阿部 悠子
阿部 悠子
サーキュラリティ部門リペアサービス/縫製スタッフ
パタゴニア入社年
2015年
ワークスタイル
オンサイト:鎌倉リペアセンター
「お客様をお待たせしたくない。自分が修理に出す側だったら、1日でも早く直って戻ってきてほしいと思いますから。けれども現場で働いていると、納期を縮めることは大変で、どれほどの工夫と努力が必要なのかを痛感します。修理の質は絶対に落としたくありませんからね」
パタゴニア入社までの道のり:
高校卒業後に縫製工場に就職しました。ときどきの目標に向かってがんばってきたつもりでしたが、同じままでは前に進めないと思い、13年間働いた会社を退職しました。そのタイミングでパタゴニアの求人を見かけたのですが、当時、千葉県市川市に住んでいて、職場の鎌倉までは少し遠かったので、都内のアパレルメーカーに就職。そこの仕事量が多すぎたことで体を壊して1年で退職。もう一度ゼロから考えたときにパタゴニアを思い返し、少し遠いけどやってみたいと思って応募して入社しました。
パタゴニアのリペアサービスを選んだ決め手は?
最初の3か月間は試用期間で、その間は市川からの通勤だったので片道2時間かかりました。それでも続けたいと思ったのは、働いているスタッフが魅力的だったから。私たち技術職は、自分の持っている技術を人には教えない世界。それなのにパタゴニアのリペアスタッフは自分の技術を教え合っていることに驚きました。また、仕事以外でも話をしていて気持ちのいい方ばかりで、一緒に山に行ったり、食事に行ったりと、ただの職場の同僚という関係以上でした。今までは同じようなカタチの量産品をひたすら縫って終わりでしたが、ここでは、ボロボロになった服が、直って着られるように生まれ変わっていく。その工程を担当すること自体が面白かったし、自分が関われることに大きな喜びを感じたからです。
それまでの技術はリペアで役立ちましたか?
最初は戸惑いました。前職まではミシンだけで製品を作ってきましたが、リペアではミシンが入らないところを手縫いしたり、仕付けといって、生地がずれないように行う作業だったり、リペアセンターに入ってから身につける技術も多く、自分では思いつかないような発想の修理など、いくつも教わりました。お預かりした製品は1点ずつ修理個所も修理方法もすべて違うので、担当するのは一人でも、たくさんの人の目と知恵と感覚を集めたほうが正解にたどり着けると実感しています。
技術的に難しい修理は?
難しいのはジッパー交換です。なかでも厚みのある綿入りの製品や、ハードシェルの止水ジッパーは難しい。縫い直しが効きませんし、作業個所が長いものは緊張します。基本的には、もともと縫われていた針穴を使ってあらためてミシンで縫い直しますので、針穴同士がずれないよう仕付けを使って押さえながら、もとの針穴を追いかけます。それは量産のときにはなかった高い技術です。
リペアという仕事を続けて良かったこと:
印象に残っているのは、お客様の声を直接聞けたことですね。ストアのヘルプスタッフで店頭に立つ機会があったのですが、そのときひとりのお客様が、リペアで修理してもらったというご自分のバッグをうれしそうに見せてくれたのです。「このバッグが好きで、直してもらってよかった」と。そのときのお客様の声と表情は今でも忘れません。
子育てと仕事の両立:
パタゴニアでは子どもを育てながら働いている方が多いので、いつか私もそうなりたいと思ってきました。ですが、実際にそれが現実になってみると、子どもの体調に左右されて思った以上に働けないことで落ち込みました。それでも、会社は子育てを支援してくれますし、同僚たちは「大丈夫だよ」という雰囲気で支えてくれます。
私の子どもは4歳児と2歳児なので、一人が熱を出すと、高い確率でもうひとりも続きます。そうして朝の時点で「行けない」と会社に連絡を入れることになるのですが、それでも当たり前のように仲間がカバーしてくれる。もちろん、他のメンバーが休んだときは私もそうします。「お互いさま」が合言葉の、すごくありがたい環境で働けていると思います。
お気に入りのパタゴニア製品:
フーディニ・ジャケットが好きで色違いを1着ずつ持っています。山登りでも、家庭でも、仕事場でも、ちょっとしたときに羽織る相棒ですね。まだ破けていないけど、破けたら自分で直して着続けるつもりです。もっとも自分の持ち物ですから、お客様からお預かりしたもののように丁寧な作業にはならないと思いますが。