米国環境保護庁を集めた最初のミーティングの開催を支援しました。これがのちにサスティナブル・アパレル・コーリションとなり、2015年時点で100を超えるメンバーが加盟し、その規模は世界各国で販売される衣類およびフットウェアの3分の1を占めました。共通の目標は「環境に不必要な悪影響を与えず、その活動に関わる人びとや地域社会に良い影響をもたらすアパレル産業」の実現です。
2011年:
12月、パタゴニアは素材サプライヤーの監査を開始し、人身売買の兆候を特定するための最先端のツールを導入。サプライチェーンにおける人身売買について最初の社内研修を実施し、製品サプライチェーン部門の全スタッフが参加しました。
この年の後半、サプライチェーンの透明性に関するカリフォルニア州法に基づく開示情報を公開しました。
公正労働協会がパタゴニアの調達チームに求める要件に基づき、私たちは、体系化した「責任ある購買慣行」を導入しました。
2012年:
パタゴニアに生地を供給する台湾の工場で働くため、アジア諸国から来た外国人移住労働者に対し、就労仲介業者が最大7,000ドルの手数料を請求していることが、素材サプライヤーの監査で明らかになりました。私たちは、このような慣行は容認できないものであり、労働者を債務拘束や強制労働へと追い込む恐れがあると判断しました。サプライチェーンにおけるこの慣行を排除するためサプライヤーと協力することを誓い、この取り組みを監督するため経験のあるスタッフの採用に着手しました。
パタゴニアはサプライチェーンの社会的および環境的影響を理解する取り組みの一環として、内容を見直し透明性をさらに高めたフットプリント・クロニクルのウェブサイトを公開しました。
FLAの創設メンバーとして、私たちは、マルチステークホルダーによる生活賃金についての協議に参加。パタゴニアの経営陣は、生活賃金を会社の優先事項ととらえ、その結果、労働者に利益を還元するための第一歩としてフェアトレードに注目しはじめました。
2013年:
この年のはじめに、パタゴニアは行動規範を改定し、FLAの審査を経て承認を受け公表しました。この文書は生活賃金に関する項目を含め、サプライチェーンにおける責任ある慣行について定めています。さらに私たちは、原価算定の計算式に生活賃金水準を反映させる方針を取り入れました。これらの取り組みは、まずパタゴニアの製造工場から着手し、サプライチェーンにおける生活賃金の課題に対応するための、短期的、中期的、長期的な戦略の一部となりました。
フェアトレードUSAとの協力関係は、生活賃金の実現に向けた道のりの第一歩のひとつでした。パタゴニアは自社の製品を作る製造工場を所有していないため、労働者の賃金を管理することはできません。フェアトレードを通じて、私たちは労働者の賃金を補い、彼らの生活を向上させる実質的な恩恵をもたらすことができます。パタゴニアは、フェアトレード・サーティファイドの工場で製造された製品のひとつひとつに賞与を支払います。この追加の資金は工場の労働者に直接還元され、労働者自身がその使い道を決定します。各工場では、民主的に選ばれたフェアトレード労働者委員会が、資金の活用方法を決めます。この年パタゴニアは、フェアトレードUSAと協働し、最初の認証工場の実現に向けた取り組みをはじめました。
また、工場の火災安全対策管理能力の向上を促進し、強化する先進的な取り組みとして、私たちはFLAの火災安全イニシアチブに参加し、その立ち上げ資金を提供。この世界的なプログラムは、火災安全対策を積極的に推進し、危険を認識した際は管理職の承認を待たずに速やかにそれを排除できるよう、労働者と工場管理者に対して研修を実施するものです。
2014年:
パタゴニアはヴェリテと協力し、移住労働者を保護するための厳格な基準を策定するとともに、彼らに対する扱いを監視するための新たな監査のプロトコルとツールを開発しました。まず台湾から開始し、サプライチェーンに対して私たちが期待する事項を伝えました。
FLAにおいて、市民社会組織(CSO)や米国の大学機関やアパレル/フットウェアのブランドとともにマルチステークホルダーによる協議過程に参加し、アパレル/フットウェアの製造工場での生活賃金の実現に向けたFLAのビジョンを示す、公正報酬ワークプランの策定に取り組みました。このワークプランの施行に先立ち、パタゴニア社内に設立した公正賃金タスクフォースは、FLAの支援とサプライチェーンでの生活賃金実現への道筋の探究を任務とし、複数の部門から構成されました。
FLAの火災安全イニシアチブに基づいて、パタゴニアのチームメンバー2名とアパレル製造工場の6名が、マスタートレーナーとなるための集中的な研修を開始しました。これは、その後数年をかけて製造工場全体に研修を広めていくことを目指すものでした。
パタゴニア製品を製造する工場がはじめてフェアトレード・サーティファイドを正式に取得し、この秋シーズンよりフェアトレード・サーティファイドの工場で製造されたウェアの販売を開始しました。インドのプラティバ・シンテックス社が縫製するウィメンズのスポーツウェア10製品から小規模に開始し、その後このプログラムを拡大するため他の国の複数の工場との取り組みもはじめました。
2015年:
パタゴニアの台湾のサプライヤーにおける移住労働者について、詳細な調査を実施するようヴェリテに委託。就労斡旋手数料問題の深刻さを理解するにつれ、パタゴニアは仕組み全体に変化をもたらすことを目標とし、その後数年にわたる重要な戦略の策定に取り組みはじめました。これには、台湾の労働部と連携し、パタゴニアが直面する問題とそれに対応する私たちのアプローチを一般に公開して認識を高め、業界全体の動きへと発展させるために同業他社との協力関係を築くことが含まれました。
パタゴニアは、インド以外でもフェアトレードのプログラムの拡大をつづけ、コロンビア、メキシコ、タイ、アメリカ、スリランカの工場でも認証を取得しました。また、フェアトレード・サーティファイドの工場で製造された衣類がもたらす利点について消費者の理解を深めるため、同プログラムに関する短編ビデオを公開しました。
2013年にFLAの火災安全イニシアチブに参加して以来、パタゴニアはアパレル製造工場にそれを導入するため、多くの時間と資源を投資してきました。パタゴニアの現地担当者2名と6か所のアパレル製造工場の代表者がFLAの指導による研修コースを修了し、しっかりとした基盤が整ったことで、翌年に研修プログラムを拡大するための準備をはじめました。
FLAの公正報酬ワークプランが発表され、パタゴニアは、それを自社のアパレル製造サプライチェーンにおける生活賃金実現に向けたロードマップとして採用しました。重要な点は、FLAがグローバル・リビング・ウェイジ・コーリションの生活賃金の定義に準拠していることです。それは「ある特定の場所において、標準的な週間の労働に対して労働者が受け取る、労働者と家族が適切な生活水準を維持するのに十分な報酬。適切な生活水準の要素には、食料、水、住居、教育、医療、交通、衣類、そして不測の事態への備えを考慮に入れたその他の日々の必需品を含む」というものです。
このワークプランは3つの段階に分かれており、FLAの加盟企業が一斉に前進できるよう、その取り組みを導き体系的に進めることを目的としています。第1段階の「現状評価」は、アパレル労働者が稼ぐ賃金を示す詳細なデータをサプライヤーから収集するためのものです。第2段階の「理解と計画」は、賃金改善の取り組みの優先順位を定めて戦略を策定するために、労働者の賃金データを生活賃金のベンチマークと比較することに重点をおいています。第3段階は「変革の実行」で、長期的に賃金を上げていくため、サプライヤーと協力してプロジェクトを実行することに焦点をおいています。
このワークプランは、パタゴニアのCEOが、私たちが取り組むべき社内の生活賃金目標を設定するために活用しています。それは、2025年までに、パタゴニアのアパレル製造工場において生活賃金を実現するというものです。この社内目標をFLAと共有し、さらにパタゴニアのウェブサイトで生活賃金実現に向けた目標を公表することにより、公正報酬ワークプランを先導する企業として認められました。
社内目標とFLAのワークプランが運用されはじめたことで、広範囲で持続可能な賃金改善を実現するために必要な業界の協働に向けて、賃金データや戦略や手法をどのように構築するかを計画することにより、パタゴニアの公正賃金タスクフォースは本格的な活動を開始しました。
2015年終盤には、農業とアパレルの関係について考えるようになり、動物福祉と労働者の公平性における高い基準を含みながら、土壌の健全性を優先する「環境再生型農業」という新しい概念を学びはじめました。環境再生型農業の実践は土壌に炭素を貯留する効果が示されていることから、私たちは、環境再生型農業と気候変動の関係に関する詳しい研究をはじめました。
2016年:
火災安全対策に関する2名のマスタートレーナーを擁し、パタゴニアのチームからさらに2名を育成。そしてアパレル製造工場全体における研修も開始し、研修を受けた工場は合計18か所となりました。各工場はその研修を全従業員に広げられるようになっており、その年以降私たちは、何万人もの労働者が、火災安全対策についてのわかりやすい研修を定期的に受けられるよう計画しています。
パタゴニアはFLAのメンバーとともに、アパレル製造工場の賃金データ収集と分析において、最善の方法を策定するための取り組みを開始。FLAの加盟ブランド数社が現地で検証するために、共有のツールが公開されました。この年パタゴニアは、10か所のアパレル製造工場で、このツールの試験運用を実施しました。
同時にFLAは、労働者が受け取っている賃金と、生活賃金とみなされる水準との差を測定するために、生活賃金ベンチマークの収集を開始しました。
この秋、パタゴニアは「環境再生型農業」に関する最初の社内ホワイトペーパーを作成し、この用語が私たちにとって何を意味するのかを明確にしようとしました。また、カリフォルニア大学バークレー校のハース・スクール・オブ・ビジネスで開催された2回目の年次ケースコンペティションを活用し、「パタゴニアは気候変動と闘うために、いかにして環境再生型農業の実践を拡大できるのか」という問いへの答えを探りました。
2017年:
台湾のサプライヤーは、移住労働者の労働環境を大幅に改善しましたが、就労斡旋手数料の完全な撤廃については引きつづき課題が残されていると判明。この問題に真正面から取り組むため、私たちは、「2020年までに手数料を撤廃するためのロードマップ」を策定しました。これは、2020年1月以降に雇用される労働者が就労斡旋手数料を支払わないことを確実にするため、今後2年以上にわたってサプライヤーとパタゴニアが達成すべき主要な成果項目を明記したものです。
パタゴニアはさらに11か所の工場で包括的な火災安全対策研修を実施し、研修を受けた工場は合わせて29か所、労働者は合計で13,000人を超えました。
パタゴニアはFLAと引きつづき協力し、10か所のアパレル製造工場を対象とした賃金データ収集の試験運用を完了することで、サプライチェーンで支払われている賃金の実態把握を進めていました。しかし賃金データを集めるのは非常に困難であることが明らかになり、これまでに収集できたデータだけでは、実際の賃金と生活賃金の差を小さくするため、どの工場が早急な対応を必要としているかを判断する十分な情報は得られないこともわかりました。
早急な対応がどの工場に必要であるかを特定するため、私たちは、マサチューセッツ工科大学(MIT)の経営大学院が提供する課程「サステナブル・ビジネス・ラボ」の学生に協力を依頼しました。それは大規模なサプライチェーンにおいて賃金データを収集するためのより簡単な方法を見つけるもので、彼らは効率的な収集モデルを開発しました。
その結果はFLAと共有され、賃金データ収集ツールを改良するために、FLAは実務者ワーキンググループを結成することを決めました。パタゴニアはこのワーキンググループに参加し、この年、検証することに合意した改良版ツールが作成されました。
この年の後半、 FLAはパタゴニアを再認定し、その労働コンプライアンス・プログラムに関する報告書を公表しました。同報告書にはパタゴニアの強みとして、パタゴニア製品の製造工場だけでなく、サプライチェーンのより深い階層においても労働環境を改善するという経営陣の強い取り組み姿勢、移住労働者が直面する問題への対応や生活賃金の実現の追求、労働者の職場における発言権確保のための市民社会との強力な連携、さらに製品をどこからどのように調達するかについて、調達、品質、環境的および社会的責任の各チームに同等の決定権を与える協働的な4つの評価軸のアプローチなどが記されていました。
パタゴニアは、中国、エルサルバドル、ベトナムへとフェアトレード・プログラムを拡大し、スポーツウェア以外の製品(ウェットスーツとテクニカルウェアを含む)にも検討を進めました。
またパタゴニアは、環境再生型農業への関与を深め、環境再生型オーガニック農業だけでなく動物福祉と社会的公平性の高い基準を含む、農場レベルの包括的な認証プログラムを創設する可能性を探るために、専門家のグループを結成。この秋には、ロデール・インスティテュート、ドクター・ブロナー、コンパッション・イン・ワールド・ファーミング、テキスタイル・エクスチェンジ、デメター・インターナショナル、フェアワールド・プロジェクト、グレイン・プレイス・フーズ、ホワイト・オーク・パスチャーズなどの主要パートナーとともに、リジェネラティブ(環境再生型)・オーガニック認証(ROC)の枠組みの初稿を発表し、意見を求めました。ROCは、放牧を基盤とする動物福祉、農家と労働者のための公平性、そして土壌の健全性と土地管理に関する厳格な要件を含む包括的な農業認証です。同年の終わりまでに私たちは、ROCの所有および運営を担う、リジェネラティブ・オーガニック・アライアンスと呼ばれる新たな非営利団体の設立のためにパートナー組織と協力しました。
2018年:
パタゴニアは、公正労働協会とアメリカン・アパレル&フットウェア協会によって作成された「責任ある雇用」誓約の署名企業となりました。これは、いかなる労働者もその仕事を得るために手数料を支払う必要はないことを確実にする公約です。
さらに15か所の工場にて火災安全対策研修を実施し、研修を受けた工場の総数は44か所となりました。同年、これらの工場は新たに65,000人の労働者に研修を実施し、パタゴニアのアパレル製造工場のサプライチェーンにおいて研修を受けた労働者の数は80,000人に達しました。
同年の早い時期に、10か所のアパレル製造工場で、FLAの改良版賃金データ収集ツールの試験運用を行いました。この試みは良好なもので、その結果を分析したあと、パタゴニアは実務者ワーキンググループで活用し、このツールを完成させるために調整を行いました。
新たに改良されたツールをアパレル製造工場に導入する前に、私たちはパタゴニアのアパレル製造サプライヤーとともに双方向型の研修ウェビナーを企画し、すべてのアパレル製造工場がこれに参加しました。このウェビナーでは、パタゴニアのサプライヤーとともに生活賃金プログラムを正式に開始し、生活賃金を定義づけ、生活賃金の重要性を提示し、生活賃金実現のための戦略を伝え、次の段階とプログラムのスケジュールについて話し合い、質問に答えるとともにフィードバックを受けました。
サプライヤーとの正式なプログラムの開始後、私たちは賃金データの収集を完了し、ふたたびMITのサステナブル・ビジネス・ラボにこのデータ分析への協力を依頼。彼らは、パタゴニアのアパレル製造工場から集めた詳細な賃金データと、FLAが提供した生活賃金ベンチマークを組み込んだ、素晴らしいツールを作り出しました。
MITのプロジェクトでは、地理的な優先順位を示すために労働者の賃金を国別に比較すること、パタゴニアのビジネス上の優先順位を示すために工場ごとの賃金を生産割合と比較すること、賃金引き上げに向けて取引先工場が何を優先できるかを理解するのに役立てるために労働者の報酬を要素ごとに分解することを含む、データ分析のための新たな枠組みも提供されました。
この分析は、アパレル製造サプライヤーにおける生活賃金の実現に向けて、私たちが現在どの段階にあるのかを示す、はじめての指標となりました。朗報だったのは、私たちが思っていたよりも前進を遂げていたことです。2018年度の環境的・社会的イニシアチブの冊子上では、パタゴニアのアパレル製造工場において、平均して生活賃金の81%が支払われていたことを示す初回の分析結果を報告しました。
この年、パタゴニアはミッション・ステートメントを「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」に変更し、気候変動を逆転させる方法として、環境再生型農業にさらに注力することを含め、解決策の実行へと重点を移しました。
2月にパタゴニアは、持続可能な繊維に注目するNGO〈テキスタイル・エクスチェンジ〉のラ・レア・ペッパーを議長として、最初のリジェネラティブ・オーガニック・ファイバー・サミットを開催。このサミットは、世界中からパタゴニアのオーガニックコットンの主要サプライヤー4社を集め、オーガニックコットン分野の成長を妨げる障壁について議論し、コットン生産における環境再生型オーガニックの実践の可能性を探りました。
3月にはリジェネラティブ・オーガニック・アライアンス(ROA)が、ナチュラル製品の最大の見本市であるエキスポ・ウエストにてリジェネラティブ・オーガニック認証(ROC)を公式に発表。NSFインターナショナルがROC認証プログラムの運営機関として選ばれ、ROAと共同で、ROCの枠組みを22のブランドや農家や牧場やブドウ園にて検証し改善するための、世界的な試験運用に着手しました。この試みの一環として、パタゴニアはオーガニックコットンの主要サプライヤー2社と協力し、150を超えるインドの小規模オーガニックコットン農家にて環境再生型農法の実践を検証するためのプロジェクトを開始しました。
2019年:
この年を通してパタゴニアは、移住労働者が就労斡旋手数料を支払うことのないよう保護する、採用および雇用システムの構築を支援するため、台湾の各サプライヤーと協力しながら取り組みました。これは、サプライチェーンにおける手数料を2020年までに撤廃するという私たちの目標を支えるもので、2020年以降も、労働者が職を得るために手数料を支払う必要のない採用システムが、有効に機能していることを確実にするため、引きつづきサプライヤーを監視していきます。
この年、パタゴニアはさらに9か所の工場にて火災安全対策研修を実施し、研修を受けた工場の総数は54か所となりました。これらの工場はさらに70,000人の労働者に研修を実施し、パタゴニアのサプライチェーンのアパレル製造工場においてこの研修を受けた労働者の数は150,000人に達しました。
またパタゴニアから最初に研修を受けた工場のうち、中国の4つの工場における労働者にアンケート調査を実施し、この研修プログラムの成果に関する定性的な情報を収集するという新たなアプローチを試みました。その結果は有望なもので、この調査に参加した5,884人の労働者のうち、98%が火災安全対策についての知識が向上した、99%が職場での火災安全対策文化が改善されたと答え、97%が火災安全に対する危険性を率先して報告することに自信をもち、同様に職場が安全でないと認識した際には不利益を受けることなく作業を拒否できると感じていることが報告されました。
パタゴニアは、全体として、アンケート調査がサプライチェーンのアパレル製造工場の労働者に対する火災安全対策研修の影響を測定する効果的な手段であると感じており、今後もこれを継続していきたいと考えました。職場の健康と安全について労働者の関与を高めるツールとして実施したアンケート調査の結果は、FLAの火災安全イニシアチブによって、職場での火災安全対策の文化における労働者の関心と信頼が向上したことを示していました。
またパタゴニアは、サプライチェーンにおけるアパレル製造工場での生活賃金の分析を更新し、サプライヤーが平均で生活賃金の88%を支払っていることを報告しました。この分析は有益ではあるものの、私たちは対外的な情報発信を進めたいと考え、その達成に最も効果的な方法を探るため、MITのサステナブル・ビジネス・ラボにふたたび協力を求めました。彼らは、まず顧客がその購買力を良い方向に活用することに焦点を当て、次に業界の同業他者が協調して取り組むことができるようパタゴニアが学んだことを共有すべきであると結論づけました。これはパタゴニアが2020年に公開を目指す企画を検討するうえで役立ちました。
さらに同年パタゴニアは、工場の競争力を損なうことなく労働者の賃金を引き上げるため、アパレル製造サプライヤーとどのように連携して取り組むかについての試験運用の計画に着手しました。毎年1〜2つの試験運用を実施し、参加ブランドが共通の目標に向けて協力して取り組む有益な場を構築するために、その結果はFLAと共有されます。
この年、パタゴニアとフェアトレードUSAとのパートナーシップ開始から5年を迎えました。その記念の一環として、ウエスト・エルムやクローガーなど他のフェアトレードブランドとともに、ニューヨーク市でフェアトレード製品のポップアップストアを開設しました。パタゴニアは9か国のフェアトレード・サーティファイドの工場と取引し、66,000人を超える労働者に影響を与えました。2019年の春および秋シーズンのパタゴニアの製品の約70%が、フェアトレード・サーティファイドの工場で製造されました。これは、2014年にインドの1つの工場で製造した10製品から取り組みを開始して以来の、大きな前進と言えます。
インドでオーガニックコットンを育てるパタゴニアのパートナーはROCの試験運用を拡大しつづけ、参加する農家の数は、150超から550超に増加しました。彼らは環境再生型オーガニックの実践による土壌への恩恵を実感しはじめ、試験運用期間中にROCの枠組みに関するフィードバックを提供するため、ROAと協力しました。
2020年:
この年は、過去に前例にないものとなりました。新型コロナウイルス感染症の大流行は世界の動きを止め、地球上のあらゆる場所で人びとの生活を瞬時に変えました。
この危機に対し、パタゴニアは慎重を期して全従業員の安全を確保するため、いち早く事業活動を全面的に停止したブランドのひとつとなり、一部の業務はリモートワークへ移行しました。社会的/環境的責任チームはビジネスチームと協力し、パタゴニアの連携サプライヤーとその労働者へのパンデミックの影響に対応するため、取り組むべき重点を見直しました。
他のすべての企業と同様に、パタゴニアも、計画段階にあった生産発注の調整を余儀なくされました。しかしパタゴニアは、生産中あるいは生産を完了した発注については全額を支払うことを誓約しました。4月にはこの誓約の詳細を説明する声明を発表するとともに、さらなる対応が必要であることについても明確にしました。
パンデミックにおけるパタゴニアの目標は、サプライヤーの支援の拠り所となることでした。彼らが直面する課題と、この危機を通じて彼らを支援することについて、サプライヤーと一対一のビデオ会議を実施して話し合い、現地の状況や情報を記した詳細な資料を作成しました。最も重要なのは、フェアトレード・プログラムを通じて、パタゴニア製品を作る労働者を支援するために賞与を支払いつづけることです。フェアトレードUSAはこの危機に際し、フェアトレード委員会が労働者により迅速に資金を配分できるよう、新たな手続きを導入。その結果、フェアトレードを通じて、パタゴニアは危機下にある労働者に追加の経済的支援を提供することができました。このプログラムの詳細についてはフェアトレード・サーティファイドのページをご覧ください。
新型コロナウイルス感染のリスクにより現地監査を実施できないため、パタゴニアは、新型コロナウイルス感染症の影響をリモート追跡する方法をサプライヤーに導入。これは、各サプライヤーの生産活動と労働者への影響に関する月次データの収集に役立ちました。
生地サプライヤーについてのパタゴニアの計画は、「2020年までに手数料を撤廃するためのロードマップ」の一環として実施している、外国人移住労働者プログラムにおけるサプライヤーの達成状況を、対面での評価を通じて検証することでした。システムがうまく機能しているかどうかを検証するには、移住労働者と面談を行い、彼らが仕事を得るために手数料を支払っていないことを確認するのが、判断材料のひとつとなります。しかしパンデミックによりこの計画は保留となり、そのあいだも継続的な進展を確認しようと、パタゴニアは、生地サプライヤーが労働者に関する月次データを提供するための、責任ある雇用を追跡するツールを開発。この追跡ツールに加え、私たちは生地サプライヤーとビデオ会議を実施し、「手数料撤廃」への誓約と、移住労働者の雇用にまつわる費用を負担することを確認しました。この時点で、書類による証拠を入手しはじめ、2021年には対面での評価を再開することを目指しました。これらの取り組みについての詳細は外国人移住労働者のページをご覧ください。
11月には、外国人移住労働者雇用基準の改定により、パタゴニアの外国人移住労働者プログラムが強化されました。社内外のアドバイザーによる6か月間の評価プロセスを経て、パタゴニアは外国人移住労働者の採用と雇用に関する新たな国内外のベストプラクティスを反映させたバージョン2.0を、最終版として発表しました。
パンデミックにより、生活賃金に関して計画していた工場での試験運用の一部を中断せざるを得ませんでしたが、私たちは、この取り組みの重要性や、パタゴニアのこれまでの道のりや、マイルストーンのいくつか、そして将来の計画の概要を綴った生活賃金に関する教育ページを公開しました。私たちの計画は引きつづき1〜2つの試験運用を展開し、その結果を公正労働協会と共有することにより、参加ブランドとサプライヤーが共通の目標に向けて協力できる有益な場の構築を目指しています。この実施に先駆けて、パンデミック後の労働者の賃金が生活賃金に対してどの位置にあるかについての認識を見直す必要があります。パタゴニアは、生活賃金に関する目標の実現に向けてこの取り組みを状況に合わせて適応させ、サプライヤーとの連携をつづけることに、今後も尽力します。
最後に、リジェネラティブ・オーガニック・サーティファイド・プログラムとそのサプライヤーも新型コロナウイルス感染症の危機によって影響を受け、パタゴニアは農家への誓約を維持し、その恩恵を受けた農家の数は、2019年の550超から2020年には約800へと増加しました。また2020年春シーズンには、最初のリジェネラティブ・オーガニック・サーティファイド・パイロット・コットンの製品ラインを発表し、ROCパイロットおよびROC認証製品を増やしつづけることを誓いました。これらの取り組みについての詳細は変革のためのコットンのページをご覧ください。
2021年:
新型コロナウイルス感染症による危機の継続的な影響が引きつづき世界中で認められた2021年、私たちの業界もその例外ではありませんでした。この年の最優先事項は、新型コロナウイルスが労働者におよぼす具体的な影響を追跡しつづけ、サプライヤーとの緊密なコミュニケーションを維持することでした。
世界の一部の地域ではある程度正常な状態に戻りはじめるなか、パタゴニアのビジネスと連携サプライヤーは、パンデミックがサプライチェーンにもたらした、ますます複雑化する課題に直面しつづけました。それは、製造や輸送や物流管理に影響をおよぼすものです。こうした課題にもかかわらず、私たちはパタゴニア製品を製造する工場とその労働者を支援し、この困難な時期乗り越えてきた彼らの強さを称えつづけました。
パンデミックの期間を通してパタゴニアは、契約工場の労働者を支援するためにフェアトレードの賞与の支払いを継続しました。私たちは、サプライチェーン全体で労働者が新型コロナウイルスによる困難にさまざまな形で対応するために、この追加の資金を活用しているのを確認しました。それは、基本的な食料品や生活用品、あるいは医療品や衛生用品の購入に使われたり、子どもが在宅で授業を受けるのに必要な物を揃えるために使われたりしました。労働者のなかには、基本的なニーズを満たす一助とするために現金支給を望む人や、地域社会でもっと困っている人を支えるために寄付を選ぶ人もいました。フェアトレード・プログラムの最も独特な側面のひとつは、賞与の使い道を決めるのが、労働者自身に委ねられている点です。コロナ危機のあいだに実施された賞与プロジェクトは、労働者が、自分たち自身や地域社会にとって最善の方法で資金を活用する権限を与えられていることを示しました。
私たちは引きつづき、パタゴニアの従業員、そしてサプライヤーとその労働者にとって、対面での評価を実施することが安全かどうかを見極めました。2021年の最終四半期には、ベトナムと台湾で評価を再開することができました。台湾は、パタゴニアの最も象徴的な製品の多くに使用される素材を供給するという点でとくに重要な役割を果たすため、私たちはふたたびサプライヤーを訪問して労働者に面会することを心待ちにしていました。これらのサプライヤーは、すべての労働者に対する斡旋手数料に終止符を打つこと目指す「2020年までに手数料撤廃」イニシアチブにも参加していました。私たちは2021年の終わりまでに、数多くの労働者とのインタビューを含む、7回の対面での評価を実施することができました。そして、私たちのサプライヤーは、パンデミックにまつわる困難に直面した年においても、責任ある雇用への誓約を守っていたことがわかりました。2022年に向かうなか、私たちは台湾での評価をつづけ、世界各地のその他の工場でも現地訪問を再開しました。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大と鎮静化が繰りかえされるなかでも、私たちは、計画していた生活賃金の試験運用を進展させることができました。パタゴニアは、レイク・アドバイザリーおよびトロント大学のグレッグ・ディステルホースト助教授と協力し、工場の報酬制度と生産性インセンティブの成熟度を評価することを目的とした試験運用プロジェクトを発足させました。これにより、私たちはサプライヤーの慣行をよりよく理解し、労働者の賃金に好影響をもたらし得る改善点を特定できるようになりました。私たちは、この試験運用に参加してパートナーとなることに同意したサプライヤーを集めて中核グループを結成し、その結果から学べることに期待しました。
またアンカー・リサーチ・インスティテュートと協力し、製造施設での性別による賃金格差を算出する新しい方法の試験運用もはじめました。この独自の方法は、アンカーの生活賃金推計値と照合して世界的なサプライチェーンにおける性別による賃金格差を算出し、その格差を生み出す根本的な要因を特定するものです。目標は、アンカー・リサーチ・インスティテュートのこの方法のさらなる発展を支援し、それによりパタゴニアが、サプライチェーンでの性別賃金格差を特定し、それに対応するためサプライヤーと積極的に取り組むことです。
最終的には公正労働協会の支援のもと、コロンビア、エルサルバドル、メキシコ、タイの生活賃金推計値を提供するためのアンカーの取り組みに、パタゴニアは資金を拠出しました。これらはすべて、グローバル・リビング・ウェイジ・コーリションのウェブサイトにて無料で一般公開されました。
生活賃金についての取り組みの進展に合わせて、私たちは、生活賃金に関する教育ページを定期的に更新していきます。
衣料品のサプライチェーンにおいて環境再生型オーガニック農業を推進するため、私たちはインドでのリジェネラティブ・オーガニック・サーティファイド(ROC)プログラムの範囲を拡大し、参加する農家の数は、2020年の800から2021年には2,000超へと増加しました。さらに2021年には、アルヴィンド株式会社とプラティバ・シンテックスが協働で実施している、インドにおける2つのROC農場プロジェクトがROC認証を取得し、パタゴニアの2022年春コレクションで、完全に認証済みの最初の製品の発表が実現しました。ROCの取得は、サプライヤーや農家との長年にわたる協働と資金の支援、そして継続的な取り組みの集大成であるだけではありません。それはまた、この繊維に生命を吹き込む農家の技術と献身とたゆまぬ努力の証です。
2021年の締めくくりに、私たちはROCプログラムをインド以外にも拡大し、ペルーのB Corp認証企業であるバーグマン・リベラおよびテクスティル・デル・ヴァレとのパートナーシップを強化しました。パタゴニアで最初のペルー産ROCコットンによるコレクションは、2023年の発表を目指しました。この取り組みに関する詳細は、変革のためのコットンのページをご覧ください。私たちはこれまでの取り組みを誇りに思い、今後もより多くのブランドや農家がこのプログラムに参加することを期待しています。
2022年:
この年は、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の危機的段階から、世界がようやく脱しはじめた年です。
コロナ危機の全期間を通して行ったように、パタゴニアは2022年も、フェアトレードの賞与を継続して労働者に支払いました。この追加の資金は労働者に意義ある恩恵をもたらし、その賞与の使い道は、労働者が自身や家族や地域社会を支えるために決定します。2022年は、労働者による投票の結果、賞与を労働者のニーズを満たすための支援として、現金や食料品の詰め合わせで配分する工場もあれば、労働者の家族の経済的福祉の向上や、気候変動によるリスクに対応するための投資に重点をおく工場もありました。フェアトレード・プログラムは90,000人を超える労働者とその家族に恩恵をもたらしており、パタゴニアにとって極めて大きな影響力をもつプログラムであり誓約です。
2022年、私たちは、世界中のサプライチェーンの施設で現地評価を安全に再開することができました。この年、パタゴニアの従業員はふたたび工場を訪問して監査や研修を実施し、引きつづきパタゴニアの行動規範の遵守がしっかりと維持されていることを確認しました。また、さらに多くのサプライヤーに、より迅速に働きかけることができるよう、信頼のおける第三者監視機関のパートナーに協力を求め、その初期成果に手ごたえを感じました。改善の余地はあるものの、サプライヤーは、労働者への責任とパタゴニアの職場基準の遵守に尽力しつづけました。サプライヤーの多くは、危機的な期間においても労働者へのさらなる支援を提供するため、期待以上の取り組みを行いました。
対面での関与を再開できるようになったことで、台湾での就労斡旋手数料に対する取り組みの確認作業を完了させることができました。私たちは移住労働者プログラムの残りのサプライヤーを訪問し、彼らが責任ある雇用における最も重要なマイルストーンを達成したことを確認しました。その結果、労働者が負わされていた最も高額な手数料が撤廃されることになりました。私たちはサプライヤーが責任ある雇用への誓約を守ってくれたことに感謝し、今後も協働をつづけながら、彼らの雇用システムをさらに強化していきます。
またパタゴニアは2022年に、生活賃金に関する2つの重要な試験運用も完了しました。1つはコロナウイルスの影響による渡航制限のため完全にリモートで行われ、もう1つはリモートと現地の両要素を組み合わせました。これらの試験運用は特定のサプライヤーにおける賃金支払い制度を調査し、賃金格差に潜在する性別的な側面についても検証しました。こうした試験運用は、生活賃金の差を解消する方法を探りつづけるなかで、今後の私たちの取り組みに生かされました。
この取り組みについての私たちの進展の記録は、生活賃金に関する教育ページでご覧ください。
衣料品のサプライチェーンにおいて、環境再生型オーガニック農業を推進することは引きつづき優先事項であるため、私たちはリジェネラティブ・オーガニック・サーティファイド・プログラムの一環として、インドとペルーにある2,000を超える農家を支援するという誓約を守りました。これらの農場から供給されたコットンは、この年の多くのパタゴニア製品に使用され、土壌の健全性と農家の福祉と社会的公平性を消費者が直接支援することを可能にしました。
あのような前例のない困難な時期を経て、こうした取り組みに役立てるためにこれまで以上に必要なのは、労働者の声であると私たちは感じています。数か月にわたる技術サービス提供事業者の支援を受け、私たちは、労働者の個人的ニーズや職場での経験や展望について彼らから直接話を聞くために、35を超える衣料品工場および生地工場と緊密に取り組みました。19,000人を超える労働者からの回答をもとに、私たちはこのフィードバックを分析し、地域、性別、労働者の属性(移住労働者など)、サプライチェーンの階層にわたる傾向の把握を進めています。分析が完了したら、現在のプログラムの調整と新しいプログラムの開発に向けて、この情報を活用していく予定です。
2023–2024年:
2023年、私たちは公正労働協会(FLA)のマイルストーン5評価の初年度の評価を無事に完了しました。パタゴニアのようなFLA認定企業は、FLAの10原則について3年サイクルで評価を受けます。2023年のマイルストーン5評価では、パタゴニアが社会的コンプライアンスのシステムに、次の原則をどれほど組み込んでいるかが評価されました:原則4(サプライヤーと製造スタッフのための研修)、原則5(モニタリング)、原則6(適切に機能する苦情処理の仕組み)。パタゴニアは2023年に評価されたこれら3つの原則すべてにおいて、90%を超えるスコアを獲得しました。残りの原則については、2024年後半および2025年に評価される予定です。
私たちはこの期間中も、他の優先すべきプログラムにおいて引きつづき進展を遂げています。詳細な更新情報は、以下のページをご覧ください。
責任ある購買慣行 生活賃金 外国人移住労働者 フェアトレード・サーティファイド
2025年:
私たちは、パタゴニアの社会的責任に関する取り組みを誠実に見つめた、初の「Work in Progress Report」を公開しました。労働条件および社会的責任における私たちの取り組みについての詳細は、その69〜76ページをご覧ください。