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映画『180° South』:その背後にあるインスピレーションを読む

読み終えるまで9分  /  コミュニティ, クライミング, サーフィン
映画『180° South』:その背後にあるインスピレーションを読む

クリス・マロイ監督による待望の映画『180°South』が、2011年1月22日(土)より20日間限定で東京・渋谷 シネクイントにて上映されます。現在シネクイントおよび関東のパタゴニア直営店で前売り券(税込1,500円)を発売中。全国でも順次公開を予定しています。詳細は『180°South』ウェブサイトをご覧ください。まずはこの映画のストーリーをより味わっていただける方法をいくつかご紹介しましょう。

クリスが『180°South』を製作するきっかけとなった1968年の映画『Mountain of Storms』がDVD(英語版)でご覧いただけます。パタゴニアのファン、クライマー、サーファー、スキーヤー、熱狂的な旅好き、あるいは60年代の雰囲気を懐かしく思う方なら、きっとこの映画を楽しんでいただけることに違いありません。また、パタゴニア・ブックスでは『180°South:Conquerors of the Useless』の日本語版を出版します(2011年1月中旬発売予定)。240ページにおよぶ本書では、イヴォン・シュイナード、クリス・マロイ、ジェフ・ジョンソンのエッセイや、何百枚にもおよぶ写真、そしてたき火を囲んで行われたクリス・マロイによるイヴォン・シュイナード、ダグ・トンプキンス、ジェフ・ジョンソンの対談をお読みいただけます。

『Mountain of Storms』からの抜粋をご覧ください。

[ Video: Lito Tejada-Flores ]

映画『180° South』:その背後にあるインスピレーションを読む

『180° South:Conquerors of the Useless』からの抜粋をお読みください。

クリス・マロイ: いまから20年後にいちばん思い出すことは何だと思う?クライミングか、セーリングか、それともその考える時間から得たものか。

ジェフ・ジョンソン: 想像もつかないな。20年後にもう一度聞いてくれ。

イヴォン・シュイナード: 何を得ることができるかなんて、前もっては絶対分からないよ。

ジェフ: 自分の日記にこう書いたことがあるんです。こういうものに乗り出すとき、自分のなかで何かが変わるだろうということはわかっても、それが何かはわからないと。自分の人生で何か具体的なものを変えたいと願うなんて、人は間違っていると思うんです。それではまるで何かを変えるために冒険に出るみたいなものでしょう。そして旅が終わると、望んでいたものが手に入らなかったことに気づく。多くの人が間違った方向に向かっていると思います。

イヴォン: 帆船をゼロから造った男たちの話がある。彼らはそれに5年もかけた。ところが船が完成したとき、彼らはもはや航海したいと思わなくなっていた。彼らが本当に望んでいたのは帆船を造ることだった。そういうことだったんだ。

あの1968年の旅は6か月だったが、この話と似ている。旅の目的はフィッツロイを新ルートで登ることだった。実際登攀には成功した。それに関する映画を撮る約束をしていたから、やり遂げねばならなかった。でもあの旅でいちばん記憶に残っているのはそのことじゃない。

ちょっとした事故もあった。コロンビアの橋から川に飛び込んで首を痛めたんだ。私たちはカフェオレみたいに濁った川にかかる橋の上にいた。ダグが飛び込んで「最高だよ、おまえも飛び込めよ」と言うんだ。私は彼から1.5メートルのところに立っていた。1.5メートルだよ。そこから飛び込んだら砂州にぶつかった。首にヒビが入って、横たわっているしかなかった。動くことができず、一生全身不随になると思った。もちろんそうはならなかったが、それから長年腰痛に悩まされ、それがタンプラインを発見することにつながった。46日間かけてヒマラヤを縦走したとき、ポーターたちがタンプラインで大きな荷物を運んでいるのを見た。頭にかけたタンプラインで50キロ近くもある荷物を運んでいる。奴らは本物のプロだなと思った。彼らは昔からのやり方をつづけている。それで私もタンプラインで荷物を運びはじめた。その旅の終わりごろには25キロ近い荷物を背負って、シェルパを先導できるまでになっていた。それ以来ずっとタンプラインを使っている。

私は何をやるにしてもハイテクではなく、シンプルな解決策を探すようにしている。だから今回のクライミングにはカラビナは1本も持ってこなかった。ロープを直接結んだんだ。私だったらマコヘを降ろすのに、アンカーを使わずにロープだけで全部やっただろう。カラビナも、スリングも、懸垂下降器もなし。すべてとてもシンプルにできるんだ。たぶんあの旅で首を痛めたおかげで得たことがそれなんだろう。シンプルなやり方をすること。

ジェフ: あなたが得たのはまさにそれですね。あなたがあの旅から思い出すことは面白いですね。『Mountain of Storms』はたぶん3、4回見ていますが、頂上のシーンを見た覚えがないんです。覚えているのはあなたがたがサーフィンをしたり、スキーをしたり、ふざけたりしているところだけ。フィッツロイの部分はほとんど覚えてない。あそこに至るまでがあの映画のいちばんすごい部分なんだと思いました。

今回の旅では、頂上についてはまったくこだわっていませんでした。すごく登りたいと思っていましたが、それが危険すぎるとわかったら、どうでもよくなった。どうでもいいですよね?

イヴォン: 無益なものの征服者だ。

ジェフ: おっしゃるとおり、クライミングは完全に無益なものですよね。

イヴォン: でも偉大な目標だ。

ジェフ: たしかに偉大な目標です。あなたと同じように、私もいつもクライミングやサーフィンを言い訳にして、いろんな場所を見に行っているんです。母とはよくこんな会話をしたものです。私が外国に行くたびに、「あれ見た?これ見た?」って聞くんです。それで私は「どれも見てないよ」と言う。「じゃあ、いったい何してたの?」と母が聞く。私は「サーフィンに行って、1か月間ずっと同じ町で過ごしてたんだ」と答える。すると母は「そんなところに行ったのに、エッフェル塔やコロシアムを見なかったなんて信じられない」と言う。それに私はこう答える。「そうだね、僕は地元の家族の家に泊めてもらって、地元のバーでビールを飲んで、1か月間そこにいてサーフィンしてたんだよね」と。サーフィンの旅じゃなかったら、そんな風変わりな小さな町で、そうした人たちと時間を過ごすこともなかったでしょう。

イヴォン: 私がダグとウガンダに行ったときに起こったことを話そうか。私は偉大な19世紀の探検家の本がとにかく大好きだった。バートンとかスピークとか、リビングストンやスタンレーなんかだよ。彼らはきまってナイル川の源を探していた。そしてナイル川の源がビクトリア湖だということ、アルバート湖からビクトリア湖に水が流れ込んでいること、それから「月の山」といわれるルウェンゾリ山地から出る水がアルバート湖を満たしていることを解明した。それはそうと、あそこにある最高峰はスタンリー山だ。ダグと私はスタンリー山の山頂に立って小便をした。ほんのつかの間、私たちはナイル川の源だったというわけだ。

どうでもいいことだろう?もしだれかに「なぜスタンリー山に登ったんですか?」とたずねられたら「ナイル川の源になることができるように」と答えたかもしれない。どんな答えにも劣らぬ答えだろ。

クリス: イヴォン、クライミングに関していえば成功と失敗の違いはなんでしょうか?

イヴォン: 大切なのは努力。私たちはコルコバドで大変な努力をつぎ込んだ。3日間あそこにただたどり着こうとしたんだ。もしそこに登って第2登を達成し、歴史の本を書くというのが重要なことだったとしたら、私たちは失敗したことになる。でも冒険を楽しむために出かけて行ったのなら、成功したことになる。

クリス: 人生における成功と失敗についてはどう考えますか?

イヴォン: 私の好きな本に『ブラス・クーバスの死後の回想』というのがある。ある男が自分の人生を振りかえって、自分が勝者だったか敗者だったかを決めようとするんだ。結局彼は小さな勝者だということになった。

それは人それぞれによって違う。その人にとって何が大切かによるんだと思う。私にとってはこの登攀への挑戦は素晴らしかった。70歳近くになって、自分をどこまで駆り立てられるのかわかったからね。精神的には問題ない。屈したわけじゃないしね。でも身体はあまりついてきてくれなかった。

人生を通して私は自分を駆り立てつづけてきた。寒さや暑さのなかをどこまで行けるのか知っているし、家族のために海からどうやって食物を取ればいいのかも、鱒の住む流れの水は飲めるということも知っている。そしてそのことが私に自信を与えてくれるんだ。

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『Mountain of Storms』のDVD(英語版)と『180°South:Conquerors of the Useless』(英語版 ※日本語版は2011年1月中旬発売予定)、さらに映画の記念として作られた180°South アース・Tシャツと「Sin Represas!(ダム建設反対!)」を呼びかける180º South シン・レプレサス・Tシャツ(1枚の売上につき5ドルをsinrepresas.comに寄付します)はパタゴニアのウェブサイトよりお買い求めいただけます。

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